ショボい人生のやり直し?!絶対に消えたくないので真逆の人生でポイント貯める

亀野内アンディ

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第一章

佐藤は自身の遺品を何も見ずに捨てて欲しかった

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 その日からシュクルは宿屋から出られなくなった。あの時のベテラン冒険者の話を思い出す。 

『よくわかんねぇよ?ただ、仲の良かったベテラン連中がいきなり冒険者辞めたり、温和だったヤツがいきなり森の中でキレたりしたんだよ。明るかったヤツが家から出なくなった事もあった⋯⋯すべて森に行ってる奴らばっかよ。まぁ俺の勘違いかもしれねぇけどな?』 

寝ると嫌な夢が襲う。起きていても思考がマイナスに持って行かれる。 

肉弾戦では強いシュクルも敵がいなくては戦えない。明らかな睡眠不足に、起きている間は自分の過去の失敗や欠点ばかりをくよくよと考えてしまう。こんな体験は初めてだ。 

「シュクル~大丈夫~?もうすぐ魔術師が到着するからね~」 

「よ、よかった⋯⋯」 

こんな悪夢に対応できる魔術師は凄いと思う。きっとダークマタージョエルに違いない。闇には闇を。この世の負はすべてダークマターが吸収するのだろう。 


そしてしばらくすると部屋の扉が開いた。 

「助けて⋯⋯ダークマタージョエル――」 

「ムヒヒ」「フフフ」「ムヒヒ」「ムチチ」「ムフフ」「チチ」「イチチ」「クフフ」「ハフハフ」「あぁ(好)」 

「⋯⋯⋯⋯」 

「おい!お前らノックもしないで入るな!!よそ様の部屋で好き放題するな!迷惑になるだろ!」 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」 

「あら~?サバンじゃない~ピーちゃん達もいるの~?精霊は私のそばに来ないでね~」 

「双子を振り払って勝手について来たんだよ!移動中に氷を何度も作らされて馬車がびちょびちょだよ!俺の馬車内で自由に寛ぐし!」 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」 

見るからに低い戦闘力にシュクルは絶望した。 

「ムヒヒ」「フフフ」「ムヒヒ」「ムチチ」「ムフフ」「チチ」「イチチ」「クフフ」「ハフハフ」「好き 好き」 

ベッドでブラックホール落ちしている私に精霊達が張り付いて来た。みなドピンクチェリーの姿をしていてふわふわだ。 

しばしふわふわに癒されていると気分が良くなってきた。やはり異世界にはふわふわが必須なのか。ふわふわな犬は無理だが、私にはふわふわな精霊が寄り添ってくれているのだな。よかった―― 

「ス~ハ~」「グヘヘ」「ス~ハ~」「ハァハァ」「オシリシリ」「オチチ」「ハァハァ」「ス~ハ~」「プリプリ」「あぁ(好)あぁ(好)」 

「止めろ!!!変態!いかがわしいんだよ!!」 

シュクルのふわふわは変態だった。 


「あの、ジョエルさんは?あの洞窟の闇は深いんだが、サバンで大丈夫なのか?」 

「あ?副団長?あの人は植物魔法の権威だぞ?危険な魔法や魔道具には対応しない。てか、シュクルさん?いきなり俺に対する態度悪くない?」 

え?ダークマタージョエルなのに危険物対応不可?嘘だろ?混ぜるな危険的なアレか。 

「サバンはアテナの洞窟で生活しいてたもの~洞窟はお手の物よ~」 

「あぁ⋯⋯あれは馴染んでいましたね」 

シュクルにはあそこの住民に見えた。いい所のお坊ちゃんには全く見えなかった。それに使い魔にも心地良い環境だったに違いない。 

「あれは大変だったんだぞ!汚いし臭くて汚物まみれになったんだ!」 

「それはサバンが魔獣のケージを斜めに持つからだろ?アホだな」 

「え?⋯⋯てかシュクルさんが俺に辛辣過ぎる!」 

「そりゃ先日迷惑被ったからだよ。室内であんな無敵戦士出しやがって」 

アレに敵うのはダークマター系だけだろう。あの使い魔がいる限りサバンは一生結婚できねーよ。 

そしてアホなサバンを連れて森に行く事になった。 

 

「ここよ~どうサバン~?」 

「あぁこれは早く気づいてよかった。このままだと被害が出るな。どうするかな?」 

前回と同様、この辺りの空間が歪んでいるみたいな気持ち悪さがあり、立っているだけで眩暈を催す。一緒に来た精霊もシュクルにくっついて動かないし、ニーチェも心なしか元気がない。

