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拾った100円届けたら
しおりを挟む「おはよ、たーくん」
「……は……?」
起床は6時。朝食はトースト2枚にコーヒー。7時には家を出て、混み始める前の電車に乗り大学へ向かう。昼は食堂の日替りプレート。アルバイトがなければ20時まで構内で勉強をし、帰宅ラッシュを避けて帰る。夕食はサプリメントを少々。
南直は規則正しい生活を愛する大学生だ。髪は邪魔にならないよう常に短くしてあるし、染めた事はもちろんない。勉強しすぎたせいで低下した視力を補う眼鏡には、曇りなど1つもない。服にはシワが無く、きちんとアイロン掛けしているのが分かる。
友人一同に性格を聞けば、全員が「真面目」と答えるのだが、決して頭が固いわけではない。ユーモアはそれなりに理解していると自負している。
しかし現状、全く状況が飲み込めない。
知らない部屋に知らない男が隣にいる。眼鏡が無いので分からないが、声は低いし体格も自分より少しいい。なにより裸で、ベッドの上で、恋人のような距離感で、並んで寝ている。
「なぜこうなっている?」
「たーくんが誘ったのに覚えてないの?」
「た、たーくん?」
「さっきも言ったじゃん、何その反応」
うろたえる直を尻目に、不服そうに目を細めて訴える男は言葉を続けた。
「昨日だってあんなに愛してくれたのに」
「あ、愛して?」
「……本当に覚えてないんだ」
男はこの世の終わりのような表情で呟くと、俯いて動かなくなってしまった。
理解はまるで出来ない直だったが、目の前で項垂れている男を前に罪悪感が込み上げてきていた。
ベッドの上に裸で2人ということは、まさかとは思うが、万が一の可能性として、1つの答えが浮かび上がってきた。
セックスしたのだ、この見知らぬ男と。
「申し訳ございません!」
全く思い出せないが、状況から判断せざるを得ない。だとすれば、直は目の前の男に不誠実を働いたことになる。そう思った瞬間に直はベッドから飛び降り、土下座していた。
「あなたの名前も知らず、無礼を働いてしまったようで」
「え待って待ってそこから?名前なら名乗ったし、呼んでくれたのにそれも忘れたの?そんなに強く頭を打っちゃった?」
「は、」
男は慌てた様子で直の頭をさすった。直は相変わらずわけが分からなかったが、男の言葉から、頭を打ったせいでこの状況なのだと悟った。
「痛む?気づかなくてごめん、今から病院に行こう」
立ち上がって服を着始めた男は、先ほどまでの沈んだ様子が無くなっていた。たーくんも着替えて、と服を手渡され、とりあえず眼鏡をかけた。そして男の顔を見た直は思い出した。
「駅員さん!」
東守々夢は駅員として働く25歳。これといって何があるわけでもない駅だが、毎日仕事をしていれば、それなりに愛着はわいてくる。
そんな駅の利用者のうちの1人として、直のことは知っていた。毎朝同じ時間、同じ場所で電車を待つ真面目そうな学生さん。年が近そうということで何となく親近感を覚えていた。話す機会はなかったが、昨日ついにファーストコンタクトを果たしたのだ。
「すみません、電車内に落ちてました」
そう言って彼が差し出したのは100円玉だった。
無骨な手のひらの真ん中に、小さな円盤が載っているのが不釣り合いで面白かった。
「ありがとうございます。やっぱり真面目な方なんですね」
「いえ、普通です。……あの、以前どこかで?」
少し怪訝な顔になってしまった。真面目と言われるのがもしかしたら嫌だったのかもしれない。それ以前に、初対面の人間から性格の事を言われるのは妙な気持ちになるだろう。
「お気を悪くしたならすみません、毎日見ているとお客様を覚えてしまうものでして」
「ああ。きちんと仕事なさってるから覚えられるんです。あなたの方が真面目ですね」
思いもしない返しがきて驚いて沈黙してしまったが、彼は気にしていないようだった。
「では失礼します。お仕事お疲れ様です」
「ま、待ってください、お名前と連絡先を」
書類の記入のために引き留めたのだが、そのまま勢いで彼の予定を聞き、その日の夜に食事をする約束を取り付けた。友達になりたいと思ったのだ、その時は。
お互い酒は飲まなかったが、話しているうちに終電が無くなりホテルに泊まることにした。
