もう誰にも奪わせない

白羽鳥(扇つくも)

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第一章 不遇の伯爵令嬢編

幕間②(sideクララ)

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 私は今日も花を売る。
 この身はいつでも小綺麗に。
 だけど中身はもうボロボロ。
 時化しけてちゃ売れない。
 だから隠して今日も笑顔。
 明日も、明日は笑えるのかな?
 信じて今日も花を売る。
 安い安いは値段か矜持か。
 高い高いは出費と目標。
 お客に聞く夢どんな夢?
 いつかは私も見られるのかな。
 花売り娘は夢を売る。

「……変な歌」
「わぁ、びっくりした! あら可愛いお嬢さん。一輪いかが?」
「私、お世辞は大っ嫌いなの。正直なところはどうなのよ」
「うーん、花売り娘の私より辛気臭いってどうなのかしら。貴族にもそれなりに苦労があるのね」
「…本当に正直に言うとは思わなかったわ」
「もっ申し訳ねえですだ~!」
「(訛った…)こちらから頼んだから、別にいいわ。花を籠ごと頂戴」
「は……はぇ??」

 これが私と、アイシャお嬢様との出会いだった。お嬢様はそれから時々、お忍びで通うようになった。


「今日は、貴女の身の上話を買うわ」
「はあ……買う、ですか。お金を出すほどの事じゃねえですけど」

 私は語った。両親を亡くし、たくさんの兄弟たちを育てていくために身を売って暮らしている事。お客は煌びやかな貴族もいれば、破落戸ごろつきに人生に疲れた兵もいて、悲喜交々な話を聞いてあげるのが仕事なのだと。

「……ひょっとして私、貴女の商売の邪魔しているかしら」
「そんな事ねえですだ。アイシャ様はなかなか気前のいいお客だし、何よりお喋りだけだから体に負担もかからねえし」
「…………」

 お嬢様は何事か思案していたが、やがていつものように花を買って帰った。



「今日は、貴女自身を買うわ。私の屋敷でメイドになってもらうから、荷物をまとめなさい」
「はえぇ???」

 話によると、既に雇い主に話を付けて、借金も肩代わりしてくれたのだとか。

「そ、そんな見ず知らずの私のために大金を!」
「母の遺産の一部を売ったから、そんなに懐は痛まないわ。でもこれ以上お金は自由に動かせないし、ご兄弟は小さいから孤児院に入る事になるけれど」
「そうじゃなくて! どうしてお嬢様のような方が、私のために…」

 半ば無理矢理連れ込まれた馬車の中で、お嬢様が向かい側の私をじっと見つめた。二人共無言になると、ゴトゴトと馬車が揺れる音だけが響く。

「私より不幸な人がいると、安心するから」
「……ん?」
「この若さでご兄弟を養っていかなきゃならなくて、そのために好きでもない男の人と……きっと、凄く苦しい人生だったんだろうなって。そんな貴女に同情したふりをして、それに比べたら自分は何て幸せなんだろうって思い込みたいの。どう、酷いでしょう?」
「は、はあ……」

 私は首を捻った。お金持ちが身寄りのない若者に同情して家に雇い入れてあげる。あると言えばある話だし、実際そう言ってるのだが。

(何でだろう……この人、物凄くめんどくさい)

「あの……アイシャお嬢様は、不幸な方なのですか?」
「違うわよ。毎日ちゃんと食事が出て勉強も出来るしベッドでも眠れる。母は亡くなったけれど父が再婚して可愛い妹も出来たし、婚約者はハンサムなの。私は恵まれているのよ」

 一切表情を変える事なく、言い訳のようにつらつらと自分は不幸じゃないと言い張る。それは嘘ではないだろうけれど。

「もちろん、迷惑だったら馬車を降りてもらって構わないわ。所詮、気まぐれなんだもの」
「いいえ……せっかくのチャンスですから働かせて頂きます。きちんと恩義はお返ししませんと」

 こうして私は、アイシャお嬢様の専属メイドとなった。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「クララ、今日から貴女には洗濯の汚れ物担当とトイレ掃除……それからアイシャお嬢様のお世話係をしてもらうわ」

