魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達

音喜多子平

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堕ちたドルイド と 堕ちた射手

7ー7

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 それはさておき、メロディアは二人から教えてもらったマレット橋を目指して歩き始めた。

 とは言えども表立っては歩けない。

 メロディアは本人の強さは差し置いて幼すぎる。こんな時間に繁華街を歩けば補導される事は必至。しかもここはギャンブルで栄えるティパンニだ。先程の輩からも分かる通り、お世辞にも品のいい人間が多い町とは言えない。英雄の息子とは言え、クラッシコ王国の城下町を出てしまえば七光りも届かない。だからこそこそと人目を忍んで路地を進んでいる。

 だが、仕方のないこととは言えどもうまく進めないことにメロディアはやきもきしていた。マレット橋は目と鼻の先だというのに。

 その時の事だった。

 物音に反応する猫のように、メロディアは敏感にとある気配を感じ取った。

「…魔力?」

 感覚的に導きだした答えを短く声に出した。一般人でも魔法を使う都合で人間であれど魔力を帯びていたとして不思議はない。しかしそれが魔族特有の…しかも母である魔王ソルディダのモノであるとすれば話は別だ。

 だがその魔力を感じたのも一瞬のこと。すぐに霧のように霧散してしまい、後にはなにも残ってはない。

 しかし、ドロマー達四人が泥酔してホテルにいるということを考えると、やはり残りの【八英女】の誰かである可能性が高い。闇雲に探し歩くよりもはるかに希望が見えると判断したメロディアは、その魔力の痕跡を追うことにした。

「気配がしたのは…こっちか」

 ティパンニの町並みはおもちゃ箱をひっくり返したように計画的とは対局を為すように建物が乱立している。しかも狭い土地に少しでもスペースを確保しようと、軒並み高層になるように立てられていた。まるで迷路を3Dにでもしたかのようだ。だからこそ脛に傷のあるような輩が身を隠したりするのにはもってこいとも言えるのだが。

 メロディアは身軽な動きで建物と建物の間に張り巡らされたパイプ管や粗末な連絡通路、何のためにかけられているのか良くわからないロープの間を器用に通り、上に登っていく。ティパンニはなだらかな丘の上にある町で上に行くほど治安が相対的にマシになっていく。目指す先は一般的な職人や商人が店を構える地区。いかにギャンブルの町と言えども、普通の商店があるのは当然だ。でないと住民が暮らしていけないのだから。

 そしてメロディアは徐々に自分の判断が正しかったと悟る。誰かの魔力を感じたのだ。しかも更にもう一つ気になる変化があった。

 匂いだ。

 微かにだが木々が春先に漂わせる青々とした新芽の香り。

 初めて嗅いだ香りなのに何故かとてもノスタルジックな感傷を引き起こす不思議な匂いだった。

 メロディアは雑多に乱立する建物の隙間から、その香りの主を探す。すると視線のその先に展望台を兼ねた公園を見つけた。そしてその展望台の欄干の前に一人の女性が立っていることに気がついた。

 まるでどこかの教会の司祭のような服装をして、ご丁寧にミトラまで被っている。若々しい新芽色の長い髪は風にそよぎ、そこから例の草木の香りを出していた。こんな夜更けのティパンニに女性の聖職者がいる時点でアンバランスだ。しかし奇妙な雰囲気はその他にも二つあった。

 まず、女の体躯だ。少し遠巻きに見ているメロディアの目測でも身長が二メートルを越している。それに伴って胸や腰回りの肉付きが凄まじい。体の全体も部分もそろって大きいのだ。

 更にもう一つのアンバランスさ。それは彼女のお腹にあった。

 腹部を覆う衣類がこんもりと丘のように盛り上がっている。最初は太っているのかと思ったがそうじゃない。あれは完全に妊婦のそれだ。

 賭博の町の夜の公園に佇む二メートル越えの妊娠している聖職者。

 うん。冷静に考えなくたって怪しすぎる。それに何より状況証拠もそうだし、父から聞かされていた『母聖樹のソルカナ』の特徴に当てはまる点が多すぎる。もしかしなくてもソルカナ本人に間違いない。

 けれど、メロディアは確信を持っても動けないでいた。何故なら今回の目的はソルカナののほかにもう一人いたからだ。

 そうしてどうするべきか考えを巡らせていると、先にソルカナと思わしき女の方に動きがあった。公園にいた如何にも仕事帰りの中年を見つけると、するすると滑るように近づいていったのだ。

 まさか襲うつもりかと勘ぐったメロディアは最大限に気配を殺しつつ、全速力で公園へと近づく。幸い、高所にあったお陰で真隣は崖になっており、夜の闇も手伝って容易に身を隠しながら近づくことが叶った。

 柵の下から公園を覗き込み、様子を伺う。万が一の場合にはすぐに戦闘に入る準備はできていた。

「こんばんは」

 ソルカナは中年の男性に近づくと優しく声をかけた。男はまさかこんな夜に公園で声をかけられるとは思っていなかったようで、体ごと跳ねて驚きを表現していた。
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