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01_プロローグ
過去
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一年前の冬。その日はとても風が強く、毛皮で作ったマントを羽織らないと凍えそうな、そんな寒さだった。レイはアルフレッドのもとでの修行が終わった後、家には帰らずに近くにある"ユミルカトルの森"の中で俺は剣を振るっていた。
ユミルカトルの森はある曰く付きの場所であったが人が寄り付かないためレイには都合が良かった。
最初に訪れた時に森の入り口の方に倒れた木があったので、それを加工し作った木人形が俺の相棒だ。
とても不細工な格好をしていたが、特に気にはしていない。
修行で使っているのは刃渡り六十センチのよく手入れされた両刃のショートソードだ。レイの手にはまだ大きく、両手で構えてやっと振るうことができるものだった。
(まだまだ、こんなもんじゃ強くなんてなれない…!)
レイは焦っていた。修行を始めること早二年、なかなか目に見えるような上達を感じることが出来ずにいた。師匠からの教えで基礎的な体力作りの走り込みを十キロメートル。剣の素振りを二千回。それを師匠が見ているところで毎日やる。ただそれだけで一日が終わる。
側から見ればダメ師匠であるが、彼はいつもレイを観察し着実に体が成長しているのを感じていた。
真面目に修行という名の基礎体力づくりに取り組んでいられたのもアルフレッドの存在が大きい。
レイの身体は同じ世代の子どもたちの一回り、二回りも上になっていたのをしっていたのはアルフレッドだけであろう。
* * *
空が赤く染まっていたのも束の間、日が落ちて辺りは暗くなっていた。
(そろそろ自宅に帰らないとサラに叱られるなぁ。さて、今日は終わりにしようかな…)
まさにその時であった。
ガサガサッと辺りで音がしたと思うといつのまにか木の影から赤い目が俺を睨んでいるのに気がついた。
(もしかして…魔物?!ダンジョンにしか存在しないはずじゃ…一体何故…)
兎や鹿などの動物を狩るならまだしも、魔物となると命のリスクは格段に跳ね上がる。
基本的に魔物はダンジョン内にしか生息しない生き物だ。それが何故かというのはまだ解明はされてはいないようだが、魔素というものが関与しているらしい。さてさて、余談はこんなところにしておいて…。
(くそ、このままだと村に襲ってくるかもしれない、ここでなんとかしないと…)
ショートソードを両手でしっかりと握りしめ、魔物の赤い目を睨み返す。どちらも目を離さずに一進一退を…とその時に魔物が突進してきた。
(速い?!でもこれなら…!)
レイは向かってきた敵の左の牙に剣を振り抜いた。牙に剣を打ちつけた反動でそのまま自分の体を一回転させ、隙だらけの背中を切り裂く。
魔物の背中からは血が吹き出し、その場に倒れ込んだ。
「グオオオオオオ…」
(よし…、やったぞ!)
ガタガタと震える手を押さえ、まだ辺りを警戒する。
背の高い草に紛れ赤い光が四つあるのが見えた。額から、そして手から
(相手はあと二匹。でもさっきみたいにやれれば…!)
今度はレイの方から向かう。
真正面から突撃して左前方にある木を目指した。
レイは木を左足で蹴り、体を逆さに回転させ、宙返りをしながら二匹目の頭に剣を突き刺す。
魔物の返り血を浴びながらも剣についた血糊を払う。
あと一匹だ。
「喰らえええええー!」
レイは魔物に突進して剣で切り裂くと一撃で頭を切り落とすことが出来た。
「はぁ、、はぁ、、やったぞ…!」
レイは息を切らしながらそう呟いていた。
そしてショートソードを腰にしまうとその場にレイは座り込んでしまった。
だがその時のレイは知らなかった。魔物の生命力は魔物である故簡単に死ぬものではない。
満身創痍であるがその最後の力を振り絞り、レイが最初に倒したはずの魔物はゆっくりとゆっくりと立ち上がった。
そしてレイに向かい渾身の咆哮と突進を繰り出すが、その鳴声に気が付いた時にはすでに遅かった。
* * *
「…遅いなぁ。あいつ。いつも師匠さんのところから帰ってくる前に自主練してるっていうのは聞いてたけど場所は聞いてないのよねぇ。うーん」
一方その頃、夜になってもまだ戻らないレイを心配していたサラは、村長である父のロイドと家に二人でいた。
その時サラの頭に不安が過る。
(あっ!もしかしてユミルカトルの森にいってるんじゃ・・・)
「ねぇ!お父さん、私レイを探してくる!」
「何言ってるんだ、ダメだダメだ。あの子は心配しなくてもそのうち帰ってくるだろうさ」
「でも…レイがいるとしたらユミルカトルの森だと思うんだ・・・」
「何?!それは本当なのか?ならば…アルフレッドさんに応援を頼もう!お前は家にいなさい!」
ロイドはアルフレッドを呼びに駆け足で家を出て行ったが、サラはロイドの姿が遠くなるのをが見えると一目散に森へ走った。
「何やってんのよあいつ、今までこういうことなんてなかったのに…」
レイは今までどんなことがあろうとも夕食の時間には帰っていたため、サラには嫌な予感がしていた。
(はぁ、はぁ、はぁ。もしレイに何かあったら私…)
冷たい風が吹き付け、サラの体温を少しずつ奪っていく。
ようやく見えてきたユミルカトルの森。
その入り口付近にある大岩にもたれかかるようにレイは血を流して倒れていた。
ユミルカトルの森はある曰く付きの場所であったが人が寄り付かないためレイには都合が良かった。
最初に訪れた時に森の入り口の方に倒れた木があったので、それを加工し作った木人形が俺の相棒だ。
とても不細工な格好をしていたが、特に気にはしていない。
修行で使っているのは刃渡り六十センチのよく手入れされた両刃のショートソードだ。レイの手にはまだ大きく、両手で構えてやっと振るうことができるものだった。
(まだまだ、こんなもんじゃ強くなんてなれない…!)
レイは焦っていた。修行を始めること早二年、なかなか目に見えるような上達を感じることが出来ずにいた。師匠からの教えで基礎的な体力作りの走り込みを十キロメートル。剣の素振りを二千回。それを師匠が見ているところで毎日やる。ただそれだけで一日が終わる。
側から見ればダメ師匠であるが、彼はいつもレイを観察し着実に体が成長しているのを感じていた。
真面目に修行という名の基礎体力づくりに取り組んでいられたのもアルフレッドの存在が大きい。
レイの身体は同じ世代の子どもたちの一回り、二回りも上になっていたのをしっていたのはアルフレッドだけであろう。
* * *
空が赤く染まっていたのも束の間、日が落ちて辺りは暗くなっていた。
(そろそろ自宅に帰らないとサラに叱られるなぁ。さて、今日は終わりにしようかな…)
まさにその時であった。
ガサガサッと辺りで音がしたと思うといつのまにか木の影から赤い目が俺を睨んでいるのに気がついた。
(もしかして…魔物?!ダンジョンにしか存在しないはずじゃ…一体何故…)
兎や鹿などの動物を狩るならまだしも、魔物となると命のリスクは格段に跳ね上がる。
基本的に魔物はダンジョン内にしか生息しない生き物だ。それが何故かというのはまだ解明はされてはいないようだが、魔素というものが関与しているらしい。さてさて、余談はこんなところにしておいて…。
(くそ、このままだと村に襲ってくるかもしれない、ここでなんとかしないと…)
ショートソードを両手でしっかりと握りしめ、魔物の赤い目を睨み返す。どちらも目を離さずに一進一退を…とその時に魔物が突進してきた。
(速い?!でもこれなら…!)
レイは向かってきた敵の左の牙に剣を振り抜いた。牙に剣を打ちつけた反動でそのまま自分の体を一回転させ、隙だらけの背中を切り裂く。
魔物の背中からは血が吹き出し、その場に倒れ込んだ。
「グオオオオオオ…」
(よし…、やったぞ!)
ガタガタと震える手を押さえ、まだ辺りを警戒する。
背の高い草に紛れ赤い光が四つあるのが見えた。額から、そして手から
(相手はあと二匹。でもさっきみたいにやれれば…!)
今度はレイの方から向かう。
真正面から突撃して左前方にある木を目指した。
レイは木を左足で蹴り、体を逆さに回転させ、宙返りをしながら二匹目の頭に剣を突き刺す。
魔物の返り血を浴びながらも剣についた血糊を払う。
あと一匹だ。
「喰らえええええー!」
レイは魔物に突進して剣で切り裂くと一撃で頭を切り落とすことが出来た。
「はぁ、、はぁ、、やったぞ…!」
レイは息を切らしながらそう呟いていた。
そしてショートソードを腰にしまうとその場にレイは座り込んでしまった。
だがその時のレイは知らなかった。魔物の生命力は魔物である故簡単に死ぬものではない。
満身創痍であるがその最後の力を振り絞り、レイが最初に倒したはずの魔物はゆっくりとゆっくりと立ち上がった。
そしてレイに向かい渾身の咆哮と突進を繰り出すが、その鳴声に気が付いた時にはすでに遅かった。
* * *
「…遅いなぁ。あいつ。いつも師匠さんのところから帰ってくる前に自主練してるっていうのは聞いてたけど場所は聞いてないのよねぇ。うーん」
一方その頃、夜になってもまだ戻らないレイを心配していたサラは、村長である父のロイドと家に二人でいた。
その時サラの頭に不安が過る。
(あっ!もしかしてユミルカトルの森にいってるんじゃ・・・)
「ねぇ!お父さん、私レイを探してくる!」
「何言ってるんだ、ダメだダメだ。あの子は心配しなくてもそのうち帰ってくるだろうさ」
「でも…レイがいるとしたらユミルカトルの森だと思うんだ・・・」
「何?!それは本当なのか?ならば…アルフレッドさんに応援を頼もう!お前は家にいなさい!」
ロイドはアルフレッドを呼びに駆け足で家を出て行ったが、サラはロイドの姿が遠くなるのをが見えると一目散に森へ走った。
「何やってんのよあいつ、今までこういうことなんてなかったのに…」
レイは今までどんなことがあろうとも夕食の時間には帰っていたため、サラには嫌な予感がしていた。
(はぁ、はぁ、はぁ。もしレイに何かあったら私…)
冷たい風が吹き付け、サラの体温を少しずつ奪っていく。
ようやく見えてきたユミルカトルの森。
その入り口付近にある大岩にもたれかかるようにレイは血を流して倒れていた。
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