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暗がりに踊る
しおりを挟む「この小説には、凡力シーンや
ヘタ絵スクな表現が含まれています」
三角パタパタの消滅をもって国防隊の軸泉市での戦闘状況は終了が発せられ、わんちィが事後処理中の指揮所でひとつの報告をしていた。
「唐突に何だね?」
三竹が聞いた。
「いやぁ、会議シーンって苦手って人多いじゃないですか?ちょっと掴んでおこうと思って、ジューケン!」
「ゲーセン!」
わんちィの後にパニぃが続けて、二人は手で何かを掴む動作をした。
「合いの手は要らないかな?駅弁ケ駅くん。で、本題は何かな?」
「あ、記録に残しますのでカイツマミでオネ(がいしま)ス······」
三竹に続けてノートパソコンを操作する隊員が釘を刺した。
「では···」
わんちィはタブレット端末でとある動画を全員に紹介した。
「この動画はァ···本日、ウチの護森が関わったァ···洞窟見学会のォ···模様である···」
「ぃや!声怖い(で)ス!」
隊員が再び釘を刺す。
「これを見る限り、この見学会に参加していた投稿者が避難後に本日アップしたものと思われます」
動画はわんちィの手によってスキップ気味のダイジェストで指揮所のスクリーンに映される。内容は、見学会に来てみたら避難指示?国防隊が軸泉に展開?避難所からアップするのだ。というドキュメント形式だった。その間パニぃは、片手間にスマホで何か仕事をしている。
ある隊員が個人で検索すると軸泉関連の動画は多数乱立していて、すぐにはこの動画にたどり着けなかった。意外にもアンバーニオンを撮影した動画は少なかった。
「ここ···ぉを、見て頂たいのですが」
動画の中盤、自撮りの男性が洞窟の入口付近で、「電波圏外なので、消防団が避難指示をしに来てくれました」と喋るシーン。
男性の後ろで、洞窟からそそくさとスーツを着た男が洞窟を出ていく。わんちィは動画を少し戻し一時停止して、スーツの男を拡大する。
「この彼は私達が調査中の、帝国の戦士と目される人物、T都在住、鍵村 跑斗と思われます」
指揮所がどよめく。
「同じ地域でアノ帝国案件だと!?この洞窟で何をしていたんだ?」
「アウトドアとは程遠い格好の上に、T都からI県くんだりまで···」
わんちィは続ける。
「彼は若年時におけるネットへの書き込みや、我々民間組織では証拠を集める事が困難な事等以外、今まで目立った行動を示してきませんでした。そして例の三角パタパタですが···」
パニぃが映像を切り替え、三角パタパタの画像アーカイブを出す。海中で真上から撮影し、高画質化しようと試みた活動再開前の写真だった。
「停止状態の連結三角柱形態を一節づつ数えると、全部で三十節。偵察の三体、潜水艇襲撃の一体、総攻撃の二十五体、一体足りません」
「残り一体が、戦士の乗機。かつコントロールマスターの可能性か」
いつの間にか指揮所の入口に立って話を聞いていた茂坂が一拍置き、軽く敬礼をしながら入室してきた。
「お疲れ様です」
わんちィとパニぃ含め数名が挨拶し合う。茂坂は三竹の近くまで歩み寄る。
「J4間もなく、土手の仮復旧、カゼ3の回収完了します」
「さすがに早いな」
「言葉は悪いですが砂遊びに掴み取りのようなものですからね。ところで······」
「その件の洞窟、太陽由来1がロストした付近では?」
茂坂の言葉に指揮所ですぐに検証が始まる。
「本当だ」
全員が固唾を飲む中、パニぃは電話に出ながら指揮所を出る。
「やはり市街での目標の活動は陽動、この洞窟に戦士の主目的があったと見るべきか?」
「あれが陽動······?」
茂坂と三竹の眉間に力が入った。
そうしている間にパニぃが指揮所に戻り報告する。
