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第2話 半妖の姉弟と親子丼を食べました 後編
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トントントン。覚さんが玉ねぎを手早く薄切りにしていく。
その様子をスミヤくんがカウンターから身を乗り出して凝視している。
「お料理に興味がありますか?」
「うん! いつか、うまい飯が作れるようになりたいんだ。俺は雪女の力を受け継いでないから、ほとんど人間と変わんない。飯はやっぱりうまい方が嬉しい!」
「ふふ、そうですね。私の料理もおいしいと言ってもらえるように頑張らなくては。玉ねぎは、こうして厚みを揃えると火の通り方が均一になって食感も揃うんです。これは調理する人によると思うのですが、私は5ミリくらいになるように心がけて切っています」
続いて料理酒に砂糖、みりん、醤油、市販の顆粒だしを用意して混ぜ合わせていく。料理酒はウチのお店で買ってもらっているものだ。
鍋に移し、玉ねぎを加えて中火で熱していく。
その間に覚さんは冷蔵庫から鶏もも肉を取り出した。
「鶏皮を多めに残すことで脂が良く出て旨味になりますが、くどいと感じる方もいらっしゃいますよね。今日はあっさりとした風味を意識して、皮は事前に取っておきますね」
包丁でさっと皮を剥がしていくと、キレイな濃いピンクの肉が残る。続いて筋を除去しながら、一口大に切っていく覚さん。ああ、手際の良さに改めて感動。
ぐうううぅぅぅぅぅ。
再び盛大に音を響かせる私のお腹。もう恥ずかしさも感じなくなってきたぞ。
スミヤくんがケラケラと笑っているが気にしない。
先ほどの調味料と玉ねぎが煮えてきたようだ。覚さんは鍋に鶏もも肉を加え、クツクツと煮込んでいった。
「もも肉が定番だと思いますが、むね肉で作っても違った食感が生まれて好きなんです」
「わあ、それもおいしそう…!」
厨房から立ち上るにおいに刺激されよだれが止まらない。トキちゃんに吸われてなくなったはずの私のエネルギーは一体どこから再供給されたのか、目の前の調理が進む過程をしっかりと焼き付けるため脳がフル回転している感じ。食い意地が張っているだけと言われればそれまでだけど。
「では最後に溶いた卵を半分ほど流し入れて、かき混ぜて…残りの卵も入れて半熟になるまで煮たら完成です。はい、どうぞ召し上がれ」
「うまそう! いただきまーす!! …うおお、うまいよ姉ちゃん!!」
「スミヤ、そんなに慌てて食べなくても大丈夫だから」
蓮華でガツガツと親子丼を頬張るスミヤくん(どうやら箸が苦手らしい)をなだめるようしつつ、トキちゃんもふわふわの卵を口に運んで目を丸くした。
「お、おいしい…!」
そうでしょうそうでしょう、覚さんの料理はおいしいでしょう。一体どこの山から降りてきたのかは知らないけれど、しっかり食べて元気になってね。今日は私の奢りだからね。
などと言葉にすることもできず、私は無我夢中で親子丼をいただいた。どうしよう、止まらない。さっき食べたお蕎麦はどこに消えたのだろうか。
「はあ、ごちそうさまでした!」
スミヤくんに劣らないスピードで、かつ大人の女性としてのお行儀も保ちながら、私は今日も覚さんの料理を平らげたのだった。ああ、幸せ。
食事が終わり、ゆっくりとした時間が流れる夜。
私は二人に話を聞くことにした。
「それにしても、なかなかに迷惑な能力だよね雪女さん」
「ごめんなさい…」
「あ、ううん! トキちゃんを責めたい訳じゃなくて! 雪女の能力を作った訳じゃないんだし、生まれた時からそうなんだよね? あなたは何も悪くないです、言い方が良くなかったですごめんなさい」
