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幻の大陸アトラ編
141 幻の大陸アトラ探検-出発-
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一月下旬になってようやく大海に沈んだという大陸アトラを探検する準備が整った。
整ったと言っても海底探検なので「思い付いたことをやってみた」に過ぎない。海底に潜ること自体は何度もやっていることだが、海底探検の専門家がいる訳ではない。無理は出来ないだろう。
参加するメンバーは次の通り。
アトラ大陸探検隊
隊長 神聖アリス教国 リュウジ・アリステリアス王
副隊長 カセーム王国 ピステル・カセーム王
副隊長 聖アリステリアス王国 ヒュペリオン・アリステリアス王
副隊長 シュゼール王国 ナエル・シュゼール王
探検隊特別顧問 シリス・アリステリアス
探検隊特別顧問 アリス・アリステリアス
妖精族王女 ミリィ
技術補佐 スペルズ他
警備主任 椎名美鈴
警備 七人の侍女隊/天馬一号(改)
警備 近衛神魔動車隊
その他従者(H&Hズを含む)
飛行船スタッフ
今回は大陸連絡評議会の使節団ではないので私的なチームだ。
なのに、なんでこんなに王様が冒険するんだか意味不明だ。普通はあり得ないだろう。
ただ、『女神様に付き従う人間の王達』という解釈なら可笑しくはない。もちろん本人たちは誰もそんなことを考えていない。あくまでも一般人が見たらということだ。まぁ、神様がいるんだから安全といえば安全だし、いいか。
また、近衛神魔動車隊って要らないと思うんだけど、ヒュペリオン王が参加するには近衛兵が必要ってだけらしい。本当なのか? ちょっと怪しい。噂ではこのメンバーの競争率は凄いことになっているそうだ。
H&Hズは予定してなかったんだが、今度こそ連れていけと五月蠅かったので従者として採用。
まぁ、確かに近くに置くとは言ったしな。とりあえず魔法免許は取得したし新規開発したダイビングギアも使えるのでいいのだが。
また、今回から飛行船展望室のカメラで撮った映像が、王城談話室のスクリーンに映し出されるシステムを導入してみた。
子供の世話で残りたいが冒険もしたいという嫁のわがままにより急遽ランティスが徹夜して設置してくれた。
これの凄いところは、うちの嫁の場合は必要なら転移出来るので本当に探検に参加できるってことだ。
* * *
「いま、歴史上かつてない冒険が、ここ神聖アリス教国から始まろうとしています。その一部始終を首都アリスから第三王妃のセシル・アリステリアスがお届けしたいと思います」
セシル、ノリノリだな。
今回は大陸連絡評議会公認ではないので、こっそり出発しようかと思ったら許してもらえなかった。
各国代表から、どうしても同時配信してくれと懇願された。まぁ、気持ちも分かるんだけど、殆ど何も出ませんでしたとかになりそうなんだけど。
とりあえず、出発したら特別なイベントは出来ないので飛行艇の外部映像を送信するだけにした。神聖アリス教国で問題ないように編集して各国に配信することになっている。女神様が現れるシーンとか出せないからな。
「本当に伝説の大陸アトラは存在したのでしょうか? そして、そこに誰が住んでいたのでしょうか? 海底都市に息づくのは果たして希望か幻か? それは私たちの未来に関わるのでしょうか? 謎は謎を呼び期待は大きく膨れていきます」
何を言っているのかよく分からないことを言い出したので、俺は発進の合図を出した。ネタ切れだよな?
