12 / 99
第一章 不遇の伯爵令嬢編
受け取って
しおりを挟む
ベアトリス様は、口元に微笑みさえ浮かべていた。けれどその眼差しの色は、あまりにも見覚えがあった。
(ああ、この人は私と同じ……諦めているんだ)
こちらに視線を向けたベアトリス様の目が、大きく見開かれる。
「…貴女ってお優しいのね。他人のために涙を流せるなんて」
「違います……私はそんな、殊勝な人間じゃありません」
言われて、また頬が濡れていた事に気付いた。
サラに奪われ続けて、いつしか泣く事すら面倒になってしまっていたのに、直前までチャールズ様に泣かされていたものだから、涙腺が緩くなっているだけだ。
悲しい…悔しい……それ以上に、腹立たしい。チャールズ様よりも殿下よりも、話を聞いている事しか出来ない自分が。
「ほら、お洟が出ていますからこれをお使いになって。淑女は身嗜みに気を配らないと」
「あ゛、あ゛り゛がどう゛ござい゛ま゛ず……グスッ」
自分のハンカチを探すが、カーク殿下に小瓶を包むために持って行かれたのを思い出し、ベアトリス様が差し出したのをありがたくお借りする。ハンカチには真っ赤な薔薇の刺繍がしてあった。持ち物まで高貴な彼女らしいな。
「それ、私が初めて完成させた時の物なの。出来はまだ拙いから恥ずかしいけれど、よかったらもらって下さる?」
なんと、この出来で初めて? 私とは雲泥の差だ。これは絶対サラに盗られないようにしないと。
ベアトリス様の心遣いに感激していると、呆れた声がせっかくの空気をぶち壊してきた。
「お涙頂戴は、もう済んだかな? 私が言うのも何だけど…君、他人の事情に首を突っ込んでいる場合じゃないだろう。ただでさえ面倒事に巻き込まれているんだから」
「…………」
「巻き込んだ張本人が言えた事じゃありませんわね」
私は半目でじとっと声の主を見遣る。ベアトリス様のおっしゃる通り。私が言うのも何だけどって、本当にあんたが言うなって話だ。
…今なら一発くらい殴っても許してもらえるかしら? 女性関係の数だけ修羅場も潜ってそうだし、穏便に済ますためにビンタを喰らうのにも慣れているだろう。生憎な事に私は非力で、思いっきり振りかぶっても「ペチッ」が関の山だけど。
「女の子を泣かせて、このままごめんの一言で済ますおつもり?」
「まさか、後日ちゃんとした分は用意するさ。
さっきは本当に悪かったよ。でも、君だっていい思いしただろ? 今日のところはこれしか出来ないけど、受け取ってくれ」
良い笑顔でぎゅっと手を握りしめてきたので、広げてみれば。
――キャンディーが一個。
…舐められてるなあ。
「これは素敵なプレゼントを。ぜひお返しをさせて下さい」
普段は苦手な愛想笑いが、自然に出た。背後からベアトリス様の視線を感じたので、ダメ元で手を後ろに回して合図を送ってみる。
「いいよ、そんな気を使……ぐべっ!!」
バキャッ!!