「そうだよ、姉ちゃんは姉ちゃんだ!」
「でも、人間のみなさんには迷惑かけちゃうことも今まで何度かあったから」
トキちゃんは寂しそうに微笑む。
雪女の娘として生まれて、いろんな苦労があったのだろう。もしかしたら、ここに来るまでにも何かトラブルがあったのかもしれない。
「ね、どうしてこの街に来たの?」
「住んでいたところから人がいなくなっちゃって。私たちは東北のとある山間で、村の人たちと暮らしていたんだけど。だんだんと人が死んでいって、人がいなくなってきて、このままじゃ生きていけるか不安で」
「そうなんだ…。お父さんやお母さんは?」
「父ちゃんは俺たちが物心つくころには死んじゃったって聞いた。正直、全然覚えてないや。母ちゃんも気がつけばいなくなっちまったし」
スミヤくんは頬杖をつきながら小さくため息を吐く。その仕草が妙に大人っぽくて私にはちょっと面白かった。
それにしても、
「いなくなる…?」
「妖怪だもん。死ぬっていうか、いなくなるだろ?」
「ああ、えっと、そっか。うん…?」
なんだか不思議な話に感じて呟いた私に、スミヤくんはもっと不思議そうに返してきた。
変なことを言っただろうか。
妖怪だって、死ぬんじゃないだろうか。
ふと沈黙が流れたところに、トキちゃんが話を続けてくれた。
「それでね、そんな時に、鴉の噂でこちらのお店の話を聞いたりしていたの。この商店街に妖怪が通うご飯屋さんがあるって。山の天狗様も、他の妖怪に出会えたなら、これから生きていく方法がわかるんじゃないかって言ってくれて」
「そうなんだ…。山の主、ですか。はあ、なんか壮大…」
随分とスケールの大きい話だ。それに一部ついていけないところもある。鴉の噂って何?
「えっと、二人はどうやってここまできたの? ご飯とか…」
先ほどエネルギーを吸われたことを思い出し、まさか村人たちが犠牲になっているのかと悪い想像をしてしまう。
「毎日畑耕して暮らしてたんだ。隣のじいさんが猟師で、たまにお肉をもらったりしてたんだぜ」
「お金はお父さんが残してくれたものが少しあったし、農作業を手伝えば村の人たちがお小遣いをくれたの。私たちは半妖だし、人間と一緒に暮らしてきた時間が長いから、いつか街に入らなきゃいけないんだと思う。でも、もっと妖怪や、半妖の生き方も知りたくて」
「うわあ、なんか、すごく立派だなあ」
「立派かぁ? 俺も姉ちゃんも、田舎暮らしでのんびり暮らしてただけだよ。学校だって行ってないし」
「え、あ、そうなんだ…」
「村の人も受け入れてくれてたし、そのままだったら良かったんだけどさー」
もう一度スミヤくんがため息をつく。半妖というのは、自分が想像するより難しい立場にあるみたいだ。
「なあ兄ちゃん、ここには雪女は来ないの?」
「そうですね…随分昔にいらっしゃったことがありますが、最近はお会いしていないですね」
「そっかー。由良姉ちゃんは? 会ったことない?」
「え、私? 私もないなぁ。このお店に来るようになって半年くらいだし、妖怪の知り合いも数えるくらいしかいないよ。雪女に会ったのもあなたちが初めて」
「ちぇ、そっかぁ。俺たちもいろんな妖怪に会ったけど、山暮らしの半妖っていうか、雪女の半妖って全然いないんだよなぁ。みんなどうやって暮らしてんだろ」
「スミヤ、私たちは私たちだけの道を探していきましょう」
困ったように笑みを浮かべるトキちゃんも、ずっと先を見ているように見えるスミヤくんも、なんだか急に大人びた顔になったように見えて、私はドキッとしてしまった。
「あいつらなりに悩んで生きてる」
ふと、昔聞いた祖父の言葉を思い出す。
「私にも、何か手伝えること、ないかな」
「え?」
