情けない少年の英雄譚

耳ふく 耳

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一章

田舎の少年7

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 「いきなり大声を出すんじゃないわよ。 耳がおかしくなったらどうするの。 あぁ、まだキーンってしてるわ」

 ティナが不機嫌そうに、耳に詰めた指を抜きながらフルールに言った。

 「あら、お嬢様申し訳ありません。 ラブルが来たものですから、必ずお伝えしないとと思いまして」

 フルールは大袈裟に悪びれたフリをしながら、ニヤけた顔でティナに答えた。

 「ちょっと、フルール。ラブルなんてどこに……」

 ティナは大声に気を取られて、ラブルに気付いていなかった。
 フルールから視線をズラすと、そこには一連の流れを見ていたラブルがいた。
 ラブルに気がつくとティナは、耳を赤く、目を丸くして慌て出した。

 「ちょっと。 ラブルが来ているなら先に言いなさいよ」

 ポカンとするラブルを他所に、ティナは髪を手櫛で整え、服の埃をすばやく払った。
 その姿を見てフルールは、今にも笑いこけそうなのを我慢していた。
 そしてティナは身支度が終わると、そばに置かれた丸椅子に腰かけた。
 咳ばらいを1度すると、腰まである青い髪をかき上げ、すましながらラブルに話しかけた。

 「それで、ラブル。 今日はどんな御用かしら?」

 一連の行動を見ていたラブルは不意を突かれたように慌てた。

 「いや、その、あれだよ。 あれ」

 「あれじゃだけじゃわからないわよ。 きちんと説明なさい」

 ティナがラブルを一喝した。
 その声に驚いたラブルは、少し下を向いてこじんまりしながら答えた。

 「求人を見たんだよ。 仕事を探していてさ」

 その言葉を聞いてティナは勝ち誇ったように言った。

 「それでうちに来たってわけ? ……良いわよ、ラブル。雇ってあげる」

 その言葉を聞いたラブルは、顔を上げて本当かいとティナに問いかけた。

 「えぇ、本当よ。前にも約束したじゃない。 ただし、しっかりと働きなさい」

 ティナは、少しいじわるそうにニヤリと笑った。

 「早速、明日から来てもらうわね。 ラブル、用意は良いかしら」

 「もちろんだよ。 ありがとう、ティナ」

 ラブルは明るく答えた。

 「それじゃあ、また明日の朝に来なさい。 遅れないようにね」

 そう言い終えると、ティナはラブルを店から送り出した。
 ラブルが帰った後、フルールはニヤケながらティナに言った。

 「うまくいきましたね、お嬢様」

 ティナは顔を赤らめてフルールに、何を馬鹿なことを言ってるの。仕事に戻りなさいと言い放つと、足取り軽く奥へと戻っていった。

 ティナが戻るのを見届けたフルールは、昨晩からのティナの行動を思い出していた。
 ラブルが試験に落ちてしまった。
 まさか、本当に落ちるとは……予想もしていなかったと慌てていた事。
 しかしながら、この村には働き口がない。
 自分がどうにかしなくてはと、紙に直筆で求人を書き、自分の足で朝一番にギルドへ求人の受付に行ったこと。
 そして、ラブルは来るかしら。
 まだ来ない。
 ギルドへまだ行ってないのかしらと、店を出たり入ったりとしていた事を。
 すべてラブルの事を心配して行なった事だと、フルールにはわかっていた。
 クスりとしながら、若さとは良いものだと感心すると、フルールは仕事続きをとカウンターの死角へと戻っていった。

 ラブルは店を後にした後、環境が変わることへの不安を感じていた。
 明日からどんなことがあるのだろうか。
 はたしてうまくできるのだろうかと。
 しかし、不安の隅に小さいながらも、僕の才能は、あそこにあるかもしれないとの期待も育ち始めていた。

 そして、寝る前に明日から気持ちを切り替えて頑張る事を誓い、眠りに落ちた。
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