チャールズ様の美しいお顔に、ベアトリス様からお借りした扇子がヒットする。さすがに歯を折るなんて芸当は無理だが、金具が掠ったのか唇から血を流していた。
「愛しのベアトリス様との(間接)キスです。お受け取りになって」
「……どうも」
予想外だったのか、無理矢理笑みを取り繕うが、引き攣ってしまっている。
あー、ほんの少しだけ溜飲が下がった。
扇子の方は、パッキリ折れていた。私はそれを、ベアトリス様にお返しする……これ一本で一体いくらするんだろう。
「弁償致しますわ」
「面白いものが見れましたので、見物料としてそれも差し上げます」
扇子を失ったベアトリス様は、代わりに手で口を覆って含み笑いしている。楽しんで頂けて何より。
「それでは、部外者はこの辺で去りますので。ごきげんよう」
ぺこりとお辞儀してドアに手をかけると、彼女は見送りについてきた。
「貴女には借りが出来たわね」
「そんな、私は何も……結局、ベアトリス様への謝罪も引き出せませんでしたし」
殴ってやったけど、あれだって私個人の鬱憤晴らしでしかない。カーク殿下に捨てられ、婚約が破棄される未来が見えてしまったベアトリス様は、これからどうするのだろう。気になって仕方がないが、悔しい事にチャールズ様の言う通り、私は他人でしかない。
「心配は無用よ。代わりに泣いてくれる方がいたから、私は平気……
言ったでしょう? このまま大人しく『悪役令嬢』は引き受けないと。まったく……大体、私なしでどうやって王太子候補でいるおつもりかしら」
そう、カーク殿下は第二王子。王太子候補として有力なのは、第一王子が病弱なのとローズ侯爵家の後ろ盾があるからだ。娘を穢されれば侯爵だって黙っていないだろうし、一体何を考えているのか……まあ、私には関係がない。
もう一度頭を下げて部屋を出る直前、ベアトリス様はそっと耳打ちする。
「お祖母様には貴女たちに関わるなと言われてきたけれど……困った事があれば力になるわ。だって私たちは……」
ボソボソと告げられた事実に、思わず彼女を凝視する。
「ご存じだったんですか」
「まあ、これでも王妃候補ですし、身内の事くらいは…ね? では機会があれば、また」
パタン、とドアが閉められ、私は衛兵に馬車まで案内された。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「お帰りなさいませ、お嬢様」
屋敷に戻ると、メイドのクララが玄関口で待っていた。使用人はほぼすべてがサラの味方で私は無視されているので、出迎えも彼女一人だ。
私にもちゃんと護衛か、エスコートがついていれば今頃……いや、考えても無駄だ。今は無事帰って来れた事だけ喜んでおこう。
「すぐに入浴の支度を――そのドレスはどうされました?」
「ああこれ? 汚してしまったから借りたのよ。洗濯しておいて」
ドレスが替わっている事に気付いたクララから目を逸らしながら、汚れ物の袋を差し出す。出来れば父に見つかる前に部屋に戻りたい。
「お帰りなさい、お姉様!」
そこへバタバタとサラが階段を駆け下りてきた。…よりによって面倒な。
「パーティーは楽しかった? いいなぁ、私も行きたかったわ。ルーカスにエスコートしてもらって、ダンスを踊るの……あら? お姉様、ドレス…」
「そう言えば、お土産があるの!」
サラに突っ込まれる前に言葉を遮ると、私はポケットからベアトリス様に戴いた物を取り出す。
「なぁに、それ? 折れた扇子に使用済みハンカチって……ゴミじゃない。
あと一つは……飴玉?」
「それは、チャールズ様から」
「えっ! チャールズ様って、カーク殿下の双鷹の従者! 超絶美形って噂の!? どうしてお姉様なんかに!」
お姉様『なんか』で悪かったわね。あと婚約者がいるのに目、キラキラさせて……少しは自重してほしい。
「ねえねえ! チャールズ様ってどんな御方?」
「噂に聞いていた通りよ」
色んな意味で。
サラは白い包みのキャンディーを色んな角度から眺めている。市販のキャンディーはもっとカラフルなイメージあったんだけど、これ、どこのメーカーかしら?