上部展望室が神魔動飛行艇になってから、指令室はこの展望室になった。もちろん、マッハ神魔動飛行船の操縦席は別にある。だが、この展望室にいる俺が全体の指揮を執るからだ。
* * *
飛行船は何事もなく首都アリスを発進した。
今回は、中継地点の都市国家モニまででも六千キロメートルもある。なので、最初からマッハ二・〇で行く。巡航速で六時間も飛んだら飽きるからな。
「マスター、ラームの木に異常ありません。とても美味しく生ってました」とミリィが報告してきた。
「おまえ、点検に行って食ってくるなよ~っ」飛行艇には疑似セルー島BOXが置いてあって、ラームの木が植えてある。
「いえ、お食事の時間でしたので」
「いつもお食事の時間なのか?」
「ち、違いますよマスター。お食事の時間か、おやつの時間です」
「そ、そうなんだ。どう違うんだ?」
「お食事はラームとマスターの食事を一口。おやつは、ラームとお茶とクッキーです」
「わかった。じゃあ……」
「これから、マスターとお食事です」だよな。
ラームについては、ラームジュースを沢山用意してあるのでラームの木は必要ないとも言えるのだがミリィはラームの木が見えないと不安なのだそうだ。
それはあるだろうな。長年、ラームの木がある場所でしか生活してないんだから。
* * *
飛行船は順調に飛んで、おやつの時間には南北大陸を遠望するまでに近づいた。
「そう、おやつと言えば、この辺にズワイガニが沢山いたよな」
「おお、食べるのである!」何故かいる女神隊。
「じゃ、獲ってこう」
そろそろ、都市国家モニなので、下降してカニをお土産にしよう。
南北大陸といえば、まずパルス王国なのだが、今回は二人の王妃がご懐妊だそうなので遠慮した。うまく行っているようで何よりだ。
* * *
で、都市国家モニ王国に到着したのだが……。
「リュウジ殿。ぜひ私も連れて行って下され」
などとモニ王国の第一王子マッセム・モニが言い出した。前々回の南北大陸一周旅行に随伴できなかったのが残念だったらしい。
「この度は、単なる訪問ではなく冒険と聞く。是非私も同道してリュウジ殿のお役にたちたいと思う」
「いや、これは危険な旅なので、第一王子をお連れするのは……」
「しかし、メンバーは王様ばかりではないですか、むしろ王子のほうが気安く行けます」
「ん~っ」どうしようかなぁ。女神隊とかいるからなぁ。
「ふむ。王子、驚くようなことの連続でも耐えられる自信がおありかな?」俺が迷っていたら、ナエル王が謎めいたことを言った。
「勿論です、むしろ望むところです」
まぁ、アトラ大陸についてはそうなんだけど。パルス王国の王様達から何か聞いてないのかな?
まぁ、打ち明けるか、ほっといて思考停止するに任せるかのどちらかなんだが。若いから順応できるか? でも若いからこそ女神様にのぼせ上がるってこともあるからな。
ー もういんじゃない? バラしちゃいましょうよ。
ー うん、まぁ、もう面倒くさいしなぁ。
ー 神の国を復興するときにバラすのは逆に面倒よ。
ー それもそうだな。
「わかった。その代わり、泣き言は聞かないぞ」
「ほんとうか! 感謝しますリュウジ殿」とマッセム王子。
横でナエル王が憐れむような目で見ている。もちろんピステルはニヤニヤしている。
「発進したあと、私から話しましょう」ナエル王、いたわるようにマッセム王子を見て言った。
とりあえず、発進してからなら諦めもつくだろうな。うん。
* * *
「おお、今朝もラームは美味いなぁ。朝一番はラームに限る」
翌朝、上部展望室で朝日に輝く大海原を見つつ、疑似セルー島BOXからもぎ取ったばかりのラームの実を頬張り俺は言った。
横では、事実を打ち明けられ一睡もできずにぐったりしているマッセル王子の姿があった。
「鬼ね」
「鬼だわ」
「鬼なのである」
「鬼のリュウジ怖い」
「そこっ、誤解を招くようなことを言わない。ってか、朝からいきなり顕現して、王子にショック与えておいて、何言ってるんですか」
「あら、でも美しいショックよ。朝日に輝く女神たちよ」アリス、何言ってんの?
「おお、確かに絵になる」後から来たピステルが言う。
うん、ショックを与えてるほうは美しいかも。でも、受け取るほうは美しくない。
「お分かりですね。変に気を使う必要はありません。普通にしていれば大丈夫です」
マッセム王子の隣で、事情を説明したナエル王がフォローしている。
「神様のような方だとは思っていたのですよ私も。でも『ような』と『である』の間の差がこれほどあるとは……私は初めて知りました」
「今のうちに慣れておいて下さい」
「慣れて……ですか?」
「はい。これが、日常になります」
「???」
ナエル王は、いつの間にか悟りを開いたかも知れない。
マッセム王子が、この言葉を理解する日はすぐそこに?
