魔王に捨てられた剣を振るのはパーティに捨てられた勇者 【Episode5連載中】

音喜多子平

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Episode5

柄にもない勇者

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 それは魔王に対峙し、その直後に奴らの裏切りを知らされた時の場面。オレはバトンとシュローナの二人から恨み節をぶつけられた。あの時は生き残ることに必死だったので気にする余裕もなかったが、もしかするとレコットとフェトネックもオレに対して不平不満を抱いていたのかも知れない。

 お世辞にも褒められるほど人格者だとは思っていない。戦いに関しては他人よりも動ける自信はあるが、それ以外の事など子供の方がよっぽどまともかも知れない。まして他人の心根などを見極める眼力などは毛ほども持ち合わせていない。

 ここにいる五人が抱いているかもしれないわだかまりだって、こんな事が起こらない限り気付くことすらなかっただろう。

 それはつまり同じ轍を踏む可能性があるという事だ。

 するとオレの中に柄でもない考えが浮かんだ。いやここは好意的に昔に比べて成長したと考えるべきか。

 拠点に戻ったオレ達はいよいよ保存食造りに勤しむことになった。が、やはり不安の芽は早々に摘んでおいてしまいたい。

(ルージュ、ちょっといいか)
(? ああ)

 オレは作業を任せるとルージュを連れて厨房を出た。そして厨房から一番離れた部屋に入るとルージュとアーコにテレパスを切るように命じた。

(ルージュ、アーコ。今だけテレパスを切ってくれるか)
(…わかった)

 二人はオレの指示通りすぐに魔法を解いた。その瞬間、脳の奥の方で響いていたノイズのような音が止んだ。

 すると部屋の中に二つのため息が漏れた。

「それで? 改まってどうしたというのだ、主よ」
「心が読めずとも色々と敏いお前とアーコは気が付いているだろう?」
「まあな」

 そういうとルージュは珍しくふふふと笑った。

「ん…何かおかしかったか?」
「いや、すまない。主がしたいと思っている事は確かに見当が付いている。そして自分で柄にもないと自覚している事もな。だからあまりにも緊張しているのが伝わってきてな」
「なるほど。確かに笑われても仕方がないな」

 オレがわざわざ二人きりになりテレパスまで解除させたのは、言葉で語らいがしたかったからに他ならない。不平不満があるかもしれないというのなら、それを聞き出してしまえばいいのだ。

テレパシー使えばより鮮明に隠し通せないようなやり取りだって可能だろう。しかしオレが求めているのはそう言う方法ではない。伝わらないかもしれないからこそ伝えるために試行錯誤してみたかった。むしろオレが恥を掻いてでも自分をさらけ出すから話し合いというものは意味を成すのだろう。

 仲間の裏切りと言う絶望をもう一度味わうくらいなら今ここでいくらでも辱めを受けよう。そんな心持ちだった。
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