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春
1神様っているんだー
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4月の上旬。俺は、幼馴染みで絶賛片思い中の晃(男)と、明日から通うことになる高校の入学式の帰り道を歩いているところだった。
晃とは小学校からの付き合いで、高1になった今でもずっと一緒に過ごしてきた。小2の夏、父親の転勤でこの地方に引っ越して来て、慣れない土地で右往左往していた俺に、初めて話しかけてくれた晃に一目惚れだった。小学校を卒業する頃には、それが恋心だということ、そして、相手が男ということもあり、報われない恋だと自覚していた。わずか12歳にして、随分ませたことに、失恋を味わった。
勿論、告白して見事に玉砕した、という訳では無い。俺にそんな勇気はない。それだけは自信を持って言える。しかし、まだチャンスはあるのではないか…とか淡い希望を持っているところもある。つまり、意気地なしの拗らせている系男子とかいうものなのだ。もう16になるというのに、我ながらイタい。
だが、偶然にも晃と進学先の高校が一緒だったということで、思いは強くなる一方だった。
紹介はさておき、俺は晃と他愛のない会話をしながら歩いていた。
「順はさ、部活何入るか決めた?」
「いや、まだ決めてないけど。晃は多分バスケだろ?」
「まあね~。そりゃスポーツ推薦で入ったしね。順が何にするのか気になってさ。順ってあんまり部活のイメージないし。」
「…そうだな。特に興味のあるもの無…
「おい、そこの少年!」
ふと、俺の言葉が、何者かの声によって遮られた。
思わず声のした後ろを振り向くと、今の時代では珍しい、着物を着た男がこちらを見て立っていた。この、特に変わったところのない通学路の風景に全く合わないような浮世離れしたような雰囲気だ。
その瞬間、時が止まったかのように、周囲から音や動きが消えた。呼吸さえも忘れるかのように。
映画やアニメなどでしか見た事のない状況に戸惑っている俺に、あの男が話し掛けてきた。
「あのさ、君に話したいことがあるんだけど。」
「………………。」
「……何か言ってよ…?」
「……………………………。」
「………おーい…。」
俺は無視を決め込んだ。当然だ。こんな訳の分からない状況で明らかに変な奴に絡まれそうなのだ。
「ちょっとー。聞こえてるでしょ!?」
「…聞コエテマセン。」
「それは聞こえてるじゃん!!」
可哀想なので、思わず答えてしまった。
「てかその前にこの状況を説明してくださいよ…。何であんたと俺以外の人が動いていないんですか?」
「あーそっか。そこから説明しないとね。」
…面倒なので、いろいろと言いたいことはあるが、黙っておこう。そんな中、男はとんでもないことをサラッと言ってのけた。
「まずね、俺は神なんだ。」
「は…?」
面白くない冗談はよしてくれ…とか、いつもならこの手の発言は乗っからずに冷たくあしらうタイプの俺だが、こんな状況ではもはや何でもありなのでは…?とか思ってしまった。
「君と話したくて、今時間を止めてるんだけどね。」
勿論、俺にそんなこと身に覚えが無い。
「こっちが話したいだけだから、君に身に覚えが無いのは当然だよ~。」
「…俺の思考を読んだ…?」
「そう。まあ神様だからね、大抵の超能力っいぽいことはできるよ。制限があるから、そんなに頻繁には使わないけどね。これで俺のこと信じてくれた?」
「というか信じるしかないですね。」
「じゃあやっと本題に入れるね!」
もう話を聞くしかないだろう。
「早速だけど君さあ、音島晃くんのこと恋愛的に好きなんでしょ?」
急に人のデリケートなところ突いてきたなこの神…。
「彼のことは、諦めてくれないかな?」
「何であんたにそんなこと言われなきゃいけいなんだ…。」
よく分からない状況本日何度目だろうか。
「あー、別にね、神としてお願いしてる訳ではないんだ。同性愛が駄目とかでもないよ。むしろ歓迎。」
「…まさかあんたも晃が好き、とか?」
恐る恐る俺は聞いてみた。
「推しとしてなら好きだけど、そういう意味ではないよ。俺、見る専だから。ていうかまず、神と人間との恋愛は禁止されてはいないけど、人間を苦しめてしまうだけだから天界では暗黙のルールとしてタブーになっているんだよね。」
ひとまず、俺にとって最悪の事態は免れた。
「じゃあ何故?」
「君、坂下順一×音島晃が推しカプじゃないんだ。」
「……はい?」
「まあ、俺の推しカプは滝沢慶斗×音島晃で、俺の友達の推しカプは五十嵐玲司×音島晃なんだけど。」
神はオタク特有の早口で語り始めた。
