神樹のアンバーニオン (2) 逆襲!神霧のガルンシュタエン!

芋多可 石行

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切 創

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 T都、馬瀬間まぜま区の公園。
 七継 五雄は一人でぼやきながら、散らばった百連フリスビーを一人で片付けていた。
「なんだよもー!宇留は急用そうだったからウチラで片付けとくーって言ったのに、月井度もおきになんとかアリガトー!とかブツブツ言いながら急に居なくなっちゃってもー!」
 五雄は二十枚程集めたフリスビーを一度ケースに戻し、残りの回収に戻った。
「ふぅ!···宇留、軸泉事件に巻き込まれて、まだなんか国防隊の人達と関わってんだな?なんでだろ?」
 ある一角に纏まって落ちていたフリスビーを八枚拾い上げた五雄は、ふと公園横の歩道を猫背で歩く少年に気付いた。
「!···倉岸?···」
 今は学校に来ていない宇留達のクラスメート、倉岸 騰。
 五雄は、ちょっと見ない間に前髪が伸びてちょっとカッコ良くなってんじゃん。と思ったものの、前髪の隙間から暗く濁った艶消しの瞳孔が不気味に公園内に向いたので五雄は感想を撤回する。同時に倉岸の母親が最近学園で問題を起こした事も思い出した。
「へ?、ヘヘハぁ!」
 倉岸は嫌な笑顔を五雄に向けた。
 (う!ええ?あんな奴だったっけ?)
 五雄は何か、心の池に大きな石を投げ込まれたようで、やけにその波立った動揺の波紋に気が滅入る。だがそれだけで、倉岸はそのまま向き直り、立ちすくむ五雄を尻目にどこかへと歩いて行ってしまった。





 
「何万ポイント入りましたか?ボク達忙しくてちょっ、今数えて···更新見てみます!······ふわぁぁ!見てくれたヒトでいっぱい!?ありがとうございます!はい!···はい!よろしくお願い致しますですぅ!···ではまた明日······」
 ロルトノクの琥珀アンバーの中で、眼鏡に就活スーツ、手に小さいスマホを持ったヒメナがどこかに連絡を終え、スマホに向けられた笑顔を納めるタイミングを探していた。
「お疲れ様!」
「うん!」
 宇留は制服の前を閉じて一度首から下げたロルトノクの琥珀ヒメナを隠す。
 再び制服の前が開かれると、ヒメナの服装はいつものドレスに変わっていた。
「あ!クジラだ!」
 鍋子市沖の琥珀の泉ドッグを出発し、重深隊の戦場に向かって海中を高速で泳ぎ進むアンバーニオンは、クジラとすれ違った。




 S県沖、ハグスファンはいきなり届いた想文に返事を出す。
「誰だ!名を名乗れ!」
 まだ言うわけ無いじゃないですか!
「秘匿か、ならば敵って事はぁ分かった。俺もお前の質問に言い返す訳が無い」
 ハグスファンはそう言うと、接近中の裂破にエゴザーガを向かわせた。
 あ!待ってよ!もう!しょうがないなぁ!よいしょ!
 ハグスファンに語り掛けていた想文の主は何かをしている途中のようだった。
 そして鬼磯目も急速Uターンで再びクロエドゥマ目掛けて突き進む。


「終わったな?」
 だいしろのブリッジで一人の隊員が呟いた。
「おま!縁起でも無い事···」
「ああ、敵の方がな?」
 飛び去ったエゴザーガを見た胡桃下は、呟いた隊員の代わりに失言を責めた隊員に訂正する。
「裂破の機長はあの裂断の追佐和くんの師匠だ」
「え!」
 
 特殊攻撃用爆撃機改 裂破レッパは、重合隊の扱う機体の中でも、戦闘機で斬るという華麗な技を持つ裂断とは異なり、巨大な切創攻撃用片刀せっそうこうげきようへんじんを何枚も落として攻撃するという、地味ながらも最悪で強力な攻撃を行う機体である。
 ちなみに隊内の一部では「ダイメーワク」という名で囁き叩かれていた。

