神樹のアンバーニオン

芋多可 石行

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バムベアイス

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 アルオスゴロノ帝国。秘密基地。
 ゲルナイドは船着き場ドッグに係留され、吊るされたタンクから伸びた点滴のような多数の管やパイプに繋がれて目を閉じ、微動だにしない。
 体の右脇に渡された浮き桟橋の先では、外骨格の一部が開いた体の洞穴から、フラフラと少年が歩いて出て来た。
 長い髪は足首まで伸び、体は緑黒い粘液にまみれて髪が全身にへばり付いている。クイスランは少年に近寄り、すぐにガウンのような服を羽織らせた。
「こんなやせっぽちで良かったの?もっと大きい体でも良かったのに?」
 クイスランは少年の前髪をかきあげる。
「ほら!せっかくかわいい顔になったんだからもう少し表情柔らかく?!」
·················お気に入り登録ありがとうございます
「え?」
「···アンバーニオン···スマイ···ウル····」
「はいはい、体洗おうね?」
 人型になったゲルナイドはクイスランと職員に肩を支えられ、施設の方に歩いて行った。





 巻沢まきさわ市、国防隊駐屯地。
 須舞 宇留、健康診断と調査、
 二日目。

 軸泉市を後にして一泊し、翌日はありとあらゆる計測や検査を一日みっちり行った宇留。
 相変わらず睡眠時間は短めで推移していて、翌日もすこぶる元気だった。
 問診の休憩中に控え室にやって来た百題は、タブレット端末とプリンターで何かを印刷し始めた。
 行動の所作しょさの節々が女性的で無駄が無く、流麗な動きで宇留の前に印刷物を持ってくる百題。
「いやはや、領空に無断駐車とは君も中々大物だね?」
 印刷物には衛星写真だろうか?滞空するアンバーニオンらしきものが写っている。
「あああ!ダメですか?ごめんなさい!動かしますか?」
「かなり高い所だから大丈夫です。多分。で?どうやって動かすの?」
 ······尋問?
「えっと、呼べば来ます。友達と一緒です」
「そうですか」
「?」
 あっけなく百題の尋問?は終わった。
 その後は三十分程、大人数の前で当日の時系列を話せる範囲でカイツマミで話して二日目は終了した。
 
 午前中で終了という事で、着替え終えて廊下に出るとわんちィとパニぃが待っていた。
「今、大丈夫?昼食おひるにツレテクよ?外出許可貰ったから徳盛の護ノ森諸店ウ チの店にでもと思って···」
「はい!お願いします。?」
 ヒメナの事を聞こうとしてやめた。わんちィとパニぃとはそう打ち合わせ済みである。

 わんちィの車で正門ゲートを出る時、少しスピードが乗ってしまい門番の人に睨まれるも、巻沢市の隣にある都市、徳盛とくもり市に向かった三人。
「もー!すぐカッ飛んで行こうとスンだから!」
 わんちィは愛車のピーキーさを嘆いた。
「でもわんちィよりモテるよコノコ。停めて戻ってくるとイケメンカーが隣に居る率九割」
「うるさい」
「大丈夫だった?検査薬とか、気持ち悪く無い?」
「え?いや、話に聞くよりはおいしかったですよ?」
「マジで!?」
 車は巻沢市と徳盛市の境界を越える。
「でもなんだっけ?重拳のあだ名」
「パンチくんでしょ?」
「パンチくん!!」

 宇留は駐屯地に着いた時、重拳から降りる際に思わずコックピットに声をかけてしまった。
「じゃ、ありがとうね?パンチくん!」
「ぱ、パンチくん?!」
 制御車を降りて来た椎山と藍罠の片膝がカクンと同時によろけた。

「なんかwww茂坂さんもwwwちょっと膝カクンってしてたよね?」
「なんか、親近感www」

 とりとめの無い会話をしていると、もう市街地だった。
 昼前に由緒正しいというお寺に寄って、三人で本尊を前に五分ほど観想にふけり、それから護ノ森カフェに着いたのは丁度昼時だった。
 混雑を避ける為に、併設の書店で一度本を選ぶ事にした宇留。
 柚雲に貰った五百円で漫画、明明後日しあさってのトゥトラ(17)を購入してその後、カフェで海鮮丼を頬張った。
 宇留はわんちィのススメでデザートにと紹介されたバムベアイス。に挑戦してみる事にした。
 クルミソースと粗びきクルミを混ぜ混んだバニラアイスにしょっぱめのみたらしソースとメープルシロップがかかっていて、香ばしそうな黒いパウダーが少々乗っている。そしてふっくらしたピザ生地のような米粉ケーキが一欠け添えられていた。
 宇留の食券番号が呼ばれ、それを受け取り二人掛けの席に戻る宇留。続いてわんちィとパニぃが受け取りに行った時だった。
「ここの席、よろしいですか?」
 高級そうな白い冬用ランニングウェアを羽織り、メッキのようなサングラスをかけた青年が宇留の返答も聞かずに正面の席に座る。バムベアイスのプレートをテーブルに置いて、青年は黙ってサングラスを外して宇留を見据えた。
 宇留はあらかじめ背筋に張られたマスキングテープを剥がされるような悪寒にさいなまれた。

 宇留が流珠倉洞で会ったスーツの男、エシュタガ。その男が目の前に居た。

 仏頂面のわんちィとパニぃが両者を挟み、わんちィは宇留の後ろの席、パニぃがエシュタガの後ろの席に、バムベアイスのプレートを置いて座り二人の様子を伺う。
 宇留と目が合ったパニぃは目を伏せて無言でゴメンと謝る。
 わんちィが窓から外をみると、国防隊のSP達が慌てている。そのうちの一人が首を前に傾け、スマンと無言で謝る。
 どうやら完全に想定外の出来事だったらしい。
 三人のプロの殺気が宇留を中心に交錯する。店内に流れるピアノソロがやけにはっきり聞こえていた。

「心配するな。今は何もしない」
 エシュタガは目を離せないでいる宇留に不敵な笑みを見せた。






 

 
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