「お姉様、チャールズ様にお声をかけていただいたの! 一体どうゆう経緯で? ひょっとして、エスコート役がいないのを同情して踊ってくださったのかしら」
「踊ってないわ」
あれが躍りだなんて下品なジョークを言うつもりはない。
「ざっくり言えば、犬に噛まれたお詫びとでも言うか……」
「パーティー会場に犬がいたの!? それでお姉様、ドレスが……まあいいわ。これ、もらっていい?」
あんな説明で納得してくれたらしい。まあ私とチャールズ様にロマンスが始まるなんて、天地が引っ繰り返ってもないでしょうからね。犬に噛まれた、それ以上でもそれ以下でもない。
「こんなのが良いの? 私は別にいらないけど」
「ゴミなんかより、チャールズ様からの愛が欲しいの」
飴玉一個って、安い愛だな。そしてルーカスの立場は……
突っ込みたい所は多かったが、私はもう疲労が限界に来ていて、一刻も早く部屋に戻りたかった。
「じゃあ、あげるわ。私はもう休むから……おやすみ、サラ」
後ろで「うえっ、何これ甘くない!」と漏らしている妹をその場に残し、私はクララにお風呂に入れてもらった。
ネグリジェに着替えた後、習慣にしている日記帳を開く。生きていた頃の母から譲り受けた物だ。新しいページにペンを走らせるが……極度の眠気で頭がろくに働かない。
あまりにも衝撃的な事が次から次に起きるものだから、呆気に取られるばかりで、状況に流される以外何も出来なかった。
慎ましく暮らしていれば遭遇し得ない出来事で、これらに比べればルーカスに婚約破棄されてエスコートもなしで壁の花になっていた事なんて、どうでもよくなってしまう。
(…まあ、出来れば彼等には二度と関わりたくないわね)
双鷹の儀において美しい主従愛を見せた二人がクズだった事には、少なからずショックを受けた。五年前の私の感動を返してほしい。唯一僥倖と呼べるのはベアトリス様と思わぬ縁が出来た事だが、今はただ何も考えず、泥のように眠りたい。今日はひたすら疲れた。疲れてしまった。
私は書き進めるのを諦め、パタンと日記帳を閉じた。
(ベアトリス様のご厚意は嬉しいけれど、お言葉だけありがたく頂戴します。
さようなら、王子様御一行。私はトラブルとは無縁にひっそり生きていきます)
私は毛布の中で祈ると、意識が闇に沈んでいった。
けれど、そんな私を嘲笑うかのように、事態は急展開していくのだった。
(ああ、この人は私と同じ……諦めているんだ)
こちらに視線を向けたベアトリス様の目が、大きく見開かれる。
「…貴女ってお優しいのね。他人のために涙を流せるなんて」
「違います……私はそんな、殊勝な人間じゃありません」
言われて、また頬が濡れていた事に気付いた。
サラに奪われ続けて、いつしか泣く事すら面倒になってしまっていたのに、直前までチャールズ様に泣かされていたものだから、涙腺が緩くなっているだけだ。
悲しい…悔しい……それ以上に、腹立たしい。チャールズ様よりも殿下よりも、話を聞いている事しか出来ない自分が。
「ほら、お洟が出ていますからこれをお使いになって。淑女は身嗜みに気を配らないと」
「あ゛、あ゛り゛がどう゛ござい゛ま゛ず……グスッ」
自分のハンカチを探すが、カーク殿下に小瓶を包むために持って行かれたのを思い出し、ベアトリス様が差し出したのをありがたくお借りする。ハンカチには真っ赤な薔薇の刺繍がしてあった。持ち物まで高貴な彼女らしいな。
「それ、私が初めて完成させた時の物なの。出来はまだ拙いから恥ずかしいけれど、よかったらもらって下さる?」
なんと、この出来で初めて? 私とは雲泥の差だ。これは絶対サラに盗られないようにしないと。
ベアトリス様の心遣いに感激していると、呆れた声がせっかくの空気をぶち壊してきた。
「お涙頂戴は、もう済んだかな? 私が言うのも何だけど…君、他人の事情に首を突っ込んでいる場合じゃないだろう。ただでさえ面倒事に巻き込まれているんだから」
「…………」
「巻き込んだ張本人が言えた事じゃありませんわね」
私は半目でじとっと声の主を見遣る。ベアトリス様のおっしゃる通り。私が言うのも何だけどって、本当にあんたが言うなって話だ。
…今なら一発くらい殴っても許してもらえるかしら? 女性関係の数だけ修羅場も潜ってそうだし、穏便に済ますためにビンタを喰らうのにも慣れているだろう。生憎な事に私は非力で、思いっきり振りかぶっても「ペチッ」が関の山だけど。
「女の子を泣かせて、このままごめんの一言で済ますおつもり?」
「まさか、後日ちゃんとした分は用意するさ。
さっきは本当に悪かったよ。でも、君だっていい思いしただろ? 今日のところはこれしか出来ないけど、受け取ってくれ」
良い笑顔でぎゅっと手を握りしめてきたので、広げてみれば。
――キャンディーが一個。
…舐められてるなあ。
「これは素敵なプレゼントを。ぜひお返しをさせて下さい」
普段は苦手な愛想笑いが、自然に出た。背後からベアトリス様の視線を感じたので、ダメ元で手を後ろに回して合図を送ってみる。
「いいよ、そんな気を使……ぐべっ!!」
バキャッ!!