「護森から連絡がありました。ついでに聞きましたら見学会の避難民に鍵村らしき男は居なかったと思われるとの事でした」
パニぃはそのまま茂坂と三竹の所まで近寄り語った。
「多々気になる所でしょうが、太陽由来1について明朝にでも上の方、師団長も含め重大な報告があるそうですのでよろしくお願い致します」
「·····ふぅ···多少モヤるが、敵の動きが太陽由来1と関連している事は確かか······」
話題は一時保留の雰囲気が流れ、地域別の簡易汚染検査の結果や、何度目かの損害状態確認、撤収状況など次々と報告が上がった。
「放射能汚染は兆候すら無い平常値か······逆に不安だな···潜水艇襲撃の一体の方は?」
三竹が隊員に確認する。
「重深隊の報告によりますと汚染はありません。しかし活動を停止し海底に着底した状態で以前同様表面に未知のゼロ摩擦力が発生し接触、回収不能との事です。ただ以前と違う点は半透明化と縮小がみられる······と」
「だいぶダメージを食らったようだな、事故船の計器も含めてねぇ」
三竹がわんちィとパニぃを見る。
「エヘヘヘ······」
わんちィが照れている中、パニぃがふと気付き再びスマホを持って指揮所から廊下に出る。そしてどこかに電話をかける。
「··················あ!南途下教授のお電話でよろしかったですか?お時間よろしければ教授の論文にあった恒星に育つ植物について伺いたく思いましてぇ?」
「···ろ、論文ってキミねぇ!あれは某サイエンスブログに書き込んだコメントだよっ···て、何で私の文だって知ってるンだァ!」
「エヘヘヘ···」
通話は一方的に切れた。
軸泉市、商業施設の大駐車場。
不時着したカゼ3の残骸は、重拳のアームで掴まれ輸送車に乗せられて帰還の途についた。
いつの間にか国防隊の待機所のようになった駐車場で、複数の作業用ぼんぼりがカラガラとエンジン音を立て周囲を照らす。その向こうに輸送車のテールランプを見送った椎山と藍罠は、制御車を降りてバックアップ車から夕食を受け取った。
バックアップ車のカーサイドタープの下には長机とパイプ椅子が用意され、ぼんぼりの発電機からコードリールで引き伸ばした電源から繋げた申し訳程度の電気アンカが一台長机の下にあった。
「風があるな?」
「さーみぃ!」
まずは手を拭き、おにぎりとぬるいコロッケを差し置いて激熱豚汁に二人はスズズと口を付けた。
「手ェ洗ってやんないとですねぇ」
「今洗ったら凍るな多分」
現地整備のエアツールの音とエンジン音が響く駐車場で、ぼんぼりに照らされた重拳を見ながら二人は呟いた。
「まさか重拳でショッピングモールに乗り付ける日が来るとは···」
「忙しかったから、なんか久しぶりに頭痛いな」
そこに調理担当の隊員が豚汁(?)のおかわりを持って来て話しかけた。
「どうですか?熊汁?」
「ブフっ!早く言ってよソレを!」
「ヘリ部隊リーダーの伏浜さんから熊肉(五千円)の差し入れです。隣村の道の駅から奥様経由の個人直送なんですよ」
「カゼ1の人か!絶対経費返しな!」
「土鍋がUFOじゃないか?」
コンロを見るとUFOの形をした大きめの土鍋で熊鍋が煮たっている。これはこの土鍋に熊肉を入れて来てくれたので、そのまま借りたとの事だった。
「スゲーなあの人、仕事が早い上に有言実行だぞ?まぁ確かに旨いけどちょっとでもこぼしたら多分二~三日獣臭ェぞ?」
「道理でワイルド旨しな訳だ」
「······前も言いましたけど、椎さんってちょいちょいスベりますよね?」
「うん、ドリフト大好き」
「そーゆー所っすよ?」
「つまんないでしょ?これこの人達の持ちネタなんですよ」
調理担当の隊員はどこかの誰かに話しかけた。
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