「だって、せっかく知り合えたんだし。あ、そうだ! 雪女の能力っていうのも、もしかして食べ過ぎに使えるんじゃ!? すごーく食べ過ぎちゃった時とか、ほら、食べ放題のビュッフェに行った時とか、もっと食べたいんだけどお腹いっぱい!って時に、トキちゃんに、こう、すーっとエネルギー持ってってもらえば、また食べられるようになるんじゃない!? 今日の私みたいに!」
「ど、どうかなあ」
「ふふふ、由良さんは発想が面白いですね」
トキちゃんは苦笑いしているし、覚さんはいつもの笑顔のままだ。結構良い提案だと思うんだけど。
「めちゃくちゃ言うなよー。食べたもんが腹の中から消える訳じゃないんだからな! そんなことしたら絶対腹壊して寝込んじゃうぜー」
「ああ、そっか」
「由良姉ちゃんも今晩気をつけなよー。そば食べたんだろ?」
「う…そうですね」
帰ったら念のため胃薬飲んでおこう。
「じゃあ、俺たち行くよ!」
午後9時過ぎ、2人は店を後にする。こんな時間だし、うちに泊まっていけば? お店の常連の妖怪にも会ってみたらいいよ、と誘ってみたが、「またこの街に来たらお願いします」と優しく断られた。
「由良さん、いろいろ話を聞いてくれてありがとう。お金、本当にいいの?」
「大丈夫! 私もいろんなことが聞けて楽しかったもの。今日はご馳走しますって!」
「ありがとう。あの、お友達ができたって思っていい?」
「もちろん。ええと、じゃあ、次に会うときは、私の話も聞いてね。おじいちゃんの話とか」
「おじいさん? うん、じゃあ楽しみにしてます」
そう言って2人は、夜の街をあの格好のまま歩いていった。
もっといろいろな場所に行ってみるのだという。
「ああして、ずっと二人で旅をしてるのかもしれませんね」
「ずっと、ですか」
覚さんの言葉に、私はふと疑問が浮かんだ。
二人は、一体いつから旅をしているのだろう。一体何歳なのだろう。
あれ、もしかして見たままの少年少女じゃなかったりして?
笑っているのか困っているのか、我ながらヘンテコな表情を浮かべているのを自覚しながら、覚さんと視線を合わせる。覚さんはいつもの笑顔を浮かべながら、
「案外、私たちよりずっと経験豊富だったりするのかもしれませんね」
「あー…」
もっといろいろ聞いてみれば良かったかもしれない。
路地に視線を戻した時には、二人の背中はどこかに消えて見えなくなっていた。
その様子をスミヤくんがカウンターから身を乗り出して凝視している。
「お料理に興味がありますか?」
「うん! いつか、うまい飯が作れるようになりたいんだ。俺は雪女の力を受け継いでないから、ほとんど人間と変わんない。飯はやっぱりうまい方が嬉しい!」
「ふふ、そうですね。私の料理もおいしいと言ってもらえるように頑張らなくては。玉ねぎは、こうして厚みを揃えると火の通り方が均一になって食感も揃うんです。これは調理する人によると思うのですが、私は5ミリくらいになるように心がけて切っています」
続いて料理酒に砂糖、みりん、醤油、市販の顆粒だしを用意して混ぜ合わせていく。料理酒はウチのお店で買ってもらっているものだ。
鍋に移し、玉ねぎを加えて中火で熱していく。
その間に覚さんは冷蔵庫から鶏もも肉を取り出した。
「鶏皮を多めに残すことで脂が良く出て旨味になりますが、くどいと感じる方もいらっしゃいますよね。今日はあっさりとした風味を意識して、皮は事前に取っておきますね」
包丁でさっと皮を剥がしていくと、キレイな濃いピンクの肉が残る。続いて筋を除去しながら、一口大に切っていく覚さん。ああ、手際の良さに改めて感動。
ぐうううぅぅぅぅぅ。
再び盛大に音を響かせる私のお腹。もう恥ずかしさも感じなくなってきたぞ。
スミヤくんがケラケラと笑っているが気にしない。
