うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第2章 交易都市トナミカ

襲撃者は魔王だそうです

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「え?誰?」

 僕は大鎌を手に持ち、浴槽に足を踏み入れる女性に向かって思わず真顔で問いかけてしまった。
 余りに唐突なことで、かえって僕の思考は冷静になり、風呂に武器は持ち込んではいけません。なんて考えてしまう始末だ。

「だ、誰って私よ。私」

 新たなオレオレ詐欺か何かなの?

 いや、本当に申し訳ないけど見覚えがない。
 身長はイスカより少し高いくらいだろうか?すらりとした足とキュッとくびれた腰。イスカより肉付きのよい身体は、出るところと絞られるところのメリハリがしっかりとしていて、少し、いやかなり目に毒だ。
 青にも水色にも見える腰にまで届きそうな髪は、月明かりに照らされ青白く輝いているようだ。少し切れ長の意思が強そうな瞳。その瞳は髪よりも濃く、深い深海を映し込んだようなブルーだった。

「えっ、あ、魔族?」

 気づけば、彼女の耳の上にはフーシェと同じように左右に1対の角が生えていた。
 紫色のフーシェの角とは違い、淡く燐光を放つ角の色はほんのりと白い。
 僕の言葉に女性は、ビクッと身体を震わせると、おそるおそるといった風に僕に声をかける。

「あ、貴方。まさかと思うけど、私のことエルフのように見えていないの?」

 エルフ?あ、イスカのことか?

「いや、完全に魔族でしょ」

 ──

 サパパパ

 浴槽に流し込まれる水の音だけがやけに大きく響いた。
 そんな一瞬の沈黙の後──

「キャャアアッ!!」

 女性はいきなりその右手に握った大鎌を僕の首めがけて振るってきた!
 虚空を切り裂く一撃は、風切り音と共に僕の首を切断するために寸分違わず飛来する。
 正直、彼女の声に驚いた僕は鎌を受け止めることへの反応が遅れてしまった。

 ガツンッ!!

 大鎌が僕の首を刈り取るために、その鋭い刃が僕の頸動脈に触れる。

「やった!!」

 女性はホッとしたような声と、嬉しそうな表情を見せた。
 でも、そこまでだった。
 いくらそれ以上力を込めようとしても、鎌の切っ先は僕の首の薄皮一枚斬ることができず、ジリジリと見えない力に阻まれるように皮膚に切り込むことができない。

 うん、衝撃はあったけど正直マッサージマシンで叩かれた程度だ。

「何で!?」

 首を獲ったと確信したのに、刃が届かないことに気づいた女性が、たちまち焦りの表情でさらに鎌を握り込む。

 僕は何で、いきなり見ず知らずの魔族の女の子に斬りかかられなければいけないんだ?

 この理不尽に少し腹が立つ。

「風呂くらい⋯⋯」

 僕は右手で鎌の刃先を掴む。

「ヒェツ!この人呪いの鎌を普通に触ってくる!!」

 え、この鎌そんなに厄介なの?
 確かに触れた瞬間嫌な感じはしたけど。

「ゆっくり入らせろ!」

 というか、ほんと夜はゆっくり休ませてほしい。
 僕は怒りと共に、先ほどから首に当たる大鎌を掴んだ手に力を込めると捻り割った。

 バキンッ!

 と小気味良い音と共に、鎌の刃が真っ二つに割れる。

「イ、イヤァァッ!!私の鎌が!!」

 大鎌が割れた瞬間、女性の両目から大粒の涙が零れる。

「もう、嫌ッ!認識阻害の魔法も効いていないし、無理!!」

 女性は浴槽から足を引き抜き、この場から離れようとする。

「いや、待てって!」

 殺されかけたのに、このまま逃がしていられない!

 僕が咄嗟に手を伸ばすと、パシッと鎌を持っていない左手を掴むことに成功する。

「捕まえた!ってウワッ!」

 見た目以上に強い力で、僕までが浴槽から引き抜かれることとなった。
 浴槽の中で踏ん張りは効かないし、浮力も相まって僕は彼女に引きずられる形で浴槽の外に出されると、今度は女性の方も急に重くなった僕の身体に足を滑らせ、僕と女性はもつれあうように浴室の床に転がってしまうこととなった。

 ドンッ!
 と衝撃と共に床に転んだ僕は視界が真っ暗になったことに気づく。
 どうやら、女性に覆いかぶさってしまったらしい。

 ──ん?

 何か、僕の唇に柔らかい感触が触れている。
 少し、口を開くとチョンと甘い香りと共に、柔らかくしっとりとした感触が僕の舌と触れ合った。

 これはまずい!

 ガバッと上体を起こすと、僕は女性を組み敷くように倒れ込んでしまったらしい。
 僕の身体の下には、顔を真っ赤にして瞳を濡らす女性がプルプルと身体を震わせている。

 ──!!

 その女性のバスタオルは、転んだ拍子に解けてしまっている。
 視界を下げてしまえば、明らかに彼女の裸体を直視することになるだろう。

「ん?」

 なんかスースーする。
 僕は何だか腰回りが非常に心もとない感覚に顔を青ざめる。
 タオル解けた?



