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Episode2
絶句する勇者
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「アタシ達はある時、魔王の城に集められた。城の付近を住処にしてた奴らは軒並みそこにいた」
「何の為に?」
「・・・それが、よく分からない。多分なんだけど、頭の中をいじくられたんだ」
「頭の中をいじくられた?」
「ああ」
ピオンスコが話し出してくれたことに安心したオレ達は、ルージュも含めて椅子に腰を掛けた。その間にピオンスコとラスキャブは、コップに注がれた水を一口飲んでいた。
「今にして思えば、ラスキャブの記憶喪失は多分その時のせいだ。断片的に覚えているのは、魔王がごちゃごちゃと何かを説明してたのと、それに抗議した誰かが側近に殺されたってところ」
「側近・・・?」
「ああ。魔王の傍に見た事のない四人組がいた」
魔王の傍に新顔の四人。
その台詞に、オレは自分の毛が逆立つのを感じた。少なくともルージュとアーコがオレに落ち着くように促すほど、怒気が溢れていたと後になって気が付いた。
「すまん。続けてくれ」
「うん・・・ただ何を説明されたのかは思い出せないんだ。とにかくアタシ達に何か指示を出した後、みんな頭の中をいじくる魔法を使った。そして気が付いたらこの『囲む大地エンカーズ』にいたんだよ」
「そこにはラスキャブとトスクルって奴もいたんだな?」
「ああ、それは覚えてる。アタシ達はいつも三人で一緒にいたから。きっと魔法で記憶を消されちまったんだ。『囲む大地』で気が付く前の記憶だと、このくらいしか残っていない」
「・・・」
オレはふうっと息を一つはいた。
ピオンスコの話が全て真実だとすると、いくつか疑問が残る。
魔王は魔族たちに一体何の指示を出したのか。
何故、その後に説明をした記憶を消した上、『囲む大地』に移動させたのか。
そして見た事のない四人の側近の正体は。
オレの思考は脇にいるルージュとアーコには筒抜けだったので、二人から捕捉された。そしてルージュは自らの疑問を直接ピオンスコにぶつけた。
「一つ、はっきりさせたい」
「え?」
「何故ラスキャブと違い、貴様にはその時の記憶が断片的に残っているのか、だ。魔王の施した魔法にムラがあったとも考えられなくはないが、私とアーコの術を無意識で防いでいる事を考えると、お前には精神感応系の魔法を防ぐ何かを持っているのではないか?」
確かに。見落としていたが、それも気になる疑問の一つである。ピオンスコはいつの間にか自分に魔法を使われていた事は気にも留めず、真相を教えてくれた。
「それは多分・・・アタシの持っている『毒』のせいだと思う」
「毒だと?」
「うん。アタシの尻尾から出す毒は『反魔法毒素』って言って、魔法そのものを壊すんだ。だからアタシ自身もかなり魔法の影響を受けにくい体質になってる」
と、ピオンスコは説明した。驚いたルージュはすかさず聞き返す。
「それは、例えば魔法生物の実態を捉えた上で殺せるという事か?」
「ああ。何回かあるよ。それに体がある相手だって防御魔法も貫通するし、魔法そのものを打ち消すから回復術だって効かない」
「・・・」
今度はオレも絶句した。
魔法生物のほとんどが不死性を有し、通常は災害と同じような扱いを受ける。行き遭ってしまったのは運が悪かったと思うのが常識だ。それをコイツは簡単に殺せる断言して見せた。
その上、防御魔法を無視して回復魔法を遮断するというのは、文字通り一撃必殺を意味する。それはつまり・・・あの路地で万が一にもピオンスコの針が当たったいたら、オレは為す術なく死んでいたという事。その事実を改めて確認すると、背筋に冷たい何かが走りゾッとした。
だが、それはそれとして、オレにもどうしてもはっきりさせたい事がある。魔王の考えなどはどうしたって憶測の域を出ないが、傍にいた新しい側近についてはもう少しピオンスコが覚えていることがあるかも知れない。
「オレも一つ、聞きたい。魔王の傍にいた見た事のない側近について、他にも覚えている事はないか?」
「ええと」
「何でもいい」
ピオンスコは頭を抑えながら、記憶を辿った。その様子がとてももどかしかったが、オレは何とか動くのを抑えていた。やがてピオンスコはたどたどしく、自分の頭の中の情景を言葉にする。
「・・・魔王に口答えした奴が殺された時、確か・・・誰かが『止めろ、バトン』って呼ばれてたような」
出てきたその名前に、オレはつい吠えそうになったのを何とか堪えることができた。代わりに裂けるような笑みがこぼれ、全身に武者震いが走った。
バトンが生きているのならば十中八九、側近というのはオレのかつてのパーティだろう。