チャールズ様の美しいお顔に、ベアトリス様からお借りした扇子がヒットする。さすがに歯を折るなんて芸当は無理だが、金具が掠ったのか唇から血を流していた。
「愛しのベアトリス様との(間接)キスです。お受け取りになって」
「……どうも」
予想外だったのか、無理矢理笑みを取り繕うが、引き攣ってしまっている。
あー、ほんの少しだけ溜飲が下がった。
扇子の方は、パッキリ折れていた。私はそれを、ベアトリス様にお返しする……これ一本で一体いくらするんだろう。
「弁償致しますわ」
「面白いものが見れましたので、見物料としてそれも差し上げます」
扇子を失ったベアトリス様は、代わりに手で口を覆って含み笑いしている。楽しんで頂けて何より。
「それでは、部外者はこの辺で去りますので。ごきげんよう」
ぺこりとお辞儀してドアに手をかけると、彼女は見送りについてきた。
「貴女には借りが出来たわね」
「そんな、私は何も……結局、ベアトリス様への謝罪も引き出せませんでしたし」
殴ってやったけど、あれだって私個人の鬱憤晴らしでしかない。カーク殿下に捨てられ、婚約が破棄される未来が見えてしまったベアトリス様は、これからどうするのだろう。気になって仕方がないが、悔しい事にチャールズ様の言う通り、私は他人でしかない。
「心配は無用よ。代わりに泣いてくれる方がいたから、私は平気……
言ったでしょう? このまま大人しく『悪役令嬢』は引き受けないと。まったく……大体、私なしでどうやって王太子候補でいるおつもりかしら」
そう、カーク殿下は第二王子。王太子候補として有力なのは、第一王子が病弱なのとローズ侯爵家の後ろ盾があるからだ。娘を穢されれば侯爵だって黙っていないだろうし、一体何を考えているのか……まあ、私には関係がない。
もう一度頭を下げて部屋を出る直前、ベアトリス様はそっと耳打ちする。
「お祖母様には貴女たちに関わるなと言われてきたけれど……困った事があれば力になるわ。だって私たちは……」
ボソボソと告げられた事実に、思わず彼女を凝視する。
「ご存じだったんですか」
「まあ、これでも王妃候補ですし、身内の事くらいは…ね? では機会があれば、また」
パタン、とドアが閉められ、私は衛兵に馬車まで案内された。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「お帰りなさいませ、お嬢様」
屋敷に戻ると、メイドのクララが玄関口で待っていた。使用人はほぼすべてがサラの味方で私は無視されているので、出迎えも彼女一人だ。
私にもちゃんと護衛か、エスコートがついていれば今頃……いや、考えても無駄だ。今は無事帰って来れた事だけ喜んでおこう。
「すぐに入浴の支度を――そのドレスはどうされました?」
「ああこれ? 汚してしまったから借りたのよ。洗濯しておいて」
ドレスが替わっている事に気付いたクララから目を逸らしながら、汚れ物の袋を差し出す。出来れば父に見つかる前に部屋に戻りたい。
「お帰りなさい、お姉様!」
そこへバタバタとサラが階段を駆け下りてきた。…よりによって面倒な。
「パーティーは楽しかった? いいなぁ、私も行きたかったわ。ルーカスにエスコートしてもらって、ダンスを踊るの……あら? お姉様、ドレス…」
「そう言えば、お土産があるの!」
サラに突っ込まれる前に言葉を遮ると、私はポケットからベアトリス様に戴いた物を取り出す。
「なぁに、それ? 折れた扇子に使用済みハンカチって……ゴミじゃない。
あと一つは……飴玉?」
「それは、チャールズ様から」
「えっ! チャールズ様って、カーク殿下の双鷹の従者! 超絶美形って噂の!? どうしてお姉様なんかに!」
お姉様『なんか』で悪かったわね。あと婚約者がいるのに目、キラキラさせて……少しは自重してほしい。
「ねえねえ! チャールズ様ってどんな御方?」
「噂に聞いていた通りよ」
色んな意味で。
サラは白い包みのキャンディーを色んな角度から眺めている。市販のキャンディーはもっとカラフルなイメージあったんだけど、これ、どこのメーカーかしら?
