魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達

音喜多子平

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メロディアの仕事4

11ー3

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 ◇

「へえ。ここが旦那と魔王様がやってる食堂かぁ」

 佇まいを見たラーダが一言感想を述べる。

 こんな面白い連中を連れていたら噂に上る事は必死だったが、それでもメロディアはせめてもの抵抗にさっさと人通りの多い場所からいなくなりたかった。

全員がただでさえ見目麗しく、放つオーラも常人離れしているのだから。

 そうして辿り着いた一行だったが、店に入るなりソルカナが驚いたような声を出した。

「はうっ!」

 皆で同じくらいに肩を竦ませて視線を集める。

「ソルカナさん?」

 ソルカナは答えずそのまま四つん這いになってしまう。メロディアとレイディアントは心配そうな表情で立ち尽くしていたが、他の面子にはソルカナに何が起こっているのか検討がついた。

 妊婦のように膨らんだ腹部がだんだんと萎んでいく。それと反比例するかのようにソルカナの背中から例のセピアソルカナが現れたのである。

 四つん這いになっているソルカナからソルカナが生えているという奇怪な光景だ。

 けれど問題なのはこちらの世界では夜にならないと顕現する事が難しいとされたセピアソルカナがいともたやすく現れた事だろう。

 皆の疑問は当然そこに収束した。

「いや、オレもよく分かんねえ。ただこの食堂に入った途端に活力が」
「ふむ…曲がりなりにも魔王様が使っていた住居ですからね。ボク達でも気付かない何か仕掛けが施されているのかも知れません」
「とにかくソルカナ様に取っては願ってもない事ですね」
「…この、状況がか?」

 と、レイディアントは引きつりながら言った。眼前には四つん這いになり、かつ木の蔦で首輪をされているようなソルカナの姿がある。ワルトトゥリ教を思えば、この世界で最も高貴な存在の一人として数えられるであろう世界樹の化身がしてもいい格好ではない。

 しかし厭々ではなく、悦んでいるというのもまた事実だ。

 するとセピアソルカナが愉快に笑って言う。

「カカカ。勘違いしないでもらいたいのはオレのせいでこうなってる訳じゃないからな。本来のオレの願望を叶えるための存在としてオレを利用しているだけだ。こう見えて束縛されてんのは、実はオレの方だったりするんだよ」
「…なるほど。ソルカナさんの願望を読み取り、分身とも言えるアナタを癒着するレベルで憑依させている、と。昔の母さんがやりそうだ」
「そういうこった。だから気にすんな」
「ま、止めろと言って止める訳がないのは分かってますよ。ただ人前では自重してください」
「OK。つってもそれをいうべきはオレじゃなくて下にいるソルカナだけどな」

 そういうとセピアソルカナに猿轡をされながら「ふがふが」とよく分からない返事を返してきた。

 するとセピアソルカナが一つ悪巧みを思い付いた顔になる。

「もしくはこういう手もあるぜ」

 一体どういう手段があるのかを尋ねる間もなく、セピアソルカナはズブズブと再びソルカナ本体の中へこれ見よがしに入って行く。

「!? ん、ぐぅぅ!」
「カカカ。ちょっと辛抱してな」

 悶えるソルカナを他所にセピアソルカナは全身を侵入させる。すると本体の方に異変があった。

 辛うじて残っていた清純なオーラはいよいよをもって剥がれ落ち、纏う雰囲気は邪悪さを帯びている。

 視線は陰を孕み、口元から覗く歯は獣のようにギザギザだ。

「これは…」
「カカカ。どうよ? 身体を乗っ取られた気分は? もうオレがどんな事をしたって指くわえて見てるしかできないぜ。嬉しいか? 恥ずかしいか? それとも両方かな?」
「やっぱり…完全憑依ですか」
「おうよ。魔界じゃ簡単にできたんだけどな。まさかこっちの世界ででもできるとは思わなかったぜ」

 マゾヒズム全開の姿と粗野で粗暴なこの姿であれば、人前を考慮した場合はこっちの方に軍配があがるか。

「店の中に関して言えばコッチの方がまだマシですかね」
「カカカ。OKだ。他ならぬメロディア様のお言い付けだからな。オレが表に出るぜ」

と、一悶着があったがようやく一息を付くことが叶った九人は今後の事を話し合うついでに昼食を取ることにした。メロディアはそう決まった瞬間に厨房に行こうとした。けれども、それはミリーに止められてしまう。

「ちょいと待った、メロディア」
「え?」
「昼飯はあーしが作るよ。スーはいないけどひっさびさに全員が揃ったし、メロディアにもちゃんとしたところで作ったあーしの料理を食べてもらいたいしな」

 ミリーが言っているのは先日に森でご馳走になった乞食焼きと即席スープの事だろう。そう言われてみれば確かに八英女の中でパーティの根幹を食事で支え続けてきた音無しのミリーがきちんとした食材と器具を使って作る料理を見たことがない。

 その事実に気がつくと申し訳なさよりも興味の方が競りかったのだ。

「分かりました。是非お願いします」
「任しとけ。使ったらマズい食材とかは?」
「いえ。何もありません。厨房にあるものは何でも使ってください」
「よしきた」
「ミリー様。私はすでに頂いておりますので軽食のご用意を賜れれば」
「あいよ~」

 そうしてミリーが厨房に消えたのを皮切りにドロマーも動き出した。とうとう揃った八英女と共にこの食堂の営業を再開させるための話がしたいという。

 メロディアはこの数日のゴタゴタで、すっかりと頭から抜け落ちていた事を思い出す。

 制服作りもそうだが、ドロマーがかなりノリノリなのは意外だった。
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