異世界転生カンパニー

チベ アキラ

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五倉 ショウタ 編

ボクは主役になれない その5

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  ボクにはボクの声が聞こえなかった。
ボクには、ボクが何を思っているのか、何をしたいのか、何が嫌なのか。聞こえないフリをし続けていた。
でも、今ボクは誰からの指示もなく、自分で決めなきゃいけない時が来ていた。

「楽しかったぁ・・・」
結局200の世界を見て回り、ヘトヘトになったボクは真っ黒な世界で座り込んだ。
「あはは・・・それは・・・良かったです・・・」
案内人のリンネお姉さんはボク以上にヘトヘトだった。
それでも、嫌な顔ひとつせずにボクを案内してくれた。
おかげで、ボクはボクなりにワガママになれた。ボク自身の声をちゃんと聞くことができた。
「どうですか?異世界。どこもステキなところでしょう?」
「うん!とっても・・・ステキなところばかりでした。」
そして・・・
「・・・行きたいところ。決まりましたか?」
「・・・はい。」
決めるときだ。

ボクは、行きたいと思った世界をリンネお姉さんに伝えた。
リンネお姉さんは、その世界の資料に目を通した後、柔らかく笑った。
「・・・はい。承りました。
・・・ちゃんと、決められたね。ショウタくん。」
「うん・・・はい。えっと、リンネお姉さんのおかげです。それで、その・・・」
笑顔のままボクの次の言葉を待つ。ボクは緊張しながら、しかし決して逃せないチャンスを掴むために、ボクの心の底から声を掬い出した。
「ボクが、ちゃんと主役として生きて、もう一度ここに来られたら、その時は・・・もう一回、手を繋いでください。お願いします!」
心臓が、バクバクする。沈黙が苦しい。
リンネお姉さんは大きく目を見開いて驚いていた。それはそうだろう。行きたい世界などのやり取りはお仕事だけれど、ボクのお願いはお仕事の中の話じゃない。ボクが、初めてアドリブで言ったワガママだった。
「・・・分かりました。約束です、ショウタくん。
あっ、でもそのためにすぐ死んだりしちゃダメですよ?」
「えへへ・・・はい!」

  その図書館には、様々な世界の本が流れてくる。
言葉は様々。日本語はモチロン、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中国語、韓国語などの言語から、イセー語なんていう異界の言語の本まで。
ボクは、その膨大な本の内容を基に、図書館に来た人の悩みを解決している。軽い探偵や占い師のような気分だった。
「ごめんくださーい!クラースさんは居ますか?」
「ボクが、クラースです。ご用件は?」
その図書館には、様々な世界の人が流れてくる。
世界は様々。ボクが元いた世界も、ゲームのようなファンタジーの世界も、天使だけが住む天国のような世界も。
「俺たちが進む、この先の道を観て欲しくて。」
「・・・なるほど。ケンジさん、ボクがこれから観るのは、あくまでひとつの可能性です。だから、そこに至るべきか否かは、あくまでケンジさんが決めてください。
自分の、心の声に従って。

人生の主役とは、いつだってあなたなんですから。」

─── 五倉 ショウタ  編  転生完了
To be continued next Life…
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