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Episode3
頼む勇者
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精神感応により物陰に隠れているかもしれない敵を感知しやすいルージュを先頭に、もしもの漏れを防ぐために嗅覚の鋭い俺が補助となり進む。殿には同じく精神魔法の使い手のアーコを置いているので万が一の追っ手にも接近を許すことはないだろう。精神魔法は見習いであっても攻守ともに最強と言われる理由が身に染みてわかるというものだ。
走るよりも遅く、歩くよりも早い速度でどれほど進んだだろうか。
石壁の廊下はまだまだ続いている。もしかしなくても単純な幅で言えば、地上の町と同じくらいあるかもしれない。丁寧につまれた石の壁は数百年分の歴史を醸し出している。最初は魔王が拵えた空間かと勘繰りもしたが、この町に元々設備されていたと考える方が自然だ。途中、所々に上に向かう階段があったことからも、防災壕として作られたものだろう。
俺たちは合流してから初めて角を曲がった。そこには同じような廊下が続いていたのだが、一つだけ相違点があった。向かって左側の壁に覗き窓のような故意に石が取り除かれてる場所があった。その先からは暖かみのある空気と、混ざりあった匂いと喧騒が溢れている。ようやく人の気配を感じることができた。しかもかなりの大人数のそれだ。
こうなれば是が非でも向こうの様子を確認しておきたい。
向こう側の様子がわからない以上、迂闊に顔は出しづらい。窓はどちらかといえば通気孔の役目を担っているようで、大きく覗き込まなければならないのも問題だ。こうなれば任せられるのは一人しかない。
(アーコ、頼めるか)
(あたぼうよ)
頼もしい返事と共にアーコがガッツポーズを決める。
悪戯好きな性格が功を奏しているのかは分からないが、狡猾さではルージュよりも上だろう。本人の体躯、能力を考慮すればこれほど偵察に適した奴もいない。
アーコは大胆にも窓から向こうの部屋に入ると、すぐさま窓の上の方へと見えなくなってしまった。
◇
通気孔から部屋へと飛び込んだアーコは少々度肝を抜かれる思いだった。広がっていた空間は想像よりも広く、仮にそのまま飛び込んでいたとしても気が付かれなかっただろう。
隅の天井に張り付いたアーコは改めて部屋の全貌を伺った。そこでは相当数の人間がいそいそと作業に勤しんでいた。作業は完全に分業化されており、傍目に見ても効率的なシステムが出来上がっている。
遠目に見えるだけで確証はないが、作っているのは恐らく魔族用の登録印。
それに従事させられているのが『囲む大地の者』、監視監督するように徘徊しているのが魔族であることを考えると、当初の予想通り拐かされた町の住民たちと見ていいだろう。
「魔王に拐かされた奴らに強制労働って・・・様式美だねぇ」
アーコは鼻で笑ってから皮肉めいた言葉を口にした。
とは言えども気掛かりも残る。かなりの人数が収容されているとは言え、これ住民全員とは思えない。尤もここは未だ全容の掴めていない空間だ。別の場所で同じようなことをさせられているか、さもなくば交代制でどこかに待機をさせられていると考えてまず間違いないだろう。
雑ではあるが、気になる場所を確認したアーコはそそくさと通気孔の中に再び戻っていった。
走るよりも遅く、歩くよりも早い速度でどれほど進んだだろうか。
石壁の廊下はまだまだ続いている。もしかしなくても単純な幅で言えば、地上の町と同じくらいあるかもしれない。丁寧につまれた石の壁は数百年分の歴史を醸し出している。最初は魔王が拵えた空間かと勘繰りもしたが、この町に元々設備されていたと考える方が自然だ。途中、所々に上に向かう階段があったことからも、防災壕として作られたものだろう。
俺たちは合流してから初めて角を曲がった。そこには同じような廊下が続いていたのだが、一つだけ相違点があった。向かって左側の壁に覗き窓のような故意に石が取り除かれてる場所があった。その先からは暖かみのある空気と、混ざりあった匂いと喧騒が溢れている。ようやく人の気配を感じることができた。しかもかなりの大人数のそれだ。
こうなれば是が非でも向こうの様子を確認しておきたい。
向こう側の様子がわからない以上、迂闊に顔は出しづらい。窓はどちらかといえば通気孔の役目を担っているようで、大きく覗き込まなければならないのも問題だ。こうなれば任せられるのは一人しかない。
(アーコ、頼めるか)
(あたぼうよ)
頼もしい返事と共にアーコがガッツポーズを決める。
悪戯好きな性格が功を奏しているのかは分からないが、狡猾さではルージュよりも上だろう。本人の体躯、能力を考慮すればこれほど偵察に適した奴もいない。
アーコは大胆にも窓から向こうの部屋に入ると、すぐさま窓の上の方へと見えなくなってしまった。
◇
通気孔から部屋へと飛び込んだアーコは少々度肝を抜かれる思いだった。広がっていた空間は想像よりも広く、仮にそのまま飛び込んでいたとしても気が付かれなかっただろう。
隅の天井に張り付いたアーコは改めて部屋の全貌を伺った。そこでは相当数の人間がいそいそと作業に勤しんでいた。作業は完全に分業化されており、傍目に見ても効率的なシステムが出来上がっている。
遠目に見えるだけで確証はないが、作っているのは恐らく魔族用の登録印。
それに従事させられているのが『囲む大地の者』、監視監督するように徘徊しているのが魔族であることを考えると、当初の予想通り拐かされた町の住民たちと見ていいだろう。
「魔王に拐かされた奴らに強制労働って・・・様式美だねぇ」
アーコは鼻で笑ってから皮肉めいた言葉を口にした。
とは言えども気掛かりも残る。かなりの人数が収容されているとは言え、これ住民全員とは思えない。尤もここは未だ全容の掴めていない空間だ。別の場所で同じようなことをさせられているか、さもなくば交代制でどこかに待機をさせられていると考えてまず間違いないだろう。
雑ではあるが、気になる場所を確認したアーコはそそくさと通気孔の中に再び戻っていった。
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