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牙剣の宴
しおりを挟む高鳴りは天井に辿り着き、
跳ね返されては落ち、
そして再び天井に挑むのをやめない。
宝甲から溢れる波動は全て同じリズム、
全開のエンジンのように鼓動を刻み、
その振動は外部にも反響し、自身の座標を強く主張する。
オレンジ色に輝く巨人達。
それぞれ双剣を持ち、互いにゆっくりと歩み寄るアンバーニオン ソイガターとガルンシュタエン。
機体に集いはじめた浮遊能力は、周囲の大気を陽炎のように歪める。
もう道を譲る気は無い。
しかし本来、心を愛でる筈の この琥珀。
戦いの為の道具では無いのかも知れない この琥珀。
自身の心の輝きの前に盾て守る この琥珀。
その美しさを守る為···
その心を形作るものを守る為······
この思い届ける為に············
ドン!
コーーーーーーーーーーーン!!
正しい出力、正しい威力、正しい圧力。
真っ直ぐに正しく高い轟音が天に向かって響き抜けていく。
最大出力の低空飛行で真っ直ぐにぶつかり合った琥珀の巨人達は、それぞれ両手に持った二振りの牙を鍔迫リ合う。
「うおおおおおお!」
「ニャララアアアアアアッ!」
「!ーーーーーーーー」
「があああああああああ!」
キャキーーーーン!
偶然という必然。牙剣の力点は、全て力の抜け道へ正直に滑り込む。
「!」
ーーー次。
どちらからでも無く、クロスした剣が小細工無しにぶつかり合う。
ーそして次······
アンバーニオン ソイガターは琥珀の双剣の刀身を水平に重ねて横に。
ガルンシュタエンは双剣を両手でシンプルに縦方向にに振り下ろす。
アンバーニオン ソイガターは重ねた双剣を持つ手を外側に引き、ガルンシュタエンによる攻撃の振り幅に合わせ、最小限の力点になるであろう箇所を直感で微調整し双剣で受け止める。それが無ければ最大限に作用点からもたらされていたであろう腕への衝撃は軽減し、追撃の余力が僅かにもたらされる。
そのやり取りの中、既に数十メートル浮かんでいた二体。
「!」「!」
二体はそんな刹那的な合間に連撃を繰り返し、氷結島に纏わり付く霧を抜け上昇していった。
T都、馬瀬間区
馬瀬間第三公園、緊急避難地下防災壕前。
定員残り僅かとなったシェルターの前に辿り着いた人々の集まりの中から、空の異常を訝しむ声が上がり始めた。
ガヤめきの原因を探ったパニぃは、やや東南の空を見上げ、あっ!と声に出してすぐ側に居る磨瑠香とわんちィに異変を伝えた。
朧気な街明かりのグラデーションで良く見えないが、二つの光がチラチラと光跡のような螺旋を残しながら昇って行く。
「!······みんな!···、宇留くん!!!」
ハッとした磨瑠香が声を上げると同時に、氷結島警戒の為に湾岸に集結した国防隊のサーチライトがその軌跡に向けられた。
双剣の太刀筋の残光と、微かなダメージで粉砕され、舞い散った二体の宝甲の破片に投光が反射し、T都の夜空に照らし出された半透明な琥珀細工の光柱がどんどんと伸びて行く。
「おおおおおおおおおおっ!」
ギャンギャンギャンギャンギャンギャン
ギャンギャンギャンギャンギャンギャン
ギャンギャンギャンギャンギャンギャン
「あああああハァーーーーー!」
剣撃の猛攻の最中、猛り叫ぶ宇留とエシュタガ。
そしてサーチライトの光がガルンシュタエンに当たり攻撃が一拍遅れた一瞬。
アンバーニオン ソイガターはあえて踏み込まずに背中を見せて翻り、一歩退く。だが遅れても無理矢理伸びてくるガルンシュタエンの攻撃。
アンバーニオン ソイガターは、それを予見していたかのように背部スタビライザーで受け流そうとするも、スタビライザーの先端は僅かに断ち斬られてしまった。
「!!」
そのまま振り返ったアンバーニオン ソイガターの姿にエシュタガは戦慄する。
琥珀の双剣は、連結し槍のようになっていた。
それをビリヤードのキューのように構えたアンバーニオン ソイガターはさも当然のように断ち斬られた背部スタビライザーの宝甲の破片をガコンと打突し、それはガルンシュタエンの右目にヒットした。
「くぐ!」
エシュタガはダメージに戸惑うも、反射的にガルンシュタエンの首を右に傾ける。
ガルンシュタエンの脳天目掛け振り下ろされた筈の琥珀の槍の一撃が、左の肩口に激しく落ちた。
、と同時にアンバーニオン ソイガターの腹部にガルンシュタエンの強烈な直蹴りが吸い込まれる。
「「うわがぁぁーーーーー!」」
傷口に塩を塗られた時のような声で呻く宇留とソイガター。最も、宇留は傷口に塩を塗られた経験は無いのだが···
「!」
アンバーニオン ソイガターは、引き戻ろうとするガルンシュタエンの足の脛装甲を利用し、琥珀の槍をちょうど中央で叩き折った。
そして折れた槍を再び双剣に戻し、伸びて来た双剣を迎え撃つ······!
ズニュ!
「なッ!?」
双剣を受け止めた!と思われた琥珀の双剣の先はグニャリと軟化し、まるで練り飴のように双剣を絡め取った。
「ナッ!?て、トコだろう?」
アンバーニオン ソイガターは何らかの力を琥珀の双剣に込め、ガルンシュタエンから奪った双剣の柄に持ち変える。
琥珀の双剣は、双剣を軸に内部の勾玉を残して巨大な斧のように変化した。
アンバーニオン ソイガターは、外側に向かって琥珀の斧を水平に掲げ、竜巻のような凄まじい回転斬りでガルンシュタエンに迫る。
ガルンシュタエンは回避し後退しながら、握り拳の内部で濃神霧を何度も編み込み、やがて現れた霧のムチを琥珀の竜巻の根元、アンバーニオン ソイガターの足首付近にピシン!と絡めた。
ガクン!と回転を止めるアンバーニオン ソイガターの両手から琥珀の斧が二つ、わざとスッポ抜けてガルンシュタエンに迫る。
神霧のムチを捨て、飛んで来た斧を受け止めたガルンシュタエンは、ポイッと軽く頭上に放り、再び琥珀の斧のグリップを握る。
ヴァズズズズン!
琥珀の斧と一体となった双剣にガルンシュタエンの超静電気による雷電が流れ、刀身が金色に輝く。
そのままガルンシュタエンが琥珀の斧で空を裂くと、双剣から溶け外れた琥珀の斧の刃部分がアンバーニオン ソイガターに向かって飛ぶ。
アンバーニオン ソイガターがその溶けた宝甲の塊をキャッチして、一度ヒュン!と振ると、そこにはもう既に再構築された琥珀の双剣が握られていた。
アンバーニオン ソイガターは顔前で琥珀の双剣をクロスさせる。
「ゲッホ!あーあ!もったいねー?」
ソイガターはそう呟くと、コォン!と双剣をかち合わせ、再びガルンシュタエンに向かって行った。
「アッカ?」
一度咳き込んだソイガターを案ずる宇留。ダメージを意識すると、気が散りそうになる寸前の腹部の痛みだった。
ガルンシュタエンと同じく、琥珀の双剣に雷電を流しつつ猛進するアンバーニオン ソイガター。刀身は眩く光り、内部の勾玉も縦に回転を始める。
ッッグァイーーーーン!
再び重なりあう琥珀の巨人の牙達。
鍔迫り合いながら至近距離で睨み合うアンバーニオン ソイガターとガルンシュタエン。
双剣は輝きを増し、琥珀の双剣の勾玉の回転数も上がって行く。
その時、限界を迎えた接点は凄まじい破裂を起こした。
ヴァーーーーーーーーーーーン!
互いに後方へ弾き飛ばされる両者。
「!」
だがそこへ、アンバーニオン ソイガターの頭上へ、闇夜よりも濃い影が踊った。
フッ······
ズッ!バァーーン!
軽やかに体の振り幅を見せつけたリゲルナイドの踵落としが、アンバーニオン ソイガターを叩いた。
「が!··········~
そのままT都湾へと落ちて行くアンバーニオン ソイガター。
「!?」
すぐそこに浮かぶリゲルナイドの佇まいを見たガルンシュタエンは、動きを止めた。
そして赤く光る目に驚くエシュタガ。
「···どうしたエシュタガ?遠慮をするなと言ったのはお前だぞ?」
「ウ···陛下!?」
「クイスランが···色々仕込んでくれてなぁ?」
その言葉にエシュタガの眉間がピクっと跳ねる。
皇帝エグジガンの意識が宿ったリゲルナイドは、しばらく右手を眺めた後で左手を上げ、ガルンシュタエンに無言で双剣の一つを要求した。
リゲルナイドの接続室の現は、怯えと行き場の無い闘志に瞳を振るわせ、悔しそうな仕草がエグジガンにバレないように耐えに耐えていた。
それぞれに剣を持ったリゲルナイドとガルンシュタエンは落ちて行くアンバーニオン ソイガターを見下ろしていた。
「ウグググ!」
落ちて行くアンバーニオン ソイガターの中で、急にガクンと膝を着いたソイガター。どうやらアンバーニオンのシステムから一度本体に戻ったようだ。ヒメナが悲痛を押し殺したように語り掛ける。
「······ソイガター?あなたッまさか、フィードバックを殆ど引き受けて···?」
「え!そ、そんな!アッカ!どうして?!」
宇留の睫毛に涙が縋った。
「ナーに!コンナモン···」
「一度戻って来ないと大変な位の痛みだったんでしょう?」
「ニュフフ···」
「アッカッ!何やってんだよー!みんなで決めた覚悟だろぉ!みんなで分けようよ!仲間をなめんなーー!」
「スマイこそ!···俺の仲間思いナメンナ!···」
「······」
声は大きかったが、まるで殺気の無い虎の怒号。不思議なホッコリ感に、もう言い争いは終わる。
「ごめん!」「···メンニャ?」
ポタポタと背中に落ちる宇留の涙の温もりを感じながら、ソイガターは再び足を伸ばして立った。
「···時間がナい!次で勝負だ!ヒメニャ!スマイ!俺の最終空間をブチ決める!」
「ソイガター······!!」
「アッカ!」
「···」
「······虎魂琥珀流星!!」
アンバーニオン ソイガターが背面から海上に叩き付けられる瞬間。ソイガターの詠唱によって、黄金の渦が彼らを受け止めた。
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