うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

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 降り注ぐ岩片に、私は思わず眼を瞑りそうになる。
 背中合わせのセラ様が、必死に『女神の調律』を操り、防護壁を展開した。
 しかし、先程から生じる胸の奥に湧き上がった熱が、思うように身体を動かしてくれなかった。

「──ッ!!」

 一際大きな岩が降り注ぎ、私達は身体を強張らせた。

 ──ガンッ!!

 しかし、私達に降り注ぐはずの岩片は何者かの防御によって、しっかりと受け止められた。
 私は、その巨大な背中に見覚えがあった。

「グスタフ!?」

 私が声をかけると、グスタフは岩片をしっかりと受け止めながらニヤリと笑った。

「大丈夫か、嬢ちゃん」

 ──キュインッ!

 今度は、一瞬光が煌めいたかと思うと、グスタフが支えていた岩は、次の瞬間には粉々に砕け散った。
 その剣筋には見覚えがない。

「遅いぞ、勇者様」

「──!!」

 私とセラ様は驚愕の余り、声を失った。
 そう、グスタフが呼び掛けたのは、グリドールの勇者『希望の剣』であるジェイクだった。
 その彼は、飛散して飛び散る岩の破片から私達を守るようにマントを広げると、土埃から私とセラ様を守ると優しい笑みを浮かべた。

「すまない、お嬢さん方。大丈夫かい?」

 すっかり、憑きものの落ちた様な表情を見せるジェイク。

「は、はい。ありがとうございます」
「ありがとうございます」

 私とセラ様は、今まで見たことのないジェイクの立ち振る舞いに、完全に虚をつかれた形で、呆けた様に返事を返してしまった。

「フッ、なんだかずっと悪夢に取り憑かれていたようだ。ここに来るまでにグスタフには大体のことは聞いたよ」

「え、だって二人共牢屋に入れられてたんじゃないんですか?」

 魔法を無効にする手錠をつけられて投獄されていたはずだ、その彼が、眼の前に現れていること事態が私にとっては信じられないことだった。

「いや、悪夢が終わった瞬間に、長らく来てくれなかった精霊達が力を貸してくれたんだ。彼女達が言うには、世界の危機が迫っているとね」

 そう言うと、ジェイクが手をかざす。
 その動きに呼応するかの様に、キラキラと周囲に光が瞬いた。

「ユズキさん、もしかしてジェイクさんはアマラの呪いか洗脳を受けていたのではないですか?それが『女神の調律』によって、呪いも跳ね返す程の『譲渡』が成されて、本来のジェイクさんに戻ったのでは」

 確かに。セラ様の言う通りでなければ、綺麗なジェイクになった理由がつかない。
 いや、本来はこれが本当の勇者ジェイクの姿がなのだろう。
 精霊に好かれているなんてチート設定、勇者という物は存在しないとセラ様は言っていたけど、特別な存在であることは疑いないようだ。

「もしかして、君達のお陰で正気を戻させてくれたのかい?それなら──」

「あ、あの!見ての通り私達とっても忙しいんです。できれば、トナミカの町を守ってくれると助かります!あと、グリドールが海と山からこの町を征服しようと攻めて来ているのも停めてもらうと助かります!!」

 私が『女神の調律』を操っているのを確認したジェイクは大きく頷いた。

「分かった、善処しよう」

「あと、レーベンの魔族は敵ではないです!!攻めてきたのは、ドミナントですから!」

 ジェイクは、マントの一部を切り裂くと、覆面の様に顔を覆った。

「グスタフ、君は二人を守れ!!私は、この町ではとんでもない過ちを犯してしまった。だから、陰ながらこの町を守ることに死力を尽くそう」

 ジェイクはそう告げると、颯爽と走り去ってしまった。

「大丈夫だと思うぜ。ありゃ、本当に俺がパーティーに入った頃の、青臭い理想論を掲げる勇者様そのものだ」

 残ったグスタフが、どこか嬉しそうに笑った。

「後の二人は?」

 私の問いに、グスタフは肩を竦めた。

「残念ながら、あの二人は元からあんな感じだからな。牢屋に残ることを選んだよ。まぁ、運良く牢が壊れたら逃げるつもりだろうな」

 私は呆気に取られた。
 本当のクズは、ジェイクではなく、ヤンとリアーナだったのだ。

「ま、あんま攻撃力は期待するなよ。だが、二人のことは絶対に守ってやるからな」

 グスタフが、大盾をしっかりと構える。
 その動きに『女神の調律』が呼応するように光り輝いた。私が音階をなぞると、飛び跳ねた光がグスタフに降り注ぐ。

「嬢ちゃん達!こりゃあ信じられない程の強化だぜ!」

 グスタフが驚愕したように声をあげた。

「──ユズキさん。おかしいです、明らかに巨大な魔力が消費されているのに、『女神の調律』は更なる魔力供給を要求してきます」

 確かに、湯水の様に繰り出される『譲渡』の力は、明らかに魔力切れを起こしてもおかしくなかった。
 気づけば、胸の中に宿った激しい熱は収まり、私はボーッと温かい力の流れ込みを感じていた。

『マスター、『女神の調律』によって生じた『共鳴』の方はなんとかしといたぜ。『譲渡士』の様にうまく『最適化オプティマイズ』するより時間はかかったが、これでセラの魔力をマスターが使える様になったぜ』

 脳内で、『略奪者プレデター』のセライが疲れた声で報告してくれた。

『セラは人になっていると言っても、それは人型に神の力を封じて押し込んでいるってことだろ?『女神の調律』は、セラが使っているコンソールと同じ仕組み。そして、俺達はセラから作られたスキルだ。だから、コンソールを介して、セラとマスターの間に魔力の受け渡しのバイパスを作ることは可能だったのさ』

 ──ブンッ

 更に『女神の調律』から、力強く光が放たれた。
 光はトナミカの空を超えて、海上や南方へと降り注ぐ。
 流星群にも似た光を見つめながら、私とセラ様は仲間たち無事を祈るしかなかった。

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