それが聞き出せただけでも上出来だ。
オレはピオンスコに感謝の言葉を伝え、もう一度パーティに加わってくれたことを歓迎した。
「何の為に?」
「・・・それが、よく分からない。多分なんだけど、頭の中をいじくられたんだ」
「頭の中をいじくられた?」
「ああ」
ピオンスコが話し出してくれたことに安心したオレ達は、ルージュも含めて椅子に腰を掛けた。その間にピオンスコとラスキャブは、コップに注がれた水を一口飲んでいた。
「今にして思えば、ラスキャブの記憶喪失は多分その時のせいだ。断片的に覚えているのは、魔王がごちゃごちゃと何かを説明してたのと、それに抗議した誰かが側近に殺されたってところ」
「側近・・・?」
「ああ。魔王の傍に見た事のない四人組がいた」
魔王の傍に新顔の四人。
その台詞に、オレは自分の毛が逆立つのを感じた。少なくともルージュとアーコがオレに落ち着くように促すほど、怒気が溢れていたと後になって気が付いた。
「すまん。続けてくれ」
「うん・・・ただ何を説明されたのかは思い出せないんだ。とにかくアタシ達に何か指示を出した後、みんな頭の中をいじくる魔法を使った。そして気が付いたらこの『囲む大地エンカーズ』にいたんだよ」
「そこにはラスキャブとトスクルって奴もいたんだな?」
「ああ、それは覚えてる。アタシ達はいつも三人で一緒にいたから。きっと魔法で記憶を消されちまったんだ。『囲む大地』で気が付く前の記憶だと、このくらいしか残っていない」
「・・・」
オレはふうっと息を一つはいた。
ピオンスコの話が全て真実だとすると、いくつか疑問が残る。
魔王は魔族たちに一体何の指示を出したのか。
何故、その後に説明をした記憶を消した上、『囲む大地』に移動させたのか。
そして見た事のない四人の側近の正体は。
オレの思考は脇にいるルージュとアーコには筒抜けだったので、二人から捕捉された。そしてルージュは自らの疑問を直接ピオンスコにぶつけた。
「一つ、はっきりさせたい」
「え?」
「何故ラスキャブと違い、貴様にはその時の記憶が断片的に残っているのか、だ。魔王の施した魔法にムラがあったとも考えられなくはないが、私とアーコの術を無意識で防いでいる事を考えると、お前には精神感応系の魔法を防ぐ何かを持っているのではないか?」
確かに。見落としていたが、それも気になる疑問の一つである。ピオンスコはいつの間にか自分に魔法を使われていた事は気にも留めず、真相を教えてくれた。
「それは多分・・・アタシの持っている『毒』のせいだと思う」
「毒だと?」
「うん。アタシの尻尾から出す毒は『反魔法毒素』って言って、魔法そのものを壊すんだ。だからアタシ自身もかなり魔法の影響を受けにくい体質になってる」
と、ピオンスコは説明した。驚いたルージュはすかさず聞き返す。
「それは、例えば魔法生物の実態を捉えた上で殺せるという事か?」
「ああ。何回かあるよ。それに体がある相手だって防御魔法も貫通するし、魔法そのものを打ち消すから回復術だって効かない」
「・・・」
今度はオレも絶句した。
魔法生物のほとんどが不死性を有し、通常は災害と同じような扱いを受ける。行き遭ってしまったのは運が悪かったと思うのが常識だ。それをコイツは簡単に殺せる断言して見せた。
その上、防御魔法を無視して回復魔法を遮断するというのは、文字通り一撃必殺を意味する。それはつまり・・・あの路地で万が一にもピオンスコの針が当たったいたら、オレは為す術なく死んでいたという事。その事実を改めて確認すると、背筋に冷たい何かが走りゾッとした。
だが、それはそれとして、オレにもどうしてもはっきりさせたい事がある。魔王の考えなどはどうしたって憶測の域を出ないが、傍にいた新しい側近についてはもう少しピオンスコが覚えていることがあるかも知れない。
「オレも一つ、聞きたい。魔王の傍にいた見た事のない側近について、他にも覚えている事はないか?」
「ええと」
「何でもいい」
ピオンスコは頭を抑えながら、記憶を辿った。その様子がとてももどかしかったが、オレは何とか動くのを抑えていた。やがてピオンスコはたどたどしく、自分の頭の中の情景を言葉にする。
「・・・魔王に口答えした奴が殺された時、確か・・・誰かが『止めろ、バトン』って呼ばれてたような」
出てきたその名前に、オレはつい吠えそうになったのを何とか堪えることができた。代わりに裂けるような笑みがこぼれ、全身に武者震いが走った。
バトンが生きているのならば十中八九、側近というのはオレのかつてのパーティだろう。
それが聞き出せただけでも上出来だ。
オレはピオンスコに感謝の言葉を伝え、もう一度パーティに加わってくれたことを歓迎した。
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