ハの国史 「いきなり国家を救えと言わましても! 転生先はまさかの内乱真っ只中!? 俺に何ができるってんですか!」

癸から甲

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十話「鉄の城に翻る軍旗」

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 俺はドミトリー艦隊の増援と思わしき戦艦の主砲を七式斬艦刀で破壊した後、戦艦〈あぎょう〉の艦橋によろめきながら辿り着く。



ユウ

「戻ったぞ」



 俺は誰に言うでもなく呟き朦朧とする意識を必死に繋ぎ止める。視界が闇に沈みかけるたび強引に意識を引き戻し、まぶたをこじ開けた。戦いは終わったのかもしれない。だが、すべてが決着したと確信するまでは倒れるわけにはいかない。



 あの戦艦は煙幕を張り退却を開始したようだ。それでも俺の心には不安が残る。



ユウ

(戦艦〈ヴラムシャプー〉を仕留めそこなった……)



 完全に沈黙したわけではないその存在が気がかりでならない。



 艦長席から立ち上がり俺にミコトが向かってくる。顔に疲労があらわれているがどこか安堵の表情を浮かべている。



ミコト

「ユウ、戦闘はもう終わったも同然よ。それと今から正式な戦闘中止を敵に要求するわ」



 ミコトの声が優しく響く、その言葉に俺は少しだけ肩の力を抜いた。



ユウ

「そうか、ならよかった。」



 ミコトはオープン回線に切り替え、敵の残存艦〈ヴラムシャプー〉に戦闘中止を要求するため、モニターを起動した。画面に映し出されたのは、艦長と思われる人物、そしてスピーカーから聞こえてきたのは異国の言葉だった。



〈ヴラムシャプー〉艦長

「縺薙■繧峨?繝エ繝ゥ繝?繧キ繝」繝励?濶ヲ髟キ縺?縲よ?縺瑚襖髫翫?螳悟?縺ォ謌ヲ髣倥r蛛懈ュ「縺玲兜髯阪☆繧九?譛ャ濶ヲ縺ッ闊ェ陦御ク崎?縺ョ縺溘a蜊鈴Κ霆肴クッ縺ォ譖ウ闊ェ縺励※繧ゅi縺?◆縺??」



 ミコトは通信の内容を理解しようとしたが、困惑した様子を見せる。



ミコト

「何を言っているのかまったく分からない……」



 確かに俺が交戦してきたドミトリー艦隊の艦載部隊は多種多様な民族で構成されており、彼らは共通言語を用いて意思疎通を図っていた。彼らにとってはそれが当たり前のためミコトにも通じると思っているのだろう。



ミコトが困り果てた様子で立ち尽くしているのを見て俺は満身創痍の身体を奮い立たせミコトの一歩前に出て、俺は告げる。



ユウ

「スキル〈多言語マスターS〉が役立つときが来たな」



ミコトは一瞬驚いた顔をして、すぐに微笑み言う。



ミコト

「ずっと違和感なく会話できてたからそのスキルを忘れてたわ」



 俺はモニターに映し出された〈ヴラムシャプー〉艦長の言葉に耳を傾ける。そして未知の言語を俺はすぐに理解し通信の内容をミコトに報告する。



ユウ

「ドミトリー艦隊は戦闘を停止したものの艦隊司令官を失い、救援に来た第三国の軍艦も逃走したため今後の行動を決めかねている。そのためハの国の指導者であるミコトに指示を仰ぎたいと申し出ている。現在、〈ヴラムシャプー〉は完全に航行不能となっており南部軍港までの曳航を要請するとともに投降の意思ありと明確に表明しているんだ」



 ミコトは静かに頷き俺に向かって言葉を発する。



ミコト

「分かったわ。彼らの要求を受け入れる。それと戦闘中止命令の受け入れと私たちの負傷者の救助に協力してほしいと伝えて」



 俺はその言葉をそのまま艦長に伝える。



〈ヴラムシャプー〉の艦長は少しの間を置いてから、ミコトの条件を了承する意を示した。通信が切れた後、ミコトは小さく息をつく。



ユウ

「すまないが、俺は救助作業には参加できそうにないな……」



 かすれた声で呟いたその瞬間、限界を超えた戦いの疲労が一気に押し寄せ意識が薄れていくのを感じた。身体は力を失い、静かに壁にもたれるように崩れ落ちていった。



 ぼんやりと揺れる視界の中、最後に映ったのは安堵と不安が入り混じったミコトの表情、そして次の瞬間、俺の視界は完全に暗闇に包まれた。



 やがて俺は目を覚ます。全身に鈍い痛みが走るが風を感じたくなり、ふらつく足取りで〈あぎょう〉の甲板へ出る。



 朝日が昇り、柔らかな光が俺を照らす。振り返ると空母〈うんぎょう〉が傷ついた〈ヴラムシャプー〉を静かに曳航している。



 戦火をくぐり抜けた〈あぎょう〉〈うんぎょう〉二つの黒鉄の城にはハの国の軍旗が力強く風にはためかさせ、穏やかな波を切り裂きながら進む姿は戦いの終わりを静かに物語っているように感じられ俺は風を受ける中黄昏る。
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