近未来の新型ウイルス感染症の治療法

ヤマシヤスヒロ

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近未来の新型ウイルス感染症の治療法

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「すごいぞ、これは」 
「肺炎が、時間ごとに回復している」
 と、中村博士は、CT画像を見ながら、驚いた顔をして市山博士と助手の大津君に言った。
 サンエイ科学研究所の市山博士と、助手の大津君は、国際ウイルス科学研究所に来ていた。
 2050年、国際ウイルス科学研究所で、市山博士が開発した免疫増強装置を用いて、新型ウイルスに感染させ肺炎を発症させた実験用のサルの免疫を増強し、その経過を見るための24時間に渡ってのCT画像を中村博士は、見て、肺炎が回復していく様子がはっきりと示されていたのを確認したのである。
 サンエイ科学研究所の市山博士と助手の大津君は、5年ほど前から、免疫システムの脳の役割について、研究していた。
 市山博士は、脳には、過去から現在までに存在したウイルスのタンパク質構造を記憶するウイルスタンパク質構造記憶部位と、それらのタンパク質を攻撃し、分解するための抗体を形成する指令を出す抗体形成指令部位と、ウイルスが身体に侵入したことを感知するウイルス感知部位を備え、身体の細胞表面には、ウイルスに接触したときに感知するセンサー機能を備え、そのセンサーからの信号を神経を通して脳のウイルス感知部位に伝達し、その脳のウイルス感知部位で感知したウイルスを、ウイルスタンパク質構造記憶部位によって、特定し、抗体形成指令部位が指令を出し、抗体を身体で形成するのではないかと考えていた。
 その考えを実証するために、市山博士は、助手の大津君といっしょに、国際ウイルス科学研究所の研究室で、多数の近赤外光入力端子と近赤外光出力端子を取り付けたヘルメットを実験用のサルの頭部にかぶせ、あるウイルスを投与したときの近赤外光出力信号を、コンピュータで解析する実験を行っていたのである。
「大津君、見たまえ。」
「ウイルスを投与した瞬間に、脳の第102部位からの近赤外光信号が急激に増加しているのが分かるだろ」
と、市山博士は、コンピュータの画面を見ながら、助手の大津君に言った。
第102部位というのは、この実験をするにあたり、脳の各部位をマッピングして、部位ごとに番号を付けたものである。
「今度は、第103部位からの近赤外光信号が、増加しているぞ」
「第104部位からの近赤外光信号も、増加し始めたぞ」
と、市山博士は、大津君に言った。
それとともに、サルの全身を覆ったウイルス検知装置からの信号が徐々に減少していくのが、コンピュータ画面に映し出された。
サルに投与されたウイルス数が減少していっているのである。
「第102部位は、ウイルス感知部位に対応し、第103部位が、ウイルスタンパク質構造記憶部位に対応し、第104部位が、抗体形成指令部位に対応していると考えられますね」
と、助手の大津君は、市山博士に言った。
「そのようだな」
と、市山博士は、うなづきながら、大津君に言った。
「私は、こう考えているんだ」
「未知の新型ウイルスが発生したとき、その未知の新型ウイルスのタンパク質構造を解析し、そのタンパク質構造のデータを、近赤外光信号を用いて、第103部位のウイルスタンパク質構造記憶部位に記憶させる」
「それにより、新型ウイルスに感染したサルは、身体の細胞表面のセンサーからの信号を神経を通して脳の第102部位のウイルス感知部位に伝達し、その脳のウイルス感知部位で感知したウイルスを、新たに新型ウイルスのタンパク質構造データを記憶させた第103部位のウイルスタンパク質構造記憶部位によって、特定でき、第104部位の抗体形成指令部位が指令を出し、抗体を身体で形成する」
「そのとき、近赤外光信号を用いて、第104部位の抗体形成指令部位に、抗体形成速度を速め、抗体を身体で形成する速度を速めることができるようにするんだ」
「そうすることによって、免疫増強ができると考えるんだ」
この考えに従って、市山博士と助手の大津君によって、免疫増強装置の開発を行い、2050年に完成し、国際ウイルス科学研究所の中村博士と共に、新型ウイルスに感染させた実験用サルに、免疫増強装置を用いて、実験を行っていたのである。
実験は、成功した。

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