悠久のワールドガーデン

加治 翔馬

文字の大きさ
上 下
4 / 5
01_プロローグ

魔法適正

しおりを挟む
「あぁ、あの時は本当にヤバかったな。魔物があんなに強いなんて全然知らなかった」
「知らないも何も危ないに決まってるじゃない!あのあとだいぶお父さんに怒られちゃったんだよ?何でダメだといったのに外にでるんだ!って」
「俺も師匠にかなり叱られたよ。罰として重りを付けて一週間修行したんだぜ?」

サラはあの時の事を思い出したのか少し涙目に、そして顔を少し赤らめながら笑っていた。
レイは残ったパンとサラダを一気に口にいれたあとマグカップに残っていた牛乳を含んで飲み込んだ。

「もう、そんな食べ方しちゃダメだって何回もいってるのに…はぁ。あ、もうそろそろ行かなきゃでしょ?アルフレッドさんによろしくね」

「うん、行ってきます」

準備を済ませたレイは剣を片手に玄関のドアを元気よく飛び出して行った

*  *  *


「師匠、おはようございます」

玄関をノックしてしばらくすると木製のドアが軋む音を立てながらゆっくりと開いた。
アルフレッドは白を基調とした緑のラインが入ったローブ姿に、左手には太陽に照らされ煌めく、緑色の宝石が埋め込まれた魔法杖を持っていた。

「おはよう、ゆっくり休めたか?そういえば今日でお前に修行をつけてから三年がたった。いつまでも基礎訓練だけだとつまらないだろう。早速だがおまえに魔法を教えたいと思う」

魔法にはそれぞれ火、水、土、風、光、闇、そして何にも属さない無の7つの基本属性がある。
中級、上級クラスになると焔、氷、樹、嵐、雷、聖、魔を扱える魔法系統が存在する。
超級や帝級が更にその上に並び、神級、伝説級ともなると重力や空間、時空や天候だって操る事だってできる程の威力を持つものさえある。

失われし遺産ロストテクノロジーである古代遺物魔法エンシェントマジックは400年前の魔導大戦で現在では使えるものがいなくなったとされていて、詠唱にかなりの時間と魔力を消費、また大規模な魔法陣を幾つも描く必要があり、超大規模な戦争魔法として使用した、という記録が残っている。

魔法の習得に関しては魔導書スペルブックや魔法巻物マジックスクロールというものが存在する。

魔導書スペルブックは魔法を習得したり、装備すると習得した魔法を強化する一面も持つ。これも魔導大戦前の遺産で、性能によって戦争の引き金になりかねないため発見され次第、国では国宝として扱うことが多い。それでも盗まれたり隠されたりしてしまうのだが。

一方魔法巻物マジックスクロールはというと、使用すれば魔法の習得ができるが、一度使うと燃えて消えてしまう。
最後に魔石は魔法を込めることで魔石内にその魔法を保持することができ、その魔石は魔法を使えない人物でも魔力の消費なしで恩恵を受けられる簡単魔法インスタントマジックとして主に生活魔法に用いられている。
また、自然界にある魔石には元からその魔力を持つものが存在し、魔力純度が高いものがあるが、それを鍛冶に使用したりすると所謂魔剣というものが作ることができる、といってもこれも今では作れる者がいるかどうか定かではない。ちなみに前者は人工魔石と呼び、後者は純魔石と呼んでいる。

あー、あとこの魔石はだな、魔道具というものにも用いられていて…

アルフレッドの話に頭がクラクラしながらレイは話を聞いていた。
レイに魔法を教える前に体作りとして、単純な走り込みや素振りだけをさせていて魔法はというと体内にある魔力を循環させる事だけしかさせなかった。要は器が出来ていなければ大きな力を支えることが出来ないからだ。
そしてサラは1年前に魔法を使うことが出来ていたが、それはアルフレッドが実は指南していた、というのをここでネタバラシしたがもう知っていたらしい。

「さて、まずは見本を見せよう。」

アルフレッドは庭にある金属の鎧で覆われたかかしに向かい両手を向けて詠唱を始めた。

『よく見てろよ、ファイアボール!』

アルフレッドの魔力が両手に集中していくのがわかった。魔力が集まったと思ったら両手から三十センチほど離れた空間に火が渦巻き、やがて球体になり、目の前のかかしを目掛けて勢いよく放たれた。
レイのために起動速度と詠唱速度を限りなく遅くしたファイアボールではあったが、金属の鎧は今にも燃えだしそうなくらい赤くなり、周囲の空気を揺らすほどの高温を発していた。

(す、凄い…)

そんな簡単な言葉しか出てこないほどにレイの目は輝いていた。

「師匠の両手に魔力が集まっていくのが見えました!これが魔法なんですね!すごい!」
「そうだ。まず、どんな魔法でもそうだが、魔法のイメージをはっきり持つんだ。そしてそれを現実に具現化する。それが全ての魔法の基本だ」

そして魔法を見せた後にレイの魔法適正を見るために地面に書いた魔法陣へ連れてきた。

「これは私が作った魔法適正を見ることができる複合魔法陣だ。周りにある小さな魔法陣が見えるな?この中心に魔力を流すと魔力に合わせてその小さい魔法陣が反応する。反応した、ということはその適正があるということだ。実際にやってみせよう」

その中心にアルフレッドが向かう。そして地面に手を触れると、魔法陣が起動し、小さな魔法陣も起動していく。
そして現れたのは赤色、水色、緑色、黄色の炎だった。
これはアルフレッドが使える魔法の四種類の火、水、風、光を表していた。

「さあ、こっちへ来て同じように魔力を流してみろ」

レイは同じように地面に手を伸ばして魔力を魔法陣に送り込んでいくと魔法陣が魔力を検知して順番に魔法を展開させていった。

赤色、水色、緑色、茶色、黄色、白色の六種類の炎が上がった。
レイが魔法使いとしてとんでもない実力を表していることに他ならなかった。

「師匠、これって…」

(レイに修行をつけたのも魔力量が常人の三倍はあったために個人的な暇つぶしというか興味本位だったが、これほどとはな…)

アルフレッドは驚愕していたが魔法陣の反応の説明をした。

「えーとだな、これは火、水、風、土、光と無の六つにお前は適正がある、ということだ」
「本当に!?じゃあ師匠みたいな魔法使いになれるかな?」
「あぁ、もちろんなれるとも。これからは魔法の修行もつけることにしよう。もっと厳しいものになるがいいか?」
「もちろんです!よろしくおねがいします!」

(六属性使いゼクスターか…これからが楽しみだな)

アルフレッドはレイを見てニヤリと笑った。
しおりを挟む

処理中です...