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Episode2
疲れる勇者
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ルージュとアーコの魔力での補助は、予想以上にオレの身体能力を高めてくれたらしい。その証拠に、本来なら三日はかかるであろう道のりを月が太陽に変わるまでの間に走り切ることができたのだ。
やがてダブデチカが目と鼻の先というところまで辿り着くと、オレは足を止めた。と、いうよりも流石に疲労困憊になり、自然と止まってしまったのだ。辛うじて、森の中で木々の少ない広場の様な場所を見つけたので、そこに皆を下ろす。すぐさまフォルポスの姿に戻るが、膝が笑いとてもじゃないが立っていられなかった。
肩で息をしながら柔らかな芝生の上に倒れるように寝ころんだ。暑くも寒くもない陽気と、森を抜ける風がこの上なく心地よい。微かにせせらぎが聞こえてくるので、近くに川があるようだ。それに気が付くと、今度は無性に喉が渇いてきた。
「ご苦労さん」
アーコがそんな労いの言葉をかける。そうは言っても、一晩中オレに魔力を与えて補助をしていてくれたせいで、アーコも少し顔色が悪い。
「ああ、お前も少し休んだらどうだ?」
「だな。森で止まってくれたのは正解だぜ。街にいるよりも魔力の回復ができる」
珍しく素直に腰を下ろし、深く深呼吸をする。そんなオレたちにルージュがケロッとした顔で話しかけてきた。
「大丈夫か、二人とも」
「なんで、お前はそんな平気な顔なんだよ…」
ルージュもアーコと同じくらいに魔力を使っていたはずなのに、出発する前と後で顔色がまるで変わっていない。底知れない奴だとは思っていたが、まだまだ驚かされることがありそうだ。
「あの、水とか食料とか探してきましょうか?」
別の理由でピンピンとしているラスキャブとピオンスコが気を利かせてそんな事を提案してきた。断る理由などはない。喉は乾いているし腹も減っている。街に入る前に多少は体力を回復させたいところだった。
「そうだな。私が二人を見ているから、適当に探してきてくれ」
「分かりました」
「水はいらんぞ。私が作れるからな」
「よっしゃ、ラスキャブ。すごい大物見つけよう」
「うん!」
そうして二人は、意気揚々と森の奥へと入っていった。
◇
「何を掴まえようか?」
「うーん…」
あくまでも無邪気なピオンスコにラスキャブは色々と考えてから答えを出した。
「やっぱりお肉かな。ザートレさんはほとんど必ずお肉食べてたし。けど疲れているから木の実とかも嬉しいかも」
「そっか。川があるから魚でも取るかと思ってたけど、確かにそっちの方が喜びそうだね」
「探してみよう。けど、そんなに離れちゃダメだよ」
「わかってるって」
ラスキャブはピオンスコの屈託のない様子に安心感を抱いていた。自分の事を全く覚えていないのに、まるで気にすることなく接してくれているのが、長らく森で一人ぼっちで過ごしていたラスキャブにとってはとても暖かいモノに感じられていた。
ザートレ達と道連れになってからは、確かに寂しさを感じる機会は無くなったが同時に首に縄を閉められている様な、自分の命を他人の手中に握られている緊迫感が生まれていた。ようやくザートレとルージュの人となりも分かり、理不尽に殺されたり非道な扱いを受けたりはしないと確信を持てるようにもなったが、もしもあの二人を裏切るような事があればきっと躊躇いなく斬られてしまうだろう。そう思い続けていたのだ。
けれども、ニドル峠で見せたザートレの様子を思い出すと、ひょっとしたらバズバというリホウド族と同じように自分にも何かしらの情を感じてくれるかもしれない。ルージュは怒るかも知れないが、主従の関係から仲間として認められているかも…そう感じることがあるのも、また事実だった。
そういう意味でもピオンスコが純粋で良かったとつくづく思っていた。もしも隙を見て二人を襲おうだとか、逃げ出そうなどと提案をされてきていたら、どんな選択をするかどうか自分でも分からない。