すぐ入れるラブホテルを提案したのだが、真面目な彼は相当渋った。しかし金銭的に安上がりだとわかると決断早かった。1人暮らしの大学生ならば無駄な出費は抑えたいところだろう。そうして適当な部屋に入ったのだった。
「思い出した?」
「東さん……」
「あ、良かった!そうだよ」
「あの、本当にごめんなさい、俺、何があったのか覚えていないんです」
直は正座した膝の上の握り拳に力を込めた。
「ですが東さんを傷つけたなら責任を取ります。お金はすぐに用意できませんが、必ず用意します」
「え?」
東をまっすぐに見つめる直の瞳に、嘘はない。
「たーくん……」
「何でもお申し付けください!」
「なんでも……」
その時、東の頭ではそんなこと必要ないと言うべきだという理性と、燻り始めていた情欲が戦っていた。
実のところ昨夜は、2人の間に何も起きなかった。
ラブホテルに入った時点で直のいつもの就寝時間はとうに過ぎており、眠気のピークを抑えて何とか入浴を済ませた瞬間に倒れるように眠ってしまった。文字通りベッドに倒れたので、ヘッドボードに頭がぶつかったがそのまま寝てしまったのだった。派手な音がしたので東が慌てたが、すぐに穏やかな寝息が聞こえたため、そのまま寝かせておくことにした。それだけである。
一夜の過ちがあったかのような振る舞いをしたのは、東の悪戯であり、真面目な直の反応を楽しみたかっただけだ。たーくん、だなんてふざけて呼んだのも効果覿面、直は恋人同士のやりとりとして受け取ったようだ。
そんな素直でまっすぐな直を可愛いと思う気持ちは本物だ。しかしそれと同時に、どこまでも自分を信じきっているこの青年をめちゃくちゃにしたらどうなるのか。東の心は傾いていた。
「じゃあ、エッチしよ」
「え」
まだ着替えていなかった直をベッドに連れていき、そのまま直のペニスに触れた。
「東さん、それは」
「俺さ、傷ついたんだよ……あんなに愛し合ったのに、たーくんは覚えてないなんて……でも、もう1回やったらきっと思い出してくれるよな?」
こう言えばきっと直は抵抗出来ないと踏んだ通り、表情は納得していないが観念したように口を引き結んだ。
「大丈夫、覚えてないけど俺とエッチしたのはわかったんでしょ?だったらきっとすぐ思い出せるから」
と言いながらも、実際は何もなかったのである。今だって軽くペッティングして、勃起したら射精させて終わるつもりだ。それは芽生え始めた友情も終わる行為だが、今さら後には引けなかった。
複雑な気持ちとは裏腹に東の手は止まらない。力なく柔らかく、されるがままの直のペニスをしごくスピードが早くなっていく。全く反応しない可能性の方が高いと思っていたが、少しずつ先走りがこぼれだし、上向きに反っていく。手だけでその反応を感じるのが惜しくなった東は、反射的に咥えていた。
「ひ、東さん、それは」
「だまってて」
直が止めさせようと伸ばした手を叩き、行為を続ける。ツルリとした亀頭を舌で撫で上げれば、鈴口から面白いように先走りが溢れた。どうやら直はこの先っぽをいじられるのが好きなようで、硬度が増していくのがよく分かった。竿も飲み込むように喉へ迎え入れてやれば、熱く脈打つ血管さえ感じられるようで、それが東は嬉しかった。
「うう、ダメです、これはっ」
直は東の肩を両手で押して引き剥がした。
急に大量の空気を吸い込んだ東はむせてしまい、直はすぐに背中をさする。
「すみません、大丈夫ですか」
「やっぱダメだった?……だよな、ゴメン」
レイプまがいの行為を強いた自分にも優しさを見せる直に、東の良心が痛んだ。行為中は夢中で余裕がなくなっていたが、落ち着いた今なら分かる。
東は直に惚れていた。多分、ずっと前から。
終わった瞬間に気づくだなんて、自分でもドン引きだ。直の顔が、怖くて見られず俯くしかない。
「違います、こんなやり方ではダメという意味です。愛し合うというのは2人でないと出来ません、なのに東さんは先ほどから1人でやろうとしてる」
怒っているのか、直の声には抑揚がない。
「……たーくんは好きでもないヤツにそんなこと出来ないでしょ」
我慢したつもりの声が震えてしまった。こんな言い方ではまるで東が、直のことが好きだと告白しているようなものだ。
「恋人なんですからできます」
その言葉にようやく東は顔をあげた。すぐに視線がぶつかり、ずっと見つめられていたと分かる。直は頬はおろか、耳も、首までも赤くなっていた。
