33 / 52
封じた心
しおりを挟むSP達と手分けをして校舎内を探索するわんちィとパニぃは、二年B組に辿り着いた。
「おらんぞ!」
無人の教室内は、机の上に置かれたままのバッグ等、まるで今先程まで生徒達が帰り支度をしていたかのように時が止まっていた。
「ぅうゆ!アノヒトの気配がする」
「マジで?」
パニぃの表情がドヨンと曇った。
「テコトハ“あっち„絡みだなコリャ!いいじゃん!取り憑かれてしんどい分ヘアサロ代浮くんでショ?またお寿司奢ってよ?」
「え~?」
「······あ、あの?」
二人を呼ぶ少年の声に、わんちィとパニぃは振り返った。
異世界教室内のあらゆる物を開けてみては、脱出のヒントを探す宇留達二年B組の生徒達。
廊下で蠢く本人間達に由来する緊張感に耐えられなくなった最は、ある学園七不思議を雑談に添える。
「シロガタ事件といえば!この学校のある高台も当時の怪獣研究の関連施設があったってウワサがあるんだってね?空気乃さん!残留思念とかなんかよく知ってたねぇ?」
「う?、うん······」
「えーと?開けるトコ開けるトコ······」
夢令は近くに居た五雄の下半身を凝視した。
「こ!チャックは無いだろ~!」
「バッカじゃないの!ほら!真矢実ちゃんも!みんな自分の服は最後にしようよー?」
薪梨が呆れたように全員を見渡した時だった。
カララッ!
「!」
マユミコ委員長が偶然開けたペンケースがひとつ。そのチャックに連動して教室の後部出入口が開き、その向こうから光が差し込む。
「ビンゴ!いつもの後ろ扉の音ーーー!」
イサヤが嬉しそうに叫んだ。
「やったーー!」
「え、出れんの!」
全員が教室を後方に集まる。宇留、姫菜、磨瑠香、折子はそれぞれ四人で互い違いに微笑み合った。
「キャーー!」
「!」
ラーヤが叫ぶ。後ろから折子の肩を、社会の教科書が変化した本人間がいつの間にか掴んでいた。
「く!···」
眉をひそめる折子。宇留は考えるより先に体が動いて、気が付けば教科書人間の表紙頭を掴んで投げ飛ばしていた。それをコーンバーを持った磨瑠香がホームラン予告付きのフルスイングで叩きつけて、バラバラになった紙片が教室に舞う。床に散らばった紙面上では、液晶画面では無いにも関わらず、奇妙な文字の羅列が上下にスクロールを繰り返しながらその文字数を減らしつつ消えて、普通の紙に戻った。
「早く行こう!」
廊下から危機感だけが染み込んで来る気配に、宇留は全員を出口に誘う。
「ええ!大丈夫よ!みんなその光の中ヘ!」
折子のお墨が付いた所で、前に出る一人。
「俺から行ってみる!トゥああ!」
最が光の中に飛び込む。続けてラーヤ、宿里、真矢実、トノハル、薪梨が飛び込む。イサヤが飛び込もうとした時、姫菜が声を掛けた。
「菖蒲摘さん!」
「!」
「ありがとうね?あなたのお陰」
「ぅ!う~ん」
イサヤは腹を括ったような、仕方の無さそうな笑顔で姫菜に言った。
「ごめんね?空気乃さん、怖がって···また会おうね?幻の女子!」
イサヤは姫菜の両手をグッと握って光の中に飛び込んだ。
「?なんだよ!幻って!?」
夢令がイサヤの後を追う。
「五雄!先に行って!」
「お、おう!宇留も来いよ?」
五雄も光の先へ向かった。
「月井度くんがまだ······」
マユミコ委員長は現を心配して踏み出せないで居た。
「そのコなら大丈夫よ」
折子がマユミコ委員長に告げた。
「え?どうして?」
「ここには、十二“人„しか居なかったから」
「!······」
残る四人から発する説得力を持った何らかの覇気のようなもの。マユミコ委員長は何かを察しつつも気落とされる事無く、ピンと背筋を伸ばして宇留と磨瑠香に告げる。