 洗い場と各トイレと掃除用具入れの場所を教わった後、お嬢様の部屋にまで連れて行かれる。
 ノックの音にお嬢様が顔を出せば、メイド長は私たちを置いてさっさと行ってしまった。

「あ、あの……?」
「ああ、掃除の説明ね。ここが私の部屋。さ、入って」

 メイド長の行動にも顔色一つ変えず、お嬢様は私を部屋に招き入れる。鍵はかかっていないようで、泥棒が入ったらどうするのか心配になる。

「自分でも軽くは掃除しているけれど、ハタキ掛けと窓と鏡の二度拭きをお願い。洗濯物の回収は皆と同じでいいわ。入室する時は必ずノックしてね。何か質問は?」

 一通り説明をするお嬢様に、恐る恐る手を上げる。まるで何も起こっていないかのように…違う、そう振る舞えと言う圧力を感じるが、聞かずにはいられなかったのだ。

「あの…お嬢様、その頬はどうされたんですか?」
「ああこれ、お父様の虫の居所が悪かったみたいで」

 お嬢様の片頬が腫れ上がっている。父親に強く打たれたのだと知り、顔が青くなった。

「まさかお嬢様、私を引き取る際に宝石を売ったのを責められて!?」
「何だ、もう聞いてたの」

 隠せないと悟ったお嬢様は苦笑いする。
 メイドの先輩は私が屋敷へ来た日、お嬢様が勝手に亡くなったお母様の形見を売り払った事を酷く怒られていたのを見た、と言っていた。

『貴女、お嬢様がお優しいから同情してくれたとは思わない事ね。あの人、皆から嫌われているもんだから、優しいふりをして恩を売っているのよ。さもしいわよね』
『そ、そんな…雇い主の事を悪く言うなんて』
『雇い主は旦那様よ。それに可愛がられているのは妹のサラ様だけ。アイシャ様は陰気だし、姉妹仲も凄く悪いの。優しくて可愛らしいサラ様は皆に愛されているけれど、アイシャ様を好きになる人なんていないわ』

 ぞっとした。
 何故この屋敷の使用人は、雇い主の娘に対しこうも悪意を向けられるのだろう。お嬢様を陰気だと言うが、私から言わせれば彼女たちの方がよっぽど薄気味悪い。

 思い出して身震いする私を不審そうに見ていたお嬢様だったが、安心させるように表情を和らげる。腫れで引き攣ってしまったので、却って痛々しかったけれど。

「本当に、大した物は売っていないのよ? お母様の遺産は大部分はお父様が預かっていて、それにも手を付けていないし。私が売ったのは直接戴いたアクセサリーが数点。他に私が持っているのは、そうね……日記帳と、この鏡があるわ」

 そう言って、三面鏡が開かれる。
 そこに映ったお嬢様は、目の前にいるように笑っていたけれど、角度のせいか影が落ちて悲しそうにも見える。

「そうだ、私って昔から一人でいる時は本を朗読してるから、部屋から独り言が聞こえても気にしないでね」
「ひ、独り言……ですか」
「それに年末にはゾーン伯爵領の教会でお芝居をするの。でも私、人前で声を出すのに慣れてないから……練習する姿を見せるのも恥ずかしいし」
「ふふ、分かりました。用事がある時はちゃんとノックしますね」

 その後、たまに部屋の前を通りかかると本当に中からお嬢様の声がしたが、部屋に入れてもらうと本や三面鏡が開いていたので、お芝居の稽古中だったのだろう。
 酷い事に、侍女や使用人がその様子をドア越しに聞き耳立てては「またやってる」「気味が悪い」などとやっていたので壁をガンガン叩いて、

「おじょうさま――!! おそうじにまいりました――!!」

と大声で怒鳴って追い払った。

「クララ……ごめんなさい、気を遣わせてしまって」
「何を言ってるですか。お嬢様は何も悪くありません。それに、伯爵領の教会って各地の孤児院の子たちも参加するでしょ? 弟たちにもお芝居、見せてあげたいので頑張って欲しいです」
「クララ……」