ただ一つ言えるのは、記憶がなくなった自分の事を今なお、友達だと思って親身になってくれることに、ラスキャブはとても感謝しているという事だった。
やがてダブデチカが目と鼻の先というところまで辿り着くと、オレは足を止めた。と、いうよりも流石に疲労困憊になり、自然と止まってしまったのだ。辛うじて、森の中で木々の少ない広場の様な場所を見つけたので、そこに皆を下ろす。すぐさまフォルポスの姿に戻るが、膝が笑いとてもじゃないが立っていられなかった。
肩で息をしながら柔らかな芝生の上に倒れるように寝ころんだ。暑くも寒くもない陽気と、森を抜ける風がこの上なく心地よい。微かにせせらぎが聞こえてくるので、近くに川があるようだ。それに気が付くと、今度は無性に喉が渇いてきた。
「ご苦労さん」
アーコがそんな労いの言葉をかける。そうは言っても、一晩中オレに魔力を与えて補助をしていてくれたせいで、アーコも少し顔色が悪い。
「ああ、お前も少し休んだらどうだ?」
「だな。森で止まってくれたのは正解だぜ。街にいるよりも魔力の回復ができる」
珍しく素直に腰を下ろし、深く深呼吸をする。そんなオレたちにルージュがケロッとした顔で話しかけてきた。
「大丈夫か、二人とも」
「なんで、お前はそんな平気な顔なんだよ…」
ルージュもアーコと同じくらいに魔力を使っていたはずなのに、出発する前と後で顔色がまるで変わっていない。底知れない奴だとは思っていたが、まだまだ驚かされることがありそうだ。
「あの、水とか食料とか探してきましょうか?」
別の理由でピンピンとしているラスキャブとピオンスコが気を利かせてそんな事を提案してきた。断る理由などはない。喉は乾いているし腹も減っている。街に入る前に多少は体力を回復させたいところだった。
「そうだな。私が二人を見ているから、適当に探してきてくれ」
「分かりました」
「水はいらんぞ。私が作れるからな」
「よっしゃ、ラスキャブ。すごい大物見つけよう」
「うん!」
そうして二人は、意気揚々と森の奥へと入っていった。
◇
「何を掴まえようか?」
「うーん…」
あくまでも無邪気なピオンスコにラスキャブは色々と考えてから答えを出した。
「やっぱりお肉かな。ザートレさんはほとんど必ずお肉食べてたし。けど疲れているから木の実とかも嬉しいかも」
「そっか。川があるから魚でも取るかと思ってたけど、確かにそっちの方が喜びそうだね」
「探してみよう。けど、そんなに離れちゃダメだよ」
「わかってるって」
ラスキャブはピオンスコの屈託のない様子に安心感を抱いていた。自分の事を全く覚えていないのに、まるで気にすることなく接してくれているのが、長らく森で一人ぼっちで過ごしていたラスキャブにとってはとても暖かいモノに感じられていた。
ザートレ達と道連れになってからは、確かに寂しさを感じる機会は無くなったが同時に首に縄を閉められている様な、自分の命を他人の手中に握られている緊迫感が生まれていた。ようやくザートレとルージュの人となりも分かり、理不尽に殺されたり非道な扱いを受けたりはしないと確信を持てるようにもなったが、もしもあの二人を裏切るような事があればきっと躊躇いなく斬られてしまうだろう。そう思い続けていたのだ。
けれども、ニドル峠で見せたザートレの様子を思い出すと、ひょっとしたらバズバというリホウド族と同じように自分にも何かしらの情を感じてくれるかもしれない。ルージュは怒るかも知れないが、主従の関係から仲間として認められているかも…そう感じることがあるのも、また事実だった。
そういう意味でもピオンスコが純粋で良かったとつくづく思っていた。もしも隙を見て二人を襲おうだとか、逃げ出そうなどと提案をされてきていたら、どんな選択をするかどうか自分でも分からない。
ただ一つ言えるのは、記憶がなくなった自分の事を今なお、友達だと思って親身になってくれることに、ラスキャブはとても感謝しているという事だった。
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