神樹のアンバーニオン (2) 逆襲!神霧のガルンシュタエン!

芋多可 石行

文字の大きさ
43 / 52

意を交わす

しおりを挟む





 ゴァシャアアアン!


 アンバーニオン ソイガターと、突進して来たガルンシュタエンのパンチ同士がすれ違い、強烈なクロスカウンターが決まる。
 弾け飛ぶ汗のように砕けた微量の宝甲が、チラチラと威力の抜け道に舞い散った。と、同時に再び二体の視線が交差する。
「!」
 ガルンシュタエンは更に打ち込もうとした手を止め、一歩引く。鼻先、右側頭部、頭上をツッと見えない力が通り過ぎる。ガルンシュタエンはそれらを全てを最小限の動きで回避した。
「ムッ?」
 猫拳空間ネコパンチフィールドを躱したガルンシュタエンを珍しげに睨むアンバーニオン ソイガターは、背部スタビライザーを器用にしならせ、振り向かないままでリゲルナイドのトゲコブ触手乱撃を、丁寧に一撃づつついてあしらっている。
「ボーズ?順番だぜ!」
 僅かに振り向き、リゲルナイドに目配せするアンバーニオン ソイガターを通してリゲルナイドに語り掛けるソイガターアッカ。余裕そうな口調とは裏腹に、背部スタビライザーの先端は、イライラしている猫のようにヒュンヒュンと跳ねていた。

 キギャアアッ!
 吠えたガルンシュタエンが、自身の上半身を覆う程度の綿飴空間コットンフィールドを発生させつつ前に踏み込む。
 ゴワァアッ!
 それに反応したアンバーニオン ソイガターが、前面に浮かぶ霧の塊に爪乱空間クローフィールドで刻み込む。
 戦闘機がマッハの世界に飛び込む際に現れる天使の輪。霧で出来たそのリングが両者の間で錯覚のように現れ、そしてその対消滅は一瞬で霧散する。
「ハイヴレスコス!···キ·ゴーータ!」
 ガルンシュタエンの背部から腰の横を通って伸びたトゲのような双剣が伸縮しアンバーニオン ソイガターに迫る。
「ナ!ンッシャアア!」
 肩を大きく振り回し、琥珀の牙で受け止めた双剣をいなすアンバーニオン ソイガター。琥珀の牙の先端は、双剣の力を逃がしやすい任意の方向に向かってしなり反れていた。
「!」
宇留虎ウルトラキーーック!」
 ーーーーーーシュドッ!
 冗談めいたネーミングに真剣さを伴った俊足は、飛行能力を右足に集中して加速し、ミドルキックとなってガルンシュタエンの左脇腹を目指す。だがガルンシュタエンは、右手でアンバーニオン ソイガターの脛を押さえようとする保険を掛けつつ腰を落とし、左肘を急降下させミドルキックを撃墜する。
 その合間に、後方へと引き延ばしていた双剣根元のサブアームを、今度は両側頭部の脇を通し双剣を突く。
 ゴッゴッゴッゴッゴンッ!
「!ーー」
 突撃しようする双剣の全面を猫拳空間ネコパンチフィールドが押さえて止め、その隙を突いて双剣の先端を両手でガシッと掴んだアンバーニオン ソイガターは、そのまま僅かに残る双剣の突進力を生かして引き寄せつつ、サブアームを軸にガルンシュタエンを頭上から後ろへと放り投げた。
「ぅどぉりゃあああ!」
「ーーーーーぬっ!」
「!ーー」
 ゴドゥアアーーーン!
 リゲルナイドは、投げ飛ばされ降って来るガルンシュタエンを受け止めようと数歩前に踏み込み手を伸ばすも、腕の中に振り下ろされたガルンシュタエンの落下重量を支えきれずに、結局両者は浴びせ倒しになった。衝撃で砕けた氷モドキが上方に散り上がる。

 ガゥ!ヴォーーーォォオオオオゥ!!

 雄叫びを上げるアンバーニオン ソイガター。
「ドォだ!······」
 腹部のイガトゥアーガのダメージは、宝甲によって修復されつつあったが、アッカには宇留達よりも先に痛みが迫りつつあった。








「鬼磯目!、マーティアより九番メッセージエマージェンシーです!」
「!、何があった!」
 鬼磯目の帰りを待つ重深隊の面々は、彼女からの緊急信号を受け取った。すぐに環巣がマーティアにコンタクトを取る。
「どうしたマーティア!」
 ·チ...フ!、氷 結島.....で、襲撃を...けました
「襲撃?」
「ぁちゃあ!やはり氷結島周辺は未だ電波が悪い!」
 執間が顔をしかめて焦る。
 ·...ンプルは回収完...了、目標、フェイ...ク サニア...ン!
「なんだと!」
「ヤツが氷結島に!」
 ·AMBERN..ION...も現着してて!、あ!
「鬼磯目後方に魚雷ーーー!」
 その報告に、おにかますのブリッジが一瞬で奮起する。
「マーティア!待ってろ!···おにかます!先行して援護に向かいます!」
「!」

