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会いの流れ (二)
しおりを挟む「その有識者の方、護森社長。父の知り合いの方で、私も存じていますね」
夕方四時を回ったT都内某所のレンタル会議室の一室で宇留の両親、須舞 春名と須舞 明日美は国防隊の高官とスタッフ達から軸泉市で発生した有事に息子が関わっている事、現時点で分かっている特殊天文飛来物体との関係性の説明を受けていた。
都内でローカルスーパーを経営する春名は昔からの知り合いで、仕事でも取引のある護森の名前に反応した。実は事前に宇留の件で連絡を貰っていたので色々質問を準備しては来ていた。
しかし本人に若干の被害も発生したと聞いて冷静に構えつつ確実にヒートアップしていく妻をなだめるのに必死でつい妙な事を口走ってしまった。
「確かに絶対に息子達を守って貰えるならそれに越した事は無い、でもこんな事を言ったら親失格かも知れないですが、状況が人知を越えているなら、そのナントカっていう人知を越えたカミサマ?の力で守って貰えた方がもしかして安全なのでは?」
三時間後、ファミレスで夕食をとった際、お酒飲んでいいワヨー運転するワヨーと妙に優しい明日美に車の後部座席でビクビクしていた春名は遂に攻め込まれ始める。
「シャチョサン!変な事言わないでヨモゥ!」
「だってー!国防隊相手に会議って初めてだし映画みたいだったんだもん、それに今んとこケガも無いって言ーし」
「絶対早めに健康診断してもらう!」
「けど太陽から来たって、太陽の引力圏をほぼ光速で振り切って地球まで来るって、絶対ヤバイだろ?それが味方だって言ーんだから護森さんも···なかなかパイプヤベーなぁ」
春名は車の窓を少し開ける、飲酒と暖房で火照った顔に冷たい夜風が心地良さそうだ。
「SFの見過ぎで神頼みってどーなのー?」
「つか何時I県ワタリ制限解除だ?」
「そんなの関係無く宇留は暫くあっちにいなきゃいけないんでしょ?」
「あいつらの転換期、ユックが頼みの綱だな?」
そう言いながら春名は車の窓を閉めた。
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須舞 柚雲、二十二歳、ショートボブのカワイーおねーちゃんだよー!訳あって前の会社を退職ッ。現在、弟クンと祖父母の家に旅行も兼ねて再就職先のある街の下見に来た····
「は~ずだったァ···」
パニぃの運転するキャンピングカー本部号の助手席で、もう一丁、と描かれた帽子とサングラスで変装した柚雲はなにやらブツブツ言いながらスマホに文を打ち込んでいる。首元には護森にプレゼントされた大きめの琥珀と木製の根付を組み合わせたアクセサリーをぶら下げていた。
スマホ画面隅のニュースバナーには軸泉関連の独り言が連なり、避難解除いつ?やら、物陰から宇宙人登場、山中にUMAの足跡、戻るのコワいなどの言葉が燻っている。
どこかに向かっている車内で、祖父母の頼一郎と花は移動モードの後部座席でナイトドライブを楽しんでいた。
一方その頃、宇留は······
七色の星の川が明るく闇夜に浮かぶ黒い岩場にアンバーニオンが降り立つ。
「行くぞ!勝ってみせる!」
剣を構えたアンバーニオンの前には、無数の巨大ロボットが立ちふさがる。
群れをなして襲い来るロボット軍団を次々と斬り伏せていくアンバーニオン。
今度は体の正面からレーザービームを放ち、遠くの敵も爆煙で宙に舞った。
向かう所敵なしのアンバーニオンだったが、突如アラートが鳴り響く。
強敵が戦場に現れた。その名はアフテガロン。
「さぁあなたがどんなものか、確かめさせてもらいます!」
少し高い声のイケボ敬語ライバルが、騎士の鎧風の出で立ちのアフテガロンを躍動させてアンバーニオンに肉薄する。
格闘戦は少々のダメージにめげずに踏み込んで行ったアフテガロンが押し勝ち、アンバーニオンは後方に蹴り飛ばされるも受け身をとって体勢を立て直す。
隙を作るまいと更に突撃してきたアフテガロンだったが、既に張られていたアンバーニオンのカウンターの網にかかったアフテガロンはコンビネーション攻撃を喰らい、深刻なダメージを負った。
距離が開いた余裕を使い、アンバーニオンの背中から無数のミサイルが飛び出す。
「うわぁあああ!」
ライバルの断末魔の叫びが響き渡り、勝利!の文字が画面に踊る。
「お前との戦い!熱かったぜ!」
アンバーニオンパイロットの口上と共に、右手で何か横に空を斬る動作の後、カメラ目線で拳を握るアンバーニオン······
、というゲームのキャラメイクプレイ動画を見ていた。
「このアンバーニオン、一日で作った?!すごいなぁ······」
最初は昼間の護ノ森諸店に来た怪しい動画職人、シマサメの動画を漁って見ていた宇留だったが、特に変な所は無い普通のアラサーお兄ッサンだったので、関連動画を探す内にこのゲーム動画にたどり着いた。
しかしアンバーニオン関連の情報はみるみるネットから少なくなっているように感じる。何か情報操作でもされているようだ。
宇留の胸元の琥珀の中では、ヒメナが口をポカンと空けて戦うゲームのアンバーニオンに見入っていた。そう言えば···と宇留はヒメナに聞く。
「ねぇ?今日は夜休まなくてもいいの?」
(うん、絶対という訳じゃない···ぉお!)
