45 / 52
対 決
しおりを挟む昔は今よりもっと浅かった?
T都湾で活動するに当たって、私がアーカイブの片隅に追加してみた情報の一つ。
なぜなら今、海底を目指しているから···
本当は目で見えている程の空間把握能力を持っているんだけれど、あえて機械的にしっかりと逐一機能を使用して自分を適正運用しているように見せている。
もうすぐ底。
どうして深くなっていってるのかは後で調べよう♪
どうして黙っていたのかはいつかアキサに謝ろう♪
ピン!と音波を撃って、鬼磯目は瞬時に海底の条件を把握した。
·タッチアンドゴーもどき!
鬼磯目は海底に滑り込むような着底寸前に、船体を急上昇させる。
彼女が通り抜けてすぐに、ワイヤーで繋がれたアンカーが伸びてきて海底に突き刺さると同時に引き抜かれた。
ワイヤーを巻き上げるエグルドーゴ水中ユニットは、自機に戻ろうとするワイヤーの上を通り過ぎ、後方へとたなびいたワイヤーの先にアンカーがユラッと踊った。
·私を捕まえるつもりですね?
水中で上昇していた鬼磯目は、艦首を急に下に向けつつ機動用船胴を逆噴射させた。必然的に艦首以下に繋がる船体はその慣性に追随し、頭を下にした立ち泳ぎのように水中に垂直に立った。鬼磯目はそのまま姿勢を制御して急上昇、頭の上から追って来たエグルドーゴの直上から後退し回り込む。
「何ッ?!」
アンカーワイヤーを再収納し終えたばかりエグルドーゴは天井を奪われた。驚いたリキュストの動きに合わせて機体も上を見上げる。
鬼磯目は魚雷を二発、魚雷の発射に合わせ羽根を振り上げたエグルドーゴに向かって落とす。
キョバッ!!
背後で膨れ上がる爆流からギリギリ逃れ出て来るエグルドーゴ。
そして背後の巻き上がった泥の中から船体を水平に戻しつつ、鬼磯目の艦首が現れ追って来る。艦首を繋ぐ関節が一度伸縮し、ガキョッと捕獲爪が開く。
エグルドーゴは続けて背後をも取られた。
「うぬぉ!」
先程のガルンシュタエンとの邂逅の際、一度紛失してしまっていた氷結島のサンプル。鬼磯目はサンプルを氷結島から再回収し、海底の岩場に挟み込んで隠していた。
〔·アキサ!サンプルの仮置きポイントの座標です。結構大きな塊なので後程にでも回収します!〕
マーティアはおにかますに仮置ポイントの情報を送信した。
〔凌げマーティア!もうそっちに着く!無茶はするな!〕
〔·了解!、待てー!ぎゃおー!〕
ガチャゴッ!
エグルドーゴは腰部ジョイントを回転させ、上半身だけが後ろを向いた。その手には水中ユニットに積載されていた水中ロケットランチャーが既に構えられている。
·わッ!
ズシューーーーー!
発射され向かって来るロケット弾を、上昇して逃れ躱す鬼磯目。艦首の被弾は免れたものの、上昇し遅れた船体の腹底部に向かってロケット弾が進む。
·うぬぬ~!
鬼磯目は急速に機体全身を捻り始め、螺旋状態で前進する。ロケット弾は一度、回転する船体に弾かれ爆発し、機動用船胴の推進機がいくつか破損したがダメージの分散には成功した。そして鬼磯目は回転力を保ったままエグルドーゴに突進して肉薄する。
「ん!な?速ー!」
エグルドーゴに接近した鬼磯目は、じわっと距離、速度、回転角度を微調整しつつ、再び艦首を伸縮して捕獲爪を閉じようとした。
ガギンッッ!
エグルドーゴは頭を引き、ロケットランチャーを身代わりに差し出して鬼磯目の牙を逃れた。
キュボボボッッ!
·!!
細やかな閃光と衝撃の乱舞。エグルドーゴから水中に小型のショック榴弾が多数バラ撒かれ隙を作る。
鬼磯目はそれを意に介せず、再び捕獲爪を開こうとして後悔した。
·左が重い?しまった!
既に開いた左の牙が重い。エグルドーゴは牙を掴み、牙が開く遠心力を利用して鬼磯目の背後直上に回り込もうとしていた。
「ブリッジ貰ったーー!」
·ああ!!
鬼磯目のモニターにセンサーリンクの注意が踊る。
·!
下半身の水中ユニットにブリッジ部を押し潰されそうになる鬼磯目。だがその時、一発の魚雷がエグルドーゴの頬を殴った。
「ガハッ!」
魚雷のパンチは小規模な爆発を起こし、エグルドーゴを鬼磯目の脇に追いやる。
〔マーティア!〕
〔·アキサ!〕
「噛みついて無いからちょっと違うケド、イマダヤレ作戦の応用って事にしとくぜ嬢ちゃん!」
執間がおにかますのブリッジでニヤリと微笑む。どうやら鬼磯目が捕獲爪で押さえている敵を、味方にダメージが入らないような小威力魚雷で仕留める作戦があったようだ。おにかますは鬼磯目のセンサーとリンクして、精密に魚雷をエグルドーゴに当てて見せた。
·アキサ!
マーティアが鬼磯目をおにかますに接艦させようとした時だった。
ゴーーーン!
何か薄い板のようなものが高速で回転しながら、おにかますの右舷に跳ね当たった。船体がくの字に折れ曲がったかのような衝撃。
水中で傾くおにかます。通信中であるにも関わらず、乗組員の声が一切聞こえなかった事がマーティアの焦燥感を募った。
·ああァーー!みなさん!!
空間把握能力で、板の正体を睨むように追うマーティア。回転しながら鬼磯目の背後に戻ろうとする板の正体はエグルドーゴの羽根、分離したウイングユニットだった。おにかますは未だ体勢を立て直さず、どんどんと傾いていく······
·あ!アキサぁーーーー!!
その時マーティアの叫びに応えるように、氷結島方向の海中がパアッと眩く輝いた。
アンバーニオン ソイガターの背部スタビライザーが超高速で回転し、海上に咲いた黄金の花が彼らを受け止めているように見える。スタビライザーには水光の跳ねが発生し、更に回転する水刃はアサリ割りのように交互に反り別れていた。
花の上で仰向けに寝そべる琥珀の王虎は、天空で己を見下す二つの魔星に手を伸ばし、握り砕くつもりで視界に入る敵達を拳で遮った。
既に琥珀の双剣は牙となって肩アーマーに戻り、ドリルのようにどんどんと回転数を増している。
ガ!ヴォォォォォオオオオゥ!!
アンバーニオン ソイガターが吠えると同時に、黄金の花は閉じて彼らを包み込む。その衝撃は大波の花を咲かせ、海上から放たれた王虎の流星は再び天に挑む。
虎魂琥珀流星
黄金の流星の先端で尖る回転双角の合間には渦を巻く巨大な雷球、虎魂龍血雷電轟が形成され、更にスピードが増した。
仲間達の、そしてソイガターの全てが詰まった渾身の一撃。一直線に天を睨んだ宇留は叫ぶ。
「エシュタガーーーーーー!」
「!」
それは宝甲を通して十分にガルンシュタエンの琥珀を震わせた。
「エシュタガ!」
エグジガンの意識が宿ったリゲルナイドがガルンシュタエンに声を掛ける。
「戻ってこいよ?」
「!」
ガルンシュタエンは頷くような、礼をするような動作をリゲルナイドに返し、少々降下した。
「迷いは無しか?スマイ少年?」
ガルンシュタエンは一振になった単剣を下方に向けて構えた。
「ガルン!覆すぞ!ヤァァム!」
「うん!エシュタガ!マァァス!」
「「セブドゥアッ!」」
「「···神霧剣!!」」
二人の詠唱に応じてガルンシュタエンが単剣の刀身を手で撫でると、神霧が刀身に集結し凝縮する。
まるで鋼の煌めきが照り返るかの如く個体化した神霧剣を振りかぶりアンバーニオン ソイガター目掛け加速するガルンシュタエン。
機体の背部で自身を加速させる高圧の霧は、飛行機雲のようにその落下に続いた。また更にスピードが増し、ガルンシュタエンはほの暗く輝く青白い霧で全身がコーティングされる。
天を目指す黄金の流星と、それを迎え撃つ青白い流星の対決。空を見上げる事が出来るT都民の殆どがそれを見つめていた。
「琥珀魔神!、琥珀の夢霧!!」
「「うおおお!決!ゴーーータァーー!!」」
ドグァァァーーーン!!!
二つの流星は衝突し、空中で大爆発が起きる。
「!」「!」「!」「!」「!」「!」
彼らの対決の行方を見守る者達が固唾を飲む。
爆発の衝撃の中に浮かぶアンバーニオン ソイガターは、左方向の気配に向かっておもむろに手を伸ばした。
手は何かに触れ、散らばった粉末を息で吹き飛ばすように霧の反射迷彩が剥がれて、それは姿を現した。
単剣を頭上に構えたガルンシュタエン。そして押さえたアンバーニオン ソイガターの手の中では、雷電轟の輝きが再び灯り始める。
「な!んだと!」
「つ!使わなかったのか!」
「霧だけと流星だけ、お互い様にゃろ?、相変わらず実直っぽくても、変な方向に賢いからナ?オマエは?···」
アッカがそう告げるや否や、アンバーニオン ソイガターの爪がガルンシュタエンの右肩付近にめり込む。
バァアアアアアアアン!!
ガルンシュタエンの右腕と肩口周辺が、直接注入された雷電轟によって砕け散った。
「力を掌に隠した!収納空間······だ!」
宝甲の欠片を煌めかせながら、ガルン本体とエギデガイジュパーツに分離したガルンシュタエンは、氷結島に向かって墜落して行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる