神樹のアンバーニオン (2) 逆襲!神霧のガルンシュタエン!

芋多可 石行

文字の大きさ
37 / 52

唸る声

しおりを挟む


 T都湾上に吹き降りて来たモーニンググローリーは、海水の上で爆煙が弾けるように広がり、霧を辺り一帯一面に敷き詰め撒き散らした。
 その霧に包まれた氷結島は、平均直径ニキロメートルを目前にしてその成長を止め、一度沈黙する。
 相変わらず立ったままで背負ったレンズを都内の方向に向けているエギデガイジュ。コックピットの内部でアンバーニオンの気配を察したリキュストがポツリと呟く。
「む!、来たか?アンバーニオン。お前も早く来い小僧···!」
 (······交代だ、リキュスト)
 リキュストの鼓膜にエシュタガの声が響く。リキュストは歯噛むような表情で右肩を僅かに縮こめた。
「へぇよ!」

 ズドォォォ!

 エギデガイジュは、背負っていたレンズを地面に立てて置く。そうなってもレンズの面は都内を向いたままだった。
 一段と濃い霧が流れて来てエギデガイジュの周囲を包みはじめると、霧のベールはそのままその機体を覆い隠していった。





 比較的湾内よりは霧がまばらに立ち込めるT都の空港。航空機の離発着は制限され、待避する人々と、駆け付ける国防隊が互いにすれ違い合っていた。

 ···ズン···ズ···グズン···ゴ···

 滑走路先端の作業道路で、氷結島の監視準備を行っていた国防隊の隊員達は、一瞬地面を揺らした地鳴りのような音に反応して作業の手を止める。

 ···ズグン···ドズグン··ドズグン·ドズグン!······

「なんだ?!」
「足音?」
 隊員達が注目する音源の方向。霧が切れた暗がりの空間から、滑走路を照らす照明に浮かび上がったアンバーニオン ソイガターがその姿を現し、肉食獣のように四つん這いで滑走路脇の土地を疾走してきた。
「!、うわああ!」
[!、······っかれさまでーーす!]
 隊員達に気付いた宇留。アンバーニオン ソイガターは隊員達に声を掛けるや否や、滑走路の先端から猫のように数百メートルジャンプして海へと飛び込んだ。

 ドゥシャアアアアッ!!

「あ···あ···アンバーニオンサニアン ワンか?今の?」
「本部!王子様出陣!海へ入っ···」
 ヴゴッッ!
 その小隊は遅れてやってきた突風に煽られた。



 サンプル回収ミッションの為に氷結島へとやって来た鬼磯目マーティアは、接触後即帰還ヒット&アウェイの命が出ているにも関わらず、その場で数秒氷結島の様子を海中から伺っていた。

 寒くないから氷じゃないよね?やっぱりフェルメプンなの?おーい!フェルメプン!

「······」
 一秒にも満たない僅かな時間の中で、考え事と想文の送信を行うマーティア。しかし想文で語りかけた氷結島···、マーティアが知り合いの怪獣が氷結島の正体では?と思ったその疑念に、氷結島は何も答えなかった。

 やっぱり似てるんだけどな~?違うのかな~?んじゃちょいと貰っちゃうよ?

 鬼磯目が捕獲爪グラップルクローで氷結島の一部に突撃して即、捕獲爪をガギンと閉じる。
 捕獲爪の間には、しっかりと氷結島のサンプルが挟み込まれていた。

 これでよしと!じゃあ寄り道ついでに島の上でもパッと見て来て、パッと報告するかぁ!
 
 鬼磯目は氷結島のふちに回り込み、機動用船胴の推進機を全開にして船体を垂直に立て、船首をまっすぐに海面上に押し出していく。そのままクッと鎌首をもたげ、氷結島の方向と思われる方を向いた。

 すごい霧···(視えてないケドわかる)······

 ビシュィーーーーー!グカッ!

「!」
 突然霧の中から飛んできた拳付きのワイヤーが、様子を伺っていた鬼磯目の捕獲爪をガシッと掴む。
 そのまま巻き取られたワイヤーによって無理矢理氷結島の方へ引き寄せられた鬼磯目は、霧が立ち込める白い大地に叩き付けられると共にズルズルと内陸方向へ引きずられる。
 ガキン、とワイヤーの巻き取りが終わる音がして、霧の中から拳の主が鬼磯目の顔前に姿を現す。

 既にエギデガイジュとの合体ガルンアップを終えたガルンシュタエンが、珍しげに鬼磯目を覗き込んでいた。

 くぐっ!お、女の子のキバをつねり上げるなんて最低ですね?!
 (む!···想文か??···何者だ?潜水艦キサマ?)
 !聞こえちゃった?じゃあ、こ、コイツが······
 (答えろと言っている!)
 エシュタガはガルンシュタエンの腕で、掴んだ鬼磯目を一度ガクンと揺らした。

 ······ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ···

 地震。海上に浮かび、殆ど地震の影響の無い筈の氷結島が揺れていた。
 琥珀色の目で周囲を睨み、地震の原因。その気配を探るガルンシュタエン。
 やがてその原因が足下まで迫っていると悟ったエシュタガとガルンは鬼磯目の牙を離し、ガルンシュタエンを一歩だけ後退させる。
 その瞬間、亀裂の入った白い地面から、琥珀色をしたドリルの先端が二つ、バキャンと現れたかと思うと、亀裂から一気に海水が吹き出した。
 まるで逆さまの滝のような凄まじい水量。
 ひええ!
 地面に落ちた鬼磯目は、ここぞとばかりに流れる落ちる海水の上をニョロニョロと滑り、海に戻って行く。
「!」
 先程まで鬼磯目を掴む為に伸ばしていたガルンシュタエンの腕が動かない。何者かが水柱の中で腕を掴んでいる!
 エシュタガがそう思った時、水柱の中で琥珀色の目が揺らめき、ガルンシュタエンの目と鼻の先にアンバーニオン ソイガターの顔が突き出て来た。

 ガ!ヴォォォォオオオオゥゥ!エシュタガぁあ

 アンバーニオン ソイガターと共にアッカが吠える。エシュタガのブレスレットの中でキョトンとしていたガルンは、負けじとガルンシュタエンにも吠え返えさせる。

 キギョォォォォォォォォオオン!!

 水飛沫の中で二体が至近距離で睨み合う様は、今にも殴り合いを始める闘士達のような蛮勇に溢れていた。

 アンバーニオン ソイガターが頭突きをしようと頭を引いた瞬間、ガルンシュタエンは掴まれていた腕を振り払い後退し、霧の中へと姿を消す。
「待て!」
 宇留の叫びと共に、天面を向きドリル形態になっていた琥珀柱が前傾して、再び琥珀の牙に変わる。
 ガルンシュタエンが退いた霧の中へと踏み出したアンバーニオン ソイガターだったが、ガルンシュタエンと入れ替わるように姿を現したのはエグルドーゴだった。
 かつて宇留達が相対した時とは異なる蜻蛉の尾、エグルドーゴのテールユニットは違うものに換装されていた。

 バシュンッッ!

 目の前で伸縮した削岩機パイルバンカーの先端を持ち前の瞬発力でかわすアンバーニオン ソイガター。パイロットのリキュストが悔しそうな声でスピーカーをハウリングさせて挑発する。
 [アンバーニオン!今度は本気だぜェ!砕いて加工して磨いてやッからこっちへ来い!]
 バシュンバシュンと削岩機のピストンを見せつけるエグルドーゴの挑発にあえてアッカが乗る。
「来いよ虫ヤロウ!琥珀ん中に閉じ込めてやるぜ!」

 ガ!ヴォォォォォォォオオオオウ!

 宇留達とエシュタガ達の次のラウンドは、虎の雄叫びと共に始まった。









 

 
 
 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

処理中です...