神樹のアンバーニオン (2) 逆襲!神霧のガルンシュタエン!

芋多可 石行

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封じた心

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 SP達と手分けをして校舎内を探索するわんちィとパニぃは、二年B組に辿り着いた。
「おらんぞ!」
 無人の教室内は、机の上に置かれたままのバッグ等、まるで今先程まで生徒達が帰り支度をしていたかのように時が止まっていた。
「ぅうゆ!アノヒトの気配がする」
「マジで?」
 パニぃの表情がドヨンと曇った。
「テコトハ“あっち„絡みだなコリャ!いいじゃん!取り憑かれてしんどい分ヘアサロ代浮くんでショ?またお寿司奢ってよ?」
「え~?」
「······あ、あの?」
 二人を呼ぶ少年の声に、わんちィとパニぃは振り返った。





 異世界教室デリューワールド内のあらゆる物を開けてみては、脱出のヒントを探す宇留達二年B組の生徒達。
 廊下で蠢く本人間達に由来する緊張感プレッシャーに耐えられなくなった最は、ある学園七不思議を雑談に添える。
「シロガタ事件といえば!この学校のある高台も当時の怪獣研究の関連施設があったってウワサがあるんだってね?空気乃ひめなさん!残留思念とかなんかよく知ってたねぇ?」
「う?、うん······」

「えーと?開けるトコ開けるトコ······」
 夢令は近くに居た五雄の下半身を凝視した。
「こ!チャックここは無いだろ~!」
「バッカじゃないの!ほら!真矢実ちゃんも!みんな自分の服は最後にしようよー?」
 薪梨が呆れたように全員を見渡した時だった。

 カララッ!

「!」
 マユミコ委員長が偶然開けたペンケースがひとつ。そのチャックに連動して教室の後部出入口が開き、その向こうから光が差し込む。
「ビンゴ!いつもの後ろ扉の音ーーー!」
 イサヤが嬉しそうに叫んだ。
「やったーー!」
「え、出れんの!」
 全員が教室を後方に集まる。宇留、姫菜ヒメナ、磨瑠香、折子はそれぞれ四人で互い違いに微笑み合った。
「キャーー!」
「!」
 ラーヤが叫ぶ。後ろから折子の肩を、社会の教科書が変化した本人間がいつの間にか掴んでいた。
「く!···」
 眉をひそめる折子。宇留は考えるより先に体が動いて、気が付けば教科書人間の表紙頭を掴んで投げ飛ばしていた。それをコーンバーを持った磨瑠香がホームラン予告付きのフルスイングで叩きつけて、バラバラになった紙片が教室に舞う。床に散らばった紙面上では、液晶画面では無いにも関わらず、奇妙な文字の羅列が上下にスクロールを繰り返しながらその文字数を減らしつつ消えて、普通の紙に戻った。
「早く行こう!」
 廊下から危機感だけが染み込んで来る気配に、宇留は全員を出口に誘う。
「ええ!大丈夫よ!みんなその光の中ヘ!」
 折子のお墨が付いた所で、前に出る一人。
「俺から行ってみる!トゥああ!」
 最が光の中に飛び込む。続けてラーヤ、宿里、真矢実、トノハル、薪梨が飛び込む。イサヤが飛び込もうとした時、姫菜が声を掛けた。
「菖蒲摘さん!」
「!」
「ありがとうね?あなたのお陰」
「ぅ!う~ん」
 イサヤは腹を括ったような、仕方の無さそうな笑顔で姫菜に言った。
「ごめんね?空気乃さん、怖がって···また会おうね?幻の女子!」
 イサヤは姫菜の両手をグッと握って光の中に飛び込んだ。
「?なんだよ!幻って!?」
 夢令がイサヤの後を追う。
「五雄!先に行って!」
「お、おう!宇留も来いよ?」
 五雄も光の先へ向かった。
「月井度くんがまだ······」
 マユミコ委員長は現を心配して踏み出せないで居た。
「そのコなら大丈夫よ」
 折子がマユミコ委員長に告げた。
「え?どうして?」
「ここには、十二“人„しか居なかったから」
「!······」
 残る四人から発する説得力を持った何らかの覇気のようなもの。マユミコ委員長は何かを察しつつも気落とされる事無く、ピンと背筋を伸ばして宇留と磨瑠香に告げる。
「わかった、もう戻ってるかもだしね?······ねぇ、磨瑠香、須舞くん、丘越さんの言う通り 何か あったんだとしたら、もうこんな事が無いようにしようね!」
 凛とした目差しでマユミコ委員長は両拳を顔前で握った。宇留と磨瑠香は笑顔で返す。
「うん!ありがとう!マユミコ!」
 マユミコ委員長の拳は開かれ、磨瑠香との両手ハイタッチに変わった。

