悪役令嬢は氷結の戦乙女

marumarumary

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アズラーン村の攻防1

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~王立学園 A組~

私は、授業中にもかかわらずマリアを廊下に呼び出した。
教師と生徒たちの怪訝な視線を感じた。
後で、悪役令嬢が聖女を呼び出した、なんて事はなるのかもしれないが、事は急を要する。
「マリアさん、落ち着いて聞いてね。」
困惑顔のマリアに、これから私が語る事への覚悟を促した。
「アズラーン村に危機が迫っています。これから私達と伴に村に行っていただきたいのです。
 こちらは、宰相府の方でグレイス公爵家のオクティビア様です。」
「オクティビア・グレイスです。」
驚きながらもマリアは重大さを理解したようだ。
きっとオクティビアの存在が大きい。
「村は、村の皆はどうなっているのですか?危機とはどんなことなのでしょうか?」
「アズラーン村近辺に亡者の群れが現れ、村に迫っているとの知らせがあったの。」
「そんな!」
マリアの悲鳴にも似た叫びは、静かな廊下にこだました。
ワナワナと震えるマリア。
私は、マリアの方をそっと抱き、マリアに力強く問うた。
「大丈夫、今ならまだ間に合うはずよ。だから、私に力を貸して。」
「カサンドラ様・・・、私は何をすれば。」
縋り付くマリアの頭を優しく撫でてあげる。
「村の事を思い描いて、具体的な場所を力強く・・・、そうすればテレポートできるわ。」
「な!」オクティビアは驚いて声を発してしまった。「そんな事が…」
「オクティビア様は私をしっかり掴んでいて下さいね。」
オクティビアは躊躇しながらもカサンドラの細い腰に両手を回す。
実は、テレポートも、しかも三人同時になんて経験はない。
ただ、ゲームの世界では、ポイントからポイントへの瞬間移動は良くある事だ。
確証は無いが、ゲームの経験から自分ならほとんどの魔法が使えるはずだ。
「マリアさん、オクティビア様、用意はよろしいですね。」
「「 はい。 」」
私は、マリアを強く抱きしめ、魔力循環をはじめた。
マリアの魔力が交流し、意識の共有が図られる。
「グレーターテレポーテーション(上位転移魔法)」
3人の姿は、揺らめきながら徐々に薄くなり、やがて消失していった。

~アズラーン村 マリアの実家前~

空間が揺らめきながら何かが形作られいく。
それは徐々に鮮明になり、やがて3人の人の姿となった。

「着いたわ。ここがアズラーン村で間違いない、マリア?」
「・・・、はい、間違いありません。ここが私の家ですから・・・、本当にこんなことができるのですね。」
マリアは目を輝かせながらカサンドラを見つめている。
一方、オクティビアは、頭を振りながらまだ、現実に対応できていない様子である。
カサンドラは、そっとマリアから離れ、辺りを見回す。
オクティビアにも腰から手を放すように軽く手を叩いて促す。
”はっ”と我に返り手を放すオクティビア、少し気まずそうにしている。
「少し変ね。」
付近を見回すが、人の気配が無い。
かと言って、亡者が侵入した形跡も無い。
魔力探知を試みるが、近くに巨大な魔力保有者の二人がいるので中々難しい。
「仕方ない。」とカサンドラは呟き飛行魔法”フライ”を唱えた。
軽くふわっと浮き上がるカサンドラ。
驚いて下から見上げる二人。
「いけません。オクティビア様!」
とマリアが叫んでいるが、何のことだろうか?

上空から見るアズラーン村は、のどかな田舎町だ。
その村外れに騎士団の防衛拠点らしき野営地がある。
さらにその先に騎士団の布陣があり、おそらくそこが最終防衛地点なのだろう。
そうすると、亡者の群れはさらに先だ。
特に交戦状態は見られない。
我々の到着は間に合ったということだ。

「どうやら間に合った様ですね。その先に騎士団の野営地があるので合流しましょう。」
「素晴らしい! 早馬でも1日は掛かったことでしょう。」
と顔を真っ赤にしたオクティビアは目を血走らせている。
「オクティビア様、ガン見し過ぎです!」
とマリアがなぜか怒っていた。

はぁ~、そうか、飛行の際にスカートがヒラヒラしていたのね。
うん、分かるけど、元男として分かるけど、今はそれどころではないわよ。オクティビア様。

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