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#13.5:Challenge.
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(ずいぶん短く切られたなぁ…それにあのナツさんって人はマシンガン過ぎて酷く疲れた…小さい頃のひまわりの話をしろだの、奥さんはどうだの…ボクの蚤の心臓ではキツすぎた…)
真っ白に燃え尽きて、コーナーに座り込んでいるようだったゼ。
それにしても何で自分の家なのに、オートロックのドアを解錠してもらわなければならないのか…初めて自分の家の部屋番号を打ち込み、呼び出しボタンを押す。
「はーい!」
「ボクです、開けてください」
「ボクって、どちら様ですか?」
「パパです、開けてください」
「パパパパ詐欺ですか?私のパパは髪がボサボサなんです」
「いいから早く開けなさいっ!」
「はいはい」
(全く何なんだあの娘は!毎日遊びに来るし、そろそろちゃんと叱った方がいいな)
「ただいま…ひまわり…って、おおっ」
テーブルを見ると、手作りだとすぐに分かる料理が並べられていた。匂いからも食欲を唆られ、胃が『食べさせろ』と要求してきた。
「これ、全部ひまが作ったの?」
「そうだよ!凄いでしょ!簡単な物しかないけどね」
「いや凄いよ…いいお嫁さんになりそうだ…」
「なに?パパは私に早くお嫁に行って欲しいわけ?」
「はぁ?絶対に嫌だね!嫁にはやらん!」
「昭和のお父さんですか?」
「パパは平成生まれだよ」
「屁理屈はいいから早く食べよ!」
回鍋肉、ブロッコリーとミニトマトのマリネ、卵とほうれん草の中華スープ、白いご飯…
外食も含めて、誰かに作ってもらった料理を食べるのは本当に久し振りだった。
「うまい、うまい、うまい…」
「なんか、そんな猫いたよね」
「ンマインマイ」と言いながらご飯を食べる猫の動画を見せてくれた。
(食事中に笑わせないで頂きたい)
「いや~、ホント久しぶりに手料理なんて食べたよ!ありがとう、美味しかった!」
「どういたしまして」と言う娘は、嬉しそうに笑ってくれた。やっぱり笑う顔は彼女によく似ている。
「洗い物もする」と言ってくれたけれど、そこは押し切って一食の恩義と、張り切って洗い物をさせて頂いた。
「パパ、髪が短いのもカッコイイね」
「これだけ短くするのも久しぶりかな…」
「それにさ、初めて…じゃないけど、沖縄で会った時と比べると声も大きくなったって言うか、うるさいとかじゃなくて、話し方も表情明るくなったよね」
確かに、休職中は通院時に主治医と話す程度で、ろくに会話なんてしない。喉にあった違和感みたいなものも、いつの間にか消えていた。
「仕事を休んでると、あまり人と話すこともないからね…ひまのお陰だよ、ありがとう」
「えへへ」
本当にこの子には助けてもらってばかりだった。
再会してから一週間も経たずに、こんなにも『生きていたい』と思わせてくれた。この子の存在があれば、病気も克服して仕事からも逃げずに、真っ当に生きていける気がしていた。
彼女に黙って入学式に行くことは、後ろめたさがあったけれど、この子が望むならと思うと、行かない理由は無かった。
「ねえパパ?これってパパが作ったの?」
娘の指差す先には、あのアルバムの中残されていた、ある写真があった。そこには、オムライスを食べている彼女と娘の姿が写し出されていた。
「あぁそれか…パパが作ったものだよ」
オムライスはボクの担当で、初めて作った時から、彼女が好きな味付けだと喜んでくれた物で、写真はこの子が二歳になった後、初めて作ってあげた時の一枚だった。
「パパ!」
「はいっ?!」
「私にこのオムライスの作り方を教えてっ!」
「いいけど…急にどうした?」
「明日!明日作って!食べたいの!」
「まぁいいけど…」
そういえば、ママがオムライスを作ってくれた記憶は無い。
『これならイケるかもしれない』そう思った私は、目の前にいるcooking dadに弟子入りを懇願したのであった。
*******
クッキングパ…cooking dadの作るオムライスには、ちょっとした特徴があって、チキンライスを炒めた後、その中にダイスカットされたプロセスチーズを混ぜ込むという物だった。
熱でほんのり溶けた物や、固形のまま残っている物もあって、パパ曰く『オムライスはこういうもの』らしい。
半熟卵の上にはケチャップやソースは掛けないこともパパの拘りで、二歳の時以来に作ってもらったというそれは、大袈裟じゃなく『今まで食べたオムライス』の中で、一番美味しかった。
さながら『文化部の厄介者』とか『輸入雑貨の貿易商』になった気持ちだった。…尊敬しています。