 マユミコ委員長が脱出し、四人になった教室。宇留は磨瑠香にも脱出を促す。
「磨瑠香さんも早く······」
「う·····むーーー!もー、宇留くんッ!」
「え!」
 宇留は急に磨瑠香に軽く怒鳴られた。
「なんで普通なの?せっかくヒメナちゃんリアルサイズなんだよ!こんな、厳しい時ではアリマスが···!もっと仲良くしたら?」
「ええええ?」
 さすが、兄妹揃って良い意味で突拍子も無いなぁ、という思いを飲み込んだ宇留は、磨瑠香の気遣いに奇妙な爽やかさを感じていた。
「ありがとう!マルカ!でも、今はみんなの安全が大切だから···」
「ヒメナちゃん!ちし考えたんだよ?ヒメナちゃんずっと琥珀の中で何年も!···誰にも抱きしめてもらえて無いんじゃ?って思ったら!ちし、ゾッとしちゃって!だから···その···わ!わああ!」
 引っ込みがつかなくなったであろう磨瑠香は並んで立つ宇留と姫菜ヒメナ、それぞれの肩をグッと引き寄せた。
「「!!」」
 磨瑠香に半ば強引に抱き合わせられた宇留と姫菜ヒメナ。偶然宇留の手が回った制服のパリッとした肩口から伝わる姫菜ヒメナの体温。

 ずっと誰にも抱きしめられない。

 磨瑠香の言葉を脳内反芻した宇留もヒメナの境遇にゾッとした。
 ヒメナのどこかミステリアスな余裕に阻まれ気が付けなかった事······宇留は恥ずかしさよりも人として、友人パートナーとして、ヒメナを思い労る。

 ク···

「!」
 姫菜ヒメナは少し、ほんの少し、宇留の鎖骨付近に額を強めにうずめた。宇留も腕を少し、ほんの少しだけ背中に回す。

「!ーーーー」
 わかっていた。涙腺が緩み、自分の中のもう一人の自分がナニヤッテルノ?と憤る。しかしもう一人の違う自分はというと、友人達の尊い光景に満足すらしていた。

 結果、磨瑠香の闘志は消えずに更に燃えたぎった。

 バギャン!
「ゲアアアアア!」
「ブグアアア!」
「!」
 教室の前扉が破壊され、大量の本人間達が雪崩れ込んで来た。そして四人に狙いを定める。


「さあ!行きましょう!」

 折子が笑顔のままで光の粒子に変わる。 体を離したヒメナも、宇留に笑顔を見せて光の粒子に変化していく。溶け合うように混じった粒子は宇留の右手に集い、輝く大剣、等身大の慈龍剣バジーク アライズを形成した。
 (にゃンバーニオン、コハクラッシュだぜ!お嬢さん?にゃんバレ!)
「!、ネコチャン!」
 磨瑠香のコーンバーからアッカの想文が届いた。
「さあ!ここをブッ壊して?前に進もう!」
 バジーク アライズからイタズラっぽい折子の声がした。
「磨瑠香さん?」
「?、宇留くん···」
 宇留は磨瑠香の前に左拳を軽く付き出す。
「!、うん!」
 磨瑠香はニコっと笑って、コンと宇留の拳に拳をかち合わせた。

 本人間達が飛び掛かる瞬間。宇留と磨瑠香はそれぞれの武器を振りかざし、教室ごと敵を薙ぎ払う!


「「アンバーーーニオン!コハクラッシュ!」」



 二人の切っ先から太陽光のような光の洪水が満ち溢れ、宇留達は光に砕かれた暗闇から脱出した。











「······」
「お待たせしたわ?」

 暗いデリューワールドの廊下。
 折子とクイスランが対峙している。

「本命は私ね?」
 折子は先程教科書人間に掴まれた肩を気にしていた。
 









 

 


 
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