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第23話 知ってしまった真実
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目の前で続いているはずの配信が、まるで音のない映像のように感じられた。
画面の中では、柚葉とメイがいつも通り軽快にゲームをしながら笑っている。コメント欄も変わらず賑わっていて、『勝って!』『今のミスったなw』などの言葉が次々と流れている。
けれど、透子の耳には何ひとつ入ってこなかった。
(……高山さんが、柚葉)
そう認めてしまえば、すべてが繋がってしまう。無口で目を合わせるのもやっとだった彼女が、画面の中でははきはきと話し、時に冗談を交え、そして心から楽しそうに笑っている。
同じ人物なのに、まるで別人のように感じた。いや、別人として振る舞っているのだろう。
配信は続いていた。けれど、透子はもうそれを見ることができなかった。タブレットを伏せ、ゆっくりと背もたれに身体を預ける。
静まり返った部屋の中、自分の呼吸音だけがやけに大きく感じられる。
(知っちゃいけなかった……)
胸の奥がざわつく。あのとき、田中さんの娘さんの部屋を見たとき、確かに少しだけ考えたことがある。
「もしかして、自分の推しの家を掃除することになったら、どんな気持ちになるだろうか」
そんな妄想。軽く、冗談めいた想像。
けれど今、自分はその状況にいる。冗談ではなく、現実として。
配信の中で語られた数々の言葉が、透子の中で再生されていく。
「足の踏み場もなかった部屋の掃除」「毎週ご飯も作ってもらってる」「隠し味のチョコレート」
全部、自分がしたことだ。自分が柚月にしてあげたことを、彼女は世界に向かって話していた。
(知らなければよかった)
何度もそう思った。知らなければ、今まで通り「ただの仕事」として接することができた。彼女のことを「お客様」として、大切に、けれど適切な距離で見守れたはずだった。
けれど、今は違う。
正体を知ってしまった今、自分の中での彼女の重みが変わってしまった。
(でも……)
透子は目を閉じ、静かに息を吐く。
プロとして、家事代行として。自分のすべきことは明白だ。
たとえ気づいたとしても、それを暴くような真似はしない。彼女の正体を他人に明かすことも、本人にそれを問いただすことも絶対にしない。
せっかく少しずつ心を開いてくれた。無口で警戒心の強かった彼女が、ようやくわずかに言葉を返してくれるようになった。食事を口にして「美味しい」と伝えてくれるようになった。
それを壊してはいけない。
知らなかったふりを、しなければならない。
たとえ胸の奥がぐちゃぐちゃでも。
透子はそっと目を開けた。タブレットの画面には、「次の配信も楽しみにしてね!」と笑う柚葉の姿が一時停止されたまま映っていた。
その笑顔が、どこか遠くに感じられて、けれど、それでも守らなければいけない気がした。
(明日も、いつも通りに)
そう自分に言い聞かせるように、透子は静かに目を伏せた。
画面の中では、柚葉とメイがいつも通り軽快にゲームをしながら笑っている。コメント欄も変わらず賑わっていて、『勝って!』『今のミスったなw』などの言葉が次々と流れている。
けれど、透子の耳には何ひとつ入ってこなかった。
(……高山さんが、柚葉)
そう認めてしまえば、すべてが繋がってしまう。無口で目を合わせるのもやっとだった彼女が、画面の中でははきはきと話し、時に冗談を交え、そして心から楽しそうに笑っている。
同じ人物なのに、まるで別人のように感じた。いや、別人として振る舞っているのだろう。
配信は続いていた。けれど、透子はもうそれを見ることができなかった。タブレットを伏せ、ゆっくりと背もたれに身体を預ける。
静まり返った部屋の中、自分の呼吸音だけがやけに大きく感じられる。
(知っちゃいけなかった……)
胸の奥がざわつく。あのとき、田中さんの娘さんの部屋を見たとき、確かに少しだけ考えたことがある。
「もしかして、自分の推しの家を掃除することになったら、どんな気持ちになるだろうか」
そんな妄想。軽く、冗談めいた想像。
けれど今、自分はその状況にいる。冗談ではなく、現実として。
配信の中で語られた数々の言葉が、透子の中で再生されていく。
「足の踏み場もなかった部屋の掃除」「毎週ご飯も作ってもらってる」「隠し味のチョコレート」
全部、自分がしたことだ。自分が柚月にしてあげたことを、彼女は世界に向かって話していた。
(知らなければよかった)
何度もそう思った。知らなければ、今まで通り「ただの仕事」として接することができた。彼女のことを「お客様」として、大切に、けれど適切な距離で見守れたはずだった。
けれど、今は違う。
正体を知ってしまった今、自分の中での彼女の重みが変わってしまった。
(でも……)
透子は目を閉じ、静かに息を吐く。
プロとして、家事代行として。自分のすべきことは明白だ。
たとえ気づいたとしても、それを暴くような真似はしない。彼女の正体を他人に明かすことも、本人にそれを問いただすことも絶対にしない。
せっかく少しずつ心を開いてくれた。無口で警戒心の強かった彼女が、ようやくわずかに言葉を返してくれるようになった。食事を口にして「美味しい」と伝えてくれるようになった。
それを壊してはいけない。
知らなかったふりを、しなければならない。
たとえ胸の奥がぐちゃぐちゃでも。
透子はそっと目を開けた。タブレットの画面には、「次の配信も楽しみにしてね!」と笑う柚葉の姿が一時停止されたまま映っていた。
その笑顔が、どこか遠くに感じられて、けれど、それでも守らなければいけない気がした。
(明日も、いつも通りに)
そう自分に言い聞かせるように、透子は静かに目を伏せた。
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