神樹のアンバーニオン (2) 逆襲!神霧のガルンシュタエン!

芋多可 石行

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海鳴り

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 須舞 明日美が玄関から自宅に入ろうとしていると、門扉の前に国防隊SPの車がキッと停車し、後部座席から息子の宇留が慌てて降りて来た。
「オゥ!お帰りィ!」
「ただいま!また行くけど!」
「宇留!なんかァあったのかよ?」
 先程から明日美の持ちネタツー、少年アニボが展開している。
「うーん!行ってきまーす!」
 筋違いな言葉と共に、宇留は玄関を開けて家の中に入って行った。
「ハァ?」

             w►"^ k’]´`µ°アンバーーニオン!!

 途端に玄関ドアの隙間から漏れ出るオレンジ色の光。息子の奇妙な行動の理由を察した明日美は早速玄関扉を開け、宇留の姿と靴が無い事を確認する。
「あら!出動?」
 明日美は振り返り、門扉の向こうに立つ男性SP二人に目配せする。
「はいっ···」
 SPの一人が小さく、申し訳無さそうに答えた。



 

 ······かつてのガルンシュタエン。
 実はその事を詳しく知っていそうなヒメナからはまだ詳しい説明はまだ無かった。
 心が通い合っているだけ余計に宇留の方から聞ける雰囲気では無い事は、なんとなく感じたし、決してヒメナが隠し通していたい訳では無い事も察した。

 次の戦いでは完全な状態でやって来るかも知れない。もしそうなったら戦い抜く事が出来るだろうか?
 
 宇留はヒメナの気持ちが纏まるまで待とうと決め、いつかより今に集中する事にした。






 少しずつ回転数を上げていくローターブレードを振り回し、海面から上昇していくクロエドゥマ·ファンガーズタイプ。
 鬼磯目が再攻撃の為、一度潜航した事を確認しただいしろは、対空機関砲でクロエドゥマを牽制しながら敵の海面上高度情報を二隻の姉妹艦とリアルタイムで共有リンクする。
「ん?違和感?」
 だいしろを庇うように浮かぶおにかますのブリッジ。だいしろからの映像に環巣は、クロエドゥマのローターブレードの動きと装甲面を滑って跳ねる機関砲の弾丸に着目していた。
「違和感?体調ですか?チーフ?」
 執間から環巣に見当違いともとれる言葉が届く。
「ん?、まぁ寝不足からの警戒出動からの夕方に見敵の出向の会敵状況だけど···マーティア、敵装甲の摩擦力、及び新機能ローターに警戒···」
 ·了解!アムアムしてあげます!
 潜航した鬼磯目は、クロエドゥマの海面下周囲を大きく螺旋状に周回するように潜り、後方部に捕獲爪グラップルクローで噛みつこうと高速で大周りしながら、クロエドゥマを狙った急速再浮上コースの調整に入る。
 鬼磯目の機体表面に塗布された塗料に添加されたアンバーニオンの活動停止済宝甲片塵は、機能を失っている現段階でも水とある程度反発する特性を持っているだけでは無く、マイクロレベルの気泡を船体表層に発生させ水の抵抗を低減、鬼磯目に僅かながらも確かなスピードアップをもたらしていた。

 ガパッッッ!

「!」
 海面より僅かに浮かび上がっていたクロエドゥマが、嘴からエゴザーガを吐き捨てる。海中に没するかと思われたその刹那、エゴザーガは手裏剣のように高速回転を始め、海面上に対空した。
 エゴザーガが回転を始める直前にだいしろのメンバーが目にしたその姿は、垂直尾翼の無い厚い両翼を持つ黒い戦闘機。それが今、糸で吊るされた玩具のUFOのようにフラフラかつ激しく回転してクロエドゥマの前に浮かんでいる。
「ビィブァ!そっちは頼んだ!」
 ォロー······
 ハグスファンとクロエドゥマの中にいる彼の相棒、ビィブァが掛け合う。そんな間にも鬼磯目は海中から急上昇し、クロエドゥマの直下からタイミング良く噛み付くべく捕獲爪グラップルクローの水圧ロック機構のスタンバイを行った。
 
 ヒシュルルル!
 ·あむっ!と!   ーガキン!

「!」
 ネズミ花火のように前方に向かってエゴザーガが飛び立つのと、鬼磯目がクロエドゥマの船底に捕獲爪グラップルクローを当てる。それはほぼ同時だった。
 しかしクロエドゥマの装甲表面に発生した謎の粘膜ヌメリによって鬼磯目の牙が滑り、ダメージはほぼ与えられないまま鬼磯目は再度潜航する。
 ·ダメか?次っ!
 鬼磯目は海面スレスレまで浮かび上がりながら一キロ程クロエドゥマから離れ、シンプルなUターンで再度接近する旨を僚艦達に通達する。

 デシュバ!シュパァアアーーー!

 それを待っていたかのようにに、だいしろから対艦ミサイルが二発連続でクロエドゥマに向かって飛ぶ。しかしその一発が、高空から垂直下降して来た未だ手裏剣のような動きで飛ぶエゴザーガの必要最小限のバルカンで撃墜された。そして一発はクロエドゥマの左サイド付近に着弾し、熱せられた装甲表面上の粘膜が海上にビシャビシャと飛び散る。着弾箇所は僅かに凹みと焦げが認められる程度だけだった。
 その影響か、クロエドゥマは浮力を失い一度僅かに前のめりになり、ゆっくりと回っていたローターブレードの先端が海面に接触した時だった。
 
 ピシュイアアン!

 海面に触れた一瞬、シャープな音を立て超高速で一度回転するローターブレード。それを見た束瀬は全部隊にアドバイスを送る。
「あのローター、見た目よりも高速で回転してませんか?ストロボ効果···何らかの錯覚を利用したものの可能性···いや、もしかしたらローターブレードあれは揚力を得る為のモノですら無いのかも知れない?」
「!、と、いうと?」
 胡桃下が束瀬の予想に食い付く。
「例えば···ローターブレードに偽装した切断用兵器···?」
「なんだと?···」
「···艦長!航空支援、裂破の本作戦域到達まで二百四十秒以内です」
「敵艦載機発進の情報を共有!警戒させろ!」
「了解!」

 重深隊が再び連携攻撃の体勢を整える中、だいしろとおにかますの艦下に忍び寄る透明な影···
 透明な糸のような筋張りに纏わり付く透明な粘膜スライムフチをヒラヒラと踊らせ海水を掻き、だいしろとおにかますのスクリューを目指して向かっていた。


 だいしろの対空砲火をくぐり、戦闘領域を飛び回るエゴザーガは近付いて来る戦闘機の気配に気付く。
「!、ビィブァ!鬱陶しいからまず先に敵戦闘機あっちからやる!」

 こんな事して何が不満なんですか!?

「!、想文?誰だ?」
 ハグスファンの脳裏に女性の声の想文が着信した。








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