「わかった、もう戻ってるかもだしね?······ねぇ、磨瑠香、須舞くん、丘越さんの言う通り 何か あったんだとしたら、もうこんな事が無いようにしようね!」
凛とした目差しでマユミコ委員長は両拳を顔前で握った。宇留と磨瑠香は笑顔で返す。
「うん!ありがとう!マユミコ!」
マユミコ委員長の拳は開かれ、磨瑠香との両手ハイタッチに変わった。
マユミコ委員長が脱出し、四人になった教室。宇留は磨瑠香にも脱出を促す。
「磨瑠香さんも早く······」
「う·····むーーー!もー、宇留くんッ!」
「え!」
宇留は急に磨瑠香に軽く怒鳴られた。
「なんで普通なの?せっかくヒメナちゃんリアルサイズなんだよ!こんな、厳しい時ではアリマスが···!もっと仲良くしたら?」
「ええええ?」
さすが、兄妹揃って良い意味で突拍子も無いなぁ、という思いを飲み込んだ宇留は、磨瑠香の気遣いに奇妙な爽やかさを感じていた。
「ありがとう!マルカ!でも、今はみんなの安全が大切だから···」
「ヒメナちゃん!私考えたんだよ?ヒメナちゃんずっと琥珀の中で何年も!···誰にも抱きしめてもらえて無いんじゃ?って思ったら!私、ゾッとしちゃって!だから···その···わ!わああ!」
引っ込みがつかなくなったであろう磨瑠香は並んで立つ宇留と姫菜、それぞれの肩をグッと引き寄せた。
「「!!」」
磨瑠香に半ば強引に抱き合わせられた宇留と姫菜。偶然宇留の手が回った制服のパリッとした肩口から伝わる姫菜の体温。
ずっと誰にも抱きしめられない。
磨瑠香の言葉を脳内反芻した宇留もヒメナの境遇にゾッとした。
ヒメナのどこかミステリアスな余裕に阻まれ気が付けなかった事······宇留は恥ずかしさよりも人として、友人として、ヒメナを思い労る。
ク···
「!」
姫菜は少し、ほんの少し、宇留の鎖骨付近に額を強めに埋めた。宇留も腕を少し、ほんの少しだけ背中に回す。
「!ーーーー」
わかっていた。涙腺が緩み、自分の中のもう一人の自分がナニヤッテルノ?と憤る。しかしもう一人の違う自分はというと、友人達の尊い光景に満足すらしていた。
結果、磨瑠香の闘志は消えずに更に燃え滾った。
バギャン!
「ゲアアアアア!」
「ブグアアア!」
「!」
教室の前扉が破壊され、大量の本人間達が雪崩れ込んで来た。そして四人に狙いを定める。
「さあ!行きましょう!」
折子が笑顔のままで光の粒子に変わる。 体を離したヒメナも、宇留に笑顔を見せて光の粒子に変化していく。溶け合うように混じった粒子は宇留の右手に集い、輝く大剣、等身大の慈龍剣バジーク アライズを形成した。
(アンバーニオン、コハクラッシュだぜ!お嬢さん?にゃんバレ!)
「!、ネコチャン!」
磨瑠香のコーンバーからアッカの想文が届いた。
「さあ!ここをブッ壊して?前に進もう!」
バジーク アライズからイタズラっぽい折子の声がした。
「磨瑠香さん?」
「?、宇留くん···」
宇留は磨瑠香の前に左拳を軽く付き出す。
「!、うん!」
磨瑠香はニコっと笑って、コンと宇留の拳に拳をかち合わせた。
本人間達が飛び掛かる瞬間。宇留と磨瑠香はそれぞれの武器を振りかざし、教室ごと敵を薙ぎ払う!
「「アンバーーーニオン!コハクラッシュ!」」
二人の切っ先から太陽光のような光の洪水が満ち溢れ、宇留達は光に砕かれた暗闇から脱出した。
「······」
「お待たせしたわ?」
暗いデリューワールドの廊下。
折子とクイスランが対峙している。
「本命は私ね?」
折子は先程教科書人間に掴まれた肩を気にしていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる