神樹のアンバーニオン (2) 逆襲!神霧のガルンシュタエン!

芋多可 石行

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対 決

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 昔は今よりもっと浅かった?
 T都湾で活動するに当たって、私がアーカイブの片隅に追加してみた情報の一つ。
 なぜなら今、海底を目指しているから···
 本当は目で見えている程の空間把握能力を持っているんだけれど、あえて機械的にしっかりと逐一機能を使用して自分を適正運用しているように見せている。
 もうすぐ底。
 どうして深くなっていってるのかは後で調べよう♪
 どうして黙っていたのかはいつかアキサチーフに謝ろう♪


 ピン!と音波を撃って、鬼磯目は瞬時に海底の条件を把握した。
 ·タッチアンドゴーもどき!
 鬼磯目は海底に滑り込むような着底寸前に、船体を急上昇させる。
 彼女が通り抜けてすぐに、ワイヤーで繋がれたアンカーが伸びてきて海底に突き刺さると同時に引き抜かれた。
 ワイヤーを巻き上げるエグルドーゴ水中マリンユニットは、自機に戻ろうとするワイヤーの上を通り過ぎ、後方へとたなびいたワイヤーの先にアンカーがユラッと踊った。
 ·私を捕まえるつもりですね?
 水中で上昇していた鬼磯目は、艦首を急に下に向けつつ機動用船胴を逆噴射させた。必然的に艦首以下に繋がる船体ボディはその慣性に追随し、頭を下にした立ち泳ぎのように水中に垂直に立った。鬼磯目はそのまま姿勢を制御して急上昇、頭の上から追って来たエグルドーゴの直上から後退し回り込む。
「何ッ?!」
 アンカーワイヤーを再収納し終えたばかりエグルドーゴは天井を奪われた。驚いたリキュストの動きに合わせて機体エグルドーゴも上を見上げる。
 鬼磯目は魚雷を二発、魚雷それの発射に合わせ羽根を振り上げたエグルドーゴに向かって落とす。
 キョバッ!!
 背後で膨れ上がる爆流からギリギリ逃れ出て来るエグルドーゴ。
 そして背後の巻き上がった泥の中から船体を水平に戻しつつ、鬼磯目の艦首が現れ追って来る。艦首を繋ぐ関節が一度伸縮し、ガキョッと捕獲爪グラップルクローが開く。
 エグルドーゴは続けて背後をも取られた。
「うぬぉ!」
 先程のガルンシュタエンとの邂逅の際、一度紛失してしまっていた氷結島のサンプル。鬼磯目はサンプルを氷結島から再回収し、海底の岩場に挟み込んで隠していた。
〔·アキサチーフ!サンプルの仮置きポイントの座標です。結構大きな塊なので後程にでも回収します!〕
 マーティアはおにかますに仮置ポイントの情報を送信した。
しのげマーティア!もうそっちに着く!無茶はするな!〕
〔·了解!、待てー!ぎゃおー!〕
 ガチャゴッ!
 エグルドーゴは腰部ジョイントを回転させ、上半身だけが後ろを向いた。その手には水中マリンユニットに積載マウントされていた水中ロケットランチャーが既に構えられている。
 ·わッ!
 ズシューーーーー!
 発射され向かって来るロケット弾を、上昇して逃れ躱す鬼磯目。艦首の被弾はまぬがれたものの、上昇し遅れた船体の腹底部に向かってロケット弾が進む。
 ·うぬぬ~!
 鬼磯目は急速に機体全身を捻り始め、螺旋スクリュー状態で前進する。ロケット弾は一度、回転する船体に弾かれ爆発し、機動用船胴の推進機がいくつか破損したがダメージの分散には成功した。そして鬼磯目は回転力を保ったままエグルドーゴに突進して肉薄する。
「ん!な?はえー!」
 エグルドーゴに接近した鬼磯目は、じわっと距離、速度、回転角度を微調整しつつ、再び艦首を伸縮して捕獲爪グラップルクローを閉じようとした。
 ガギンッッ!
 エグルドーゴは頭を引き、ロケットランチャーを身代わりに差し出して鬼磯目の牙を逃れた。
 キュボボボッッ!
 ·!!
 細やかな閃光と衝撃の乱舞。エグルドーゴから水中に小型のショック榴弾が多数バラ撒かれ隙を作る。
 鬼磯目はそれを意に介せず、再び捕獲爪グラップルクローを開こうとして後悔した。
 ·左が重い?しまった!
 既に開いた左の牙が重い。エグルドーゴは牙を掴み、牙が開く遠心力を利用して鬼磯目の背後直上に回り込もうとしていた。
「ブリッジ貰ったーー!」
 ·ああ!!
 鬼磯目のモニターにセンサーリンクの注意コーションが踊る。
 ·!
 下半身の水中マリンユニットにブリッジ部を押し潰されそうになる鬼磯目。だがその時、一発の魚雷がエグルドーゴの頬を殴った。
「ガハッ!」
 魚雷のパンチは小規模な爆発を起こし、エグルドーゴを鬼磯目の脇に追いやる。
〔マーティア!〕
〔·アキサチーフ!〕
「噛みついて無いからちょっと違うケド、イマダヤレ作戦の応用って事にしとくぜ嬢ちゃん!」
 執間がおにかますのブリッジでニヤリと微笑む。どうやら鬼磯目が捕獲爪グラップルクローで押さえている敵を、味方にダメージが入らないような小威力魚雷で仕留める作戦プランがあったようだ。おにかますは鬼磯目のセンサーとリンクして、精密に魚雷をエグルドーゴに当てて見せた。
 ·アキサチーフ
 マーティアが鬼磯目をおにかますに接艦させようとした時だった。

 ゴーーーン!