 お嬢様の顔がくしゃくしゃに歪んだ。泣きそうになるのに、お嬢様は泣かない。真っ赤にした顔で、実に下手糞な笑みを作る。

「うん…私、頑張るね……」

 お嬢様、ご自分は不幸じゃないと言ったけれど。
 貴女は嘘吐きなんですね……


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「お姉様っ! ねぇ、私あのブローチが欲しいって言ったわよね? ねぇ、どうして売っちゃうの? あれ可愛かったのに。確かにお姉様には似合わないと思うわ、でも私あれがよかったの」

 それから少しして、お嬢様の部屋から騒がしい声が聞こえてきた。あれは、お嬢様の声じゃない。お芝居の練習をしていると言っていたけれど、あんなキンキンした声は初めてだ。

「でも、せっかくお父様が新しいアクセサリーを買ってくれたのでしょう? 古臭いブローチよりよっぽど素敵じゃない、それを……」
「だからってどうしてメイドなんて雇うの? この屋敷に使用人はいっぱいいるじゃない。みんな、お姉様がいい子ぶりたいからだって…」
「サラ、私は勉強がしたいの。口を閉じるか出て行くかしてくれない?」
「それじゃお姉様、昨日話題のお店で新作のチョコレートを買ったでしょう? それを食べている間は大人しくしてあげるわ」
「はあ……分かったわよ」

 す、凄い子だな……お嬢様はサラと呼んでいたが、ひょっとして声の主は妹のサラ様だろうか。
 掃除を終えて通りかかり、つい足を止めてしまったが、立ち聞きしていると思われるのも外聞が悪い。踵を返そうとした時、ドアが開いてお嬢様が顔を出した。

「誰か! サラが部屋に来てるの。お茶を入れて頂戴! …あら、クララ」
「ど…どうも、お嬢様」
「今、手が空いてる? 悪いんだけどお茶の用意を…」
「あっはいはい、すぐやります!」

 サラ様のテンションに圧倒されて混乱したまま、私は部屋にお邪魔し、テーブルを拭き始めた。

「ちょっと、何なのよ貴女いきなり!」
「はい! 先日このお屋敷に配属されました、メイドのクララと言います」
「どうでもいいけど、トイレ掃除のバケツ持ったままテーブル拭かないで。気分悪いわね!」

 ドンとサラ様に突き飛ばされ、私は床に転がってしまう。
 この人が……優しいサラ様??

「あうっ、すみませんお嬢様……すぐ片付けますので」
「そんなの後でいいわ。クララ、怪我はない?」

 私を心配し、駆け寄ってくるお嬢様。その背中の向こうで、サラ様が物凄い目でこちらを見ていた。

「お姉様もしかして……彼女がそうなの? 私が欲しかったブローチで買ったメイドなの、ねえ! そうよね、だってお姉様は使用人にも嫌われてるものね。お姉様が呼んですぐ来れるのなんて、そんなつまんない女しかいないわ」
「黙りなさい、サラ」
「どうしてよ! どうして勝手にアクセサリー売っちゃうの。お姉様の物は私の物なのよ。専属メイドとか、意味分かんない。
お姉様…その女、花売りなんですってね。聞いたわ、男の人といかがわしい事して稼いでるって。なんて汚らしい…」

 バシッ!!

 猛烈な勢いで吐き出されるサラ様の罵倒は、アイシャ様のビンタ一つでピタリと止まった。
 お嬢様の表情は見えない。けれど、とても怒っている。旦那様に打たれても使用人に馬鹿にされても平気な顔をしていたお嬢様が、感情を爆発させている。

「汚らわしいのは、あんたの心よ」
「……」
「私が嫌われている? そうでしょうね、あんたがみんなにある事ない事吹き込んでくれたおかげで、こうして誰か呼んでも掃除中のクララしか捉まらない。あんたのお望み通りよ、嬉しい?」
「…………」
「クララはね、ご両親を亡くされて兄弟を育てるために身を粉にして働いてるの。この歳で、親の膝元でぬくぬく暮らしてる私たちよりよっぽど立派なのよ。確かにきつい仕事だと思うし、眉を顰める人もいるかもしれない。
だけど、クララの心は……あんたなんか足元にも及ばないくらい、綺麗……」
「う、うわああああぁぁぁ!!」

