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飛び来たる
しおりを挟む重拳隊の隊長である茂坂にも上から降りて来た情報。
惑星レベルの危機を観測する組織、最終局面省の報告では、太陽方面から地球に向けて何らかの移動物体が観測され、それはほぼ光速からあり得ない急減速と急冷を自らに施し、地球の衛星軌道上に既に到達している。との事だった。
物体の大きさ、つまり“体高„は五十から六十メートル前後で、現在、東アジア極東付近上空に滞空している金色かオレンジ色のヒト型、という事まで衛星からの映像で確認している···。
「関係あると思うか?」
三角パタパタの件で慌ただしく警戒態勢を整える国防隊I県駐屯地の駐機場の片隅に停められた二台の特殊車輌の間で、茂坂 雄昌は戦闘服に休めの姿勢で向かい合う二人の部下、椎山と藍罠に問う。
「似たような力は引かれ合ったり、因縁があります。今までもそうでした」
椎山が答えた。
「護森さんの所の案件だが、あの人は現在連絡圏外の山奥のイベントで連絡が取れない。番頭さんも手が放せないそうだから早速、パン屋ヶ丘くんと駅弁ヶ駅くんにはもう動いてもらう」
緊張とのギャップのせいで全員目が笑ってしまった。藍罠が不満を漏らす。
「何とかならなかったんですか!?そのコードネーム!」
「コードフルネームを聞くよりはマシだな?」
椎山があえて厳しいトーンで緊張感を戻そうとしたが無駄なようだった。
「まぁそう言うな、お前達も知っているだろう。彼女達は隊の特殊戦室の端っこに出向してくるような一般の実力者だ。あちこちで直に欲しい人材としてよく聞かれるぞ?」
「それで、そのパン屋と駅弁屋は今どこに?」
藍罠が聞き直した。茂坂は二人の呼び方は特に注意しなかった。
「軸泉市湾内に移動した目標の警戒の為、仮設指揮所がある市内の水質試験場に向かっている」
茂坂が続ける。
「我々は実装で現地にて警戒、目標が飛べばヘリ、歩けばこちらで“張り倒す„」
「“少々„上空でもぶっ叩いてみせますよ」
藍罠が自信有りげに答えた
駐屯地正門の待機場には整列する隊員達と数台の関連車輌と共に一際巨大なラフタークレーン車のような機械が、牽引車に繋がれ駐車されていた。
十一式多目的マニピュレータークレーン改 重拳 四号機
あらゆる状況に応じて、巨大なロボットアームによる手作業を可能にしたクレーンを格闘戦に特化させた機体である。
茂坂の指揮車輌と椎山、藍罠の制御車輌が重拳に横付けされる。
「乗車!」
茂坂がスピーカーで号令を掛けると整列していた隊員達は復唱し、すぐさまそれぞれの決められた配置の車輌に乗り込む。
重拳の牽引車が長めの野太いクラクションを一度鳴らすのを号令に、各車輌も一度づつ鳴らし、最後に椎山が制御車輌から遠隔操作で重拳が二度鳴らす。
それを確認した茂坂は手信号を正門ゲートの守衛に送ると正門は全開まで開かれた。
「出動!」
再び茂坂の号令が下ると、重拳隊は一路、沿岸部軸泉市に向かった。
その日の正午前、軸泉市では既に緊急事態が宣言され、市民の避難が進められていた。
車での移動は制限され、沿道を避難する市民の一人が見慣れた車道の信号や標識が自動で可動し歩道脇まで折りたたまれるのを目撃し、何が起こるのか国防隊の誘導員に尋ねた時だった。
ズドタタタタ······
遠くで機銃の発砲音がしたかと思うと、一辺が十メートルはありそうな灰色の正三角形の板が宙を舞い、近くの河川敷でワンバウンドして土手の上をかすめ、近くのテニスコートの裏のパーキングに落下し数台の車を押し潰した。
避難民はそこから立ち上る土煙を見て茫然としていたが、すぐに低い上空をヒュンヒュンと高速で飛び抜ける二つの飛行物体に、墜落した三角板が速攻追随して飛び上がったのを見るや、パニックで騒ぎになった。
市街地上空には、飛行物体を追尾して軍用ヘリが展開し牽制に入った時だった。
「潜水艇が海底に押し付けられているだと!?」
軸泉水質試験場の大会議室に設けられた仮設指揮所で、連隊長の三竹が報告に驚愕した。
軸泉湾内に潜航し、警戒に当たっていた潜水艇一隻が多数に分離した一体に体当たりされ、上方から何らかの圧力で押さえ付けられている。先制攻撃に反応した明らかな報復と思われた。
「岩塊を浮遊誘導させる能力の応用か?」
移動中の茂坂達も既に通信で指揮に参加していた。
藍罠が驚く。
「もうおっ始めやがった!」
「そのまま、すぐ潰さないという事は······?人質のつもりか?」
椎山の推論を聞きながら、藍罠は軸泉市の方面を睨み自身の握り拳を小指から開き、人差し指から閉じるルーティーンを繰り返していた。
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