「迂闊に中に入るのもな。でもまずは洞窟内の状況確認をしなくては始まらないけど。⋯⋯やっぱり入りたくない気がする」 

「いやいや、アレクに行かせろよ。アレクにとっては洞窟なんてお菓子の家だろ?友人宅だろ?コンビニ感覚だろ?」 

何を恐れているんだ。Gに恐れる物など無いだろ?無敵戦士な使い魔の腕の見せ所じゃないか。 

「え?アレクは綺麗好きだから洞窟はどうだろうな?羽根に油とか付くの嫌がるくらいだし」 

「チッ、アレク行け!ダークマタージョエル連れてくんぞ!」 

「カサカサカサ(アイアイサー)」 

どこからか飛び出たアレクが洞窟に入って行った。マジ最強な無敵戦士。黒光りして輝いている。 

「えぇ?!どうしてアレクがシュクルさんの命令聞くんだよ?!主は俺だぞ??」 

恨みがましい、いつもの変顔をしているが構ってやれるほど体調は良くない。 

「それで一体何事なのよ~?サバンは何が洞窟内で起きてると予想してるの~?」 

そうだ。それが知りたい。変顔をヤメよ。 

「前に行った現場もこんな雰囲気だったんだけど、その時は呪いの類だった」 

呪い?こんな森の中で?何に対してだ?魔獣か冒険者しかいないぞ? 

「でも今回は少し違う気もする。アレク大丈夫かな?」 


しばらくするとアレクが帰ってきた。 

「カサカサカサ――(中は――)」 

「うえぇぇマジかよ?」 

アレク語を翻訳すると、洞窟内に人間と魔獣の遺体が数体腐敗しているそうだ。そして何かの魔法の痕跡とあちらこちらに魔法のトラップがあるそうだ。 

「ちょっと!どうしてシュクルさんはアレクの言っている事がわかるんだよ?!ずるいぞ!」 

洞窟からの負の影響か、嫉妬に狂ってしまったサバンは無視して今後の予定を決める。 

「魔法のトラップって何かしら~?まぁ私にこの件は無理だわ~魔獣狩りしてくる~」 

「じゃあ私も⋯⋯って何すか?この魔法。便利だな?」 

恨みがましい顔をしたサバンに黒いロープで腹部を縛られた。しかもロープの先をサバンが持っている。 

「一緒に調査しろよ!俺の相棒と仲良くしやがって⋯⋯」 

いや、仲良くとか無理だし。そもそも体調悪いからこれ以上動けないし⋯⋯ このロープ邪魔だな。

――ガリ――ガリ――ガリ――ガリ―― 

シュクルは縛られている黒いロープをうさぎ獣人の屈強な歯で齧った。
それは幼かったあの日、母がシュクルに伝えた先祖から伝わる極意だった。 

『シュクル、私達うさぎ獣人は悪い奴らに拘束されて連れ去られる可能性があるわ』 

『そ、そんなの拉致です!怪しい売春島に連れて行かれるのですか?!客は世界のセレブですか?!』 

『⋯⋯?そんな時は周りに人がいない事を確認して、私達の武器である歯で嚙切って脱兎の如く逃げるのよ』 

そうだ脆弱な私達には強靭な足と歯があったのだ! 

「⋯⋯硬い。だが噛み砕く。ついでに食ってやる」 

最近食が細かったからか驚くほど空腹だ。このロープはなぜか美味しそうな気がするし、口に入れた物は一方通行の決まりに従ってロープを食べてやった。 

「は?俺の拘束魔術が食べられた?」 

それを食べたら眩暈が収まった気がする。そうしたら変なビジョンが見えた。 

洗面所らしき所で裸のサバンが鏡を覗いていた。そして次々にボディービルダー風のポーズを決めているが、如何せん⋯⋯⋯⋯鏡に映った尻にハート模様もあってシュクルは何故だか目頭が熱くなった。最近涙脆い。年かな。 魂が。

「サバンはここにいても気持ち悪くならないのは何でだ?」 

「え?あぁ、魔力に作用する状態異常に強いんだ。それに闇魔法も使える。凄いだろ?魔術師団でも闇を使える人はほとんどいないんだぞ!俺の家系だけだ!だから今回も派遣されたんだ」 

魔力に作用する状態異常?なるほど。それで気分が良くなったのか。サバンの魔力で作られたロープを食べたせいか多少能力を得られたのだな。魔獣肉ではなく生きている人間の魔力からでも可能なのは初めて知った。でも言うのは止めよう。危険な気がする。 

シュクルは仕方なく洞窟にサバンと入る事にした。 そしてこれが数奇な運命に繋がるのだった。
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