神樹のアンバーニオン

芋多可 石行

文字の大きさ
17 / 44

会いの流れ (二)

しおりを挟む

 「その有識者の方、護森社長。父の知り合いの方で、私も存じていますね」

 夕方四時を回ったT都内某所のレンタル会議室の一室で宇留の両親、須舞 春名ハルナと須舞 明日美あすみは国防隊の高官とスタッフ達から軸泉市で発生した有事に息子が関わっている事、現時点で分かっている特殊天文飛来物体アンバーニオンとの関係性の説明を受けていた。
 都内でローカルスーパーを経営する春名は昔からの知り合いで、仕事でも取引のある護森の名前に反応した。実は事前に宇留の件で連絡を貰っていたので色々質問を準備しては来ていた。
 しかし本人に若干の被害も発生したと聞いて冷静に構えつつ確実にヒートアップしていく妻をなだめるのに必死でつい妙な事を口走ってしまった。
「確かに絶対に息子達を守って貰えるならそれに越した事は無い、でもこんな事を言ったら親失格かも知れないですが、状況が人知を越えているなら、そのナントカっていう人知を越えたカミサマ?の力で守って貰えた方がもしかして安全なのでは?」


 三時間後、ファミレスで夕食をとった際、お酒飲んでいいワヨー運転するワヨーと妙に優しい明日美に車の後部座席でビクビクしていた春名は遂に攻め込まれ始める。
「シャチョサン!変な事言わないでヨモゥ!」
「だってー!国防隊相手に会議って初めてだし映画みたいだったんだもん、それに今んとこケガも無いってーし」
「絶対早めに健康診断してもらう!」
「けど太陽から来たって、太陽あそこの引力圏をほぼ光速で振り切って地球ここまで来るって、絶対ヤバイだろ?それが味方だってーんだから護森さんも···なかなかパイプヤベーなぁ」
 春名は車の窓を少し開ける、飲酒と暖房で火照った顔に冷たい夜風が心地良さそうだ。
「SFの見過ぎで神頼みってどーなのー?」
「つか何時いつI県ワタリ制限解除だ?」
「そんなの関係無く宇留は暫くあっちにいなきゃいけないんでしょ?」
「あいつらの転換期、ユックが頼みの綱だな?」
 そう言いながら春名は車の窓を閉めた。
 ·
 ·
 ·




 須舞 柚雲、二十二歳、ショートボブのカワイーおねーちゃんだよー!訳あって前の会社を退職ッ。現在、弟クンと祖父母の家に旅行も兼ねて再就職先のある街の下見に来た····
「は~ずだったァ···」
 パニぃの運転するキャンピングカー本部号の助手席で、もう一丁、と描かれた帽子とサングラスで変装した柚雲はなにやらブツブツ言いながらスマホに文を打ち込んでいる。首元には護森にプレゼントされた大きめの琥珀と木製の根付ねつけを組み合わせたアクセサリーをぶら下げていた。
 スマホ画面隅のニュースバナーには軸泉関連の独り言が連なり、避難解除いつ?やら、物陰から宇宙人登場、山中にUMAの足跡、戻るのコワいなどの言葉がくすぶっている。
 どこかに向かっている車内で、祖父母の頼一郎と花は移動モードの後部座席でナイトドライブを楽しんでいた。

 一方その頃、宇留は······


 七色の星の川が明るく闇夜に浮かぶ黒い岩場にアンバーニオンが降り立つ。
「行くぞ!勝ってみせる!」
 剣を構えたアンバーニオンの前には、無数の巨大ロボットが立ちふさがる。
 群れをなして襲い来るロボット軍団を次々と斬り伏せていくアンバーニオン。
 今度は体の正面からレーザービームを放ち、遠くの敵も爆煙で宙に舞った。
 向かう所敵なしのアンバーニオンだったが、突如アラートが鳴り響く。
 強敵が戦場に現れた。その名はアフテガロン。
「さぁあなたがどんなものか、確かめさせてもらいます!」
 少し高い声のイケボ敬語ライバルが、騎士の鎧風の出で立ちのアフテガロンを躍動させてアンバーニオンに肉薄する。
 格闘戦は少々のダメージにめげずに踏み込んで行ったアフテガロンが押し勝ち、アンバーニオンは後方に蹴り飛ばされるも受け身をとって体勢を立て直す。
 隙を作るまいと更に突撃してきたアフテガロンだったが、既に張られていたアンバーニオンのカウンターの網にかかったアフテガロンはコンビネーション攻撃を喰らい、深刻なダメージを負った。
 距離が開いた余裕を使い、アンバーニオンの背中から無数のミサイルが飛び出す。
「うわぁあああ!」
 ライバルの断末魔の叫びが響き渡り、勝利!の文字が画面に踊る。
「お前との戦い!熱かったぜ!」
 アンバーニオンパイロットの口上と共に、右手で何か横に空を斬る動作の後、カメラ目線で拳を握るアンバーニオン······



 、というゲームのキャラメイクプレイ動画を見ていた。
「このアンバーニオン、一日で作ったエディット?!すごいなぁ······」
 最初は昼間の護ノ森諸店に来た怪しい動画職人、シマサメの動画をあさって見ていた宇留だったが、特に変な所は無い普通のアラサーお兄ッサンだったので、関連動画を探す内にこのゲーム動画にたどり着いた。
 しかしアンバーニオン関連の情報はみるみるネットから少なくなっているように感じる。何か情報操作でもされているようだ。
 宇留の胸元の琥珀の中では、ヒメナが口をポカンと空けて戦うゲームのアンバーニオンに見入っていた。そう言えば···と宇留はヒメナに聞く。
「ねぇ?今日は夜休まなくてもいいの?」

 (うん、絶対という訳じゃない···ぉお!)

 水槽が並ぶ展示室、比較的ポンプや水の音の少ない広い部屋の一角に、六畳程のマットを敷いて深緑色の据え置きテントで囲った宇留用のスペースがあった。
 仮設指揮所のある水質試験場に程近い学習水族館。避難要請が解除されるまでの国防隊最終待機場として、この水族館の広大な駐車場が選定され、軸泉に展開する国防隊が集結しつつあった。
 護森の一息もあって、宇留は特別ゲストとしてガードの増員付きでここに保護される事になった。
 水族館のゲート方面から来て、奥まった展示室の入り口には左右に一人づつ歩哨が立ち警護をしていると、わんちィがアッチャアッチャとホットドリンクの缶を二つジャグリングしながら展示室の前にやって来た。
 そのままその缶を二つ上空に放り投げたわんちィは、すかさず敬礼をし合い身分証を提示する。そして落ちてきたドリンクを掴むと展示室に入って行った。
 明らかに缶の滞空時間が長かった。
 何が起きた?とでも言いたげに目を泳がせる隊員は、わんちィがドローンを使った作戦時に同行していた若い隊員の一人だった。
「(独り言少年にパン屋ベーカリー!、今夜はヤバそうだぜ母ちゃん!)」

「おょーい!コンポタと飲むメロンパンどっちがーい?」
「···うーーーーーん、じゃ、コンポタで···」
 テントの入口からホットドリンクの缶を持ったわんちィの腕が二本、ニュッと出て好きな方を選ぶようすすめてきたので、王道か斬新か迷って王道を選んだ。
 わんちィはテントの脇に移動させられた水族館備え付けのベンチに座って缶の蓋を開ける。
 差し入れの弁当を食べて、ちょっと理科室くさいバックヤードの簡易シャワーでサッパリして、柚雲のリクエストにあったヒメナの部屋(箱)を確認して、とりあえず予定をこなした宇留は、暇潰しにも飽きたのでテント越しにわんちィに少し質問でもしてみた。
「わんちィさん?」
「んー?」
「あのー、護森さんが言ってたんですけど、皇帝···ってやっぱり帝国の偉いヒトだったりするんですか?」
「そーだねー、私も見たことは無いけどあれでしょ?全部の敵倒すと出てくる敵ラ ス ボ スみたいなのでしょ?ほら、急に暗雲がたちこめて雷が鳴ったりしてさ、虚空からエコー付きで高笑いが聞こえてくんの。フッフッフッフッフッ···ファッハッハッハッハッハッ!フゥアーッハッハッハッハッハッハッハッ!!グワァーッハッハッハッハッハッハッハッ!!ブワっ···ゲホッ!エッホ!ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!ゲホんッ!ンン” ”、ン!(咳払い)ゲホッ!」
 水槽の全ての魚達は何事か?とわんちィに注目している。
「わんちィあのさー、今の録音したからエコー付きで加工して、全然威厳の無い大魔女王降臨の音声素材にしてもいーかな?」
 いつの間にかパニぃがスマホを持ってニヤニヤしながらテントの近くに来ていた。
「ヤメロッ!ケセぃ!」
「うるくーん!オジーチャンオバーチャンオネーチャンは、なんでこんな所に!ってトコに連れてッたよー!」
「怖いわ!普通に敵にバレずらい所で保護だっつーの!ンン” ”、ン!(咳払い)」
 
 その時、水族館の駐車場に駐機が完了した重拳隊が任務を終え、隊員達がズラリと並んだ仮宿車かしゅくしゃに帰る所だったのだが、太陽由来1サニアン ワンのパイロットが居ると聞いた藍罠が椎山に連れられ是非にと、挨拶に行こうとした。
 しかし、地の底から響き渡るような大魔女王の嘲笑ちょうしょうが水族館の奥から響き渡った事で、ここは危険と判断。
 宇留への挨拶は明日以降に持ち越しとなったのであった。
 





 
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...