整ったと言っても海底探検なので「思い付いたことをやってみた」に過ぎない。海底に潜ること自体は何度もやっていることだが、海底探検の専門家がいる訳ではない。無理は出来ないだろう。
参加するメンバーは次の通り。
アトラ大陸探検隊
隊長 神聖アリス教国 リュウジ・アリステリアス王
副隊長 カセーム王国 ピステル・カセーム王
副隊長 聖アリステリアス王国 ヒュペリオン・アリステリアス王
副隊長 シュゼール王国 ナエル・シュゼール王
探検隊特別顧問 シリス・アリステリアス
探検隊特別顧問 アリス・アリステリアス
妖精族王女 ミリィ
技術補佐 スペルズ他
警備主任 椎名美鈴
警備 七人の侍女隊/天馬一号(改)
警備 近衛神魔動車隊
その他従者(H&Hズを含む)
飛行船スタッフ
今回は大陸連絡評議会の使節団ではないので私的なチームだ。
なのに、なんでこんなに王様が冒険するんだか意味不明だ。普通はあり得ないだろう。
ただ、『女神様に付き従う人間の王達』という解釈なら可笑しくはない。もちろん本人たちは誰もそんなことを考えていない。あくまでも一般人が見たらということだ。まぁ、神様がいるんだから安全といえば安全だし、いいか。
また、近衛神魔動車隊って要らないと思うんだけど、ヒュペリオン王が参加するには近衛兵が必要ってだけらしい。本当なのか? ちょっと怪しい。噂ではこのメンバーの競争率は凄いことになっているそうだ。
H&Hズは予定してなかったんだが、今度こそ連れていけと五月蠅かったので従者として採用。
まぁ、確かに近くに置くとは言ったしな。とりあえず魔法免許は取得したし新規開発したダイビングギアも使えるのでいいのだが。
また、今回から飛行船展望室のカメラで撮った映像が、王城談話室のスクリーンに映し出されるシステムを導入してみた。
子供の世話で残りたいが冒険もしたいという嫁のわがままにより急遽ランティスが徹夜して設置してくれた。
これの凄いところは、うちの嫁の場合は必要なら転移出来るので本当に探検に参加できるってことだ。
* * *
「いま、歴史上かつてない冒険が、ここ神聖アリス教国から始まろうとしています。その一部始終を首都アリスから第三王妃のセシル・アリステリアスがお届けしたいと思います」
セシル、ノリノリだな。
今回は大陸連絡評議会公認ではないので、こっそり出発しようかと思ったら許してもらえなかった。
各国代表から、どうしても同時配信してくれと懇願された。まぁ、気持ちも分かるんだけど、殆ど何も出ませんでしたとかになりそうなんだけど。
とりあえず、出発したら特別なイベントは出来ないので飛行艇の外部映像を送信するだけにした。神聖アリス教国で問題ないように編集して各国に配信することになっている。女神様が現れるシーンとか出せないからな。
「本当に伝説の大陸アトラは存在したのでしょうか? そして、そこに誰が住んでいたのでしょうか? 海底都市に息づくのは果たして希望か幻か? それは私たちの未来に関わるのでしょうか? 謎は謎を呼び期待は大きく膨れていきます」
何を言っているのかよく分からないことを言い出したので、俺は発進の合図を出した。ネタ切れだよな?