教えてもらう中で、半熟の卵を作るのには苦労したけれど、卵に牛乳を混ぜることも初体験で、パパはオムライスを作るだけで『私の知らない世界』をたくさん教えてくれた。
(ママも惚れるわけだ…)
ふと、ママに『同じ女性として』嫉妬してしまったけれど、この人が自分のパパだと思うと鼻が高かった。
真っ白に燃え尽きて、コーナーに座り込んでいるようだったゼ。
それにしても何で自分の家なのに、オートロックのドアを解錠してもらわなければならないのか…初めて自分の家の部屋番号を打ち込み、呼び出しボタンを押す。
「はーい!」
「ボクです、開けてください」
「ボクって、どちら様ですか?」
「パパです、開けてください」
「パパパパ詐欺ですか?私のパパは髪がボサボサなんです」
「いいから早く開けなさいっ!」
「はいはい」
(全く何なんだあの娘は!毎日遊びに来るし、そろそろちゃんと叱った方がいいな)
「ただいま…ひまわり…って、おおっ」
テーブルを見ると、手作りだとすぐに分かる料理が並べられていた。匂いからも食欲を唆られ、胃が『食べさせろ』と要求してきた。
「これ、全部ひまが作ったの?」
「そうだよ!凄いでしょ!簡単な物しかないけどね」
「いや凄いよ…いいお嫁さんになりそうだ…」
「なに?パパは私に早くお嫁に行って欲しいわけ?」
「はぁ?絶対に嫌だね!嫁にはやらん!」
「昭和のお父さんですか?」
「パパは平成生まれだよ」
「屁理屈はいいから早く食べよ!」
回鍋肉、ブロッコリーとミニトマトのマリネ、卵とほうれん草の中華スープ、白いご飯…
外食も含めて、誰かに作ってもらった料理を食べるのは本当に久し振りだった。
「うまい、うまい、うまい…」
「なんか、そんな猫いたよね」
「ンマインマイ」と言いながらご飯を食べる猫の動画を見せてくれた。
(食事中に笑わせないで頂きたい)
「いや~、ホント久しぶりに手料理なんて食べたよ!ありがとう、美味しかった!」
「どういたしまして」と言う娘は、嬉しそうに笑ってくれた。やっぱり笑う顔は彼女によく似ている。
「洗い物もする」と言ってくれたけれど、そこは押し切って一食の恩義と、張り切って洗い物をさせて頂いた。
「パパ、髪が短いのもカッコイイね」
「これだけ短くするのも久しぶりかな…」
「それにさ、初めて…じゃないけど、沖縄で会った時と比べると声も大きくなったって言うか、うるさいとかじゃなくて、話し方も表情明るくなったよね」
確かに、休職中は通院時に主治医と話す程度で、ろくに会話なんてしない。喉にあった違和感みたいなものも、いつの間にか消えていた。
「仕事を休んでると、あまり人と話すこともないからね…ひまのお陰だよ、ありがとう」
「えへへ」
本当にこの子には助けてもらってばかりだった。
再会してから一週間も経たずに、こんなにも『生きていたい』と思わせてくれた。この子の存在があれば、病気も克服して仕事からも逃げずに、真っ当に生きていける気がしていた。
彼女に黙って入学式に行くことは、後ろめたさがあったけれど、この子が望むならと思うと、行かない理由は無かった。
「ねえパパ?これってパパが作ったの?」
娘の指差す先には、あのアルバムの中残されていた、ある写真があった。そこには、オムライスを食べている彼女と娘の姿が写し出されていた。
「あぁそれか…パパが作ったものだよ」
オムライスはボクの担当で、初めて作った時から、彼女が好きな味付けだと喜んでくれた物で、写真はこの子が二歳になった後、初めて作ってあげた時の一枚だった。
「パパ!」
「はいっ?!」
「私にこのオムライスの作り方を教えてっ!」
「いいけど…急にどうした?」
「明日!明日作って!食べたいの!」
「まぁいいけど…」
そういえば、ママがオムライスを作ってくれた記憶は無い。
『これならイケるかもしれない』そう思った私は、目の前にいるcooking dadに弟子入りを懇願したのであった。
*******
クッキングパ…cooking dadの作るオムライスには、ちょっとした特徴があって、チキンライスを炒めた後、その中にダイスカットされたプロセスチーズを混ぜ込むという物だった。
熱でほんのり溶けた物や、固形のまま残っている物もあって、パパ曰く『オムライスはこういうもの』らしい。
半熟卵の上にはケチャップやソースは掛けないこともパパの拘りで、二歳の時以来に作ってもらったというそれは、大袈裟じゃなく『今まで食べたオムライス』の中で、一番美味しかった。
さながら『文化部の厄介者』とか『輸入雑貨の貿易商』になった気持ちだった。…尊敬しています。
教えてもらう中で、半熟の卵を作るのには苦労したけれど、卵に牛乳を混ぜることも初体験で、パパはオムライスを作るだけで『私の知らない世界』をたくさん教えてくれた。
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