「──ユズキさん⋯⋯何してるんんですか?」
「ん。流石ユズキ──」

 背後から聞こえる、イスカの怒りを含んだ声。
 フーシェの声もどことなく、いつもより冷たい気がする。

 あ、これ終わった。
 外気の寒さが消し飛ぶように背中に冷や汗が流れる。
 そんな僕の身体の下で、襲撃者の女性は「クシュン」と小さくクシャミをあげるのだった。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 僕と襲撃者の女性は、何故か揃って正座をさせられていた。

「あの、イスカさん?」

 一応室内に入れさせてもらった僕たちだが、僕は腰にタオル1枚。女性の方もバスタオル1枚巻いただけで座らされているためかなり寒い。

「許しません」

 え?
 こんなに怒りの声を込めたイスカを僕は見たことがない。
 僕はゴクリと喉を鳴らしてしまう。
 怒り心頭のイスカが放った次の言葉は。

「ユズキさん!許しません!こんな私のニセモノを間違って襲ってしまうなんて!!」

「え?」

 イスカの言葉に僕は面食らう。

「『危険察知』が働いて飛び起きてみれば、ユズキさんが私の格好をしたニセモノを押し倒してる場面を見たんですよ!冷静になんていられません!」

「ええっ!?」

 僕の焦りに、フーシェの方もうんうんと頷いている。

「ん。フーシェはイスカとユズキがおっ始めるのは容認しているけど、ニセモノとするのは良くない」

 フーシェも何言っているの?
 ほら、僕の横に座っている人、魔族だよ?
 見た目も全然違うよね?

 僕の内心の焦りに、脳内にセラ様AIの声が響いた。

『警告。隣の魔族は周囲に認識阻害の魔法をかけています。ユズキは抵抗値が高いために真実の姿が映っています』

 よく見れば、隣の女性は「おかしい⋯⋯そこの2人にはちゃんとかかっているのに」と呟いている。

「おい⋯⋯今すぐに言う。その魔法やめろ」

 僕がにっこりと圧をかけて微笑むと、女性は全力で首を横に振った。

「わ、私がなんでそんなことを!大体、私はこんな所で本当の姿を貴方以外の前で⋯⋯」

「僕が、彼女の姿を真似られて喜ぶと思う……?あと、絶対逃がさないから」

 もう少し圧を加える。
 正直、女性を脅すような真似はしたくないが、こちとら、命を狙われて、イスカたちには誤解されているのだ。そろそろ限界だって振り切ってしまう。

「あ、貴方が望むなら⋯⋯」

 そう言うと、女性は小さく呪文を唱える。

 パリンッ

 小さな音が響いたと思うと、眼前のイスカとフーシェがいきなり臨戦態勢をとった。

「ま、魔族!!」
「ユズキ、こいつ強い!」

 あ、認識阻害の魔法が解かれたのか。
 身構える二人に僕は声をかける。

「だ、大丈夫2人とも。危うく、首を刈られそうになったけど、ほら、大丈夫だったから」

 首を刈るといった言葉に、2人もさらに警戒感を強める。

「命狙われているじゃないですか!!」
「ん。相当高度な認識阻害魔法。全然見破れなかった。フーシェにはユズキがイスカを押し倒しているようにしか見えなかった」

「いや、だから誤解って言ったよね!?」

 隣の女性は、恥ずかしそうに両手で胸元を抑えながら横を向いてしまっている。

「⋯⋯だったら、なんで本当の姿を知っていたのに押し倒していたんですか?」

 やけに冷たい視線を逆に浴びることになってしまう。

「ん。我慢できないなら言えばいい。数時間くらい外をぶらつくから、その間に済ませていい」

 フーシェもそんな心遣いいらないから。

「おい!君のせいなんだから、何か言ってよ!」

 この襲撃の理由を語ってくれない限りは先に進めない。
 もう、僕の誤解を解くには、君の発言が頼りなんだ。

 僕の懇願するような言葉に、ますます女性は身体を小さくさせると、とんでもないことを言い出すのだ。

「初めてのキスだけでなく、その少し先までなんて。身体を許してしまったということは、私はもう他の男性の元にはいけない」

 ──。
 誰か助けて⋯⋯

 わなわなと身体を震わせるイスカに、もう僕はなんと口を開けばいいのやら。
 そんな僕とイスカを見ていたフーシェだが、突如一つため息をつく。

「ん。2人とも好き合っているんだから、夫婦喧嘩は止める。イスカだって、ユズキがイスカ以外に手を出さないって知っている。ニセモノにやられて怒るくらいなら、さっさと先に進めばいい」

 そう言い放つと、フーシェは女性の方へ向き直る。

「悔しいけど、この魔族は私より遥かに強い。フーシェからは逃げれるかもしれないけど、ユズキからは逃げられない。貴方は……誰?」

 フーシェの言葉に、女性は恐る恐る僕の方へと向き直る。

「貴方⋯⋯ユズキと言うのかしら?貴方が責任を取ってくれるなら⋯⋯」

「責任は取らないけど、逃がすつもりもないよ。君はここにいろ。そして教えてほしい、何故僕を狙ったかを」

 僕の言葉に、女性は顔を真っ赤にする。
 少し、もじもじと身体をゆすったかと思うと、その小さな口を開いた。

「私の名前は、リズ=フォルティナ・ヴァレンタイン。『魔大陸ドミナント』を統べる『魔王』、ヴァレンタインの第7王女にして、『魔大陸レーベン』の統治を任された『観測の魔王』よ。私の目的は、『勇者』であるユズキ、貴方を魔大陸のために暗殺するつもりだったのよ!」

 そう言い放つと、またリズと名乗った女性は「クシュンッ」と一つ、可愛らしいクシャミをあげた。

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