「お姉様、チャールズ様にお声をかけていただいたの! 一体どうゆう経緯で? ひょっとして、エスコート役がいないのを同情して踊ってくださったのかしら」
「踊ってないわ」
あれが躍りだなんて下品なジョークを言うつもりはない。
「ざっくり言えば、犬に噛まれたお詫びとでも言うか……」
「パーティー会場に犬がいたの!? それでお姉様、ドレスが……まあいいわ。これ、もらっていい?」
あんな説明で納得してくれたらしい。まあ私とチャールズ様にロマンスが始まるなんて、天地が引っ繰り返ってもないでしょうからね。犬に噛まれた、それ以上でもそれ以下でもない。
「こんなのが良いの? 私は別にいらないけど」
「ゴミなんかより、チャールズ様からの愛が欲しいの」
飴玉一個って、安い愛だな。そしてルーカスの立場は……
突っ込みたい所は多かったが、私はもう疲労が限界に来ていて、一刻も早く部屋に戻りたかった。
「じゃあ、あげるわ。私はもう休むから……おやすみ、サラ」
後ろで「うえっ、何これ甘くない!」と漏らしている妹をその場に残し、私はクララにお風呂に入れてもらった。
ネグリジェに着替えた後、習慣にしている日記帳を開く。生きていた頃の母から譲り受けた物だ。新しいページにペンを走らせるが……極度の眠気で頭がろくに働かない。
あまりにも衝撃的な事が次から次に起きるものだから、呆気に取られるばかりで、状況に流される以外何も出来なかった。
慎ましく暮らしていれば遭遇し得ない出来事で、これらに比べればルーカスに婚約破棄されてエスコートもなしで壁の花になっていた事なんて、どうでもよくなってしまう。
(…まあ、出来れば彼等には二度と関わりたくないわね)
双鷹の儀において美しい主従愛を見せた二人がクズだった事には、少なからずショックを受けた。五年前の私の感動を返してほしい。唯一僥倖と呼べるのはベアトリス様と思わぬ縁が出来た事だが、今はただ何も考えず、泥のように眠りたい。今日はひたすら疲れた。疲れてしまった。
私は書き進めるのを諦め、パタンと日記帳を閉じた。
(ベアトリス様のご厚意は嬉しいけれど、お言葉だけありがたく頂戴します。
さようなら、王子様御一行。私はトラブルとは無縁にひっそり生きていきます)
私は毛布の中で祈ると、意識が闇に沈んでいった。
けれど、そんな私を嘲笑うかのように、事態は急展開していくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた
せいめ
恋愛
伯爵令嬢のフローラは、夜会で婚約者のレイモンドと義妹のリリアンが抱き合う姿を見てしまった。
大好きだったレイモンドの裏切りを知りショックを受けるフローラ。
三ヶ月後には結婚式なのに、このままあの方と結婚していいの?
深く傷付いたフローラは散々悩んだ挙句、その場に偶然居合わせた公爵令息や親友の力を借り、ざまぁして逃げ出すことにしたのであった。
ご都合主義です。
誤字脱字、申し訳ありません。
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
美しく才能あふれる侯爵令嬢ジェニエルは、幼い頃から王子セオドールの婚約者として約束され、完璧な王妃教育を受けてきた。20歳で結婚した二人だったが、3年経っても子供に恵まれず、彼女には「問題がある」という噂が広がりはじめる始末。
そんな中、セオドールが「オリヴィア」という女性を王宮に連れてきたことで、夫婦の関係は一変し始める。
※改定、追加や修正を予告なくする場合がございます。ご了承ください。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる