うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第1章 中立自由都市エラリア

帰還とクエスト報告に行くようです

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帰ってこれた。
 陽の光が見えると、安堵の気持ちが心の奥底から湧き上がり、僕の疲れ切った精神に安らぎを与えてくれた。
 隣を歩くイスカとフーシェの顔にも安堵の表情が浮かぶ。

 ドラゴンとの死闘の後、意識を取り戻したフーシェはレベルが上がったことを喜んだが、自分の望んでいた『第3の壁』を突破したわけではないことを感じ取ったのか、エクストラスキル『限定──』を試そうと躍起になっていた。

 しかし、結局のところエクストラスキルは発動せず、『情報共有』で検索をかけても、発動条件は分からないままだった。

 やっぱり、魔大陸に渡らないと手掛かりはないのだろうか?

 そう考えつつ、僕達は帰路を急いだ。
 倒したドラゴンの身体はマジックポーチに収納してあり、そこには半壊したクリスタルゴーレムの身体も一緒だ。ドラゴンの子供の死骸まで入り、まだまだ余力を残していそうなマジックポーチはまさに底なし沼だ。

 これでオムイ達の依頼は達成することができたのだが、一歩間違えれば死に直結しそうな場面に追い込まれたことから、身体は休息を求めていた。

 久しぶりに見た青空や木々の色は色彩と生命力に満ちており、なおさら生の実感を得ることができる。

「帰りましょう。ユズキさん」

 太陽の光の下へと、いち早く走り出たイスカが僕達を振り返ると、陽射しに眼を細めながら笑顔を向けた。
 その笑顔に活力をもらうように僕達は外の世界へ帰還するのだった。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ローム大森林からエラリアの町までの移動は簡単なものだった。
 歩き慣れたフーシェの先導の元、街道まで出ると野菜を売りにエラリアまで向かう農家の馬車に乗せてもらい、僕達は無事にエラリアの門まで送り届けてもらうことができた。

「帰ってきた~」

 荷台から降りた僕は、大きく一つ伸びをする。荷台は野菜で埋め尽くされており、人3人が乗るにはかなり窮屈であったため、体はカチコチに強張っている。
 農家の男性に謝礼を払うと、僕たちは町の中へと足を踏み入れる。
 町の北側には、出発時以外来たことはなかったが、立ち並ぶ街並みを見ると、

 ──帰ってきた

 そう実感することができた。
 実家のような安心感という言葉がピッタリだと感じてしまうのは、それだけ僕がこの町に愛着を抱くようになったからだろう。

 多くの冒険者にとっても、町というものは心の拠り所なのかもしれないな。と感じてしまう。

 陽はかなり傾いており、僕たちは一先ずギルドへの依頼達成の報告に向かうことにした。
 曰く、依頼達成時は速やかに報告することが冒険者の義務であるようだ。
 疲れた体に鞭を打ちつつ、広場に鎮座する見慣れた石造りのギルドの扉を開けると、そこには受付業務をこなすカレンの姿があった。
 彼女は僕たちを見つけると、初め嬉しそうに、そして次の瞬間には目を丸くしてカウンターから飛び出してきた。

「皆さん大丈夫ですか!?」

 ⋯⋯うーん。多分、僕たちの見た目はかなり酷いよね。

 身体こそ『体力譲渡』をかけたおかげで傷一つないけれど、クリスタルゴーレムやドラゴンとの死闘の中で服はボロボロになり、傍目で見ても激闘を制してきたことが分かるだろう。

 うわぁ、こんな衆人監視の中、レッサードラゴンではなく、ドラゴンを討伐してきたと報告したならば、どんな反応になるのやら。

 僕たちが『』に行ったということは、話の早い者が嗅ぎつけて言いふらしたのか、ギルド内にいる数組の冒険者たちが今か今かと、僕たちの発する言葉を心待ちに視線を投げかけてくる。

「はい、実際死にそうになりましたが。何とか……」

 僕の言葉に、「おおっ!?」と、周囲の冒険者たちがどよめく。

 ううっ、胃が痛い。

「イスカ、胃薬ある?」

 約10日程前に言った台詞再びだ。しかし、今度のイスカさんは準備万端だ。

「ありますよ。お酒で懲りましたから」

 いや、そこは懲りる前に自制しましょうよ。
 そう思いつつも、実際に薬を飲むわけにもいかないし──
 ええい、これを言ったら帰ることはできないけど、ギルドに虚偽の報告をしたならば、強制退会らしい。ならば、帰れないことを覚悟で言うしかあるまい。

「はい!僕たちは『』の達成報告に参りました!!」

 あーあ、言っちゃったよ。
 高らかに宣言して何だけど、フカフカの星屑亭のベッドは遠くなったよね。

 そんな僕の宣言に、あれ?と苦笑いをしたのは受付のカレンだ。
 彼女は、可愛いらしく左手で口元を覆うと右手で「御冗談を」と言うように手をひらひらとさせて笑った。

「もう、いくら何でも言いすぎですよ。先日帰還したBの方々の証言から、『』と報告を受けているのですから」

 あ、あのパーティーここの冒険者達だったのか。良かった、無事だったんだ。

 カレンの言葉を受けて、僕は大洞窟内で出会った彼らが無事に帰還できたことを知り安心した。しかし、彼らとて、遭遇した相手が『ドラゴンの子供』であることを知らなかったとして、誰が責めることができようか。

「ふふっ」

 周囲の冒険者達からも、何だか生温かい目が向けられるのは少し辛いところだ。
 そんな僕たちに近づいてくる2人組の人影があった。

「あんらぁ~、貴方達久しぶりねぇ」

 この声は!!

「ユズキさん、この声って……」
「ん。戦闘じゃないのに寒気がする」

 冷や汗を浮かべるイスカと、顔を青くしたフーシェ。
 恐る恐る僕たちが振り向くと、そこにはやはりというべきか、僕とイスカが冒険者登録をした日に絡んできた、服装世紀末な方々の2人が顔に微笑みを浮かべながら立っていた。

 ああやはり⋯⋯オネエ再び!

 相変わらずのファッションセンスを爆発させた2人は、僕の前に立つと少し身体をくねらせながら話しかけてきた。

「んもぁ。大変なクエストをこなしてきたことは分かるけどぉ。誇大報告はダメダメよぉ」

 長身、スキンヘッドの男性はそう言うと怪しい手つきで、ポンと僕の右肩に手を置いてくる。

 自然なスキンシップと、その意味なく手をクネクネさせながら僕の肩に触れるのはやめてくれませんかね!
 誓ってオネエな方々が嫌いなわけではないけど、そういうコミュニケーションは求めていませんから!

 触れられて背筋がゾクゾクとしてしまうのは、新手のスキル攻撃を受けているのではないかと勘繰ってしまうほどだ。

「そうだぜ!!俺たちは信頼が第一だ。疲れていても虚偽の報告をしてはいけねぇからな」

 スキンヘッドの男性の横には、ギルド登録した日と同様に小太りの男性が連れ添っていた。

 うーん、世紀末な見た目で信頼性を説かれましても……

 疲れた精神で、この人たちのテンションを相手にするキャパは僕にはない。お帰り頂けないだろうか?
 そんな僕の切なる願いは勿論無視された。

「ほらぁ、カレンちゃんに怒られる前に、大きいお兄さんに、そのポーチの中を見せてごらんなさぁい」

「もう、ジンさん!絡みすぎですよ!!」

 受付のカレンが割って入るように言ってくれるが、スキンヘッドのジンという男性は、「ノンノン」という風に人差し指を動かした。

「なぁに、そのポーチがマジックポーチであることは知ってるのぉ。大きいお兄さんにそのポーチ、ちょっと覗かせてもらえないかしらぁ」

 そう言うと、流れるような動きで僕の腰ベルトに吊るされるマジックポーチの蓋へとジンの手が伸びてきた。
 ぞくりとする手つきに思わず僕は声が裏返ってしまう。

「わ、分かりました!!見せますから!!」

 思わず言ってしまったが、その言葉を聞いたジンは僕にバチンとウインクをすると言い放つ。

「あ・り・が・と。もし、レッサードラゴンじゃなくてもカレンちゃんには上手く言うからぁ」

 渋々僕はポーチを取り外すと、『ドラゴン選択』とポーチを手にし、頭に念じながらジンの方へと差し出す。

「うふ、レッサードラゴンちゃんとご対面~」

 だから!自然な手つきで、ポーチを差し出す僕の手を包み込むように握ってこないで!

