悪役令嬢は氷結の戦乙女

marumarumary

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夜半の訪問者

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~クリスティン家~

アレン目線
ついにこの日が来た。
俺の名前は、アレン・クリスティンとなった。
しかし、ここまでの道のりは俺の予想とは全く違うものであった。
俺は、お嬢をたらし込むどころか、逆にお嬢から目が離せないでいる。
そして、お嬢はと言うと王太子から求婚されているらしいが、侯爵と一緒になって固辞しているという。
つまり、まだ俺にも可能性は残っているということだ。
一日も早く侯爵家で後継ぎの地位を確立し、聖騎士を目指す。
それが今の俺の目標であり全てだ。

日々忙しくすごしているが、充実している。
義父の仕事見習いで王城とクリスティン家との往復も苦ではない。
なんと言ってもお嬢と同じ屋根の下、朝食・夕食はもちろん、時間があれば帰って来て一緒に過ごすようにしている。・・・色々と理由を付けて。

~ある日の夜半前~
”コンコン” 誰かが扉を叩く音がした。
「アレン、私よ。ちょっと良いかしら?」
こんな夜中にお嬢が! はやる心を抑えつつドアを開ける。
「ど、どうしたの? こんな夜中に。」
見ると、お嬢はもう寝る前の身なりであり、肌着?というものではないだろうか?
ううっ、まともに見られない。恥ずかしさのあまり顔が火照ってしまう。
「入っても良い?」
上目遣いでお願いしないでほしい。
「ああ、良いよ(良いのか?)。さあ、どうぞ。」
お嬢を招き入れたは良いが、鼓動が激しくなって来た。
若い男女が、夜中にこんな姿で二人っきり・・・。

「へ~、ここがアレンの部屋ね。ふふっ、きちんと片付いているのね。」
「ま、まあね。(片しといて良かった)」
「こっちに来てから、ず~と忙しそうだけど少しは慣れた?」
「あゝ、皆良くしてくれるからね。俺には過分な事だと思っている。」
「そう、良かった。私ね、本当はちょっと心配してたの。アレンを巻き込んじゃったなぁ~て。」
「え?」
「ごめんね。」
なんで俺は謝られているんだ?
「それとね。私の事はお義姉ねえさんと呼んでも良いのよ?
 う~ん、それともお父様の様に”キャシー”が良い?」
「あ、あゝ、そうだねキャシーかな?」
ごく限られた親しい者にだけに許される愛称・・・嬉しくもあり、少し残念な気もする。
キャシーも恥ずかしそうにもじもじしている。
可愛いな。彼女のこんな仕草を見られるとは。
「そう、遠慮しないでね。もう、私達は家族なんだから。それじゃあね。お休みなさい。」

もう帰ってしまうのか!? 
もう少しだけっ!と思っていたら俺の体が勝手に動き出す。
俺は、キャシーに何をしようとしているんだ?
”チュッ”
と俺はキャシーのおでこにキスをしていた。
驚いた顔の彼女に 「お休み。」 と微笑んで言う。

キャシーは、ニコリと笑って扉を閉めた。

ああー! やってしまった!
全身の血が沸騰しそうだ!
でも、不自然じゃないよな。
家族だもんな。
家族・・・・。
義弟おとうと
弟。

今晩は眠れないかもしれない。
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