 何か薄い板のようなものが高速で回転しながら、おにかますの右舷に跳ね当たった。船体がくの字に折れ曲がったかのような衝撃。
 水中で傾くおにかます。通信中であるにも関わらず、乗組員の声が一切聞こえなかった事がマーティアの焦燥感をつのった。
 ·ああァーー!みなさん!!
 空間把握能力で、板の正体を睨むように追うマーティア。回転しながら鬼磯目の背後に戻ろうとする板の正体はエグルドーゴの羽根、分離したウイングユニットだった。おにかますは未だ体勢を立て直さず、どんどんと傾いていく······
 ·あ!アキサぁーーーー!!
 その時マーティアの叫びに応えるように、氷結島方向の海中がパアッと眩く輝いた。



 


 
 アンバーニオン ソイガターの背部スタビライザーが超高速で回転し、海上に咲いた黄金の花が彼らを受け止めているように見える。スタビライザーには水光の跳ねイウコウス オン エンハが発生し、更に回転する水刃エッジはアサリ割りのように交互に反り別れていた。
 花の上で仰向けに寝そべる琥珀の王虎は、天空で己を見下す二つの魔星ませいに手を伸ばし、握り砕くつもりで視界に入る敵達を拳で遮った。
 既に琥珀の双剣は牙となって肩アーマーに戻り、ドリルのようにどんどんと回転数を増している。
 
 ガ!ヴォォォォォオオオオゥ!!

 アンバーニオン ソイガターが吠えると同時に、黄金の花は閉じて彼らを包み込む。その衝撃は大波の花を咲かせ、海上から放たれた王虎の流星は再び天に挑む。

 虎魂琥珀流星ココン クノコハ イリューーズ

 黄金の流星の先端で尖る回転双角ドリルの合間には渦を巻く巨大な雷球、虎魂龍血雷電轟ココン ケテュール レイデンが形成され、更にスピードが増した。
 仲間達の、そしてソイガターアッカの全てが詰まった渾身の一撃。一直線に天を睨んだ宇留は叫ぶ。
「エシュタガーーーーーー!」

「!」

 それは宝甲を通して十分にガルンシュタエンの琥珀を震わせた。
「エシュタガ!」
 エグジガンの意識が宿ったリゲルナイドがガルンシュタエンに声を掛ける。
「戻ってこいよ?」
「!」
 ガルンシュタエンは頷くような、礼をするような動作をリゲルナイドに返し、少々降下した。
「迷いは無しか?スマイ少年?」
 ガルンシュタエンは一振になった単剣ハイヴレスコスを下方に向けて構えた。
「ガルン!覆すぞ!ヤァァム!」
「うん!エシュタガ!マァァス!」
「「セブドゥアッ!」」

「「···神霧剣ミストッ···ランサァー!!」」

 二人の詠唱に応じてガルンシュタエンが単剣ハイヴレスコスの刀身を手で撫でると、神霧が刀身に集結し凝縮する。
 まるで鋼の煌めきが照り返るかの如く個体化した神霧剣ミストランサーを振りかぶりアンバーニオン ソイガター目掛け加速するガルンシュタエン。
 機体の背部で自身を加速させる高圧の霧は、飛行機雲のようにその落下に続いた。また更にスピードが増し、ガルンシュタエンはほの暗く輝く青白い霧で全身がコーティングされる。
 天を目指す黄金の流星と、それを迎え撃つ青白い流星の対決。空を見上げる事が出来るT都民の殆どがそれを見つめていた。

琥珀魔神ガルンシュタエン!、琥珀の夢霧ぎり!!」

「「うおおお!ファイ!ゴーーータァーー!!」」





 ドグァァァーーーン!!!


 二つの流星は衝突し、空中で大爆発が起きる。
「!」「!」「!」「!」「!」「!」
 彼らの対決の行方を見守る者達が固唾を飲む。




 爆発の衝撃の中に浮かぶアンバーニオン ソイガターは、左方向の気配に向かっておもむろに手を伸ばした。
 手は何かに触れ、散らばった粉末を息で吹き飛ばすように霧の反射迷彩が剥がれて、それは姿を現した。

 単剣ハイヴレスコスを頭上に構えたガルンシュタエン。そして押さえたアンバーニオン ソイガターの手の中では、雷電轟レイデンの輝きが再び灯り始める。
「な!んだと!」
「つ!使わなかったのか!」
「霧だけと流星だけ、お互い様にゃろ?、相変わらず実直っぽくても、変な方向に賢いからナ?オマエは?···」
 アッカがそう告げるや否や、アンバーニオン ソイガターの爪がガルンシュタエンの右肩付近にめり込む。


 バァアアアアアアアン!!

 ガルンシュタエンの右腕と肩口周辺が、直接注入された雷電轟レイデンによって砕け散った。
「力を掌に隠した!収納空間エサカクシ······ニャ!」

 宝甲の欠片を煌めかせながら、ガルン本体とエギデガイジュパーツに分離したガルンシュタエンは、氷結島に向かって墜落して行った。










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