魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達

音喜多子平

文字の大きさ
114 / 163
堕ちたドルイド と 堕ちた射手

7ー11

しおりを挟む
 しかも奇妙な交ざり合いがあったのはソルカナだけではない。

 先程メロディアが引きちぎった、矢に付着していたスライム達にも同様の動きがあった。

 もぞもぞと地を這うスライム達は一様に気絶しているラーダを目指す。そして一端がラーダの麦穂のような金髪に触れた途端、髪の毛と一体化し、頭皮の毛穴からラーダの中へと入っていった。

 SFホラー映画のような中々にショッキングな映像だったが、同時にクラッシコ王国の城下町を出るときにドロマーが言っていた言葉を思い出した。

『はい! ソルカナと一緒にいるのはラーダだと思います。彼女はスライムに【寄生】されて悪堕ちしたので』

 確かにそう言っていた。ラーダがスライムの宿主となっているならば、スライムを付着させて矢を放ったこと、そのスライムが彼女に戻っていくなど一連の流れは納得だ。

 ともすれば先程のソルカナの方はなんだろうかとメロディアは考えた。

 蔦でぐるぐる巻きにされた感触から推察するに、あのセピアソルカナは肉体を持たずに活動をする思念体と呼ばれる存在と見て間違いなさそうだ。仮にその推論が当たっていたとすれば、ソルカナが悪堕ちした原因はあのセピアソルカナにあると判断するのが自然な発想。

 そして思念体は往々にして対象者に【憑依】することで、姿形や性格を変異させる。

 …のだが、あそこまで瓜二つな思念体が発生している理由はとんと思い付かない。

「…ま、いいや。戻れば何かしらは分かるだろうし」

 そうして一先ずの決着を見せたメロディアは母親のマントを取り出した。マントと協力して器用に二人を担ぐと、なるたけ人目をさけてホテルへ帰っていった。

 ◇

 ホテルの近くまではどうにかこうにか人目を忍んでこれたが、ここから問題だ。宿泊客としてフロントに認知されていない二人をどうやって抱え込もうか。しかもメロディアが女性を抱えて戻ってくるのはこれが本日二回目。何をどう考えても怪しまれることは必至だ。

 しかし幸運なことがあった。

 ホテルの前には自警団や騎士団、そしてそれらを取り囲むように大量の野次馬で埋め尽くされていたのだ。メロディアは彼らが一体何を目当てに集まっているのかを遠巻きに確認した。

「あぁ…」

 思わずそんな納得と同情の声を漏らしてしまう。

 ホテルの前には先程部屋の前で絡まれた男が二人、捨てられるように放り出されていたのだ。どうやら息はあるようだ。しかし全裸であられもない格好にさせられているし、目は虚ろでパクパクと動く唇には水分がない。恐らくは脱水症状を起こしている。本当に命だけは助けてやったと言う状態だ。

 少しお灸が効きすぎたかなとも思ったが、これは致し方ない。

 ありがたくこの人混みと混乱とを利用させてもらう。

ホテルの表通りがそんな有り様だったから裏口はもぬけの殻といっても差し支えない。難なくホテルの中に入れたメロディアはそそくさと取ってある部屋へと向かった。一応はと思いノックをすると、レイディアントが顔を覗かせた。彼女はメロディアの顔を見ると一端安堵の表情を浮かべ、抱えられた二人の姿を見ると色々な感情の交ざった複雑そうな驚き顔を見せたのだった。

ドロマー達はすっかりと酔いも覚め、それでいて酒を残さずに清々しい雰囲気で出迎えてくれた。

「メロディアが帰ってきたぞ」
「あ。おかえり~」
「いや~すまねえ。久々だったからすっかり飲み過ぎて」
「しかも気を利かせてあんなデザートまで用意してもらえるなんて…ご馳走さまです」
「そんなつもりはないですけど…ま、あの二人を懲らしめてもらったってことでいいです。それよりも、お仲間を連れてきました」
「え?」

 メロディアはいい加減に腕が痺れてきたので床に引きずるようにして捕まえた二人を見せた。
 
 そんなぼろ雑巾のような二人を見て各々が声をあげるも、別段驚いたりした様子はない。もうこちらの四人は全員が単独ではメロディアに敵うわけもないと認めているからだ。

「あら。私たちが出る幕もなかったですね」
「とりあえず寝かせたいんでベットを貸してください」
「どうぞ…やんごとなき事情でびっちょびちょですけど」
「…」

 もう言及するのも突っ込むのも億劫だったから見て見ぬふりを決め込んだ。メロディアは二人をベットに降ろす。するとレイディアントが呟く。彼女は堕落前の【八英女】を知っているからショックも一入だ。

「やはり強烈だな…ラーダは惜しげもなく扇情的な服を着ているし、ソルカナに至っては妊娠までしているとは」
「ホントですね。誰の子でしょう?」
「何? これは魔王の影響ではないのか?」
「少なくとも魔界を抜けるまでは妊娠なんてしてなかったぜ」
「ボク達と別れた後に身籠ったってことですね」
「身籠ったとは少し違うと思います。なんかセピア色をしたもう一人のソルカナさんみたいなのがいました」

 メロディアがそう言うと事情を知っている三人が

「「「あ~」」」

 と、得心のいったような声を出した。

「僕の話を聞こうともしないので無理に気絶させましたけど…皆さんが揃っていれば暴れるってことはないでしょう。起こして事情を聞きます」

 メロディアは二人の体に触れると間もなく気付けを行った。「がふっ」という息遣いと共に二人はゆっくりと目を覚ます。よろよろと身を起こしたソルカナとラーダは部屋の眩さに当惑しながらも周囲の様子を伺った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...