推しカプ…いわゆる腐向け用語だが何となく意味は分かる。晃への気持ちを本格的に自覚してから、そういった本や漫画を読んで少し勉強したのである。断じて俺にそういう趣味はない。つーか、
「滅茶苦茶私的な理由じゃないか!!!」
1ヶ月分くらいの声量で叫んでしまった。
「だから神様としてのお願いじゃないって言っただろう?」
「それにしても度が過ぎているだろ!」
「君さ、音島晃より背が低いしさ、勇気ないヘタレだしさ、体力もないしさ、それに……」
俺が結構気にしてること次から次へと言いやがる。俺、割と傷付きやすいんだぞ…。
「最近、ヘタレ攻めとか低身長攻めとかもあるけど、俺はそういうのには萌えないっていうか、攻めが格好良くないと…。」
「聞いてねぇよ。遠回しに俺のこと格好悪って言うなよ…。何であんたの趣味のためにそんなことしなきゃならないんだよ?」
「諦めてくれってのは言い過ぎたかもしれないけど、君のためでもあるかな。君は諦めようとしてたんでしょ?良い機会じゃない。」
神は全てお見通しか。
「あともう1つ、音島晃は君のことを恋愛的な目では見ていないからね。」
「……そんなこと、分かっている。」
分かっているが、面と向かって言われると改めてショックだ。未練タラタラだ。この際、何でそれが分かるのかなどと聞くのは愚問この際、何でそれが分かるのかなどと聞くのは愚問だろう。
「あんたが推しカプって言ってた奴と晃は、両思いなのか…?」
消え入りそうな声でそっと聞いてみる。
「さあ?少なくとも、滝沢慶斗と五十嵐玲司は音島晃が恋愛的な意味で好きみたいだけどね。」
「晃は…晃は、そいつらが好きなのか?」
「それは分からないな。俺にはね。」
「…どういうことだ?」
「そのままの意味だよ、坂下順一君。」
「人の思考や気持ちが読めるなら、晃の気持ちも分かるんじゃないのか?!」
いつの間にか俺は必死になっていた。こいつも含みのある言い方しやがって…。
「質問に答え…
「そろそろ時間切れだ。すまん、最初に言った制限で、もう時を止めているのも限界だ。くわしいことは明日話す。」
「おい、都合が悪いからって…!俺の話も聞けよ!」
「それではな。」
そう言うと神は姿を消した。
その瞬間、また世界は動き出した。
「ーそれでさ、順は部活どうすんの?って順、おい順?」
…完全に戻ったみたいだ。
「ねえ順、聞いてるの?急にどうしたの?」
「ああ、すまん。考え事してた。何の話だっけ?」
「だから、部活のことだよー!」
頬を膨らませてムキになっている晃は、やっぱり可愛いと思ってしまう。
これからどうなるかは全然分からないが、せめてもう少しだけ。同じクラスになれた高校1年の間くらいは、晃に片思いし続けていよう。
晃とは小学校からの付き合いで、高1になった今でもずっと一緒に過ごしてきた。小2の夏、父親の転勤でこの地方に引っ越して来て、慣れない土地で右往左往していた俺に、初めて話しかけてくれた晃に一目惚れだった。小学校を卒業する頃には、それが恋心だということ、そして、相手が男ということもあり、報われない恋だと自覚していた。わずか12歳にして、随分ませたことに、失恋を味わった。
勿論、告白して見事に玉砕した、という訳では無い。俺にそんな勇気はない。それだけは自信を持って言える。しかし、まだチャンスはあるのではないか…とか淡い希望を持っているところもある。つまり、意気地なしの拗らせている系男子とかいうものなのだ。もう16になるというのに、我ながらイタい。
だが、偶然にも晃と進学先の高校が一緒だったということで、思いは強くなる一方だった。
紹介はさておき、俺は晃と他愛のない会話をしながら歩いていた。
「順はさ、部活何入るか決めた?」
「いや、まだ決めてないけど。晃は多分バスケだろ?」
「まあね~。そりゃスポーツ推薦で入ったしね。順が何にするのか気になってさ。順ってあんまり部活のイメージないし。」
「…そうだな。特に興味のあるもの無…
「おい、そこの少年!」
ふと、俺の言葉が、何者かの声によって遮られた。
思わず声のした後ろを振り向くと、今の時代では珍しい、着物を着た男がこちらを見て立っていた。この、特に変わったところのない通学路の風景に全く合わないような浮世離れしたような雰囲気だ。
その瞬間、時が止まったかのように、周囲から音や動きが消えた。呼吸さえも忘れるかのように。
映画やアニメなどでしか見た事のない状況に戸惑っている俺に、あの男が話し掛けてきた。
「あのさ、君に話したいことがあるんだけど。」
「………………。」
「……何か言ってよ…?」
「……………………………。」
「………おーい…。」
俺は無視を決め込んだ。当然だ。こんな訳の分からない状況で明らかに変な奴に絡まれそうなのだ。
「ちょっとー。聞こえてるでしょ!?」
「…聞コエテマセン。」
「それは聞こえてるじゃん!!」
