異世界転生カンパニー

チベ アキラ

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二都 勇治 編

転生したら激かわ妹ができた件 その4

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 人は一人で生きているわけではない。生きていく上で否が応でも誰かと関わることになる。
しかし、人は誰かと一緒に生きることに多大なるエネルギーを必要とする。
触れ合い、考え、気を遣い、怒り、泣き、笑い、話し、悩み、理解する。
そのエネルギーは、どちらか片方が怠るともう一方が浪費することになる。
以前までの俺は、周りにその浪費を強いていた。

  俺のケガした手を光が包む。ソラの口から歌うように呪文が零れ、傷が塞がった。
「すごい!すごいぞソラ!成功だ!」
俺が褒めた分だけソラの成長とドヤ顔のウザ可愛さは伸びていく。
「にぃに、もっとほめて。」
「ソラは最高にかわいいなぁ!」
「かわっ!?・・・そ、そっちじゃない・・・」
俺とソラは2人で冒険者になるべく、冒険に必要なスキルの取得を目指していた。俺は武器の扱いと後衛を守るためのカバースキル、ソラは回復魔術。強化魔法もアリかと思ったが俺のステータスが既に天井振り切ってしまっているため、ステータスでは防ぎきれない万が一のケガに備えて回復魔術に集中させることにしていた。
しかし、モチロンちょっとやそっとじゃステータスマックスの俺はケガすることがないため・・・
「おい、いつまでそのイチャイチャを見せつけられれば良いんだよ、俺らは。」
「よし、次よろしく。」
「話を聞きやがれ!俺たちだって暇じゃねぇんだよ!いつまでガキのお遊びとシスコンブラコンのイチャラブに付き合ってやらなきゃいけねぇんだよ!」
以前叩きのめした盗賊たちを仲間にして訓練相手にしている。
ゴロツキではあるが武器の扱いはここら辺では一番長けている上に、既に俺の強さを身をもって知っている。そしてかなり本気でかかってこられた場合適度にダメージをくれるこの強盗たちは、ソラの回復魔術の練習にもってこいの人材だった。
「いいじゃないか。俺たちに協力しなかったらまだ檻の中だったんだぜ?暇じゃないってことは無いだろ。」
「チッ。ソラお嬢が居なきゃこんなヒョロ男ぶちのめしてオサラバできるってのに・・・」
「兄貴、俺たちじゃせいぜいかすり傷つけるのが限界っすよ。」
「うるせぇ!どうにかなるかもしれないだろぉ!?」
俺がぶちのめされる云々のところはさておき、たしかに盗賊たちは勝手に逃げ出すことも出来るはずだ。
それをしないのは義理堅さからなのか、それともソラの可愛さ故か。
真相は分からないが、盗賊たちからもソラが人気であることだけは確かだった。
「ゴロ、うるさい。」
「失礼しやした!おい、お前らのせいで叱られたじゃねぇか!」
「そんなぁ。兄貴が怒鳴り散らしたからでしょ?」
転生した当初考えていたハーレムとはまるで真逆の光景だが、見ていて悪い気はしない。
自慢のかわいい妹がいて、それを認めてくれる人がいる。
とりあえずは、この奇妙な状態を楽しむことにした。

禍々しい空、うっすらと立ち込める霧。満身創痍の剣士と魔術師の2人を囲むように、魔獣が唸り声をあげながらゆっくりと近づいて行く。
「ケン、生きてる?ソード折れてない?」
「アホか、ちゃんと背後でぶん回してるだろ?そんなことより、お前の方は大丈夫なのかよ。」
「・・・頑張る。」
背中合わせになる剣士と魔術師。振り返りはしない。お互いを信じているから。
2人が覚悟を決めると同時に、魔獣たちの群れの一角が吹き飛んだ。
「父さん!母さん!」
そこには、身の丈以上の大剣を振るう少年と、回復魔術の詠唱を始める少女がいた。
「っ!?ユウジ!ソラ!」
「なんで2人がここに!?」
「帰りが遅いから迎えに来た。早くしないとソラの作った夕飯が冷めるぜ?」
回復と共に兄妹は剣士と魔術師に合流する。魔獣たちは5、6人のハンター達が引きつけていた。
「ユウジ!ソラお嬢!旦那たちは無事か!?」
「おう!もう少し回復の時間がいる、任せていいか?ゴロ!」
「当たり前だ!おうお前ら、暴れるぜ!」
ハンター達の勇猛な雄叫びと魔獣の咆哮がぶつかる。その様子に剣士と魔術師両名はひとつ疑問を抱いた。
「・・・誰だ、あいつら。」
「元ゴロツキの用心棒。」
「兼わたしの舎弟。」
「お母さん2人の交友関係が心配になってきたわ・・・」
家族のたわいない会話。ここが戦場でなければどれほど微笑ましいことか。
しかし現実には和やかさの微塵もない殺伐とした空気がその場を支配していた。
「コイツら結構強いぞ?大丈夫か、ユウジ。」
「楽勝だよ。こう見えても全ステータス最大値だし、それに・・・

俺には激かわの妹がいるんだからさ。」


---二都  勇治  転生完了
To be continued next Life…
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