神樹のアンバーニオン (2) 逆襲!神霧のガルンシュタエン!

芋多可 石行

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駆 抜

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[お疲れ様です]
 中央指揮所のモニターに写し出された胡桃下は、敬礼もそこそこに状況を洗毬に告げた。
[先程、氷結島の推定直径が千五百メートルを越えました]

 T都湾口に陣取り、氷結島への監視警戒を行っている重深隊とその他数隻の艦艇。
 胡桃下の報告が一段落着いた段階で束瀬が話を切り出した。
[司令長、かつての···シロガタ事件の三日前にあった異変をご存知ですか?]
「ん?」
[T都湾内に流れ着いた軽石か甲殻類の死骸のたぐいだと思われていた大量の漂着物が、再結合リコンビネーションのような振る舞いを繰り返した出来事です。中には生物のように動いていた結合箇所もあったという噂も存在します]
「あったあった、結合体!あの時は何が生まれる筈だったのか意見が白熱したなぁ?なんだっけアレ」
 洗毬と席を並べる高官が、漂着物体の資料を閲覧する気満々で近くのスタッフに言った。
「······まさか、その事象と関連して君はあれが氷では無いという可能性に言及しているのかね?」
[はい、もしあれ程の大きさ、成長スピードの氷塊であるのならば、都内周辺の気象などにも少なからず影響を与えるハズです。ですが例の霧同様今回もそれが無く、そしてこれは氷塊のサンプルが無ければ断言こそ出来ませんが、現段階において、漂着結合体との類似点が散見されます]
「···うぅむ?氷··塊サンプルの回収と···分析を氷結島の対策に結び付けたい所だな?こちらでも回収班を編成する。別動として鬼磯目にもヒットアンドアウェイで至急回収作業を頼めるか?」


 だいしろのブリッジ。

「艦長!鬼磯目、出ました」
「まだ命令してないぞ!」
「あ!申し訳ありません!司令長が至急って事でしたので!つい!」
 環巣アキサの謝罪に束瀬は疑問を持った。
「(本当か?···彼女マーティアが勝手に抜きん出たんじゃないのか?)」
 ·すみませーん。待ってるよりはイイですよね?うぉー!サンプル回収は一番乗りジャー!
 鬼磯目は真っ直ぐ氷結島へと向かい泳いだ。

「全く······」
 呆れる胡桃下の視線の先では、曇り空の向こうで日が暮れようとしていた。







 衣懐学園 デリューワールドの廊下。

 クイスランと向かい合って立つ折子は、暗い廊下に散らばった壁の破片の中から、一年B組のクラス名プレートを拾い上げてニコッと微笑んだ。
「なるほど···」
 折子の左側にある教室の壁は破壊され、所々空いた穴の向こうには、禍々しい赤紫色の奔流がゴゥゴゥとほとばしっている。
「せっかく作ったのに悪いコ達、ガラス位なら許してあげようと思ったのに?で?なるほどって?」
「うぅん?こっちの、偶然の話」
「?······まぁいいわ、あなたの為にコストをほぼ全振りして、残り物レベルで作った幼稚な罠だったし、その答えもあなたを取り込んでから暇な時にでも確認しようかしら?」
「!、とりこむ?」
 折子はクラス名プレートをクイスランから目を離さないように静かに前に置いた。
「アバターイグジスとはいえ、土地神が地元を離れ過ぎて力を消費し続ければ······ましてや、マスターデータそのものが乗ってるとなれば······」
 シキッッ!
 クイスランの瞳孔が二回り大きくなり、笑みを見せていた口元の白い歯がギザギザの牙に変わった。
「あなた!······土地神を!」
「どのくらい“来てもらったか?„覚えてないわぁ?」
「ぐっ!」
 折子が押さえていた肩の上で赤紫色の光が弾ける。
「プレゼントはお気に召して?」
「なんて事!···バビエル協定に抵触すれば調停者達に目を付けられるわよ?」
 折子は怯まずに堂々と告げた。
「あのお方の為、あなた程の存在を抑えるんだもの?覚悟の上よ?」
 折子の退路を断つように、廊下の前後に本人間達が殺到する。彼らが何故か折子に近付けない理由は、既に折子とクイスランの間で覇気と殺気がぶつかり合っていたからであった。
「!、あのコ達、出られたようね?」
「もう遅いわ?何もかも」
「宇留?聞こえる?」
 クイスランを無視するように、折子は宇留に想文を送った。



 現実世界の衣懐学園。一年B組前の廊下で宇留は折子の想文に答えた。
「丘越さん!丘越さんも早く」
 宇留の胸元にはロルトノクの琥珀アンバーに戻ったヒメナ。そして傍らには磨瑠香が心配そうにくうを仰ぐ宇留を見ていた。
 (こっちはなんともないよ?頑張って?それより···は··やく···)
「丘越さん?」

「···おーーい!···」

 遠くからわんちィの声が聞こえた。
「あ!わんちィさんだ!」
「宇留くん!行こう!みんな出られたかな?」
「うん!行こぅ!」
 三人は差し当たり、わんちィの声が響く方向、昇降口へと向かった。そして磨瑠香は、ここが一年生のクラス棟だった事に気付き、一年B組のクラス名プレートを見て少し微笑んで宇留達の後に続いた。。


「ぅおおお!さがしたヨぉーーー!」
 昇降口玄関を出た宇留と磨瑠香はわんちィとパニぃと合流する事が出来た。
「わんちィさん!他のみんなは?」
「全校生徒職員避難だよ!あと十人位の···クラスメートかな?変ナトコに居たって!後から来る宇留くん達よろしくって!先生達と逃げたよ?」
「アト、顔にキズのコにも会ったよ?」
 とパニぃ。
「!、よかった~~みんな出られたんだね~?」

 磨瑠香が喜んでいる間、避難?変なトコ?と宇留とわんちィが首をかしげ合っていると、いきなり近くに何かがズシャッと着地した。

 !ーーーーー

「······」
 僅かな土煙が晴れ、宇留達の前に立っていたのはソイガターだった。
「ネコチャン!」
「「うああ!ガタゴンベェだーー!」」
 わんちィがソイガターに向けて指を差した。
「だから!そんニャ名前じゃにェーって!それよりヒメニャ!スマイ!ヤツだ!」
「!!」



 T都湾。
 氷結島の巨大化が収まりつつある中、モーニンググローリーがゆっくりと湾内に向かって降下を開始した。














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