水槽が並ぶ展示室、比較的ポンプや水の音の少ない広い部屋の一角に、六畳程のマットを敷いて深緑色の据え置きテントで囲った宇留用のスペースがあった。
仮設指揮所のある水質試験場に程近い学習水族館。避難要請が解除されるまでの国防隊最終待機場として、この水族館の広大な駐車場が選定され、軸泉に展開する国防隊が集結しつつあった。
護森の一息もあって、宇留は特別ゲストとしてガードの増員付きでここに保護される事になった。
水族館のゲート方面から来て、奥まった展示室の入り口には左右に一人づつ歩哨が立ち警護をしていると、わんちィがアッチャアッチャとホットドリンクの缶を二つジャグリングしながら展示室の前にやって来た。
そのままその缶を二つ上空に放り投げたわんちィは、すかさず敬礼をし合い身分証を提示する。そして落ちてきたドリンクを掴むと展示室に入って行った。
明らかに缶の滞空時間が長かった。
何が起きた?とでも言いたげに目を泳がせる隊員は、わんちィがドローンを使った作戦時に同行していた若い隊員の一人だった。
「(独り言少年にパン屋!、今夜はヤバそうだぜ母ちゃん!)」
「おょーい!コンポタと飲むメロンパンどっちが良ーい?」
「···うーーーーーん、じゃ、コンポタで···」
テントの入口からホットドリンクの缶を持ったわんちィの腕が二本、ニュッと出て好きな方を選ぶよう薦めてきたので、王道か斬新か迷って王道を選んだ。
わんちィはテントの脇に移動させられた水族館備え付けのベンチに座って缶の蓋を開ける。
差し入れの弁当を食べて、ちょっと理科室くさいバックヤードの簡易シャワーでサッパリして、柚雲のリクエストにあったヒメナの部屋(箱)を確認して、とりあえず予定をこなした宇留は、暇潰しにも飽きたのでテント越しにわんちィに少し質問でもしてみた。
「わんちィさん?」
「んー?」
「あのー、護森さんが言ってたんですけど、皇帝···ってやっぱり帝国の偉いヒトだったりするんですか?」
「そーだねー、私も見たことは無いけどあれでしょ?全部の敵倒すと出てくる敵みたいなのでしょ?ほら、急に暗雲がたちこめて雷が鳴ったりしてさ、虚空からエコー付きで高笑いが聞こえてくんの。フッフッフッフッフッ···ファッハッハッハッハッハッ!フゥアーッハッハッハッハッハッハッハッ!!グワァーッハッハッハッハッハッハッハッ!!ブワっ···ゲホッ!エッホ!ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!ゲホんッ!ンン、ン!(咳払い)ゲホッ!」
水槽の全ての魚達は何事か?とわんちィに注目している。
「わんちィあのさー、今の録音したからエコー付きで加工して、全然威厳の無い大魔女王降臨の音声素材にしてもいーかな?」
いつの間にかパニぃがスマホを持ってニヤニヤしながらテントの近くに来ていた。
「ヤメロッ!ケセぃ!」
「うるくーん!オジーチャンオバーチャンオネーチャンは、なんでこんな所に!ってトコに連れてッたよー!」
「怖いわ!普通に敵にバレずらい所で保護だっつーの!ンン、ン!(咳払い)」
その時、水族館の駐車場に駐機が完了した重拳隊が任務を終え、隊員達がズラリと並んだ仮宿車に帰る所だったのだが、太陽由来1のパイロットが居ると聞いた藍罠が椎山に連れられ是非にと、挨拶に行こうとした。
しかし、地の底から響き渡るような大魔女王の嘲笑が水族館の奥から響き渡った事で、ここは危険と判断。
宇留への挨拶は明日以降に持ち越しとなったのであった。
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