先ほどの調味料と玉ねぎが煮えてきたようだ。覚さんは鍋に鶏もも肉を加え、クツクツと煮込んでいった。
「もも肉が定番だと思いますが、むね肉で作っても違った食感が生まれて好きなんです」
「わあ、それもおいしそう…!」
厨房から立ち上るにおいに刺激されよだれが止まらない。トキちゃんに吸われてなくなったはずの私のエネルギーは一体どこから再供給されたのか、目の前の調理が進む過程をしっかりと焼き付けるため脳がフル回転している感じ。食い意地が張っているだけと言われればそれまでだけど。
「では最後に溶いた卵を半分ほど流し入れて、かき混ぜて…残りの卵も入れて半熟になるまで煮たら完成です。はい、どうぞ召し上がれ」
「うまそう! いただきまーす!! …うおお、うまいよ姉ちゃん!!」
「スミヤ、そんなに慌てて食べなくても大丈夫だから」
蓮華でガツガツと親子丼を頬張るスミヤくん(どうやら箸が苦手らしい)をなだめるようしつつ、トキちゃんもふわふわの卵を口に運んで目を丸くした。
「お、おいしい…!」
そうでしょうそうでしょう、覚さんの料理はおいしいでしょう。一体どこの山から降りてきたのかは知らないけれど、しっかり食べて元気になってね。今日は私の奢りだからね。
などと言葉にすることもできず、私は無我夢中で親子丼をいただいた。どうしよう、止まらない。さっき食べたお蕎麦はどこに消えたのだろうか。
「はあ、ごちそうさまでした!」
スミヤくんに劣らないスピードで、かつ大人の女性としてのお行儀も保ちながら、私は今日も覚さんの料理を平らげたのだった。ああ、幸せ。
食事が終わり、ゆっくりとした時間が流れる夜。
私は二人に話を聞くことにした。
「それにしても、なかなかに迷惑な能力だよね雪女さん」
「ごめんなさい…」
「あ、ううん! トキちゃんを責めたい訳じゃなくて! 雪女の能力を作った訳じゃないんだし、生まれた時からそうなんだよね? あなたは何も悪くないです、言い方が良くなかったですごめんなさい」
「そうだよ、姉ちゃんは姉ちゃんだ!」
「でも、人間のみなさんには迷惑かけちゃうことも今まで何度かあったから」
トキちゃんは寂しそうに微笑む。
雪女の娘として生まれて、いろんな苦労があったのだろう。もしかしたら、ここに来るまでにも何かトラブルがあったのかもしれない。
「ね、どうしてこの街に来たの?」
「住んでいたところから人がいなくなっちゃって。私たちは東北のとある山間で、村の人たちと暮らしていたんだけど。だんだんと人が死んでいって、人がいなくなってきて、このままじゃ生きていけるか不安で」
「そうなんだ…。お父さんやお母さんは?」
「父ちゃんは俺たちが物心つくころには死んじゃったって聞いた。正直、全然覚えてないや。母ちゃんも気がつけばいなくなっちまったし」
スミヤくんは頬杖をつきながら小さくため息を吐く。その仕草が妙に大人っぽくて私にはちょっと面白かった。
それにしても、
「いなくなる…?」
「妖怪だもん。死ぬっていうか、いなくなるだろ?」
「ああ、えっと、そっか。うん…?」
なんだか不思議な話に感じて呟いた私に、スミヤくんはもっと不思議そうに返してきた。
変なことを言っただろうか。
妖怪だって、死ぬんじゃないだろうか。
ふと沈黙が流れたところに、トキちゃんが話を続けてくれた。
「それでね、そんな時に、鴉の噂でこちらのお店の話を聞いたりしていたの。この商店街に妖怪が通うご飯屋さんがあるって。山の天狗様も、他の妖怪に出会えたなら、これから生きていく方法がわかるんじゃないかって言ってくれて」
「そうなんだ…。山の主、ですか。はあ、なんか壮大…」
随分とスケールの大きい話だ。それに一部ついていけないところもある。鴉の噂って何?
