ゼロ適性召還士と記録されない契約獣

暁月奏真

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第1章 星環ノ試練篇

第5話 星環ノ始環

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 アストラリアの生活にもだいぶ馴染んできた三日目の朝。

 初日の授業はほとんど自己紹介やら今後の流れやらの説明があったりで、いよいよこの学園に入学できたのだという実感が湧いてきた。

 同居人のノエル・アシュレイは朝かなり早くに起床し、学園内で自主トレをしているようで、レイン・クロフォードの起床時間と共に部屋に戻ってくる。そこから身支度を整え二人で食堂に向かうという流れがいつの間にか出来上がっていた。

 今日も朝食を摂ってから再度部屋に戻って、制服に着替えて学園へと向かう。ノエルとは教室前まで一緒に行動するが、クラスは別々なので、基本的にはそこから寮に戻るまで顔を合わせる事はなかった。


「おはようレイン君」


 先に教室にいたシオン・バレッタはレインの姿を確認するなり、眠そうな顔をこちらに向けて挨拶をしてきた。どうも彼はルームメイトとうまく馴染めず朝は早めに動いているらしい。


「おはよ。眠そうだな」


 レインは自分の机の横に鞄を引っ掛けながら、挨拶を返す。


「あはは……朝はそんな得意じゃないんだ」


 シオンは笑いながらそう答えた。得意でもないのにこれだけ早く登校できるなら、同居人の影響は大きいといえるだろう。

 シオン本人は嫌がりそうだが。


「おはようございます。レイン、シオン」


 続いてセフィルス・ルクレティアが教室にやってきた。彼女の銀色の長い髪が普段の生活リズムの良さを物語っている。制服をきちんと着こなし、自分の机に向かう姿はレインも見惚れていた。


「おはようルクシアさん。寮は慣れた?」
「ええ、慣れましたよ。ルームメイトの方は、私をいないものとして扱って下さってます」


 シオンの問いに、彼女は瞬時に答えた。

 それは慣れたといっていいのだろうか。レインとシオンは反応に困り果て、愛想笑いでその場を誤魔化した。関わる気がないならそれはそれでアリなのかもしれない。


「……相変わらずだな、ルクは……」


 レインは小さく呟き、視線をルクから遠くの窓の外に移した。

 それからは、始業のチャイムが鳴るまで三人は他愛のない話をしながら一日の始まりを迎えた。


「よーしお前ら。今日も辛気臭い顔してるな」


 ハルベルト・クローネは教室に入るなりいきなり挑発的な態度でクラスの全員を煽ってきた。それでも何も反論しないのがEクラス特有というわけだが。

 朝の朝礼時にハルベルトは面倒臭そうに出席を取り、欠席者がいないことを確認する。


「……うし。今日は一限目から召還実技の授業だ。SHRショートホームルームが終わったら『実技演習棟』に向かうように」


 入学三日目にして、いよいよ始まる本格的な授業についてハルベルトは軽く説明する。生徒達が無事に召還士になる為の第一歩の授業であり、ここで初めて召還術を行う事になる。

 といってもEクラスは魔力が他クラスに比べ遥かに低いので、簡単な召還獣しか召還できないとは思うが、それでもレインに比べれば十分だろう。

 この学園の授業内容は、午前と午後に分かれており、午前が必須科目、午後は選択科目の授業となる。必須科目である召還実技において一番大事なのが召還術なのだが、レインにとっては難関ではあった。


「というわけで以上だ。ま、がんばれよ」


 ハルベルトは簡単な連絡事項のみを伝えて、不敵な笑みを浮かべながら教室を後にした。それと同時に、クラスのみんなは各々準備を進めてひとりひとり教室を出ていく。


「……あー、今日から召還実技かぁ」


 前の席でシオンは項垂れていた。レインもこの授業内容を聞いて軽く絶望していたが、シオンにとってもあまりいいものでもないらしい。

 まあ、まともに召還できるかわからないクラスの人にとっては憂鬱ではあるのだろうが、他のクラスには人気のある授業だと聞いた事はある。


「召還術とはそんなに難しいのですか?」


 項垂れるシオンをみて、ルクは首を傾げながら尋ねてきた。


「んー。難しいというか、召還術に必要なのが召魂式印シグマっていう魔術なんだけど、これには通常の魔力じゃなく霊魂の回路レゾナコードと呼ばれる魔力が必要になるんだ」


 入学前に行った召還適性検査とはこの特別な魔力を測る為であり、まずこの魔力が備わっていない限り通常の召還は行えない。Eクラスとはその魔力が低い者達を指している。

 知識だけあっても召魂式印シグマを使用するのは難しく、召還士はそれだけ優れた存在という事になる。もっとも、この魔術が使えたところで魔力量が低ければ力に限界はあるが。


「詳しいねレイン君」
「……まあ、ここ入る前に少し見ただけだよ。後は先生が説明してくれるだろうし俺達も行こう」


 シオンに褒められて、多少照れながらそう答える。教科書に載ってる程度のものを音読しただけなので、恥ずかしさを紛らわす為にレインは二人に行動を促した。

 教室を出た三人は、他の生徒達に続いて渡り廊下を歩いていた。

 窓の外からは朝の光が差し込み、遠くに見える演習棟の塔屋が、その日の授業の厳しさを物語っているかのようにそびえている。

 周囲では、他のクラスの生徒たちが談笑しながら歩いている姿も見受けられたが、Eクラスの列に目を向ける者はほとんどいなかった。まるで最初からいないものとして扱われているかのような空気。

 その中で、レインは一歩、また一歩と歩を進める。

 これから彼が向かうのは、未知の領域。剣術とはまったく異なる、魔術の世界だ。

 けれど――だからこそ、挑んでみたいと彼は本気でそう思っていた。

 扉の向こうで何が待っているかは分からない。

 それでもレインは、己の適性がゼロという現実と向き合うために、実技演習棟への扉を、静かに開こうとしていた。
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