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Episode1
よろめく勇者
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ピクシーズは剣を持つ戦士タイプ、盾持ちの防衛タイプが前衛となりコンビネーションで戦いながら杖を使う魔術師タイプが援護をするという典型的なトライアングル戦法を取ってきた。
対してこちらはルージュを単独で放置し、オレとラスキャブが連携を取るという相手方の意表を突く作戦に出る。
ルージュは下手な束縛などはせずに縦横無尽に戦わせるほうが最も効率的だろう。オレはラスキャブの屍術を解禁させ、術師を守るように攻撃を捨て防御に専念する。
突然二手に分かれた事と、ラスキャブがクローグレを二体召喚した事にピクシーズは隠しきれない同様の色を見せた。
ルージュが前衛二人を引き付け、ブレードにて斬撃を加える。二対一だというのにも関わらず一切の不安を見せないのは流石だった。その横顔は心なしか嬉しがっている様にも見えた。グラフル討伐はよほど退屈だったようだ。尤も、この辺りにルージュが満足できるような闘いをしてくれる相手など居ないだろうが。
◆
オレ達はオレ達で、後衛に実質四対一を仕掛けられる理想的な状況を整えられた。
「ラスキャブ、クローグレは左右から挟み撃ちするように動かせ。間違っても体で相手を隠す様な動きはするな」
「は、はいぃ」
策がないのに相手の様相が見えなくなるような動きは死に直結する。
パーティに入りたてで要求することが多いのは気の毒だが、後々から覚えさせるよりも、詰め込めるうちに詰め込んでおいた方が楽になるはずだ。ラスキャブにも闘いでの悪手を感覚的に身に着けてもらいたい。
身振り、杖の動かし方、もしくはステップなど呪文の詠唱以外にも相手の魔法の実態を確認する方法はいくらかある。どうやらこのピクシーは風の魔法を使うと見た。
「クローグレの距離をバラバラにできるか? 範囲で攻撃されるかも知れん」
「わ、分かりました」
「よし。あとはオレの体で相手が見えなくならない程度にオレの後ろに隠れていろ」
魔法型のピクシーは襲い掛かるクローグレを巧みに躱すと、二体が上手く折り重なるよう軽快に移動をした。そして杖の先から風の魔法を手前のクローグレに放ち、延長線上にいたもう一匹ごと吹き飛ばしてしまった。
二体が一手ではじき出されるのは予想外であったが、生身ではないので大したダメージにはなっていない様だった。それよりも、魔法を使ってできた隙を見逃したくはない。
重力に一切逆らわず前のめりに倒れる。顔が地につくその前に足先から全身へと渾身の力で加速し、突きを喰らわせる。
全盛期に比べれば数段見劣りするが、それでもこれが現段階で放てる最速の技だ。
こちらが思う最も理想的な形で攻撃が入る。普通の敵なら肉を貫いていたであろうが、ピクシーの体は奇妙な頑丈さがあり、どれほど鋭い刃物であっても鈍器と大差が無くなってしまう。なので勢いだけが生き残り、魔法型のピクシーは杖をも手放し吹っ飛んで行ってしまった。
オレはすぐさま落とした杖を拾った。
殺傷が事実上不可能なピクシーズとの戦いは武器を奪うか壊すかしない限り無限に続く。武器を制されれば負けを認めるというのが妖精の流儀らしい。
同時に足に中々の疲労感があることにも気が付いた。体が技の衝撃を十分に支えられていないことが明白だ。前の旅では「螺旋の大地」について間もない頃に編み出した技なのだから、身体がついていけないのは仕方がない。しばらくは本当に奥の手として使う他なさそうだ。
まったく。これじゃまるでガタがきた年寄りみたいだな。
対してこちらはルージュを単独で放置し、オレとラスキャブが連携を取るという相手方の意表を突く作戦に出る。
ルージュは下手な束縛などはせずに縦横無尽に戦わせるほうが最も効率的だろう。オレはラスキャブの屍術を解禁させ、術師を守るように攻撃を捨て防御に専念する。
突然二手に分かれた事と、ラスキャブがクローグレを二体召喚した事にピクシーズは隠しきれない同様の色を見せた。
ルージュが前衛二人を引き付け、ブレードにて斬撃を加える。二対一だというのにも関わらず一切の不安を見せないのは流石だった。その横顔は心なしか嬉しがっている様にも見えた。グラフル討伐はよほど退屈だったようだ。尤も、この辺りにルージュが満足できるような闘いをしてくれる相手など居ないだろうが。
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オレ達はオレ達で、後衛に実質四対一を仕掛けられる理想的な状況を整えられた。
「ラスキャブ、クローグレは左右から挟み撃ちするように動かせ。間違っても体で相手を隠す様な動きはするな」
「は、はいぃ」
策がないのに相手の様相が見えなくなるような動きは死に直結する。
パーティに入りたてで要求することが多いのは気の毒だが、後々から覚えさせるよりも、詰め込めるうちに詰め込んでおいた方が楽になるはずだ。ラスキャブにも闘いでの悪手を感覚的に身に着けてもらいたい。
身振り、杖の動かし方、もしくはステップなど呪文の詠唱以外にも相手の魔法の実態を確認する方法はいくらかある。どうやらこのピクシーは風の魔法を使うと見た。
「クローグレの距離をバラバラにできるか? 範囲で攻撃されるかも知れん」
「わ、分かりました」
「よし。あとはオレの体で相手が見えなくならない程度にオレの後ろに隠れていろ」
魔法型のピクシーは襲い掛かるクローグレを巧みに躱すと、二体が上手く折り重なるよう軽快に移動をした。そして杖の先から風の魔法を手前のクローグレに放ち、延長線上にいたもう一匹ごと吹き飛ばしてしまった。
二体が一手ではじき出されるのは予想外であったが、生身ではないので大したダメージにはなっていない様だった。それよりも、魔法を使ってできた隙を見逃したくはない。
重力に一切逆らわず前のめりに倒れる。顔が地につくその前に足先から全身へと渾身の力で加速し、突きを喰らわせる。
全盛期に比べれば数段見劣りするが、それでもこれが現段階で放てる最速の技だ。
こちらが思う最も理想的な形で攻撃が入る。普通の敵なら肉を貫いていたであろうが、ピクシーの体は奇妙な頑丈さがあり、どれほど鋭い刃物であっても鈍器と大差が無くなってしまう。なので勢いだけが生き残り、魔法型のピクシーは杖をも手放し吹っ飛んで行ってしまった。
オレはすぐさま落とした杖を拾った。
殺傷が事実上不可能なピクシーズとの戦いは武器を奪うか壊すかしない限り無限に続く。武器を制されれば負けを認めるというのが妖精の流儀らしい。
同時に足に中々の疲労感があることにも気が付いた。体が技の衝撃を十分に支えられていないことが明白だ。前の旅では「螺旋の大地」について間もない頃に編み出した技なのだから、身体がついていけないのは仕方がない。しばらくは本当に奥の手として使う他なさそうだ。
まったく。これじゃまるでガタがきた年寄りみたいだな。
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