東は今の言葉を問いただそうと、口を開いたがすぐに塞がれてしまった。一瞬何が起きたのか分からなかったが、口内に感じる自分以外の熱でようやくキスされたのだと認識した。東の頬を包むように直の手が遠慮がちに添えられているのに対して、2人の口元から溢れる水音は激しかった。
「……たーくん、意外と攻めるタイプなんだね」
「意外と?昨日の時点で分かっているはずでは?」
巧みに翻弄され息を切らしている東に対して、直は冷静だった。
「それとも東さんも忘れましたか?じゃあこれから思い出してくださいね」
キスで弛緩した体を横にされた東は、丁寧に服を脱がせている直を見ていることしかできなかった。
失言したような気もするが、そんなことより直が自ら事に及ぼうとしている。頭は霞が懸かったようにボンヤリしていて思考がまとまらない。けれど、どうしても言っておかなければならない一言がある。
「たーくん」
「はい」
「好き」
淀みなく動いていた直の手がピタリと止まった。まるですべての時間が動かなくなったかのようで、静寂が永遠に感じられた。
「東さん」
「うん」
「好きです」
そう言って直は、東の額に軽く触れるだけのキスをした。
「俺のこと、真面目だと思ってるとこ悪いんですけど、違うんです。そうやって自分を律しないとすぐ熱くなっちゃって周りが見えなくなる」
額から耳をなぞるように舌を這わせ、耳たぶをあまがみしながら囁き続ける。
「久しぶりです、真面目な自分を取り繕えなくなるなんて……東さんが可愛すぎるから」
「あっ」
直の左手が東の乳首を掠めた。
「いつもニコニコしてて、愛想がいい駅員さんだなって思ってたんです……実際話してみたら面白いし、俺を見る目が優しくて」
「あ、やっ」
あくまでも痛みを感じない程度に乳首を引っ張ったり潰したりといじりながらも、直の告白は止まらない。
「友達になれて良かったって、思ってたんです。それ以上のことなんて……東さんがカワイイこと言うから、我慢するの大変だったのに、東さんは俺の気持ち無視してるみたいだし、遊ばれているのかなって」
「たーくん、」
「でもいいんです、もう。俺たち恋人ですもんね」
「ひゃううう!?」
思いきり両乳首を引っ張られ、急な刺激に東の体は反り返った。
「よかった、チンポは勃ってますね」
「え?」
言われて見てみれば、確かにしっかり勃起していた。ただこれは乳首の刺激ではなく、直のオスの一面を目の当たりにしたせいなのだが勘違いされては困ることになる。
「違う、これはたーくんが」
「もう忘れないようにちゃんと愛し合いましょう」
「あんっ」
直の右手にはしっかりビニール手袋と、指先にはローションがまぶされていた。ぬるぬるとした感触が東の下腹部をまさぐり、尻の穴にたどり着く。
「柔らかい……1人で弄ってたんですか?」
「たーくんが起きるまで、ちょっとだけぇ」
昨夜何もなかったのは間違いないが、今朝起きた東は朝勃ちしていた。そんな折、自覚はなくとも想い人が隣で寝ている状況に興奮したのは仕方ないことだろう。直の匂いを感じながら処理しようと、寝巻きにしていたバスローブを脱がせた。しかしそこでとんでもないイチモツを見てしまったのだ。想像以上に色素が沈着した直のペニスを前に、自らのペニスに向かっていた手はアナルへ伸びた。そのままアナニーを始め、直が目を覚ますまで淫蕩に浸っていたのだった。そこまで思い出して、恋と気づく前に欲情していた自分を東は恥じた。
「どうりで……全く記憶がない割に匂いがするはずです」
「うう、んああっ」
自分の指とは違った無遠慮な動きに、性感が高められていく。
「いいから、もういれて……」
「いけません、切れたら痛いでしょう」
「いい、いいから、痛くないから」
頑として譲らない東に、直は折れた。
正直に言えば直の我慢も限界に近かったのである。直は指を引き抜きビニール手袋を外すと、ずっと勃ち続けていたペニスにコンドームを装着した。その一連の動きを東は食い入るように見つめ、いよいよこれからという実感に鼓動を高鳴らせた。
「前からして、たーくんの顔見たい」
「はい。じゃあ挿れますね」
ローションの湿った音と共に、直のペニスが挿入されていく。ゆっくりと、東の呼吸にあわせて押し進めていった。
「っはぁ、先っぽ、入った?きもちい?」
「はい、いいです……」