「嫌な仕事を進んで引き受けてくれる等和田ひとわださんには頭があがらんよ···」
 胡桃下が座席で前に身を乗り出したその時、クロエドゥマと睨みあっていただけのだいしろの船体が僅かにゴコっと揺れた。

「爆撃機か?!ビィブァの所へは行かせん!」
 敵を確認したハグスファンは回転するエゴザーガの軌道を裂破へと向けた。
 一方、エゴザーガを正面で確認した裂破のコックピット。機長のベテラン女性隊員、等和田 圭子けいこは一切の躊躇なく無言で操縦桿を引いた。
 機首が跳ね上がり、機腹があらわになる。そこに見えた二つの長方形のハッチから、平行四辺形の巨大なカッターのような刀片が数枚バラバラと前方に飛ぶ。
「うおっ!」
 ハグスファンはエゴザーガを回避させようとするも、二枚程機体に被弾させてしまった。ヒットする瞬間回転が止まり、致命傷こそ免れたものの、二ヶ所小破した機体の姿がその時だけ明らかになる。
 距離を取ろうとするエゴザーガの後ろに、爆撃機に似つかわしくない動きで瞬時に張り付く裂破。
 「くぅ!効く効く!」
 等和田の隣席に座る副長の男性隊員。丹理田あかりだがニヤニヤしながらエゴザーガを見据えた。
 明らかに機体や人員に負担がかかっているであろう動きにハグスファンは思わず裂破の心配さえしてしまう。
「なんだコイツは!そんなに跳ね回れる機体モンじゃないだろ!」

「······」
 エゴザーガを追いかけ回す等和田は、まるで読書でもしているかのように静かに操縦桿を操る。
 当たらなかった刀片に開いた浮きブイの花が浮かぶ洋上で、裂破とエゴザーガのドッグファイトが始まった。



「機関部です!スクリューが動きません!何かに絡まったようです!」
「こちらでも確認した!ただちに究明と対策を!」
 だいしろで突如勃発したスクリューのトラブル。そして海中で加速しようとした鬼磯目にも異変が起きる。
 ·わっちゃっちゃ!なに?!
 急激な意図しない減速に後ろ髪を引かれる鬼磯目。
 ·スクリューしっぽに何か···?
「すまん、マーティア、こっちもだ!」
 ·ええ!アキサチーフおにかますオネーサマもですか!?
「敵の攻撃か?レーダーには?」
「いいえ!レーダーには直近で接近したものはありませんでした!」
「ぬ···!」
 緩慢と言っていい程のクロエドゥマの動きに、余裕を持ち過ぎてしまっていた胡桃下は少々焦る。
 ·アキサチーフ!私が確認します!
「マーティア!」
 ·私の方は幸いスクリューの異常のみで現段階で機動用船胴への異物吸い込み流入は確認されていません。スクリューの異常確認のお時間を下さい。
「ああ!だが焦るな?だいしろの方は攻撃を続行しつつ、無人潜水艇ストレイによる確認を行う!」

 潜水艇質事件を教訓にした無人機だからって、私の仲間が未知の危険に晒されるなんてホントはまっぴらなんですからね?!···それに真っ先に駆け付けたいのは、だいしろマムに居るあなたの所なのに······

 鬼磯目は間接を限界まで曲げ、自身の尾に噛みつく勢いで円を描く。
 ·う!ろ!ぼ!ろスッ!よいしょ!ん!これは!
 環巣は、 見えているようだな? と思ったが黙っていた。
 鬼磯目のスクリューには透明な何か粘膜のようなものが絡まっていた。

 これ!知ってるかも······ビィ···ブァ?


 「!」

 クロエドゥマを操縦する怪獣、ビィブァは名前を呼ばれた気がして、一瞬動きを止めた。






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