情けない少年の英雄譚

耳ふく 耳

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一章

田舎の少年12

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 「ここが今日の宿だ。 町に行くときはいつもここに泊まるのさ」

 バイレンはラブルに言うと、ドアを開け中へ入った。
 中に入ると、ロビーになっており、そこに置かれた椅子にはまばらに人が座っていた。

 「受付を済ませてくるから、適当に座って待っていてくれ」

 バイレンは、ラブルにそう言うと、カウンターへ向かった。

 ラブルは、空いている席は無いかとロビーを確認すると、階段の近くに空いている長椅子を見つけた。
 ここで良いかな。ラブルは背中に背負ったリュックを長椅子へ置き、自身も隣へ座った。

 あぁ、疲れたな。こんなに歩いたことは初めてだ。
 もう半分は過ぎただろうか。明日には着くのかな。
 ラブルは靴を片方脱ぎ、足の裏をマッサージしながら思った。

 やがて、受付を終えたバイレンがやってきた。
 ラブルと同様に、荷物を長椅子へ置き,隣へ座った。

 バイレンは、上着のポケットをまさぐり、パイプとマッチを取り出した。
 手慣れたようにパイプに葉を詰め、マッチを擦り、詰めた葉へ火を着けた。
 パイプに口を付け何度も吸ったり吐いたりとしていると、パイプに詰められた葉が赤みを帯びていき、深みのある香りがふわりと周りに漂って来た。
 バイレンは火が付いたことを確認すると、まだ弱く火が残るマッチを目の前にある丸テーブルに置かれた灰皿へ入れた。

 「ふぅ……。 やはり疲れるものだな。 乗合い馬車馬車にすれば良かったかな……」

 バイレンから疲労が感じられる呟きがこぼれた。

 「……バイレンさん。 歩くのも良いものですよ。 一歩一歩と、目的地へ向かっている気がしますから」

 足を揉みながらラブルはバイレンを気遣うように言った。

 「はは、ラブルもだいぶ疲れているようだな。 ありがとうよ」

 そう言うとバイレンは、パイプ吸い、上に吐き出した紫煙を眺めていた。

 乗合馬車の来る日は決まっていて、ミリテロム村の様な外れには月の内に1回も来れば良い方だ。
 前回来たのが数日前だった。
 次回来るのを待っていったらおそらく1カ月は先になってしまう。
 少しでも早く町に行きたいラブルは、楽して馬車に乗るよりも、歩いて早く町に着くほうが都合が良かった。
 バイレンを気遣って言った言葉だったが、その言葉に嘘は無かった。

 「バイレン様、お待たせ致しました。お部屋にご案内致します」
 宿の若い娘がバイレンに話しかけた。

 「あぁ、頼むよ」
 バイレンとラブルは立ち上がり、横に置いた荷物を背負い直した。

 「では、こちらになります」

 若い娘の後に続き、階段を上がる。
 途中で、どちらから?遠いところお疲れ様です。
 などの当たり障りにない会話をしていると部屋に着いた。

 「こちらが、本日のお部屋になります。 何か御用がありましたらフロントまでお越しください」

 そう言うと娘は来た道を戻って行った。

 中に入ると、シングルのベットが2つ、テーブルと椅子のある普通の部屋だった。

 「あぁ、疲れたな。ラブルも荷物を下ろして楽にしなさい」
 先ほど背負った荷物を再びテーブルに下ろしながらバイレンはラブルに声をかけた。

 「疲れました。 いくら楽しみにしていても疲れるものは疲れるんですね」

 ラブルが荷物を置いた長椅子に座りながら言った。

 「そりゃあ、そうさ。 なんでも自分の限界を知っておくのは良い事さ」

 バイレンは、長椅子で溶けそうに座っているラブルへ答えた。

 「よし、今日はさっさと夕飯を食べて寝てしまおう。 さぁ、行こう」
 バイレンはラブルの手を引いて部屋を後にした。





 ……



 「おい、起きろ」

 寝ていたラブルは、体を揺らされた。
 昨日、夕飯を食べた後、すぐ寝てしまったようだ。
 長い距離を歩き疲れた体とまだ眠り足りない目を擦りながら、ラブルは目を覚ました。
 雨戸が開けられた窓の外はまだ薄暗く、部屋の中も暗かった。
 辺りを見渡すと、所々に蝋燭が置かれ灯りをとっていた。
 蝋燭の灯に照らされテーブルの脇でバイレンは身支度を整えていた。

 ラブルは、ベッドから立ち上がるとバイレンに挨拶をした。

 「早くてすまんな。 今日は町まで入るからな。 少し余裕を持って行こうと思ってな」

 バイレンは髭を整えながらラブルへ言った。

 「よし、朝飯を食べて出発だ。 早く用意をしてこい」

 朝食を済まし、ラブル達は宿を後にした。

 「今日はこのまま、町に入るから頑張れよ」

 バイレンは、ラブルの背中をバンっと軽く叩き歩き始めた。
 ラブルも、町に行ける嬉しさを噛みしめてバイレンの後を歩き始めた。

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