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3:拙者、独り立ちするでござる
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こんなところで一人毒を吐いていたってしょうがない。俺は早々にこれからの事に頭を切り替える事にした。
護衛として死ねと言われたからと言って、本当に死ぬわけにはいかない。まずは持ち物の確認だ。所持金や旅の途中で手に入れた宝などを持ち運び管理していたのは俺だが、さっきミリーがすべて持って行ってしまった。あの女は俺と違い心の底からガチ勢なので、殿下が消えて欲しい相手は容赦なく見殺しにするつもりなのだろう……一応、細々とした道具と保存食は残されていたが。
「問題は武器だよなぁ……一応、形だけならあるにはあるが」
現在、俺の手元にあるのはモチズキマルによく似た一振り。サムライという人種は東方以外の人間にとって天使や悪魔並みの伝説的存在らしく、行く先々で王子であるアレン様以上に興味の対象だった。中には刀を触りたがり、勝手に鞘から抜いて振り回そうともしたので、そういう時用に偽物を拵えておいたのだ。『タケミツ』というそうだが、もちろん本当の命のやり取りで使えるわけがない。
「ハッタリにはなるだろうから、一応持っておくか。あとは……」
あらゆる危機的状況のために、親父からサバイバル技術を仕込まれていたから、ジャングルで暮らす事に関してはそれほど悲観はしていない。もっとも、殿下をお守りするために覚えた知識が、当人から追放される事で役立つとは思いもしなかったが。
その日は木の実や狩った獣で飢えを凌ぎ、日が暮れてからは大木に登って休息を取る。仲間がいた時は獣に襲われないために火をおこして交代で寝ずの番をしたものだが、すべてを一人でこなすのはなかなかに不便だ。それに、いきなり孤独の中放り出されてしまった現状は、強がってはいても心にくるものがあった。
ワガママで理不尽でめんどくさい――そんな男でも長年仕えた主である。要らないと否定されて何とも思わないわけじゃない。
(親父は、どう思うだろう……)
サムライは命を懸けてでも主を守る者だというのが常日頃からの口癖だった先代イェモン=ザクリア。名誉だと思ってくれるだろうか……それは殿下の伝え方次第だと思うが、あの物言いから察するに、戻ろうものならミリーあたりに消されそうなので、殿下の言う通り自分は死んだものとして祖国は忘れる事にした。
ウオオォォン……
「!?」
うとうとしていたところに、地響きのような唸り声がジャングル中にこだまして飛び起きる。ここを支配していた魔物は先程対峙したはず……だがこの気配、恐らく強さはそいつとそう変わらない。
「何が起きているんだ……?」
空が白み始め、夜明けが近いのだと知ると、俺は声がした方向を特定し様子を見に行く事にした。
護衛として死ねと言われたからと言って、本当に死ぬわけにはいかない。まずは持ち物の確認だ。所持金や旅の途中で手に入れた宝などを持ち運び管理していたのは俺だが、さっきミリーがすべて持って行ってしまった。あの女は俺と違い心の底からガチ勢なので、殿下が消えて欲しい相手は容赦なく見殺しにするつもりなのだろう……一応、細々とした道具と保存食は残されていたが。
「問題は武器だよなぁ……一応、形だけならあるにはあるが」
現在、俺の手元にあるのはモチズキマルによく似た一振り。サムライという人種は東方以外の人間にとって天使や悪魔並みの伝説的存在らしく、行く先々で王子であるアレン様以上に興味の対象だった。中には刀を触りたがり、勝手に鞘から抜いて振り回そうともしたので、そういう時用に偽物を拵えておいたのだ。『タケミツ』というそうだが、もちろん本当の命のやり取りで使えるわけがない。
「ハッタリにはなるだろうから、一応持っておくか。あとは……」
あらゆる危機的状況のために、親父からサバイバル技術を仕込まれていたから、ジャングルで暮らす事に関してはそれほど悲観はしていない。もっとも、殿下をお守りするために覚えた知識が、当人から追放される事で役立つとは思いもしなかったが。
その日は木の実や狩った獣で飢えを凌ぎ、日が暮れてからは大木に登って休息を取る。仲間がいた時は獣に襲われないために火をおこして交代で寝ずの番をしたものだが、すべてを一人でこなすのはなかなかに不便だ。それに、いきなり孤独の中放り出されてしまった現状は、強がってはいても心にくるものがあった。
ワガママで理不尽でめんどくさい――そんな男でも長年仕えた主である。要らないと否定されて何とも思わないわけじゃない。
(親父は、どう思うだろう……)
サムライは命を懸けてでも主を守る者だというのが常日頃からの口癖だった先代イェモン=ザクリア。名誉だと思ってくれるだろうか……それは殿下の伝え方次第だと思うが、あの物言いから察するに、戻ろうものならミリーあたりに消されそうなので、殿下の言う通り自分は死んだものとして祖国は忘れる事にした。
ウオオォォン……
「!?」
うとうとしていたところに、地響きのような唸り声がジャングル中にこだまして飛び起きる。ここを支配していた魔物は先程対峙したはず……だがこの気配、恐らく強さはそいつとそう変わらない。
「何が起きているんだ……?」
空が白み始め、夜明けが近いのだと知ると、俺は声がした方向を特定し様子を見に行く事にした。
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