むっちりと温かい肉壁を押し分けて、さらに奥を目指す。指では届かない部分はさすがにキツく、苦痛を伴うのか東の眉間にシワが寄り、汗が滲んだ。
「やっぱり昨日は何もなかったんですね。こんなに締まってたら出来ませんよ」
「うう……、ごめん」
「じゃあ今相当苦しいですよね、抜きましょう」
「それは嫌!」
「今日だけじゃありませんし、無理はしないで」
「無理じゃないって…」
東はゆるく折っていた膝を伸ばし、直の腰に足を回して続きをねだる。
「一気に全部いれて、大丈夫だから」
「……ちゃんと呼吸忘れないでくださいね」
その言葉を合図に、直は言われた通り一気に根元まで挿入した。待ち望んでいた衝撃に東の呼吸は一瞬止まったが、尻に直の腰が確かに密着しているのを感じた。歓喜が痛みを上回り、東は直を抱き寄せた。
「っありがとうたーくん、嬉しい」
「俺も。受け入れてもらえて嬉しいです」
お互いに引き寄せられるかのように唇が触れ、舌が絡まった。火傷するのではと錯覚するほど熱く、呼吸の度に取り入れる酸素で燃えそうになる。角度を変えて何度も唾液を貪りあい、口内をくすぐりあった。そのうちどちらともなく腰が揺れ始め、規則的なリズムを刻みだす。
「あ、あ、ん、あ、すご、いい、んっ」
「もう、痛みは、ない、です、か」
「きもちいのしか、ない、はぁ、あ」
揺さぶられている東の発する言葉はもはや音にしかならなかったが、直はそれが心地よかった。肌と肌とがぶつかる音も、汗やローションの水音も、ベッドの軋みも衣擦れも、東の喘ぎ声を際立たせる最高の伴奏だった。
なんの抵抗もなく抜き差しが繰り返され、ただただ快楽に支配される悦びだけがある。
「あ、あ、たーくん、おれ、イクっ」
「いい、ですよ、見せて、くださいっ」
ゆるく勃ちあがり、挿入の振動で揺れる東のペニスをそっと掴んで腰の動きと連動させれば、一層高い声が上がった。自然と直の動きも早くなり、互いに絶頂へと上り詰めていく。
「ひ、あ、あああっ」
「ぐっ、」
抜けきる寸前までペニスを引き、貫くように突き刺した時、東の爪先から脳天まで電流が走ったかのように快感が駆け抜ける。東のペニスからは断続的に精液が飛び出し、直の手と腹に散った。そして同時に大きく背中を弓なりにした瞬間、東の胎内は激しく収縮し、直を絶頂へ導いた。
射精の余韻に息を切らし、数十秒ほど時間をおいて東の中から引き抜いたペニスの先には、精液を溜め込んだコンドームが重たく膨らんでいた。
「はぁ、あ、たーくんも、イッたぁ?」
「……はい……」
「ふふ、いっしょ、あは」
先ほどまで必死で喘いでいたとは思えないほど、無邪気に笑う東に直は再び勃起していた。
「あれ、たーくん……チンコまた……」
「すみません。俺、1回じゃ終われないんです」
肌に対して濃い色をしているイチモツを見た時から予感はあった。真面目な見た目に反する遊び具合。浮気やとっかえひっかえなんて事は出来無さそうのなので、おそらく長丁場が彼のスタンダードなのだろう。そしてこの誘いに乗ってしまえばズルズルとどこまでもイッてしまうに違いない。
「待って、俺もう……あ、ホテル出なきゃ!」
「……素股させてくれませんか?このままじゃ外を歩けない」
「確かに……でもほら、マジで出よう!シャワーも軽くでいい、冷やして落ち着けて!そんで俺の部屋行こ!今なら始発で人いないし」
1度満足した東は理性を取り戻していたが、直は逆に燃え上がってしまったらしい。しかし東の部屋、というワードには反応を示した。
「東さんの部屋……是非行きましょう」
口元だけを笑わせてシャワールームへ向かった直を見送って、東はすぐに明日のスケジュールを確認した。直の体力がいか程かはわからないが、抱き潰されないように注意しなくてはならない。今日はいいが明日は仕事で、影響があっては困るのだ。どうせ部屋に着いたらグズグズに蕩けさせられるのだし、今のうちにきちんと伝えておかねばなるまい。
「というわけで、お互い翌日に影響がない程度にしておこうね」
「……そんな心配するほど絶倫じゃないですよ。でも期待に答えられるよう頑張ります」
じゃあ出ましょう。とさっさと部屋を出ていく背中を追うことにより、東の抗議は飲み込まれた。
「待ってよたーくん」
「はい、東さん」
終
10
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