 お嬢様の言葉に、サラ様は大声で泣き喚いて部屋を飛び出して行った。怒鳴り散らしたお嬢様は、それだけで疲れたのか、ぺたんと床に座り込む。

「お嬢様、大丈夫ですか!」
「クララ……妹が、ごめんなさい。後でちゃんと謝らせるから」
「いいんです、私が汚れ仕事をしていたのは事実です。食べる物がなくて仕事が選べないから、仕方なく働いていただけで。本当は学校にも行きたかったし、素敵な服だって着たかった。綺麗なままで、恋だってしたかったんです……」

 涙がポロポロ零れる。お嬢様をぎゅっと抱きしめると、ぽかんとこっちを見返していた。お嬢様は間抜けな表情をしている時が一番可愛いかもしれない。

「クララ、泣いてる……今でも辛いの?」
「いいえ、そんな私をお嬢様は拾ってくれましたから。弟たちも引き取ってもらえて、すっごく幸せですだ」
「それは困ったわね……不幸な人を見て安心したかったのに」
「ええー…」

 相変わらずめんどくさいお嬢様に思わず苦笑する。
 翌日、お嬢様はサラ様に告げ口された旦那様に折檻を受け、その怪我が元で熱を出して寝込んだ。奥様はビクビクしながら様子を窺っているだけだし、サラ様は元より、使用人の誰も来なかったので、私が一人でお嬢様の看病を仰せつかっている。

 そこへ、お嬢様の婚約者と言う方が見舞いにやってきた。とても整った顔立ちだが、その人は私を訝しげに見て訊ねる。

「アイシャがサラと大喧嘩して、伯爵に打たれたと聞いたんだが。何でも、見下している娼婦に恩を売るために形見のブローチでメイドに雇い、しかもその子より汚らしいとサラを罵って殴ったとか……」
「…………」
「本当なのか?」

 酷い、言い草だ。
 なるほど、こうやってサラ様はお嬢様を貶めていたのか。いくらでも言い逃れ出来そうな所がまた厭らしい。
 私がここで本当の事を言っても、この人はたぶんサラ様に言い包められてしまうだろう。

「私はお嬢様が大好きです」
「いや、僕が聞いているのは…」
「例え世界が敵に回っても、私はお嬢様のそばにいる。それだけです」

 いくら聞いても埒が明かないと諦めたのか、彼は変わった花の植木鉢を渡してきた。花売りをしてきた私でも、初めて見る花だった。

「これ、親戚の叔父さんからだって。玄関先で頼まれた」
「お嬢様がお目覚めになられましたら、お渡ししておきます」
「うん頼むよ。じゃ、お大事に」

 婚約者が帰られてしばらくしてから、お嬢様は目を覚まされた。そばに私がいるのを見て、柔らかく微笑まれる。

「何か、欲しい物はございますか。すぐにご用意致します」
「……歌って」
「歌?」
「私たちが初めて出会った時の……久しぶりに、クララの歌が聞きたくなったわ」

 お嬢様の頼みに、私はお体に触らない声量で歌い上げた。

「私は今日も花を売る~この身はいつでも小綺麗に~だけど中身はもうボロボロ…商売道具は時化てちゃ売れない、だから隠して今日も笑顔。明日も、明日は笑えるのかな? 信じて今日も花を売る~…」

 歌声に耳を傾けながら、お嬢様は植木鉢の花を見つめている。私は、親戚に貰ったと言うその花の名を訊ねた。

「名前? 『カランコエ』と言うの。私の、王子様よ」


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 これが、私のお仕えするアイシャ=ゾーン伯爵令嬢様です。
 今でもお嬢様の意味の分からない言動には困惑させられますが、私はとっても幸せ……いえ、お嬢様を安心させる不幸な人です。
 でもいつか……お嬢様が心から笑える日が来れば、きっと堂々と、私も幸せだと言えるでしょう。


 ところでお嬢様のお世話を除けば、私は今も洗濯の汚れ物担当とトイレ掃除をしています。そうするとですね、下世話な話ですが、雇い主のあっちの事情を察してしまうんですよ。こんな事、とても表には出せないのですが……

 パーティーのあった日に持ち帰られた、汚れたドレスを洗ってから二ヶ月が過ぎても……アイシャ様にまだ、来ていないようなんです。

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