上部展望室が神魔動飛行艇になってから、指令室はこの展望室になった。もちろん、マッハ神魔動飛行船の操縦席は別にある。だが、この展望室にいる俺が全体の指揮を執るからだ。
* * *
飛行船は何事もなく首都アリスを発進した。
今回は、中継地点の都市国家モニまででも六千キロメートルもある。なので、最初からマッハ二・〇で行く。巡航速で六時間も飛んだら飽きるからな。
「マスター、ラームの木に異常ありません。とても美味しく生ってました」とミリィが報告してきた。
「おまえ、点検に行って食ってくるなよ~っ」飛行艇には疑似セルー島BOXが置いてあって、ラームの木が植えてある。
「いえ、お食事の時間でしたので」
「いつもお食事の時間なのか?」
「ち、違いますよマスター。お食事の時間か、おやつの時間です」
「そ、そうなんだ。どう違うんだ?」
「お食事はラームとマスターの食事を一口。おやつは、ラームとお茶とクッキーです」
「わかった。じゃあ……」
「これから、マスターとお食事です」だよな。
ラームについては、ラームジュースを沢山用意してあるのでラームの木は必要ないとも言えるのだがミリィはラームの木が見えないと不安なのだそうだ。
それはあるだろうな。長年、ラームの木がある場所でしか生活してないんだから。
* * *
飛行船は順調に飛んで、おやつの時間には南北大陸を遠望するまでに近づいた。
「そう、おやつと言えば、この辺にズワイガニが沢山いたよな」
「おお、食べるのである!」何故かいる女神隊。
「じゃ、獲ってこう」
そろそろ、都市国家モニなので、下降してカニをお土産にしよう。
南北大陸といえば、まずパルス王国なのだが、今回は二人の王妃がご懐妊だそうなので遠慮した。うまく行っているようで何よりだ。
* * *
で、都市国家モニ王国に到着したのだが……。
「リュウジ殿。ぜひ私も連れて行って下され」
などとモニ王国の第一王子マッセム・モニが言い出した。前々回の南北大陸一周旅行に随伴できなかったのが残念だったらしい。
「この度は、単なる訪問ではなく冒険と聞く。是非私も同道してリュウジ殿のお役にたちたいと思う」
「いや、これは危険な旅なので、第一王子をお連れするのは……」
「しかし、メンバーは王様ばかりではないですか、むしろ王子のほうが気安く行けます」
「ん~っ」どうしようかなぁ。女神隊とかいるからなぁ。
「ふむ。王子、驚くようなことの連続でも耐えられる自信がおありかな?」俺が迷っていたら、ナエル王が謎めいたことを言った。
「勿論です、むしろ望むところです」
まぁ、アトラ大陸についてはそうなんだけど。パルス王国の王様達から何か聞いてないのかな?
まぁ、打ち明けるか、ほっといて思考停止するに任せるかのどちらかなんだが。若いから順応できるか? でも若いからこそ女神様にのぼせ上がるってこともあるからな。
ー もういんじゃない? バラしちゃいましょうよ。
ー うん、まぁ、もう面倒くさいしなぁ。
ー 神の国を復興するときにバラすのは逆に面倒よ。
ー それもそうだな。
「わかった。その代わり、泣き言は聞かないぞ」
「ほんとうか! 感謝しますリュウジ殿」とマッセム王子。
横でナエル王が憐れむような目で見ている。もちろんピステルはニヤニヤしている。
「発進したあと、私から話しましょう」ナエル王、いたわるようにマッセム王子を見て言った。
とりあえず、発進してからなら諦めもつくだろうな。うん。
* * *
「おお、今朝もラームは美味いなぁ。朝一番はラームに限る」
翌朝、上部展望室で朝日に輝く大海原を見つつ、疑似セルー島BOXからもぎ取ったばかりのラームの実を頬張り俺は言った。
横では、事実を打ち明けられ一睡もできずにぐったりしているマッセル王子の姿があった。
「鬼ね」
「鬼だわ」
「鬼なのである」
「鬼のリュウジ怖い」
「そこっ、誤解を招くようなことを言わない。ってか、朝からいきなり顕現して、王子にショック与えておいて、何言ってるんですか」
「あら、でも美しいショックよ。朝日に輝く女神たちよ」アリス、何言ってんの?
「おお、確かに絵になる」後から来たピステルが言う。
うん、ショックを与えてるほうは美しいかも。でも、受け取るほうは美しくない。
「お分かりですね。変に気を使う必要はありません。普通にしていれば大丈夫です」
マッセム王子の隣で、事情を説明したナエル王がフォローしている。
「神様のような方だとは思っていたのですよ私も。でも『ような』と『である』の間の差がこれほどあるとは……私は初めて知りました」
「今のうちに慣れておいて下さい」
「慣れて……ですか?」
「はい。これが、日常になります」
「???」
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