情けない少年の英雄譚

耳ふく 耳

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一章

田舎の少年6

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 何時間寝たのだろうか。
 朝が来た。なんの変哲もない、ただの朝だ。
 ただ一つ昨日と違うのは、今日からラブルは何をしたら良いのかという事だ。

 さて。どうしようか。ラブルは考えた。
 とりあえず、働き口を探さなくては。
 昨晩、たっぷりと寝たせいか、ドン底から底くらいに気持ちは回復していた。

 とりあえず、ギルドに求人を見に行こう。
 ラブルは、支度を整えて家を出た。

 ギルドといえば一般的に冒険者へ仕事を斡旋しているところであるが、数は少ないが一般職の求人も行なっている施設である。

 ドアを開けて中に入ると、丸テーブルが何個かとそれに見合う数の椅子がならべられ、奥にカウンターがあった。
 カウンターからは受付の女性が珍しそうなのがやってきたと、珍獣でも見るような目でラブルを眺めていた。

 「求人を見たいのですが……」

 「あっちの壁に貼ってありますよ」

 受付嬢の指差す壁を見ると1枚の紙が貼ってあった。
 近づいて見ると、まだ新しいその紙には、ジックス商店 店員募集 お気軽にご応募ください……と書かれていた。

 「すみません。求人って、この1枚しかありませんか?」

 受付嬢に尋ねた。

 「そうですね。今はそこだけですよ。 それは今朝新しく貼ったものですよ。」

 受付嬢は、事務的に滑らかに答えた。

 そうですか……。
 ラブルはガッカリした。
 ジックス商店の求人に、気が進まなかった。
 ティナの家だからだ。

 「あなた、ずいぶんと若そうだけど働くのかい? 剣技の学校はどうしたの?」

 やはり、この年で求人を探すことは珍しいらしく、受付嬢はラブルの触れられたくない部分に触れてきた。

 「いや、剣技の試験に落ちてしまって……年は13です」

 「あらそうなの。残念ね。 なら、なおさらジックス商会がいいわよ。 たしか、あなたぐらいのお嬢さんがいたはずよ」

 ラブルは迷っていた。このままジックス商会を受けてもいいものか。
 試験に落ちたら自分のうちで使ってやる。
 ティナの言った通りになってしまいそうで、シャクだった。
 しかし、他に求人もなくラブルはジックス商店を受けることにした。
 ラブルは受付嬢にお礼を言って、ギルドを後にした。

 家に戻り、一通りの身なりを整えたラブルは、すぐにジックス商店へと足を向けた。

 ミリテロム村の中心、商店街の更に真ん中にジックス商店はあった。
 他の商店よりも一回り大きな店構えは、まさにここが村の中心だとアピールしているように思えた。
 このお店には子供のころから、買い物やらティナを遊びに誘うやらで何回も通っていて、もう通い慣れたものだ。
 ラブルは子供の頃から何回も来たことのあるドアを開け、初めて襟を正して入った。

 中に入ると日用品や農機具の並べられた棚が目に入る。
 カウンターには誰もいない。
 何か作業でもしているのだろうか。
 通い慣れてはいるものの、今日は要件が違う・
 ラブルは緊張をしながら無人のカウンターに声をかけた。

 「ごめんください」

 すると、カウンターの死角になっている場所から、中年の女性が出てきた。
 フルールさんだ。
 フルールさんは、昔からジックス商会に勤めていて子供のころから顔なじみな存在だ。

 「いらっしゃいま……なんだ、ラブルかい。 今日はどうしたんだい? 買い物かい?」

 フルールは、カウンター越しのラブルへ声をかけながら、カウンターへ手をつき体重をかけた。

 「いえ、今日は別の用事で……」

 「じゃあ、どうしたんだい。」

 いくら顔なじみとはいえ、緊張をしてなかなか要件を言わないラブルへフルールは

 「わかった。 お嬢様をデートに誘いに来たんだろう。 ラブルもやるね。 お嬢様は奥にいらっしゃるよ」

 と、冗談を言って見せた。
 この冗談に少し緊張の取れたラブルは、本題を切り出した。

 「いや、違いますよ。 僕は、ギルドでここの求人の紙を見て……」

 「おや、あの求人を見ての応募かい。 なら採用はお嬢様が行っているから、お嬢様を呼ぶわね」

 そう言い終えるとフルールは、1つ大きく息を吸い込んで大きな声を上げた。

 「おじょうさまーーー」
 
 いきなりの大声にラブルはびっくりして耳を押さえた。
 フルールは大きな声を出したてストレスが発散されたのか、満足そうな顔をしていた。

 「何の騒ぎよ。 うるさいわね」

 店の奥からティナが耳に人差し指を少し詰めて出てきた。

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