うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

海戦 6

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 それは突然のことだった。
 バリッと黒い雷が空に走ったかと思うと、紫色の魔法陣が空に広がった。

「何!あれは!?」

 グリドール帝国海軍との戦いから一息つき、披露した身体にもいくらか力が戻って来たイスカが驚きの声をあげた。

「全く!今度は何だっていうんだい!」

 戦いを終え、船体に大きな負担を受けたレグナント号の点検作業を指示していたビビが、忌々しそうに空を見上げる。

「あれは⋯⋯遠目でよくは分からんが、転移術式の様にも見えるの」

 レグナント号は今、トナミカの旗艦『トルルージュ』に搭載されていた潜水艦から乗員の引き上げ作業を行っていた。
 潜水艦は、散布されていた機雷群の下を通り抜け、レグナント号近くに浮上し、ニンムスはその作業を指示していた。

「ギルドマスター!お疲れ様でした!!『蒼天の灯台ブルートーチ』のエレナ、只今帰還致しました!」

 潜水艦から縄梯子によってレグナント号の甲板へと上がってきたエレナが、ニンムスの元へと駆け寄ると報告した。

「あぁ、よく特殊作戦を遂行してくれたのじゃ。皆は?」

 ニンムスの言葉にエレナは頷く。

「はい!トルルージュ乗員23名。誰一人欠けることなく潜水艦に退艦することができました。──ですが、トナミカの象徴であるトルルージュは」

 エレナが言葉を詰まらせると、ニンムスはエレナへと近づいた。そして、思いっきり背伸びをすると、うなだれるエレナの頭を優しく撫でた。

「いいんじゃ、トルルージュ。彼女を失ったことは大きな痛手じゃが、船は作れてもお主達は死んだらおしまいじゃ。よく、その人数で作戦を成功させてくれた」

「──はい、ありがとうございますギルドマスター」

 ニンムスの優しい言葉にエレナが瞳を潤ませた。

「ん。何か動きがある」

 空の様子を眺めていたフーシェが、魔法陣を指差した。

 ──ゴウッ

 轟音が大気を震わせたかと思うと、突如巨大な魔法陣から陸地が現れた。

「な!何ですか!!あれは⋯⋯島!?」

 イスカが驚きの声をあげる。
 イスカだけではない、レグナント号の乗員と潜水艦から上がってきたトルルージュの乗組員達も呆然としたように空を見上げた。

 突如、トナミカ方面の海上に出現した島は、轟音を立てながらゆっくりと海上へと落下を始めた。
 それを見ていたビビが、いきなり弾かれた様に舵を握ると叫んだ。

「あんた達!潜水艦の奴らはみんな引き上げたね?取り舵いっぱい!!衝撃に備えな!!山を超えるよ!」

 ビビの言葉にレグナント号の乗組員達が一斉に走り出した。

「イエス!マム!!」

「アンタ達!!しっかり捕まってな!ロープで身体を縛るなり振り落とされないように!」

 ──ズズンッ

 イスカの瞳に、トナミカの沖合へと落下する島が着水するのが写った。
 巨大な水柱が海面から立ち昇り、一瞬島の形が見えなくなる。
 次の瞬間、海面がグワッと盛り上がったかと思うと、衝撃波が大気を震わせてレグナント号へと襲いかかってきた。

「イスカ!合わせるのじゃ!!『風障壁ウインドシールド』多重展開!」

「は、はいっ!!」

 ニンムスの叫びにイスカは飛び上がると、疲れ切った身体に再び力を込めた。
 ブウンッと、レグナント号正面に重なり合った巨大な『風障壁ウインドシールド』が展開した。

 ゴウッ!!

 爆風が吹き荒れ、音速を超えた衝撃波が、障壁とぶつかり合う。

「クッ!イスカ踏ん張れ!」
「はいっ!」

 ニンムスとイスカが障壁に注ぎこむ魔力をあげる。

「グッ!」

 レグナント号は障壁のお陰で消耗することはなかったが、先の戦いで満身創痍の現状で、衝撃波をまともに喰らっていたなら、竜骨が折れていてもおかしくないほどの衝撃だ。

「大波が来るよ!アンタ達、振り落とされるんじゃないよ!!」

 舵を握っているビビは、その巨体でありながら衝撃を受け止める為に、大きく足を肩幅以上に開くと舵を握りしめた。

 グワッ

 突然、レグナント号の艦首が空を仰いだ。
 いや、本当に空を向いたわけではない。波の余りの大きさに、艦首が波を乗り越えようと、船底に潜り込んだ波に乗り上げたのだ。

「負けるんじゃないよ!!」

 ビビがレグナント号に喝を入れる。
 余りの巨大な波の力に、レグナント号は最後の力を振り絞る様に、その巨体を震わせながらも波を乗り越えた。
 ビリビリと、船体が軋みをあげ、次に来る第二波、三波の波もなんとか乗り越えていく。

「この艦は、アタシ達の誇りだよ」

 最後の波を乗り越えた後、ビビは額から大粒の汗を垂らしながら天を見上げた。
 甲板には、必死の思いでロープにしがみついていた船員たちの姿があった。

 甲板の物資は散乱し、よく見ると手すりの一部は壊れ、マストに張られた帆は半分が破れてしまっていた。

「──ハアッ、これじゃまともに航海はできないね」

 ビビの言葉に、ニンムスが長い耳をピクリと立てた。

「──そうじゃな。じゃが、先ほど出現した島じゃが、明らかにあの転移を仕掛けてきたのはグリドールではないじゃろう。そして、レーベン。特にリズがそんなことをするとは考えられん」

「ん。そしたら、あれはメナフのせい?」

 髪をボサボサにしたフーシェが、落下してきた島を指差した。

 島の周囲には、未だ水蒸気が立ち昇っており、島の全容を把握することは困難であった。
 西日に染まる島は、水蒸気に反射して黄金色に輝き幻想的に写ったが、その実態はトナミカにとっては最悪の物でしかなかった。

「十中八九そうじゃろう。最早、最悪を超えた最悪じゃ。だが、そうであるからこそ、ワシはあそこに戻らねばならぬ」

 沈痛な面持ちでニンムスが言葉を絞り出した。

「ギルドマスター、気持ちは分かるが、この船は動くことで精一杯だ。後方のグリドールも、さっきの波で大分やられただろうけど、流石にグリドール海軍を背負いながら、トナミカに近づくのは無理ってもんだよ」

 ビビが、ボロボロになった舵を優しくさすりながら答える。

「あ、あの。ギルドマスター!潜水艦を使うのはどうです?今確認してきましたが、レグナント号に繋いでいた潜水艦は損傷は確認できないようです」

 小走りに駆けて来たエレナが、ニンムスに報告する。
 エレナの言葉に、ニンムスは眼を見開いた。
 イスカとフーシェも無言で顔を見合わせるとニンムスへと視線を送った。
 誰もが、ここが戦いにおける分水嶺だと理解したのだ。
 ニンムスは大きく息を吸い込むと、声を張り上げた。

「皆のもの!疲れているとは思うが、ここがトナミカ存亡の山場じゃ!これより、ワシと『蒼天の灯台ブルートーチ』、イスカ及びフーシェは、潜水艦にてトナミカへ接近。メナフ率いるであろうドミナント軍と交戦に入るぞ!!トナミカに勝利を!」

 小柄なニンムスが高らかに腕を突き上げた。
 それに呼応する様にエレナ達も拳を突き上げる。

 今、最後の戦いが幕を開けようとしていた。
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