 僕の心の叫びなんてお構いなしだ。
 嬉しそうに、ジンは僕のポーチの蓋をそっと開けると、その中を覗き込んだ。



「──」

 長い長い沈黙があった。

「おい、相棒。どうしたんだよ」

 ジンの仲間が声をかけるが、ジンは動かない。

「おいってば!」

 小太りの男性が背を伸ばしながら、ジンの肩に手をやると──

「わあっ!!」

 僕もジンはポーチを覗き込んでいたため、その表情を読み取ることはできていなかったのだが、まさか真っ青な顔で泡を吹いて立ったまま気絶しているなんて!

 相棒の男性に肩を掴まれたため、ジンは意識を失ったまま、ビターンと音を立てて後ろ向きに床に倒れこんでしまうこととなった。

「相棒~!!どうしたんだ!」

 悲痛な男性の声がギルド内に木霊した。
 そんな様子を苦笑いしながら見つめるイスカ、そしていつの間にやら途中の露店で買ったクッキーをポリポリと頬張るフーシェ。

 うん、何だかこんな感じが僕ららしい。

「ったく、何だよ騒々しい」

 ギルド内のざわめきに気づいたのか、ギルドマスターのラムダンがカウンターの奥から気だるげに歩んできた。そんなラムダンは、この騒ぎの中心にいるのが僕たちだと気づくと、「またお前らか」と言いたげに片手で顔を覆ってしまった。

「⋯⋯無事に帰ってきたのか。オムイ達の依頼は?で、何でジンはのびてんだ?」

 ラムダンは泡を吹いて意識を失ったジンを鬱陶しそうに見下ろしながら僕に問いかける。

「あはは、成功と言いますか、ある意味失敗と言いますか。⋯⋯討伐証明見られます?」

 もういいや。どう転んでも星屑亭に帰るのは遅くなってしまう。
 僕がラムダンに聞くと、ラムダンは大きく頷いた。

「あぁ、この騒ぎを早く散らせてくれ。レベル30台の大物なんだ、パッと見せてそれで終いにするから」

 あはは、多分レベル60~70台はある大物なんだけどね⋯⋯

 少し緊張した面持ちのイスカと、相変わらずポリポリとクッキーをかじるフーシェを見た後、僕は意を決してマジックポーチの中へと手を突っ込む。

 ──。

「はい、これが討伐証明です」

 ズモモモモ、というような効果音がピッタリなように、高さ3メートルはあるであろうドラゴンの頭部が
 床へ引きずり出される。

 うん、このスペースだとここまでしか出せないよ。──って、あれ?

 気づけば、ラムダンを初めフロア内にいる人全員が、氷の様に固まってしまっていた。

 あ、やっぱりね。

 僕が、さらば静かな生活。と、心の中で涙を浮かべると同時にラムダンが呟いた。

「おい、カレン。俺の酒癖はどうやら脳までやられたらしい。俺を正気にするために全力でつねってくれ」

 対するカレンも口を開く。

「ギルドマスター、連日の激務が精神に変調を来しているようです。どうか、お暇を頂けますか?あと、一応私の頬をつねってください」

「任せろ」

 そして2人は、漫画のようなタイミングでお互いの頬をつねり合う。

「⋯⋯痛いな」
「⋯⋯痛いですね」

 見回すと、周囲でも同じような光景が繰り広げられていた。

「⋯⋯」

 一瞬のフロア内の沈黙の後──

 キャアアアアアッ!!!

 耳をつんざくような悲鳴は、ギルドを揺らすほどに響くこととなってしまっていた。
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