可哀想なので、思わず答えてしまった。
「てかその前にこの状況を説明してくださいよ…。何であんたと俺以外の人が動いていないんですか?」
「あーそっか。そこから説明しないとね。」
…面倒なので、いろいろと言いたいことはあるが、黙っておこう。そんな中、男はとんでもないことをサラッと言ってのけた。
「まずね、俺は神なんだ。」
「は…?」
面白くない冗談はよしてくれ…とか、いつもならこの手の発言は乗っからずに冷たくあしらうタイプの俺だが、こんな状況ではもはや何でもありなのでは…?とか思ってしまった。
「君と話したくて、今時間を止めてるんだけどね。」
勿論、俺にそんなこと身に覚えが無い。
「こっちが話したいだけだから、君に身に覚えが無いのは当然だよ~。」
「…俺の思考を読んだ…?」
「そう。まあ神様だからね、大抵の超能力っいぽいことはできるよ。制限があるから、そんなに頻繁には使わないけどね。これで俺のこと信じてくれた?」
「というか信じるしかないですね。」
「じゃあやっと本題に入れるね!」
もう話を聞くしかないだろう。
「早速だけど君さあ、音島晃くんのこと恋愛的に好きなんでしょ?」
急に人のデリケートなところ突いてきたなこの神…。
「彼のことは、諦めてくれないかな?」
「何であんたにそんなこと言われなきゃいけいなんだ…。」
よく分からない状況本日何度目だろうか。
「あー、別にね、神としてお願いしてる訳ではないんだ。同性愛が駄目とかでもないよ。むしろ歓迎。」
「…まさかあんたも晃が好き、とか?」
恐る恐る俺は聞いてみた。
「推しとしてなら好きだけど、そういう意味ではないよ。俺、見る専だから。ていうかまず、神と人間との恋愛は禁止されてはいないけど、人間を苦しめてしまうだけだから天界では暗黙のルールとしてタブーになっているんだよね。」
ひとまず、俺にとって最悪の事態は免れた。
「じゃあ何故?」
「君、坂下順一×音島晃が推しカプじゃないんだ。」
「……はい?」
「まあ、俺の推しカプは滝沢慶斗×音島晃で、俺の友達の推しカプは五十嵐玲司×音島晃なんだけど。」
神はオタク特有の早口で語り始めた。
推しカプ…いわゆる腐向け用語だが何となく意味は分かる。晃への気持ちを本格的に自覚してから、そういった本や漫画を読んで少し勉強したのである。断じて俺にそういう趣味はない。つーか、
「滅茶苦茶私的な理由じゃないか!!!」
1ヶ月分くらいの声量で叫んでしまった。
「だから神様としてのお願いじゃないって言っただろう?」
「それにしても度が過ぎているだろ!」
「君さ、音島晃より背が低いしさ、勇気ないヘタレだしさ、体力もないしさ、それに……」
俺が結構気にしてること次から次へと言いやがる。俺、割と傷付きやすいんだぞ…。
「最近、ヘタレ攻めとか低身長攻めとかもあるけど、俺はそういうのには萌えないっていうか、攻めが格好良くないと…。」
「聞いてねぇよ。遠回しに俺のこと格好悪って言うなよ…。何であんたの趣味のためにそんなことしなきゃならないんだよ?」
「諦めてくれってのは言い過ぎたかもしれないけど、君のためでもあるかな。君は諦めようとしてたんでしょ?良い機会じゃない。」
神は全てお見通しか。
「あともう1つ、音島晃は君のことを恋愛的な目では見ていないからね。」
「……そんなこと、分かっている。」
分かっているが、面と向かって言われると改めてショックだ。未練タラタラだ。この際、何でそれが分かるのかなどと聞くのは愚問この際、何でそれが分かるのかなどと聞くのは愚問だろう。
「あんたが推しカプって言ってた奴と晃は、両思いなのか…?」
消え入りそうな声でそっと聞いてみる。
「さあ?少なくとも、滝沢慶斗と五十嵐玲司は音島晃が恋愛的な意味で好きみたいだけどね。」
「晃は…晃は、そいつらが好きなのか?」
「それは分からないな。俺にはね。」
「…どういうことだ?」
「そのままの意味だよ、坂下順一君。」
「人の思考や気持ちが読めるなら、晃の気持ちも分かるんじゃないのか?!」
いつの間にか俺は必死になっていた。こいつも含みのある言い方しやがって…。
「質問に答え…
「そろそろ時間切れだ。すまん、最初に言った制限で、もう時を止めているのも限界だ。くわしいことは明日話す。」
「おい、都合が悪いからって…!俺の話も聞けよ!」
「それではな。」
そう言うと神は姿を消した。
その瞬間、また世界は動き出した。
「ーそれでさ、順は部活どうすんの?って順、おい順?」
…完全に戻ったみたいだ。
「ねえ順、聞いてるの?急にどうしたの?」
「ああ、すまん。考え事してた。何の話だっけ?」
「だから、部活のことだよー!」
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