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五倉 ショウタ 編
ボクは主役になれない その3
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その手を引いて歩いた。頼りない背中を見せるわけにもいかず、隣で歩幅を合わせて。
私の右手を掴む小さな左手に、少し力が入った。
声に出すまでは至らずとも、少しだけ信頼を貰えた気がした。
「えっと、その、シサツって、どうすればいいんですか?」
最初に案内したのは、コテコテのファンタジーチックな村。石畳の道に並ぶ露店。屋台のような店構えで野菜や雑貨、武器や鎧まで売られている。まさにRPGの城下町のような世界だった。
その中心で、何をするでもなく戸惑っている。
今まで自由の無かった少年にそれを教えるのは難しい。
どう説明したものか。私は少し頭を抱え、普段よりじっくりと考える。
自由にしていい、なんでもしていいと言われても、おそらく困る。
何故なら自分のやりたい事の探し方を、彼はまだ知らないのだから。
欲求と行動の結び付け方が曖昧なのだから。
転生先を案内するよりも前に、それは知ってもらうべきだ。
とても遠回り。しかし、私と彼の間でまずはそれが一番大切だと感じた。
「・・・やりたい事を、やって良いんですよ。
お腹が空いていたら、食べたいと感じたものを食べていい。
走りたいと思ったら、好きなだけ走り回っていい。
疲れたと思ったら、気持ち良さそうなところで寝転がってもいいんです。
まずは、自分がどう思っているのかを自分に聞いて見るんです。
さあ、目を閉じて。」
ショウタくんは言われるがままに目を閉じる。
「心の中で問いかけるんです。
喉は、渇いていないか。お腹は、空いていないか。足は、疲れていないか。肌は、暑かったり寒かったりしないか。手は、疼いていないか。口は、何か言おうとしていないか。
聞いてあげてください。ショウタくん自身の声を。」
「ボク、自身の声・・・?」
「そうです。ショウタくん自身の声。心の声。
きっと、今なら聞こえるはずです。」
自分なりになんとかイメージして教えてみる。これが伝わっているかは分からない。でも、できるだけ、伝わるように。
「・・・いい、んですか?ボク、したい事、言って・・・だって・・・メイワク・・・」
「メイワクなんかじゃありませんよ。ダメなわけがありません。ショウタくんにとっての主人公は、ショウタくんなんですから。
このゲームみたいな世界でも、ここで生きることになれば、主人公は自然とショウタくんになるんですから。
主人公なのに自分で操作できないって、おもしろくないでしょう?
ショウタくんの人生は、どんな世界でも、ショウタくんが主役です。」
───聞こえてくる。
思いきり、この世界を走り回ってみたい。
思いきり、食べたいものを食べてみたい。
思いきり、心から溢れる言葉を声に出してみたい。
これは、ボクが忘れていた、ボクが聞く事をやめたボクの声だ。
ボクが、ずっとフタをしていたボクの声だ。
今、ボクは・・・
「ボクは・・・ボクが・・・主役・・・。
ボクの・・・主役・・・!」
「そうですよ。ショウタくん。ショウタくんが、主役です。」
握られていた手が、より一層強く握られる。手の温度が伝わってくる。
リンネお姉さんの手って、人の手って、こんなに温かかったんだ。
ずっと繋いでいたはずなのに、今さらそんなことに気づいた。
世界が色づいていく。ボクの世界が塗り変わっていく。
抱いてはいけないと思っていた感情が、見えないフリをしていた心が、目を覚ましたように湧き上がってくる。
「・・・ボク、したいです。
・・・ボク、異世界転生、したいです!」
ボクは探す。ボクが主役の、次の人生を。
初めて、自分で全てを決める。間違えるんじゃないかと怖くなる。
でも、ボクにはリンネお姉さんが一緒に居てくれる。
ボクにボクのことを教えてくれた人が、着いていてくれる。
ボクは、リンネお姉さんと、ボク自身の声を信じて一歩を踏み出した。
私の右手を掴む小さな左手に、少し力が入った。
声に出すまでは至らずとも、少しだけ信頼を貰えた気がした。
「えっと、その、シサツって、どうすればいいんですか?」
最初に案内したのは、コテコテのファンタジーチックな村。石畳の道に並ぶ露店。屋台のような店構えで野菜や雑貨、武器や鎧まで売られている。まさにRPGの城下町のような世界だった。
その中心で、何をするでもなく戸惑っている。
今まで自由の無かった少年にそれを教えるのは難しい。
どう説明したものか。私は少し頭を抱え、普段よりじっくりと考える。
自由にしていい、なんでもしていいと言われても、おそらく困る。
何故なら自分のやりたい事の探し方を、彼はまだ知らないのだから。
欲求と行動の結び付け方が曖昧なのだから。
転生先を案内するよりも前に、それは知ってもらうべきだ。
とても遠回り。しかし、私と彼の間でまずはそれが一番大切だと感じた。
「・・・やりたい事を、やって良いんですよ。
お腹が空いていたら、食べたいと感じたものを食べていい。
走りたいと思ったら、好きなだけ走り回っていい。
疲れたと思ったら、気持ち良さそうなところで寝転がってもいいんです。
まずは、自分がどう思っているのかを自分に聞いて見るんです。
さあ、目を閉じて。」
ショウタくんは言われるがままに目を閉じる。
「心の中で問いかけるんです。
喉は、渇いていないか。お腹は、空いていないか。足は、疲れていないか。肌は、暑かったり寒かったりしないか。手は、疼いていないか。口は、何か言おうとしていないか。
聞いてあげてください。ショウタくん自身の声を。」
「ボク、自身の声・・・?」
「そうです。ショウタくん自身の声。心の声。
きっと、今なら聞こえるはずです。」
自分なりになんとかイメージして教えてみる。これが伝わっているかは分からない。でも、できるだけ、伝わるように。
「・・・いい、んですか?ボク、したい事、言って・・・だって・・・メイワク・・・」
「メイワクなんかじゃありませんよ。ダメなわけがありません。ショウタくんにとっての主人公は、ショウタくんなんですから。
このゲームみたいな世界でも、ここで生きることになれば、主人公は自然とショウタくんになるんですから。
主人公なのに自分で操作できないって、おもしろくないでしょう?
ショウタくんの人生は、どんな世界でも、ショウタくんが主役です。」
───聞こえてくる。
思いきり、この世界を走り回ってみたい。
思いきり、食べたいものを食べてみたい。
思いきり、心から溢れる言葉を声に出してみたい。
これは、ボクが忘れていた、ボクが聞く事をやめたボクの声だ。
ボクが、ずっとフタをしていたボクの声だ。
今、ボクは・・・
「ボクは・・・ボクが・・・主役・・・。
ボクの・・・主役・・・!」
「そうですよ。ショウタくん。ショウタくんが、主役です。」
握られていた手が、より一層強く握られる。手の温度が伝わってくる。
リンネお姉さんの手って、人の手って、こんなに温かかったんだ。
ずっと繋いでいたはずなのに、今さらそんなことに気づいた。
世界が色づいていく。ボクの世界が塗り変わっていく。
抱いてはいけないと思っていた感情が、見えないフリをしていた心が、目を覚ましたように湧き上がってくる。
「・・・ボク、したいです。
・・・ボク、異世界転生、したいです!」
ボクは探す。ボクが主役の、次の人生を。
初めて、自分で全てを決める。間違えるんじゃないかと怖くなる。
でも、ボクにはリンネお姉さんが一緒に居てくれる。
ボクにボクのことを教えてくれた人が、着いていてくれる。
ボクは、リンネお姉さんと、ボク自身の声を信じて一歩を踏み出した。
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