異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

文字の大きさ
166 / 189
惑星フォトス編

166 ストーン神国と惑星フォトス

しおりを挟む
 後宮が何かと忙しくなってから俺はあまり気にかけていなかったのだが、王城の隣では大陸連絡評議会本部の建設が始まっていた。

 王城を挟んで教会とは反対側だ。何も神聖アリス教国に置かなくてもいいのだが、俺が発起人だし女神湯という神界の出島があるしということで、大陸連絡評議会本部を置くには絶好の場所だと押し切られた。
 大陸連絡評議会本部には『緊急救助隊』を始め各種プロジェクトの拠点を置くことになる。今だと、近代的上下水道システムや送電の代わりとなる送魔システムなどのプロジェクトが入る予定だ。

 ただ、この本部にストーン神国復興プロジェクトを含めるかどうかが悩ましいところだ。もともとは俺の私的プロジェクトだが、大変なところは終わったので今後の開発は各国に開放しようと思ったのだ。

「まず、ストーン砂漠については既に大河が引かれ緑化も進んでいるとのこと。つまり広大で未開発の土地が生まれたわけですが、この土地の利用を各国に開放してくれるということです」

 議長のナエル王が大まかな状況を説明してくれた。

「国の事情により違ってくると思われますが、繁栄著しいこの世界にあっては参加を希望する国も多いのでないかと思っています」

 ぶっちゃけ、早い者勝ちである。ただ、自国から遠く離れた国の参加があるかどうかだ。

「確かにそうですね。それ以上に、いままで複数の国家での開発など経験がありません。この経験は将来のために有益だと思います」

 ピステルは賛同してくれるらしい。なかなか鋭い視点だ。

「ただ、聞くところによると女神様が直接関与して開発されていたとのこと、私たち人間が参加しても良いのでしょうか? その、下手なことは出来ないのでは?」とラーセル法王。

 なるほど、法王は受け継いだ後の責任などを心配しているのかもしれない。敬虔な信者だしな。

「その心配は、あまりないと思います。『ストーン砂漠』そのものは既に大陸連絡評議会に譲ってもらっています。確かに、神界関連の開発も出てくるとは思いますが、それは女神様と協議していくことになると思います」とナエル王。

「おお。ということは、私たちが女神様に直接ご奉仕できるということですか」

 感激するラーセル法王。いや、ご奉仕じゃなくて。まぁ、してもいいけど。

「は、はい。そうですね」ナエル王もちょっと引いている。
「それは、素晴らしい。ならば、ぜひとも参加したい」

 信心深いオキ神国以外でも新興国アブラビ王国も積極的に参加を表明した。
 というか、神界と関わりを持てるのだからどの国も参加したいのが本音だ。神聖アリス教国もそうなのだが、この国は俺が勝手に進めてしまうので別だ。

 まぁ、参加しないからと言って差別などないし大陸連絡評議会に参加してる時点で神界とは関係を持ってるとも言えるのだが、滅亡から回復期を経て繁栄へ向かっている各国が更に上を目指すのは当然といえば当然の流れでもある。
 
  *  *  *

 こうして、ストーン神国の復興計画は大陸連絡評議会の正式なプロジェクトとなった。
 一番大変だった時、女神ケリス&女神コリスが頑張ったからな。もう人間に渡してもいいだろう。
 ただし、政治形態としては大陸連絡評議会配下という事で、ちょっと特殊な国が出来ることになる。俺もどんな国になるのか興味があるところだ。まぁ、女神が見てるから大丈夫か?

「お疲れさん」

 俺は王城執務室でケリス&コリスに大陸連絡評議会の結果を伝えた。

「あっ、はい。あまり大した事してませんけど」とケリス。
「そうか? 大河を作ったり、港を作ったりしたじゃないか」
「そうですね。でも、神化リングで意外とすいすいと出来たので」
「そうよね。神化リングの使い方も上手くなったかも」とコリス。
「ほぉ」

「それとラームジュース!」とケリス。
「うん。美味しいよね!」とコリス。
「そうじゃなくて、細かい作業が捗るのよ」とケリス。
「うん、もちろんそうよ」

 コリスが細かい作業をしたかどうかは知らない。

「コリスって、そろそろ担当神に戻りたいんじゃないか?」

 俺はふと気になって聞いた。

「えっ? いえ、そんなことはありません」
「そのままでいいの?」
「いいということも無いですけど」

「あれ? これって、俺が任命するべきなのか?」
「そうよ。もう、全然分かってないんだから神界のシステム」

 アリスに突っ込まれた。

「あ、ごめん。ん? でも、他の世界とか任されてないけど?」
「ああ、まだ成り立てだからじゃない? 百年もしたら沢山担当させられるわよ」
「っげ。まじが。マズいな、それまでに慣れとかないと。昔の記憶も取り戻したいし」

「そうね。この世界は何とかなっても、他の世界はそうは行かないもの」
「そうだよなぁ」
「ストーン神国どころじゃないな」
「そうね。星一つ渡すわけだから」

「星一つか。ん? そういや、星一つあるじゃん。これ、練習に使うか?」
「あっ」やばいという顔のコリス。
「うん。でも、人がいないからだめよ」とアリス。

「人がいればいいのか?」
「それは、いいんじゃない?」
「住めるのかな?」
「知らない。とりあえず私の管轄じゃないしね」
「惑星フォトスか」
「惑星フォトスよっ」
「惑星フォトスですね!」とケリス。
「わ、惑星フォトスですか~?」とコリス。

 約一名、腰が引けてるし。

「でも、人の居ない星から始めていいのかな?」
「っていうか、この世界の人間が居住したら、アリスの担当になるんじゃないの?」とケリス。

「それは、上位神が決めることでしょ」とアリス。
「ああ、それも俺なんだ」
「当然よ」

「まぁ、じゃあ、試しに開発してみるか? っていうか、それやろうとしたんだよな。たぶん、ストーン神国で」
「そうよね。リベンジよね」
「いや、そんな希望は無いんだけど」

「でも、やる気になれば出来るんじゃない? そんなこと言ってなかった?」
「えっ? そうなんですか~っ」と女神コリス。

 やるとしても百年くらい先の事だと思ってたらしい。

「すぐに出来るよ」
「そんなに、お急ぎにならなくても宜しいのではないでしょうか?」
「なんだよそれ」
「もうちょっとリゾートしてからでも宜しいのでは?」

「リゾート! そうだ、リゾート作るんだった」
「あ、やばい」
「移住じゃなくて、リゾート惑星にしよう。そうしたら、気軽に人を呼べる」
「あああ、あの」

「コリス、リゾート好きだよな!」
「はい」
「ケリスも」
「えっ? 私も?」
「だって、コリスだけじゃ可哀相だろ」
「別に、宜しいのでは?」とケリス。
「ケリス酷い」
「分かったわよ。もう、乗りかかった船よ」

「あ、惑星フォトスまでの船は用意してやるぞ」
「船?」
「うん、たぶんマッハ神魔動飛行船をちょっと改造すれば、そのまま行けると思う。ただ、軌道計算が出来るようにしないとダメだからなぁ。ちょっと待て」
「はい、何時までも待ちますので、ごゆるりと」
「速攻で造ろう」

 ということで、ストーン神国の宇宙港整備が決定された。
 まぁ、人間が行かないなら必要ないんだけど。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...