近未来の身分証明

ヤマシヤスヒロ

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近未来の身分証明

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「こんにちは、市山所長は、いらっしゃいますか」 
「おー、発明家のヒデハルさん、久しぶりだねー」 
市山所長と大学時代からの友人のヒデハルさんが、サンエイ科学研究所に、何年かぶりに訪ねて来ました。 
「今日は、所長に、お願いがあって来たんですよ」
と、ヒデハルは、暗い顔をしながら、カバンの中から書類を取り出した。
「実は、マイナンバーカードをなくしてしまいまして」
「再発行をしてもらおうと思い、区役所に行ったんです」
と、また、ヒデハルは、暗い顔をしながら、その書類を手に持って、市山所長に見せた。
区役所からもらってきた書類である。
「所長、この書類に、私がヒデハルであることを証明するために、署名と印鑑をお願いしたいのですが」
と、ヒデハルは、言いながら、机の上にその書類を広げた。
「区役所に行ったら、あなたがヒデハル本人であることを証明するために、知人に、その知人の身分と、あなたがヒデハルであることを証明するための署名と印鑑をもらって、区役所に持ってきてくださいと、言われたんです」
「所長、不便な世の中になったものですよね」
と、ヒデハルは、やはり暗い顔をしながら、所長に言った。
「以前だったら、運転免許証か健康保険証を提示すれば、身分証明になったのに、2024年にマイナンバーカードに運転免許証と健康保険証が一体化されてしまい、運転免許証と健康保険証が廃止されたもんだから、マイナンバーカードをなくしたら、自分の身分を証明するものがなくなって、だれか知人に証明するための署名と印鑑を書類に押してもらって区役所に持って行かなければならなくなってしまった。知人がいない人は、自分を証明できないのでマイナンバーカードを再発行してもらえないし、病院にもどこにも行けず、車の運転もできなくなってしまう。」
と、ヒデハルは、あきれた顔をして、所長に言った。
「ほんと、不便な世の中になったものだね」
と、所長は、真面目な顔をしてヒデハルに言った。
「行政というものは、ほんとは、国民の生活がしやすくなるように、サービスをおこなう必要があるのに、まったく逆のことをしているよね」
と、市山所長は、ヒデハルに、真剣な顔をして言った。
「そうですよね。国民が利用しやすいようにしないといけないところを、逆に利用しにくくしてしまっているんですよね」
と、ヒデハルは、怒りの顔をして、市山所長に言った。
「そうですね。このマイナンバーカードのシステム、もう一度、国民が利用しやすいように考え直さなければいけないですね」
と、市山博士も、怒りの顔をしながら、その区役所からの書類を見ながら言った。
市山博士もヒデハルも、65歳だけど、なんとか、この国を住みやすい良い国にしようと真剣に考えている2人であった。

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