 重深隊は氷結島方面に舵を取った。



 後方に二発の魚雷を認識した鬼磯目は、艦尾部を数度振り回しながら前進し、海水を掻き回して自身後方に渦流うずを生み出した。
 鬼磯目を追ってきた魚雷は渦に絡め取られ互いに衝突し、何故か呆気ない爆発を起こして残り渦の中にパラッと残骸を漂わせる。
 空砲!バカにしてくれちゃってー!

 空砲魚雷の残骸の上を飛び越えるようにやって来た潜航物体。
 エグルドーゴ水中マリンユニット。
 羽根と腕を畳み、下半身には小ぶりの潜水艦のような船体が装着されている。
「こんばんはーーー!今お話ヨロシーですかー?」
 エグルドーゴは存外な速さで鬼磯目に近付きながら、コックピットのリキュストが声を張り上げる。
 ······
 鬼磯目は振り返り、僅かに身を上品にたわませながら、エグルドーゴを睨むようにその場に浮かぶ。
「なんだありゃ!虫ウナギじゃねーか!」
 リキュストのその言葉に返答するかのように、無言の魚雷が一発発射される。
「アブネ!」
 エグルドーゴの右片羽根が開き、そこから放たれた何らかの波動が鬼磯目の魚雷を捉えた。
 ゥ   ワンンン!
 エグルドーゴのすんでの所で、魚雷は波動に包まれ爆発する。

 高級たかそうな機体···幹部えらいさんクラスかな?

「おー!いいぜ!今度はこっちも包んでやる!」
 エグルドーゴは右片羽根を畳み、推進機を吹かし鬼磯目に向かって前進を続けた。






 ガルンシュタエンはリゲルナイドと半ば支え合うようにしてその場で立ち上がった。
 その手には取り外された双剣ハイブレスコスが握られている。堂々と胸を張りほとんどダメージは見受けられない。
「!」
 宇留はかつて護森に貰った龍剣山神社のお守りを取り出し、瞳を閉じて眉間の前でクッと握り締め祈った。
「よろしくお願いします!」
 するとアンバーニオン ソイガターは琥珀の牙に手を伸ばし、そしてその両方を取り外した。
 琥珀の牙は僅かに形状を変え、剣状に変化した。その双剣を持ったアンバーニオン ソイガターは気合いを込めて一度ガシッと腕を振るった。
「相変わらず巨獣と仲がいいのね?」
「え?」
 操玉コックピットのディスプレイ越しに並んで立つガルンシュタエンとリゲルナイドを見たヒメナが口を開いた。
まえの事?」
「うん、ガルンシュタエンは琥珀の戦士でも鋼の巨人でもなかった。かつてはエシュタガあのひとの相棒の巨獣だったの···あんな風に一機一体で並び立って······」
「へぇ······!」
       話の続きを宇留は少し待っていたが、ヒメナもソイガターもそれ以上はまだ語らなかった。宇留も追及するつもりもなければ余裕もなかった。腹部が微妙にチリチリとしてきたからである。
「もう!決めないと!」
 覚悟という言葉を意識した宇留は、アンバーニオンに乗って以来、今一番険しい顔をしていた。





「ゲルナイド」
 エシュタガ?
 振り向かないガルンシュタエンがリゲルナイドに声を掛ける。
戦場ここに立っている以上、奴らも卑怯となんともとやかく言わんだろう?奴らにも俺達にも遠慮せず果敢にアンバーニオンに打ち込め!後悔しないようにやりきるんだ!」
 エシュタガはゲルナイドにそう言い終わると、アンバーニオン ソイガターに向かって歩を進める。
 コウカイ?
 その言葉の意味を考えるゲルナイド。アンバーニオンへの悔しさは多分にあった。もう負けたくない気持ちは決して弱まってはいない。むしろ新しい力を手に、燃え上がってさえいる。でも何か、何かがこの悔しさにつきまとう。共に燃えている。
 なんだこれは?
 リゲルナイドがその答えを探しにガルンシュタエンとアンバーニオンの元へ向かおうとした時だった。

 フッ······

「!」
 ゲルナイドの意識はぺリッと軽やかに怪獣体の神経から引き離され、中枢活動体、アラワルの元へと入った。
「な!」
 現の体を照らす体内電流の明滅パターンが先程とは異なる。そして何度意識しても怪獣体に戻れない。

「ゲルナイド······」
「!」
「この体、少し借りるぞ?」

 威厳のある声がリゲルナイドの接続室の中に響いた。















 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...