妖刀浪人と生贄聖女~追放されたサムライは新たな主を見つけたので、復帰命令は御免蒙る!~

白羽鳥(扇つくも)

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2:拙者、サムライでござる

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 ヴォー王国建国時に多大な貢献をした初代イェモン=ザクリアは、サムライだったという。東方の島国で貴人に仕える護衛の呼称らしく、十三代目にあたる俺の先祖はつまり東方出身という事になる。爵位としては辺境伯で、歴代の聖騎士団長を務めてはきたが、御先祖様方は親父に至るまでサムライの子孫である事をそれはもう誇りに思っていた。

「よいか息子よ、サムライとは尊き御方を命を賭して守る者なのだ。主を守る一本の刃となれ」

 そう言っては厳しい修行と、王家を守護する意味を滾々と刷り込まれる日々。主として俺に宛がわれたのは、身分の低い側妃を母に持つ第三王子アレン様だった。王位継承権は上に二人もいるのだが、最も寵愛を受けている側妃の子とあって、番狂わせの可能性もない事はないのが難しいところだ。それに実際、アレン様は野心も強かった。

「兄上はどちらも上に立つ者に向いていない。第一王子は気が弱く、第二王子は粗暴だ。そうは思わないか」

 二人きりの時、こうやって他者を貶める言葉を漏らす事がある。どう答えていいのか分からず親父に相談したところ、「兄王子周辺の情報を探り、気付いた事があれば殿下に報告しろ」とだけ言われた。回りくどい言い方をされても、頭がいいとは言えない俺にはいまいち理解できない。一応納得はしておいたものの、めんどくさいなとは思った……口には出さなかったが。


 そうこうしているうちに、殿下に婚約者ができた。お相手は隣国リィン王国の王弟殿下の娘――つまり国王の姪だが、王女がいないため実質王子たちは妹同然に可愛がっていると聞く。上二人に何事もない限り王太子になれない殿下は、このまま行けば隣国の大公家の婿養子となる。側近候補の俺も殿下に同行し、婚約者の御令嬢に挨拶する事がたまにあった。
 婚約者クリスティーナ様はお人形のように可愛らしい人だったが、当の殿下からは「世間知らず」だの「箱入り」だの愚痴を聞かされた。

 ある時、そのクリスティーナ様が城の中庭で一人泣いているのを見かけた。

「どうかした……でござるか?」
「ねこが……木から下りられなくなっちゃったの」

 そう言って指差す先には大木の枝にしがみついて震える仔猫の姿。あんな高さまでどうやって登ったのかと聞けば、アレン様が部屋の窓からぎりぎり届く枝に追い出してしまったのだとか。何をやっているのかと呆れるが、クリスティーナ様がいくら懇願しても部屋に入れてくれない以上、部下の自分が行ってもなおさら聞き入れてくれないだろう。

(かと言って仔猫が落ちて怪我でもすれば、クリスティーナ様はアレン様を許さない。二国間の同盟関係のためにも、御二人には良好な仲でいてもらわねば)

 俺はスルスル木に登ると仔猫を助け、お礼を言ってくるクリスティーナ様には「拙者も猫が好きなので、お気になさらず」とだけ言って立ち去った。あくまで殿下の部下としてフォローしたつもりだったのだが、どういうわけか殿下から余計な事をするなと怒られた。


 今回追放された状況は、あの時と似ている……と言うより、俺が知らず知らずのうちに空気を読まずにやらかした事の積み重ねの結果なのだろう。
 何も考えず、ただ殿下から命令された事を貝のように黙って遂行すればこんな事にならなかったのかもしれない。

(理不尽に考える事自体、向いてなかったんだろうな……サムライには)

 そうは言ってもなりたくてなったわけでもないし、他ならぬ主からクビを言い渡された以上、しがみ付く必要性もない。アレン殿下の護衛イェモンは死んだと言うなら、受け入れようじゃないか。

「こっちこそ、ワガママ王子のお守りから解放されて清々したよ、バーカ!!」

 とてもサムライとは思えない独り言を全力で叫ぶ事で、一連の追放劇の幕とした。

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