「えっと、二人はどうやってここまできたの? ご飯とか…」
先ほどエネルギーを吸われたことを思い出し、まさか村人たちが犠牲になっているのかと悪い想像をしてしまう。
「毎日畑耕して暮らしてたんだ。隣のじいさんが猟師で、たまにお肉をもらったりしてたんだぜ」
「お金はお父さんが残してくれたものが少しあったし、農作業を手伝えば村の人たちがお小遣いをくれたの。私たちは半妖だし、人間と一緒に暮らしてきた時間が長いから、いつか街に入らなきゃいけないんだと思う。でも、もっと妖怪や、半妖の生き方も知りたくて」
「うわあ、なんか、すごく立派だなあ」
「立派かぁ? 俺も姉ちゃんも、田舎暮らしでのんびり暮らしてただけだよ。学校だって行ってないし」
「え、あ、そうなんだ…」
「村の人も受け入れてくれてたし、そのままだったら良かったんだけどさー」
もう一度スミヤくんがため息をつく。半妖というのは、自分が想像するより難しい立場にあるみたいだ。
「なあ兄ちゃん、ここには雪女は来ないの?」
「そうですね…随分昔にいらっしゃったことがありますが、最近はお会いしていないですね」
「そっかー。由良姉ちゃんは? 会ったことない?」
「え、私? 私もないなぁ。このお店に来るようになって半年くらいだし、妖怪の知り合いも数えるくらいしかいないよ。雪女に会ったのもあなたちが初めて」
「ちぇ、そっかぁ。俺たちもいろんな妖怪に会ったけど、山暮らしの半妖っていうか、雪女の半妖って全然いないんだよなぁ。みんなどうやって暮らしてんだろ」
「スミヤ、私たちは私たちだけの道を探していきましょう」
困ったように笑みを浮かべるトキちゃんも、ずっと先を見ているように見えるスミヤくんも、なんだか急に大人びた顔になったように見えて、私はドキッとしてしまった。
「あいつらなりに悩んで生きてる」
ふと、昔聞いた祖父の言葉を思い出す。
「私にも、何か手伝えること、ないかな」
「え?」
「だって、せっかく知り合えたんだし。あ、そうだ! 雪女の能力っていうのも、もしかして食べ過ぎに使えるんじゃ!? すごーく食べ過ぎちゃった時とか、ほら、食べ放題のビュッフェに行った時とか、もっと食べたいんだけどお腹いっぱい!って時に、トキちゃんに、こう、すーっとエネルギー持ってってもらえば、また食べられるようになるんじゃない!? 今日の私みたいに!」
「ど、どうかなあ」
「ふふふ、由良さんは発想が面白いですね」
トキちゃんは苦笑いしているし、覚さんはいつもの笑顔のままだ。結構良い提案だと思うんだけど。
「めちゃくちゃ言うなよー。食べたもんが腹の中から消える訳じゃないんだからな! そんなことしたら絶対腹壊して寝込んじゃうぜー」
「ああ、そっか」
「由良姉ちゃんも今晩気をつけなよー。そば食べたんだろ?」
「う…そうですね」
帰ったら念のため胃薬飲んでおこう。
「じゃあ、俺たち行くよ!」
午後9時過ぎ、2人は店を後にする。こんな時間だし、うちに泊まっていけば? お店の常連の妖怪にも会ってみたらいいよ、と誘ってみたが、「またこの街に来たらお願いします」と優しく断られた。
「由良さん、いろいろ話を聞いてくれてありがとう。お金、本当にいいの?」
「大丈夫! 私もいろんなことが聞けて楽しかったもの。今日はご馳走しますって!」
「ありがとう。あの、お友達ができたって思っていい?」
「もちろん。ええと、じゃあ、次に会うときは、私の話も聞いてね。おじいちゃんの話とか」
「おじいさん? うん、じゃあ楽しみにしてます」
そう言って2人は、夜の街をあの格好のまま歩いていった。
もっといろいろな場所に行ってみるのだという。
「ああして、ずっと二人で旅をしてるのかもしれませんね」
「ずっと、ですか」
覚さんの言葉に、私はふと疑問が浮かんだ。
二人は、一体いつから旅をしているのだろう。一体何歳なのだろう。
あれ、もしかして見たままの少年少女じゃなかったりして?
笑っているのか困っているのか、我ながらヘンテコな表情を浮かべているのを自覚しながら、覚さんと視線を合わせる。覚さんはいつもの笑顔を浮かべながら、
「案外、私たちよりずっと経験豊富だったりするのかもしれませんね」
「あー…」
もっといろいろ聞いてみれば良かったかもしれない。
路地に視線を戻した時には、二人の背中はどこかに消えて見えなくなっていた。
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